アル・パチーノ / Al Pacino

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映画、舞台への情熱は増すばかりの名優

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これまで10数回、アル・パチーノに会見してきたが、最近ますます話し好きで、お付きの人が止めなければ、翌朝まで話を続けそうな勢いである。以前はもっと肩に力が入っていて、「演技派なのだぞ」とアピールしていたが、ここ数回はパブの一角で一杯やりながらここぞという時だけ声を張り上げるおっさんの様に、楽しそうに、気楽に話すようになった。
 
今回は3月、『Paterno』というテレビドラマに主演しての会見だったが、スキャンダルに巻き込まれたアメフトの監督、パターノの役についてから、シェイクスピアの舞台への情熱などに話がそれたり。しかし、それがあまりに面白いので、誰も遮らずにアルの話術に酔いしれたのである。

俳優

マーティン・スコセッシ監督とアル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロがタッグを組んだギャング映画、『The Irishman』。

「パターノについてどうこう言う気は全くないね。大学スポーツの最多勝利を記録した背景にはいろいろとあっただろうし。今、スコセッシ監督のもと、ボブ(ロバート・デニーロ)と久しぶりに共演した『The Irishman』を撮り終えたところでね。ボブはヒットマン、僕は彼に殺されるジミー・ホッファを演じて、ハーヴェイ・カイテルやジョー・ペシといった馴染みの俳優たちと共演したのだよ。スコセッシに加えて懐かしい連中との撮影はとびきり愉快だった」。
 
言葉と一緒に両手も激しく流暢に動く気合いが入った話し振りに、周囲の人々全員が引きずり込まれていく。舞台出身でも映画スターとして成功すると、ほとんどの俳優は舞台に戻らない。ギャラが低い、拘束がきつい、楽屋や劇場の設備が古い、ナマの舞台が恐ろしい、などが理由だが、アルは例外的に頻繁に舞台に立っている。
 
「もちろん舞台は恐いが、その高揚感は何にも増して素晴らしい!セリフを忘れて頭の中が真っ白になったことが何度もある。ある時、ジュリアス・シーザーを演じていたのに、いつの間にかハムレットのセリフを喋り出してしまった。ベテランが脇を固めていたから適当に順応してくれたし、おそらく観客のほとんどが全く気付かなかったろうけどね。舞台の下にプロンプターが控えていて、セリフを忘れたときはそのヘルプを使うのだが、その時の僕は勢いに乗って意気揚々とハムレットのセリフを言ってしまったのだよ」。今年78歳のアルの精力的な活動に乾杯です。

 

成田陽子

成田陽子
なりた・ようこ◎ゴールデングローブ賞を選ぶハリウッド外国人記者協会に属して30年余の老メンバー。東京生まれ、成蹊大学政経学部卒業。80年代から映画取材を始め、現在はインタビュー、セット訪問などマイペースで励行中。

 

(2018年5月16日号掲載)
 
※このページは「ライトハウス・ロサンゼルス版 2018年5月16日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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