(2021年8月16日号掲載)
消防隊員役でも美貌は隠せない
アンジェリーナ・ジョリーに初めて会ったのは『Gia』(1998)でドラッグに溺れたスーパーモデルを演じた時。会見にすっぴんのまま、髪もくしゃくしゃなのを適当にまとめた”寝起きルック”で現れ、広報担当者が慌てていたのを思い出す。しかし、いざ話を始めると知的に、論理的に自分の考えをストレートに話す頭の良い23歳の新人だった。
その彼女が最も感情的に、涙ながらにインタビューに答えたのは処女監督作の『In the Land of Blood and Honey』(2011)の時だろう。当時、ブラッド・ピットと暮らして既に約6年目、数人の養子を迎え、世界中の難民キャンプを訪れ、と多忙の日々を送る中、東ヨーロッパの戦地での男女の恋愛悲劇の制作に携わるエネルギーに驚いた。一般的な幸せや安定、適度な仕事では彼女の底知れぬ「渇き」は永遠に満たされないのだろう、と痛感したのである。
監督第2弾『Unbroken』(2014)では、第二次大戦中に日本軍の捕虜になった主人公(後の五輪陸上選手)の不屈の精神を描いたが、よくある西洋映画に登場するような理不尽に暴力的な日本兵の描写を避けている。またしても昔の異国ドラマへの挑戦だったが、豪華絢爛なハリウッドライフに対する贖罪のようなものなのだろうかなど、勝手に解釈したりもした。
今まで20回以上インタビューしたが、常に意見を明確に話し、プライベートの話もノーコメントなどと言わない。元夫君のブラピがモゴモゴと照れながら話すのと雲泥の差だ。もちろん、彼の魅力はその幼児性にあるのだが。
新作の『Those Who Wish Me Dead』(2021)では、山火事の真っ只中に飛び降りる特別消防隊員を熱演。過去に救命できなかった3人の死亡事故の罪悪感に苛まれ、男性オンリーのチームで奮戦するのだが、そこはアンジェリーナゆえ、すすだらけになっても類いまれな美しさが見え隠れする。
「心が壊れている人の役に惹かれてしまう。いかにその苦しさを克服して前進していくかを共に感じながら演じていると、私自身も癒されてくる。そして常に彼らを応援して支持するのが私の使命だと思っているの。今は監督をする時間と心の余裕がないけど、アイデアは山のようにあるから、期待していてね」。
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