ベネディクト・カンバーバッチ / Benedict Cumberbatch

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(2022年3月16日号掲載)

英国を代表する俳優の地位を確立

ベネディクト・カンバーバッチと成田陽子さん

オスカー主演男優賞候補、おめでとうございます。『The Imitation Game』(2014)で初めてオスカー候補になって以来、今回の『The Power of the Dog』(2021)で2度目、そして今回は「受賞本命」と言われている。『The Imitation Game』でもそうだったが、優秀な頭脳、性の秘密、異常性などを携えた男を演じると妖気を放つカンバーバッチ。鋭く高い頬骨と西洋人にしては細い目、スリムな肉体が禁欲的で、長いヒゲなど付ければ仙人になれそうだ。
 
初めて彼に会ったのは『War Horse』(2011)の時。全く無名の若手だったせいか、やけにはしゃいでいたが、シェイクスピア劇で鍛えた発音とバリトンの声が「重さ」を感じさせた。何を隠そう私は才能発掘の名人で、大昔に『Rawhide』(1959〜1965)を見てクリント・イーストウッドは大物になると予言したこともある。カンバーバッチに関しては、『Starter for 10』(2006)でリッチかつスマート、そしてちょっと嫌味な大学生役を、翌年『Atonement』(2007)で同じくリッチでスマート、その上さらに嫌な奴を続けて演じ、この存在感は大スターになると確信したのである。

ベネディクト・カンバーバッチ

1920年代のモンタナ州を舞台に、牧場主フィルと彼を取り巻く人間模様を描いた『The Power of the Dog』。「Netflix」で公開中。

『The Power of the Dog』での役作りについて聞いてみた。
「ニュージーランドのロケでは大自然の威厳を感じた。コロナ禍による休止もあったが、骨の髄まで役作りに徹することができた。僕自身は他人に好かれたいタイプだが、今回演じたフィルは自分勝手で、他人に嫌悪されようと生きているタイプ。毒気に満ちたマッチョガイでもあって、どんどん役にハマってしまった。最初は彼のように体を洗わない日々を送ったが耐えられなくなり、服を洗わないという習慣だけ取り入れた。撮影中は話し方も動作も頭の中もフィルになりきっていたら、家族に嫌がられてね。ここまで役に没頭したのは舞台を除いて初めてだ。アイビーリーグの大学を出ていながら、カウボーイの生活と大自然に心身共に浸りきって外部の誘惑を異常なまでに拒否する…今までで最もやりがいのある役だったと思う」。
 
ワイフはオペラの監督にしてフランス語ペラペラ。結婚するや3人の子どもが次々と生まれ、英国女王からは叙勲され、今や英国を代表する俳優になった「ワタクシの見っけ者」であります。

成田陽子

成田陽子
なりた・ようこ◎ゴールデングローブ賞を選ぶハリウッド外国人記者協会に属して30年余の老メンバー。東京生まれ、成蹊大学政経学部卒業。80年代から映画取材を始め、現在はインタビュー、セット訪問などマイペースで励行中。

※このページは「ライトハウス・ロサンゼルス版 2022年3月16日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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