(2019年9月16日号掲載)
天才建築家の役が相変わらず凛々しい
最近のケイト・ブランシェットは勇ましい、マニッシュなスタイルを好むようになった。『Ocean’s 8』(2018)の女性強盗団の親分役に続いて、今回の『Where’d You Go, Bernadette』での天才建築家にして人間恐怖症というエキセントリックな母親役でも、鋭角なデザインの服を着て、言動も夫より男性的である。
19年8月、インタビューに現れたケイトは、この日も仕立ての良い黒のブレザーに煉瓦色のスラックスと、とびきり凛々しくスタイリッシュ。オスカー助演女優賞を受賞した『The Aviator』(05)の大股で歩き回る男装のキャサリン・ヘップバーン役が思い出された。
「私が演じるバーナデットはカオスの中に生きていて、目標を失っている。環境保護のために広大な敷地付きの古い邸宅を買ったものの、改築に取り組むエネルギーを失い、家は雨漏りがひどくカビだらけ。昔の仲間に会うとせきを切ったように手持ちのアイデアと現状不満が吹き出して、家に戻ると再びアイデアがしおれてしまう。
私の生活も毎日がカオス。子どもが4人もいるから朝から晩まで混乱の連続で、ひとたび車が故障したりするともう大変。そこからエネルギーを回復するのも一苦労なの。バーナデットは南極に行って強大な創作意欲を取り戻すのだけど、アーティストは創作の場を失うと心身のバランスをも失いがち。私も常に新しい役、企画に挑戦をしていないと鬱病になりそう。そういう意味でも、この映画が創作を職業にしている人々への活性剤になれば良いと思っているの。
南極へ(撮影に)行く予算がないからCGの背景になるって聞いた時は、ものすごく失望したわね。見かねた監督がグリーンランドでのロケを敢行したの。初めてカヤックを漕いで一人で海に乗り出した時の戦りつは忘れられない。限りない静けさの中、時々氷山が崩れる音が遠くから聞こえてきて。その澄み切った世界は、汚染された人間たち、人工の物質など全てを振り出しに戻す洗浄力を持っていて、天にも昇る心地だった。グリーンランド名物のジャコウウシがまた優しい性格で、カシミアみたいにソフトな毛並みも触っていると夢心地になるほど。空気もおいしいし、素晴らしい経験だった」。
今年50歳になって、ますます磨きがかかってきたケイトに乾杯!
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