(2019年4月16日号掲載)
インディー映画の女王にして、スタイルアイコン
「インディー映画の女王」のレッテルを貼られながらも、スタイルアイコンとして長年注目されるクロエ・セヴィニー。ドラマ『The Act』への、信じられない母娘の行状を見守る隣の奥さん役での出演を受け、3月上旬にインタビューをした。
「ファッションはずっと大好きで、小さい頃は、他の子たちと違う服をアクセサリーなどでもっと奇抜にして着ていたわね。最近は少し怠慢で、スタイリストの力を借りてしまう。大きなイベントでのドレスや靴を私の好みに合わせて探してきてくれるし、『ああ、こんな合わせ方もあるんだ!』っていう驚きが楽しいの。昔みたいにクレイジーにショッピングしなくなったのは、嫌になるほど服があるのに何か不満を埋めるために新しものを買うのはもったいないし、不用品が増えて環境にも悪いと悟ったから。でも、今までオスカーやメットガラ(ファッションの祭典)で着たドレスは倉庫に保存してある。私の歴史でもあるもの」。
インディー映画ばかり出ていると言われ、実際、25年のキャリアでメジャースタジオ映画がたった2本。「でも、本当はスーパーヒーローを演じたい。ブロックバスター映画(大作映画)で。こう見えて運動神経抜群だし、すごい衣装を着て悪漢を退治する役って最高じゃない!」と話すクロエは現在44歳。東部のアッパークラス育ちならではの聡明さと品の良い自然体が身上で、どんな役でも淡々とした存在感を見せてくれる。『The Act』は健康な子どもを重病にさせて面倒を見ることで同情を引いたり、子どもに対する所有欲を満たしたりするミュンヒハウゼン症候群という精神病にかかった母と娘の実話を映画化したものだ。
「今はニューヨークのマンハッタンにあるアパートに住んでいるから、近所付き合いはまずないわね。でも子どもの時に住んでいたコネチカットの小さな町では、町中の人たちと交流があってすごく温かい雰囲気だった。先日、ロンドンでフィリップ・グラスのオペラを見たの。いつもなら最高級のオペラでも寝てしまうのに、今回は感動の連続で、砂漠のようになっていた私の感性をなみなみと満たしてくれたのよ。やっぱり文化的栄養は頻繁に補給すべきと痛感したわ」と、カラカラと笑う表情が、何とも爽やかなクロエであった。
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