(2021年11月16日号掲載)
精力的な活動を続ける、生けるレジェンド
往年のマカロニ西部劇や”Go Ahead Make My Day.”の詞で有名になったダーティー・ハリーと言えばこの人。相変わらずスリムな長身と熱い信念が頼もしいクリント・イーストウッドも、今年の5月で91歳。最新主演・監督作の『Cry Macho』では、「マッチョという言葉は過剰に重んじられている。マッチョなどクソくらえだ!」と少年に説いているのだが、自身もマッチョのシンボルのように敬われた過去に対する捨て台詞にも聞こえてくる。同映画では元ロデオライダーという役柄で荒馬を調教したり、メキシコの女性とロマンスを展開したり、やり過ぎではと思うシーンもあるが「マッチョ」という名の闘鶏を持つ少年との友情の発展には心が温まり、さすが!と感嘆してしまう。
過去のインタビューでは(コロナ禍で今作に関するインタビューは無し)、年齢ばかり気にするハリウッドに対して「20歳の頃のルックスはなくなったが、それがなんだ。歳を取るにつれ、さらに興味深い役が演じられる」と鼻息が荒いのも心強い。以前に年齢のことを質問した時も、「僕の長生きの理由は遺伝。父は1906年に生まれ、大恐慌を経験しながらブルーカラーのハードな仕事を続けて84歳で亡くなり、毋は健康なまま97歳まで生きた。仕事に興味を持ち続けるのも秘訣で、何かに興味を持ち、それに心身ともに浸ることが大事だ。ポルトガルのマノエル・ド・オリヴェイラ監督(2015年に106歳で没)は100歳を過ぎても精力的に映画を撮っていた。数年前に会った時、彼は100歳前だったが、常に新しいものに興味を持ち、外に自分を置いて刺激を絶やさない。素晴らしい姿勢だと思った」とうれしそうに答えてくれた。
死後、動物に生まれ変わるとしたら…と聞くと、「ベッドバグ(トコジラミ)かな(笑)。相手は居心地の悪い思いをするだろうが必ず食事にありつけるし、嫌いなやつの生き血を吸ってリベンジするのも良いだろう。ただ、本当は生まれ変わりなど信じてはいない。与えられた人生を全うし、尽きた時はそれで終わりと思いたいから。ライオンだの竜だのになりたいと強がるのは、自分で人生をコントロールできなかったと暗示しているようなもの。もっと潔く逝くべきだ」と、いかにもクリントらしい思想が跳ね返ってきた。
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