(2021年7月16日号掲載)
新作『Supernova』も話題の英国紳士
英国紳士の象徴、コリン・ファースも今年9月で60歳を迎えるが、人気は全く衰えない。「知的女性のアイドル」とも言われ、映画雑誌の投票などでは常にトップの座を維持している。
新作『Supernova』では、アルツハイマーを患う20年来のゲイの恋人とドライブ旅行に挑戦し、記憶が晴れたり曇ったりの症状を見守りながら、共通の友人を訪ねたりして思い出を手繰り寄せ、恋人との最後の時間を和やかに共有する主人公を演じた。恋人役はコリンの実生活でも20数年来の友人、スタンリー・トゥッチが演じている。
イタリアのウンブリアに滞在中のコリンと「Zoom」でインタビューしたのは今年の1月。
「ウンブリアは僕の心の拠り所でね。特に有名な町もなく、昔からの深い人間的な情愛を持って人々が暮らしている。食材は自然の産物ばかりだから、僕の簡単な料理法で十分。何でもとびきりおいしいし、心と体にみずみずしが戻ってくるんだ」。
コリンは両親が教育者で、生まれはナイジェリア。他にもさまざまな国で暮らした後、イタリアの女性と恋に落ち、22年間の結婚生活を営んだ。2019年に離婚するも、イタリアへの思いは変わらない。
「面白いことに、この映画で僕らは英国の湖水地方を訪れるのだが、ここはローマ人が昔”カンブリア”と名付けた地域で、自分たちの美しいウンブリアをなぞって名付けたらしい。最初は僕がアルツハイマーの男を演じるはずだったが、脚本を読んで『役を入れ替えたもっと良くなる』と直感。それをスタンリーに打ち明けたら、彼も『同じように思っていた』と白状し、監督に替えてもらった。
ゲイの役をストレートの俳優が演じることに批判の声もあるようだが、演技は演技。僕らはストーリーをベストに展開し、最高のプレゼンテーションを試みるのが役目なんだ。私生活での嗜好など関係ないし、役を選ぶのは俳優の自由だと言いたいね。
忘れられないドライブ旅行は僕が12歳の時、両親と行った3カ月のアメリカ横断。ダイナミックな景色ももちろんだが、当時のアメリカ人の純粋な親切心が最も強く印象に残っている」。
次作はオハコの時代劇、『Mothering Sunday』。第一次大戦後の恋愛ドラマで、楽しみである。
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