(2021年3月16日号掲載)
ハリウッド随一の憑依型俳優
映画『The Little Things』(2021)は、デンゼル・ワシントン、ラミ・マレック、そしてジャレッド・レトと3人のオスカー受賞者が競演する、連続殺人スリラー。『Dallas Buyers Club』(2013)で30ポンド減量してオスカーを獲得したジャレッドは、今回は容疑者の役だ。
「悪役はしばらく演じたくなくて、最初は断ったんだよ。でも、監督が僕の怪奇役好きのツボを押さえて説得してきたことでやるが出てきて、FBIの資料を見ていたら、のめり込んでしまってね。体重を増やし、付け鼻を付け、目の色を変え、それから声も変えたんだ。一応歌手だから声を変えるのはお手のものだったね。それから周囲を踏みにじるような歩き方を工夫した。映画を見た知人が『どこに出ていたの?』と聞いてきた時はやったー!と叫んだね。実際、あまりに役にハマりすぎて元の僕に戻るのに時間がかかったほど。体型はともかく、毒素を抜くのに長いこと沈黙と静寂の日々を送って、何とかクリーンアップしたよ」と、凝り性ぶりを白状した。ネバダ州レッドロックとのZoomインタビューは、2021年の1月。2ショット写真は2年前のものだ。
「デンゼルの上手さは腹を蹴り上げるような迫力だった。実は最初の撮影で、斜に構えるのが好きな僕は脚本にないセリフを彼に投げてみたんだ。それを見事に受け止めたばかりでなく、巧妙な返答をしてきたね。その上手さに唸ってしまって、それからは先輩デンゼルの一挙一動を貪るように見て演技を再勉強したんだよ。結末がよく分からない? それはね、監督が映画を見終わってから観客たちに刺激的な会話を始めてほしかったから。破壊的なエンディングであることは確かだけどね。
ロックバンド『Thirty Seconds to Mars』でのミュージシャン業と俳優業の両方ができるって、つくづくラッキーだと思う。バンドのツアーでは外国の人々と接したり、地元の料理を試したり、生活の匂いを嗅いだりできるけど、映画のロケでそんな余裕はないから」。
次は待望の『Zack Snyder’s Justice League』(2021)。ジャレッドならではの「ジョーカー」が暗闇でひっそりと不気味に待っているはず。凝りに凝った役作りに期待しよう。
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