(2023年5月号掲載)
西部劇にどっぷり、かつての二枚目俳優
大ヒット中のTVドラマシリーズ『Yellowstone』(2018〜)でモンタナの牧場主を熱演中のケビン・コスナー。今年1月で68歳になったが、デビュー当時のアメリカンな体育会系のボーイッシュな魅力は、ちと干からびた皮膚の下からもしっかり覗いている。劇中のしゃがれ声はこの役のために作っているそうで、生の声は相変わらず若々しく、つややかなのである。
「7歳ぐらいの時に『How the West Was Won』(邦題『西部開拓史』・1961)を見て以来、西部劇の虜になった。広がる青空、どこまでも続く土地、全てがオープンなスペースでの人間ドラマが僕の創作意欲を刺激する。いろいろなジャンルの映画に出たけど、もうネクタイを締める役はゴメンだね。大都会に興味がなくなってしまった。居心地が悪くてね。朝起きて窓から森と草原の広がりを見るほどうれしいことはない」と語るケビンだが、シーズン5を終わりに役を離れるそうだ。これは自ら制作、脚本、監督、主演を手がける西部劇映画『Horizon』の制作に集中するためと言われている。
ケビンに初めて会ったのは『The Untouchables』(1987) の公開当時。ケビンは同作品で、ロバート・デ・ニーロ演じるマフィア、アル・カポネを追う捜査官エリオット・ネスを熱演した。野球選手として奨学金を得て大学に入学しただけに、体育会系のストレートでシンプルな、そして青い眼が透き通った美青年だった。また、同年の『No Way Out』では米国海軍の制服に身を包み、恋人役のショーン・ヤングとセクシーで切ないラブシーンを演じた。
『A Perfect World』(1993)の会見時は、シンディー前夫人との離婚騒動の真っ只中。泣きながら子どもたちと別れるつらさや将来への不安を打ち明け、もらい泣きまではしないまでも、一緒に悲しくなったのを鮮明に覚えている。それでも、すぐにケロリと次の仕事への挑戦などを話し出す、切り替えの早さも見せていた。深刻ぶらず、演技魂の固まりなどでもなく、自分の情熱のはけ口を映画に見いだして、クルーやキャストと一緒に楽しんで映画作りをするチームワークの人ゆえに、小さなことにくよくよしたりしない、爽快な人となりが身上と言えよう。
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