(2023年4月号掲載)
アジア人初のオスカー主演女優賞受賞!
ついにアジア人女優がオスカー主演女優賞を受賞! 今年の賞シーズンには、思わず首をかしげたくなるようなデザインのドレスを着て現れていたが、3月12日のオスカー受賞式には、純白のお姫様ドレスにティアラのような髪飾りと、初心に戻ったようなファッションで登場した60歳のミシェル・ヨー。「夢は必ず現実になるの! 世界中の母親たちにこの賞を捧げます。もう年だからなんて誰にも言わせない。マレーシアでテレビを見ている84歳の母には感謝の言葉しかありません」と力強く宣言していた。日々マーシャルアーツの鍛錬に励むミシェルの筋肉質の二の腕も、舞台の上で映えていた。
主演作である『Everything Everywhere All at Once』(2022)(あまりに題名が長いので、『EEAAO』と略されている)では、ほとんどオールアジアン・キャストの中、髪を振り乱し、めちゃくちゃなメークでワイルドに活躍。ファンは少し唖然としたものの、あらためて彼女の勇気と虚栄心のなさに励まされた。
さて、ミシェルに初めて会ったのは、ハリウッドデビューの『Tomorrow Never Dies』(1997)で、ジェームス・ボンド役2回目のピアース・ブロスナンを相手に女スパイを演じた時。それまでのボンドガールとは違ってベッドインなどの場面はなく、もっぱらマーシャルアーツを取り入れたアクションと知的能力に焦点が当てられ、最後のシーンでやっとボンドとちょっぴりキッスを交わすのみ。
当時35歳のミシェルは素肌が美しく、落ち着いた上品な人なりを漂わせていた。バレエ修業をしたロンドンで鍛えられた英国アクセントの英語もエレガントで、ハリウッドのスターたちと一緒にいても毅然として、育ちの良さと教養が感じられた。
「今までのボンドガールとは変わって、たくましい女性を起用したいということで、それに選ばれて本当にラッキーでした。ボンド自身も社会の変化に対応して、男女平等を全面に出すようになりました。アクション場面は全くスタントを使わず、全部私が一人でやったのよ!」と誇らしげな彼女の表情を思い出す。
あれから26年、ミシェルはハウッドを見事に征服したのである。
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