ヴィゴ・モーテンセン / Viggo Mortensen

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(2021年1月16日号掲載)

”オープンマインド”が信条のマルチアーティスト

ヴィゴ・モーテンセンと成田陽子さん

新作『Falling 』はヴィゴ・モーテンセンの初監督作品にして制作、脚本、主演を兼ねた意欲作。しかも彼の役はゲイと、さらなる挑戦が加わっている。今回のインタビューは2020年11月に「Zoom」で行い、本ページの2ショット写真は2年前のもの。
 
「この作品で伝えたかったのは、オープンマインド。何事にも心を開いて向き合う姿勢を持ってほしいということだ。痴呆症が始まった頑固で偏屈な父親と中年のゲイの息子のやり取りから、老人の世話、老いた親の話を注意深く聞くことの大切さ、自分の家族を見守る優しさを感じてほしい。
 
実は僕の両親、祖父母、叔父や叔母のほとんどが痴呆症でこの世を去ってしまったから、僕は気が気でならないんだ。血液から将来痴呆症になるかどうかの検査ができると聞いて受けてみたら、その兆候はないという結果だった。でも、誰にも予測はできないと見ている。

ヴィゴ・モーテンセン

『Falling』は、ヴィゴ演じるジョンとその夫エリック、2人の養女モニカと、認知症を抱えるジョンの老父の人間模様を描いた人間ドラマ。

僕の父はデンマーク人で、同国は僕も長く住んだ国だから、映画の家族もスカンジナビア系を起用した。父親役はランス・ヘンリクセンに依頼したが、もう引退したいと頑固に拒否された。でも最後に承諾された時はうれしかったね。ノルウェー人の独特のユーモアがにじみ出た顔がほしかったんだ。
 
ゲイの役を僕がすることに批判の声が出ているようだが、いまだにゲイ役はゲイの俳優に、なんてことにこだわること自体が閉鎖的だと僕は声を大にして言いたい。男性の役だって女性が演じられる時代だと認識するべきだ。僕の恋人を演じるテリー・チェンにも、自身の性的嗜好など聞いてないし、これこそがオープンマインドの良い例だよね。
 
監督として働く初日に『完璧に準備をしたつもりだが、いつでも良いアイデアがあれば教えてくれ。傑作を作るためには、何にでも順応するから』とスピーチしたが、これもオープンマインドの姿勢のサンプルと自慢しておこうか」。
 
2021年に62歳になるヴィゴは、写真、詩、作曲に演奏、反戦運動そして今回の映画監督と、数々の肩書きを持つマルチアーティストだが、生涯一番の成果は?と聞くと、「息子の父親としてベストを尽くしている。彼もそれに応えてくれているし、その父子関係が何よりの成果さ」と穏やかな笑顔で答えてくれた。

成田陽子

成田陽子
なりた・ようこ◎ゴールデングローブ賞を選ぶハリウッド外国人記者協会に属して30年余の老メンバー。東京生まれ、成蹊大学政経学部卒業。80年代から映画取材を始め、現在はインタビュー、セット訪問などマイペースで励行中。

※このページは「ライトハウス・ロサンゼルス版 2021年1月16日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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