(2022年1月16日号掲載)
テニス界最強の姉妹を育てた父親を熱演
ウィル・スミスの最新主演作『King Richard』は、英国王の武勇伝などではない。テニス選手のヴィーナス&セレーナ・ウィリアムズの父親であるリチャード・ウィリアムズが娘たちのために駆けずり回る、「熱血スポ根ドラマ」だ。
「まず脚本がすごかった。こんなテニス家族がいるのか!と信じられなかったね。娘たちを守るためなら、ライオンのように吠え続けてきた稀代の父親だ。欠点が多いのも人間的だし、だからこそ家族がかばい合って団結して、あそこまでの成功を収めたのだよ。
この父親を演じるにあたって、まずはメークから入った。でも、3時間ほどメークしてから監督に見せると、『似てきたけれど、毎日何時間もメークにかける時間がもったいないし、素顔のまま演技力で勝負したまえ』と言われてしまい、結局、髪に白髪を加えただけで撮影に臨んだ。彼の表情、動作、そして何よりも大胆不敵な様を取り入れて、あとは自分の演技力だけが頼り。ヴィーナスが、『父は(スターウォーズの)ジェダイのような存在だった』と言っていたのが印象に残っていて、僕もジェダイの精神で役作りをしたよ。ほとんどのシーンはパンデミックもあって、リハーサルなしで強行した。でも、誰もが役作りを自分なりに”マリネート”してきたから、スムーズに進んだね。
この家族は何よりもテニスを優先してきたと思うだろうが、実はテニスは5番目。まず神への信仰、それから家族、人間愛、教育の順で、徹底的に”偉大な人間”になるべく育てたそうだ。テニスばかりしたがる姉妹への罰は、テニスをしてはいけない日だった。もっとも2人は、部屋で秘密裏にゴムで結んだボールを打っていたそうだが。ちなみに、リチャードはテニスができないんだ。コートでボールを投げるだけで、後は雑誌などを見てコーチをしていたそう。
ところで、白髪頭になってみたら、僕は父親にそっくりになった。空軍のベテランで、非常に厳しい父だった。アル中気味ですぐにキレる性格だったから、一緒にいるのが嫌だったよ。リチャードのように欠点が多かったが、今、自分自身が父親になってみると、親の苦労が理解できるようになったね」。
相変わらず人気者のウィルは、今後も主演作9本と目白押し。『Bad Boys 4』も楽しみである。
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