アーティスト魂と官僚の脈を併せ持つ
プリンストン大学で英文学専攻。アカペラグループに所属し、世界巡業。幼い頃、芝居に魅せられ、弁護士家業を継がず、卒業後にハリウッドへ。10年余りの下積み中、映画やテレビに多数ゲスト出演、ABC『Dinotopia』で初主演した。2003年、映画『The Human Stains』で演技力を発揮し、マライア・キャリーのミュージックビデオ、CBSの『Joan of Arcadia』を経て、05年『Prison Break』の主役を射止めた。現在スター街道まっしぐらの有望株。
2005年夏、『Prison Break』のパイロットを観て、「ヒット間違いなし!」と、ミラーに励ましの言葉をかけた。1年目を撮り終えてロケ先から戻り、ホッとひと息ついたミラーに話を聞いた。
『Prison Break』初年度はいかがでした?
ミラー(以下M):僕が演じるマイケル・スコフィールドには複雑な事情があるので、2時間の映画ではとても演じきれません。マイケルの多面性を、時間をかけて演じられることが、役者として何よりもうれしいです。
オーディションを受けたのは?
M:必要とあらば卑劣なこともやってのけ、「これでも、まだ応援してくれますか?」と視聴者に挑戦する役。昔ながらの「英雄」ではなく、白黒はっきりしない灰色の役なので、やり甲斐があると思ったからです。
卒業してすぐLAに越して来られたそうですが…
M:両親に安定した職業を選ぶように育てられ、芝居は諦めていました。でも、映画やテレビが大好きで…。制作会社に就職し、企画部の上司が放送局に転職したので、くっついて行きましたが、「何か違うな…」と。だったら「一か八か勝負するしかない!」と思いました。
芝居にとりつかれたのは?
M:小学校の学芸会です。父に手伝ってもらった紙粘土で作った恐竜のかぶりもので舞台に立ち、大喝采を受けた時。あの感覚が忘れられなくて。
TVガイドが「今、最もセクシーな俳優」と絶賛しています。将来の夢は?
M:今を楽しまないのは賢い生き方ではないので、当分この番組を堪能します。いずれは映画もやりたいし、心理スリラーやロマンチック・コメディーにも挑戦したい。目標は性格俳優。
思慮深い印象を受けるのですが、芸能界で生き残る自信は?
M:銀幕や画面に顔を出す人にはプライバシーはないも同然。アイドルになればなるほど、役者としては信憑性が落ちるので、何もかもさらけ出す必要はないというのが僕の信念です。
10カ国の混血って、本当ですか?
M:ジャマイカ、イギリス、ドイツ系ユダヤ、アフリカ系アメリカが父方で、母はロシア、フランス、オランダ、シリア、レバノンの混血。特にどの人種に親近感を感じる訳ではなく、カメレオンになれるから、役者としては強みかな?
誰の影響で今日の自分があると思いますか?
M:好きなことをあくまで追求する頑張りを教えてくれた両親。役者でも現実に対処できないと、どんなに才能があっても駄目ですから。ジョン・マルコビッチ、ストッカード・チャニング、デンゼル・ワシントンなどもお手本です。
ハリウッドを夢見る日本人俳優にアドバイスを
M:業界に入り込むためにはアーティストの魂と官僚の脈が必要です。有名になるまでは、どんなに疲れていても、アルバイトから戻ったら履歴書と写真を郵送する作業を怠っては、才能があっても芽が出ません。エージェントが名前も顔も知らなければ、仕事にはなりませんからね。
[業界コボレ話]
5月中旬、スポンサーに発表された秋の新番組。視聴率好調で現状維持のCBSはドラマ3本とコメディー1本のみだが、早々に打ち切られた『Heist』の生真面目版『Smith』はいかがなものか?
ABCはヒット作を3本持っているが、秋に10本、春は5本で試行錯誤を続行。秀作『Commander in Chief』を打ち切る浅はかさには、開いた口が塞がらない。スペイン語圏で大ヒットした番組の米国版『Betty The Ugly』が良い。
木曜のコメディー枠から視聴率を挽回しようと必死のNBC。切り札は、『20 Good Years』と『30 Rock』。とにかく笑える。カイル・チャンドラ-がコーチを演じる『Friday Night Lights』は、視聴率が取れそうなスポ根ドラマ。