今を逃したらいつ? の気力で
アリゾナ生まれ。アリゾナ大学でメディア芸術を専攻、97年LAに移住。制作助手から始め、編集助手としてドラマ『The Chronicle』『SpecialUnit 2』等に関与。00年、編集者に昇格、スピルバーグの『Taken』を経て、ノンフィクションに転向。『Burned』『What Should You Do?』『Totally Busted』で編集担当。05年より『The Amazing Race』の編集で活躍中。リアリティーで05年よりエミー賞を3年連続受賞した、今注目の成長株。
これまで十数人の編集者と仕事をして、縁の下の力持ちの存在に気づいていた。07年度エミー賞候補者のパネルインタビューで、「リアリティー番組は編集者の媒体」と熱く語ったエリック・ゴールドファーブ。『The Amazing Race』で3年連続、最優秀ノンフィクション編集賞に輝いたゴールドファーブに尋ねた。
3度目のエミー賞、おめでとうございます。
ゴールドファーブ(以下G):初回は05年、受賞で夜勤から解放されたのが何よりの贈り物でした(笑)。編集は地下牢での孤独な仕事なので、陽の目を見たのもうれしいです。
昔から編集の仕事に興味が?
G:大卒の若僧が映画監督になれる訳がないので、制作進行係(PA)で業界に。半年ほど観察し、ライターか編集ならと的を定めたら、編集助手職が降って湧いて。Avid(編集ソフト)を習得するのに、通勤時間が惜しくて1カ月ほど車で寝泊まりしました。ヘマばっかりでしたが、必死だったので、クビにはなりませんでした(笑)。2年半で編集者になり、00年からフィクションを3年余り、リアリティーに転向して4年。
フィクションとリアリティーの編集の違いは?
G:脚本があるフィクションでは、1時間ドラマで処理する映像が13~14時間、リアリティーでは200時間が普通。僕はドラマで技術を覚えましたが、リアリティーはデジタル化が大仕事。
膨大な量の映像を43分に編集するプロセスは?
G:経験を積めば、必須の場面が200時間のどこにあるか察しがつきます。各チームの行動に筋が通るように、上位チームから順を追って編集し、放送時間の2~4倍のラフカットにします。起承転結が決まったら、映像の続き具合を点検、音を入れてから再チェック。1話あたり4~5週間で「編集者版」が上がり、プロデューサー/制作総指揮者の変更に1週間。最終決定はCBSですが、「あーでもない、こーでもない」が2~3週間続いて放送版になります。
『The Amazing Race』はいつからの関与ですか?
G:シーズン6です。ある番組の編集にルームメイトを雇ったお返しに、『The Amazing Race』の編集を辞める時に僕を推薦してくれました。
今の仕事を選んで良かったと思いますか?
G:既にコンセプトが固まったフィクションより、創作力を活かせるのが醍醐味。フィクションだと、10人が編集しても似たり寄ったりですが、リアリティーは客観的な差が出ます。
リアリティー番組では、放送後に参加者の不平不満を耳にしますが…。
G:契約書を結んだ時点で肖像権を放棄した訳ですから、局側は映像を自由に使えます。人間はプレッシャーをかけられると本性を出しますから、通常繕って生きている人の言い訳では?
将来の夢は?
G:5年後にはテレビ番組を世に出す計画。映画創りが夢ですが、テレビの方は話が進んでいます。『The Amazing Race』での実績を足がかりに飛躍したいです。今を逃したらいつ? の気力で、全力投球です!
[業界コボレ話]
遂に出た! 今秋初の打ち切り。予想通り、ミュージカル・ミステリー『Viva Laughlin』。だが、『Cavemen』を始めとする数本が、まだ生き残っている。
今年は低視聴率の番組を各局が辛抱強く見守っているのかと思いきや、放送作家のストのため、早々に打ち切ると穴埋めできないからだと判明。1月のプレスツアー開催も危ういとか。スト決行となった1988年は、非組合員作家にチャンスが巡って来たと聞いた。スタッフライターへの近道かも?
おすすめの新番組で更新が決まったのは『Mad Men』。『The Big Bang Theory』『Private Practice』『Samantha Who?』。『Pushing Daisies』は出だしは好調だったが、毎週視聴率が低下して不安。『Big Shots』は下手をすると…。