監督/プロデューサー クリストファー・チューラック

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多数決で決められないテレビ制作

Christopher Chulack
LAで生まれ育ったテレビ界の叩き上げ。大学を卒業することなく、19 歳で撮影所の使いっ走りで業界入り、編集、プロデューサーと、着実に技を磨いて昇進。1992 年『Homefront』で監督としてデビュー。『ER』制作を任されたライター出身のジョン・ウェルズと共に、TV 史に残る番組作りに関与。『Third Watch』『Presidio Med』などを経て、自ら企画した『Southland』の監督、プロデューサーとして活躍中。

昨夏、DGA(米国監督組合)のパーティーで、『Third Watch』撮影の苦労話を聞かせてくださったクリストファー・チューラック。15年も関与した『ER』の完了を待たず、新番組『Southland』制作に奔走する職人気質満々の監督に聞いた。

オープニングにLAの凶悪犯の写真を使われた理由は?

チューラック(以下C) :創造力をかき立てられたので、LAPD広報部の壁から拝借。街は変わりましたが、地形も犯罪も同じ。昔の写真を提示して、同じ場所で今は…、の対比に使いました。映画『LA Confi dential』仕立てのナレーションも、昔を偲ばせる要素です。

ベンは、『ER』のインターン1年生カーターの役所ですか?

C :どの作品でも、新米は未知の世界へ誘ってくれる水先案内人の役。パトカーを乗り回すベンの目線で、LAを描こうと…。お坊ちゃま育ちが故に、職場で信用されず、妬まれる…。なるほど、同じですね(笑)。

いつもジョン・ウェルズの作品に、関わっておられますね。

C :『ER』で共同制作して以来、私生活でも親友と呼べる奴です。『Third Watch』はウェルズの、本作は私の企画ですが、売り込みは一緒にしたほど。

本作は『Third Watch』LA版ではないとおっしゃっていましたね?

C :あの作品ではNYPD、消防署と救急救命隊の3部門が複雑にからんでいたので、「それぞれの機能は?」「いかに協調するのか?」に、NYの街としての長短を加味しました。アクション、スリルありのストーリー性の高いものでした。犯罪取締という意味では、LAは管轄域が広大で地域社会がなく、経済、人種、地形的にもバラバラ。1カ所にまとまったニューヨーク、シカゴなどとはまったく違います。

エミー、WGA賞などを何度も受賞されましたが、業界入りの経緯を聞かせてください。

C :大学を辞めて、19歳で撮影所に映画のリールを届ける使いっ走りで入りました。編集の弟子↓助手↓音響効果/台詞編集を経て、準プロデューサー↓テレビ番組のラインプロデューサーを長年務めました。1992年『Homefront』のシーズン2で、制作が軌道に乗っていたので、監督という新しい分野に挑戦させてもらいました。

どの逸話を監督するかは、いかに決まるのでしょうか?

C :プロデューサーの仕事も兼ねているので、スケジュール優先。ストレスをためたままだと良い仕事ができないので、1話終了したら間を置きます。ライターと相談して、筋が込み入っていて手間暇かかる逸話が回って来ます(笑)。いつも何かに挑戦していないとね!

監督業に不可欠の要素は?

C :まず、楽な靴を見つけること(笑)。批判を穏やかに受け止めること。制作はチームワークですが、最終決定は多数決ではないと肝に銘ずること!

監督を目指す人へひと言。

C :自主制作から始めることしかありません。ライター、役者でも同じことが言えますが、最初から人気番組に抜擢されることなど、万に1つ。下積みをしっかりして、経験を積むことが第1です。実績あるのみ!

[業界コボレ話]
2009 ~ 10 年シーズンのTCAプレスツアー(新番組内覧会)に参加した。ケーブル、PBSと地上波局の計125 作品が発表された。作品は次号からご紹介するが、「変化」「希望」「人類皆兄弟」が一貫したテーマだった。オバマ政権の目標と同様である点が面白い。
 
8 月30 日開始の『The Human Family Tree』(NGC)は、6万年前東アフリカの部落から人類が発生したという説を元に、NY 州クィーンズで道行く人から採集した遺伝子で辿るDNA 人類学のドキュメンタリー。プレスツアー会場で私のDNAサンプルを提出したので、結果を心待ちにしている。日本人も元を正せばアフリカ?

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