「これだけは譲れない!」を大切に
Kari Lizer
『Matlock』のアシスタント役で有名な元女優。30歳以降、役が付かず、子育てをしながらできる仕事として、脚本を執筆。女優を続けながら、1994年『Weird Science』のスタッフライターに。『The Empty Nest』『Boston Common』などを経て、98年『Maggie Winters』を創作したが、16話で打ち切られた。『Will & Grace』に執筆・出演後、協議離婚やバツイチの子育て体験を基に『The New Adventures of Old Christine』を創作。世のバツイチ女性への応援歌としている。
コメディー低迷のなか、創作2本目の『The New Adventures of Old Christine』の大ヒットで、コメディー界に彗星のごとく登場したキャリー・ライザー。しかし、紆余曲折を経て成功を手にした苦労人なのだ。脚本家への転身談や本作の人気の秘密を聞いてみた。
今シーズン、クリスティーンはどんな体験を?
ライザー(以下L):シーズン1は、元亭主とヨリを戻すかと思わせる所で終了し、今シーズンは、「離婚は間違いだった?」「毎日顔を突き合わせるのなら、夫婦に戻った方が楽?」と、揺れ動くクリスティーンを描きました。結局、リチャードは、別の若い恋人・クリスティーンの元へ、クリスティーンはバツイチのまま子育てに奮闘します。
本作のアイデアはどこから?
L:両親の揃った16人の園児が、3年生では12人が片親になっている現実と、子供を第一に考えた協議離婚体験を描いた番組があっても良いかなと。(クリスティーン役の)ジュリア・ルイ・ドライファスとは感性が同じで、私の声で私の体験を演じてくれます。
クリスティーンは応援したくなるキャラですね。
L:「それはないよ!」的状況や、「そんな人、絶対どこにもいないよ!」的人物が、最近多いですね。人間らしさに欠けるキャラだと笑えません。『Seinfeld』の人気の秘密は、4人がどう振る舞っても、どこか共感できるから憎めない点。巨匠ノーマン・リアーの番組を観て育ったので、現実味があり、親近感が持てるコメディーを目指しています。
『Seinfeld』で名を馳せたドライファスを迎えた感想は?
L:チームワークを大切にし、超真面目に仕事に取り組む女優。番組を創作、維持していく責任を半分背負ってくれる、最良のパートナーでもあります。彼女が引き受けてくれたからこそできた番組です。
脚本家へ転身された経緯は?
L:学校が嫌いだったので、芝居に逃げてここまで。芸能界は長かったのに、歳には勝てませんでした(笑)。役に就けなくて、配役してもらおうと自作自演の舞台を始めました。でも、入って来たのはスタッフライターの仕事。随分迷いましたが、SF番組『Weird Science』でプロにしてもらいました。
転身組ながら、居心地良さそうですね?
L:長いですからね…もう、慣れました(笑)。でも、『Maggie Winters』を創作した時は、右も左もわからず、自信もなかったので、信念のない番組になってしまって打ち切りに。あの体験から、「これだけは譲れない!譲らない!」と信念を通せるようになりました。
脚本家志望者にアドバイスを。
L:最初はAmerican Film Instituteの学生映画制作用の短い脚本を何本も書きました。映像化の過程を見る貴重な体験になりました。映画はオリジナル作品が少ないので、サンプルとして書いてみるのも手でしょう。テレビを目指す人は、ワーナーやディズニーのインターン制度、地上波局の多様化プログラムを積極的に利用してみては?書いて、書いて、書きまくること!
Photo: Justin Lubin / Warner Bros.
[業界コボレ話]
技術的にはデジタル化などが進んでいるものの、映像媒体の報道で「!?」と思うことが多い日本。新聞や雑誌の記事に赤線を引き、超拡大した記事を画面に映して読み上げるワイドショーの報道方法は、乱暴としか言いようがない。
米国でも紙媒体は大いに利用されるが、あくまで情報源。制作時に新たに脚本を書いたり、映像を集めて報道する。
紙面で表現できない映像を見せてこそ、テレビではないのか?私には制作者の怠慢としか思えないが、計り知れないウラの事情があるのか?1度、日本のテレビ関係者に聞いてみようと思うのだが、いまだその機会に恵まれず、里帰りの度に苦笑してしまう。