昭和女子大学学長 / 坂東眞理子

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昭和女子大学学長 坂東眞理子 インタビュー


「品格」とは誰にも必要な人間性。素晴らしい品格を持つ人は、社会で成功します

昭和女子大学の学長であり、官僚として長いキャリアを持つ坂東眞理子さん。女性としての振る舞い方を説いた『女性の品格』は、若い女性だけでなく中高年の女性や男性まで多くの読者を獲得し、300万部を超える大ベストセラーを記録した。2008年8月、ライトハウス/UTB共催によるロサンゼルス講演の際に、すべての人に伝えたい真の「品格」について、ご自身の経験を交えながら語ってもらった。

女性性を活かすことでより豊かな社会が実現

『女性の品格』を書いたきっかけは、2007年から昭和女子大の学長になることが決まり、一種のマニフェストとして、「理想的な女性はこうあらねばならない」というのをまとめたいと思ったこと。それから、私自身34年間も公務員をやってきて、ワーキングマザーとして子育て、家庭と両立しながら働いてきたなかで、試行錯誤しながら身に付けたことを、若い女性たちに伝えなければいけないんじゃないかと思ったこと。また、各分野に進出している女性に向けて、女性が社会に出て行くということは、女性の良いところを活かして、社会がそれによって、より豊かになるんだというメッセージを伝えたいと思ったこと。そういった思いがあって書きました。

この本の内容は、みんな子供の頃に「絶対にやらなければならないことだよ」と、1回は教えられているようなことです。ですが、社会に出ていくうちに、「そんなことをしていると、厳しい競争社会で脱落してしまうんじゃないか。とにかく、負けないように頑張らなくちゃ」と考え方が変わってしまいました。そこに「いや、そうじゃない。やっぱり基礎が大事なんだ」と、私が自信を込めて伝えたので、「あっ、そうかも」って、少し安心なさったのだと思います。それがブームの背景にあるのでしょう。

本の中には、私の反省材料が山ほどあります。例えば、職場で会食に招かれても、「これも仕事のうち」と、いちいち礼状を出さない習慣になっていました。ところがオーストラリアで総領事をしていた時、お招きした方からは必ずと言っていいほど、お礼状が来るんです。「私は今まで、何をしていたんだろう」と、とても恥ずかしくなりました。逆の立場になって初めて、自分が心ないことをしていたと反省させられました。

個人として通じる人間かが問われる時代になる

35年前に総理府に採用された時は、本当にうれしかったですね。当時、民間企業は女性を男性と同じように採用していませんでした。人間、世の中から必要とされてないのはつらいことです。

ですが、この35年で状況は本当に変わりました。バブル崩壊後、「失われた10年」の間に、社会全体が随分変わりました。男性も今までと働き方が変わらざるを得なくなり、かえって女性の方が頑張り過ぎてるっていうようなところもあります。これからは男性も女性も組織の中で、組織の肩書きに頼って仕事をするのではなく、個人としてちゃんと通じる人間かどうか、人間性が改めて問われるようになってきている気がします。個人としての品格は、男性も女性も持たなければいけないのですが、特に女性の場合はまだお手本が少ないですから、これから自分たちがどういう働き方をするのか、どういう生き方をするか、意識的に身に付けていかなければならないことがたくさんあると思います。

私は、「品格」というのは人間性だと思っています。その人自身がどういう風に考え、どういう風に行動するかということ。それは、男性にも女性にも、日本人にもアメリカの方たちにも必要です。現に、「素晴らしいな」という品格を持った方は、長い目で見ると社会で成功していらっしゃると思いますね。ですから、若い方たち、世界で活躍なさる方たちには、人生も長期的な目で作り上げていかなければならない、目先の利益、自分の利益ばかり考えていると卑しくなってしまうということを伝えたいですね。

私の考え方が多くの方に受け入れられたのは、「短期的な成功ばかりを目指す生き方ではまずいんじゃないか」と、皆さんが不安を感じていらっしゃるところに、インパクトを与えたからかなと思います。

丈夫な心と身体で地球のフルメンバーに

ロサンゼルスは太陽がいっぱいで、自由なライフスタイルというイメージがありますが、それと同時に、日系の方たちがそれぞれ頑張っていらっしゃるなという印象があります。「順境は教育の敵、逆境は最大の教師」という言葉がありますが、豊かで恵まれた社会で、ちゃんとした人間になるというのはとても難しいんですね。逆に色々な障害があった方が、それに打ち勝つために努力するし、その中で自分は何者であるか、自分の優れているところはどこか、足りないところはどこか、と考えざるを得ません。日系の方は、今からは想像できないような偏見や迫害、戦争などを乗り越えられた中で、自身が受け継いだ良きもの、日本人の誇りや伝統を意識して、大事にされてきたんじゃないかと思います。それをぜひ若い世代に受け継いでいただきたいと思います。

日本にいる時に、在日アメリカ大使館で働く日系3世、4世の方と仕事でお目にかかる機会がありました。その方たちは、日本語はほとんどお話しにならないんですが、自分のルーツは日本であるということをとても意識し、色々な意味で日本の理解者であることがわかりました。アメリカで、日系の方たちがもっと社会のメインストリームに入り、重要な立場に入って行かれると心強いので、日本人としても応援したいと思いました。

また、日本から来ている駐在員や永住の人たち、特に若い人たちが、アメリカとの架け橋になってくれることを非常に期待しています。日本のいいところとアメリカ、あるいは世界のいいところを自分のものとして持つ人たちが、日米関係の担い手になっていくと思っています。バイリンガルの若い人たちが活躍するようになったら、日本人は地球のフルメンバーになれると、非常に期待しています。

日本の社会は、本当に今、多様化に向けて大きな曲がり角に立っています。アメリカがそうだったように、さまざまなバッググラウンドを持ち、色々な考え方をする人たちが同じ社会に入り、チームメイトとして働くというのは大変なことが多いです。それをアメリカは苦しみながら克服していったわけです。

これから日本もさまざまな考え方を持つ人たちを受け入れて、しかもその人たちが、「日本社会へ来て良かった」「日本社会は自分たちにいいものを与えてくれた」と思ってくださるような社会を作るのが、私たち日本人の役割だと思います。また、個人の日本人としては、どういう社会で生きていくにしても、その社会のいいところを発見して、エンジョイする丈夫な心を持たなければいけないと思います。そういう丈夫な心と丈夫な身体を持った人たちが、21世紀を支えていくんだと思います。

ばんどう・まりこ●富山県出身。元官僚、評論家。東京大学文学部卒業後、1969年に総理府入省。80年よりハーバード大学へ留学。埼玉県副知事、在豪州ブリスベン総領事(女性初の総領事)、内閣府男女共同参画局長等を経て2003年に退官。現在、昭和女子大学学長を務める。官僚として多くの女性政策関連事項に携わり、その立案を一貫してリードしてきた。官僚としてのキャリアと2児の母としての役割を両立した経験を活かし、女性のライフスタイルに関わる著作も多数。06年9月発売の新書『女性の品格』(PHP新書)は昨年大ブームを巻き起こし、累計300万部を超えるベストセラーとなった。
 
(2009年1月1日号掲載)

坂東眞理子:ロサンゼルス講演会直前インタビュー in 2008

新書『女性の品格』の大ヒットで、一躍時の人となった坂東眞理子さん。現在、昭和女子大学学長として、教育の現場で「品格」ある女性の育成に携わる傍ら、講演、テレビ番組出演依頼で、多忙なスケジュールをこなす。そして、来たる2008年8月31日、レドンドビーチ・パフォーミングアーツセンターにて、ロサンゼルス初の講演会を実施する。当日は「品格」だけに留まらず、幅広いトピックでお話しいただく。そのさわりを坂東さんに聞いた。

社会や周りの人の人格を尊重する 思いやりの心をいかに形に表すか

坂東さんの指摘する「品格」とは、端的にはどのようなことですか?
人間性だと思います。自分中心でなく、社会や周りの人の人格を尊重すること、つまり他者に対する思いやりです。そうした心をいかに形で表すか。その形と心のバランスが取れている人が「品格がある」と言えます。
 
例えば、装いならばTPOにふさわしい振る舞い、期待される役割を考えて装わなければなりません。自分の好きなものを、好きなように着れば良いのではないんです。当たり前のことが当たり前にできる、挨拶や基礎的マナーを身に付けていることが大切だと思います。
 
日本人はかつての美徳を失いつつあるようです。それを取り戻すには、どうしたら良いとお考えですか?
昔は親たちが、これだけはどうしても子供に身に付けさせなければならない、という風に、基礎的な躾をしていたと思います。今の日本の親たちは、子供をのびのびと育てたい、個性を発揮するように生きてほしいということで、躾を「押さえつける」「抑圧する」という風に捉えてしまっています。基礎的な習慣、マナーを身に付けさせるというのは、親から子供へのとても大事なプレゼントだということを、もう1度親が認識する必要があると思います。
 
相手のミスをとことん突いて、自分の権利を振りかざす、いわゆる「モンスター・ペアレンツ」や「クレイマー」が最近増えてきていますが、私は権利を持つ人こそ、それを大事に行使しなければならないと思います。権利を振りかざすと、お互いの信頼関係がなくなります。「モンスター・ペアレンツ」が権利を振りかざすことで、のびのびとした良い教育がかえって受けられないという被害を、子供が被るんですよと言いたいですね。
 
また、「クレイマー」と言えば、お店に対して消費者が尊大に振る舞うことも「社会の品格」を失わせています。物を作ったり、サービスをしてくれる人に対する感謝を、いくらお金を払っているといっても忘れてはならないと思います。
 
官僚という男社会で仕事をしてきて、ご苦労は?
官僚をやっていた時は、圧倒的に女性の数が少なかったので、珍しく見られました。何をしても、みんなからジロジロと遠巻きにして見られている感じです。女性のキャリアはどういう風に働くんだろう、どういう風に口を利くんだろうという感じで見られていました。
 
当時、男性は女性と働くことに慣れていませんでした。女性は男性と同じように昇進しなくても気にしない、男のように厳しい仕事をしたくないんじゃないかと、思い込んでいる人が多かったんです。差別しようとか、いじめようというのではなく、できるだけ楽な仕事が良いだろう、転勤させたらかわいそうとか、逆に変に気を遣っていたんですね。ですから、そうじゃないんですよと、話を聞いてくれる人を通じてやんわりと伝えました。直接人事当局に申し入れるのではなく、間接的に伝わるようにするというのが日本的なやり方です。アメリカだったら、なんて持って回ったやり方なんだと思うんでしょうけどね。

正確な自己認識による 「等身大の自信」を持つ

アメリカに住む日本人に求められる生き方とは、何だとお考えですか?
まず、「等身大の自信」を持つということだと思います。自分の身の丈に合った自信。「日本人はどの国の民族よりも優れているんだ」というようなうぬぼれも良くないですし、逆に「所詮日本人はダメだ」と、卑下して自信を失い過ぎるのも良くありません。
 
自分の実力をしっかり見つめて、「自分はここまではできる」「ここが足りない」というような正確な自己認識、それを私は等身大の自信と呼んでいます。それを基にして、少しでもできることを積み重ねていくことが必要だと思います。
 
アメリカ留学中に感じた、アメリカの良いところは?
1980~81年に、ハーバード大学の客員研究員をしていた時、「ここは何でも自分の思っていることを言っていいんだ」「率直に発言していいんだ」と感じたのが新鮮でした。というのも、日本で公務員の会議などは、まず役職の偉い人が口を利いたり、誰が発言するか会議の流れ、空気を読んでから発言しないといけませんでしたから。
 
あと、アメリカ人はとてもよく誉めてくれますね。日本では誉められることがなかったので驚きました。そして、自分に少しだけ自信が付きました。確かに言葉が通じなくて悔しい思いをしたこともありますが、全体としてアメリカ人の率直さ、ボランティア精神に感嘆しました。当時貧乏留学生だった私を、見返りや報酬なしで迎えてくれた草の根の方たちに、アメリカ社会の良さを痛感しました。
 
ロサンゼルス講演会で期待したいことは何ですか?
当日は、私が日本社会で「女性はこういう風に振る舞った方が良い」という自分の経験から得た考えをお話しすると思いますが、それに対してアメリカ社会に住んで、働いていらっしゃる方たちがどういう風に受け止めていただけるか、意見を聞くのがとても楽しみです。
 
私の言っていることが日本のスタンダードなのか、それとも他の社会にも通用するスタンダードなのか。私は自分の本に書いたことは、日本だけでなくアメリカ社会でも通用することではないかと期待しているので、ぜひ会場の皆さんからご意見を聞きたいです。
 
南カリフォルニア在住の日本人にメッセージを
日本でも女性たちの役割、生き方や働き方、求めるものは、とても大きく変わってきています。今、アメリカに住んでいらっしゃる方たちも、色々な生き方にチャレンジしていらっしゃると思いますが、それがどういう方向に行くのか、私と一緒に考えていただけたら、とてもうれしいです。8月31日に、会場で皆さんにお目にかかれることを楽しみにしています。

【坂東眞理子 ロサンゼルス講演会】
■日時:2008年8月31月(日)午後3時30分開演
■会場:Redondo Beach Performing Arts Center
    1935 Manhattan Beach Blvd., Redondo Beach
■チケット:(全席自由)
■チケット購入:Mitsuwa Marketplaceチケット販売窓口
        三省堂書店
        All American Tickets(☎ 1-888-507-3287)

坂東眞理子:ロサンゼルス講演会レポート in 2008

2008年8月31日、日本で大ベストセラーとなった『女性の品格』の著者、坂東眞理子さんがレドンドビーチ・パフォーミングアーツセンターで講演会を開催した。当日は1千人を越える観客が来場、坂東さんの人生観や、今後の日本社会で女性はどうあるべきかなどの話に、熱心に耳を傾けた。
第2部では、在ロサンゼルス日本国総領事館の元領事、海部優子さんとの対談が行われ、第1部とは違った和やかな雰囲気で、会場は大きな笑いと拍手に包まれた。

第1部 講演

男性と張り合わず 女性として生きる
こんにちは。このロサンゼルス講演に、私自身がとても感動しています。
 
さて、今の日本社会は豊かで、お金万能主義の風潮があります。そのため、「当たり前」とされてきたことが、どんどん失われました。
 
日本は、若い女性にやさしい社会ですが、25歳を過ぎると急に周りの対応がきつくなります。かといって、まだ一人前になりきれていない。そういうつらさのなかで働く女性が読者の中心で、「肩の力が抜けました」「ほっとしました」という感想をたくさんいただきました。当たり前のことを当たり前に、長期的に頑張ればいいんだと、皆さんわかったのです。
 
元々日本は女性が強い社会でした。表向きは男尊女卑でしたが、家庭内では女性が強かった。なぜなら、女性も働いていたからです。母親となった女性は尊重され、特に家長の母親は隠れた権力者でした。この風潮は昭和30年代くらいまで続きましたが、同時期の高度経済成長期に、男性は外で働き、女性は家庭で家事や育児をする体制になりました。日本の雇用体制も男性中心となり、女性は男性をサポートする存在となりました。
 
しかしその後、時代の流れと共に社会も変わり始め、バブル以降は女性の生き方に再び変化が訪れました。女性の進学率や就職率は上がり、日本政府も、働く女性を応援する態勢を本格的に整えようとしています。
これからの女性は、男性と同レベルで働こうとするのではなく、女性らしさを大事にしながら生きていく。そうすることで、日本社会に質的な多様性を提供することができるのです。
 
子供の教育は 多様な価値観で行う
 
戦後日本は、「個性重視」「創造性向上」という発想に転換しました。本来、そういう高い目標を達成するには、きちんとした基礎固めが必要です。しかし今の日本では、基礎は二の次。いきなり個性や創造性を発揮させようとします。
 
これからの日本人に必要なのは、バイタリティー。丈夫な身体と丈夫な心です。失敗してもくじけず挑戦する、こういう人間を育てなければなりません。そのためには、子供のしつけを変える必要があります。90点の答案に対して「何で100点取れなかったの」ではなく、「良かったね、90点じゃない!」と言ってあげる。スポーツや芸術なども評価するなど、色んな長所を認めるのです。子供たちは小さな成功を実感すると、それが小さな自信となり、やがては丈夫な心と身体を持った人間へと成長します。「子供を愛するのが親の責任」「何でもやってあげるのが愛情」と思っている親は、逆に子供たちのバイタリティーを失わせています。
 
また、「人に迷惑をかけてはいけません」「早く自立しましょう」というしつけだけでは、子供の人生は寂しく、もったいないものになります。せっかく生まれてきたのだから、社会に役立つ人間に育てる必要があるのではないでしょうか。

第2部 海部優子さんとの会談

嫌なことでもやると 守備範囲が広がります
 
海部:私が外務省に入った頃も女性が少なく、上司から「外務省に入ったからには女性を捨てなさい」と言われました。でも全部捨てるのはかわいそうなので「お茶くみしなさい」と(笑)。
坂東:私も1年間、お茶くみをしましたよ。当時の総理府には、「女性の問題」を扱う部署はありませんでした。在職中、私は3回も「女性の問題」を扱う業務に携わりましたが、実際は、それ以外の仕事の方が長いのです。しかし、関係のない仕事の経験が、後で自分のやりたい仕事の役に立つんです。嫌でも、やるべきことはやる。すると自分の守備範囲が広がります。
 
海部:女性の大役である出産と育児に関してはどうですか?
坂東:私は、子供を0歳から保育所に預けました。迎えが時間的に不可能でしたので、近所の方にお願いしていましたが、たまに都合が付かないと、母に富山から夜行電車で来てもらいました。その後父が亡くなり、母が私と一緒に住み始め、子育てを手伝ってくれるようになりました。そこでわかったのですが、子育てって1人でやると重荷でも、子供に愛情を注いでくれる誰かとやると、とても楽しい。
海部:私の場合は、幸い夫が手伝ってくれました。
坂東:アメリカは男性が協力的。日本と違うところですね。
海部:そうですね。アメリカの女性の社会進出は目覚しいのですが、保育園は高いし、6時以降は預かってくれません。小学校に入っても送迎が必要で、育児はとても大変です。
 
坂東:それなのに、なぜアメリカの女性は重要任務に就けるのかと考えると、アメリカは自由がきくというか、「この日は仕事、この日は子供と家庭」という風に、自分でメリハリを付けられるのでしょうね。
海部:そういう意味でアメリカ社会は、女性は働きやすく、男性も育児に参加しやすい。
坂東:家庭や子育てと関わることで、男性の人生も多様化し豊かになります。日本のように、「男の人生は職場」だと、職場でうまくいかないとストレスで、家庭内暴力になることもあります。人生がシンプル過ぎて、多様性に欠けているのです。
 
身内だけでなく他人にも無償の愛を
海部:これからアメリカで頑張りたいという日本人女性たちにメッセージはありますか?
坂東:何でも上手になろうとせず、得意なところをまず完成させ、そこから活動の場を広げていくのがいいでしょう。それから、応援してくれる人を持ってください。人間は、応援団がいると力を発揮できるものです。
海部:仕事を辞め、家庭で頑張っていらっしゃる女性へのメッセージは?
坂東:報酬のある男性の仕事に対して、無報酬だけど、社会と家族を維持するための重要な仕事があります。これを女性が一手に引き受けてきました。これからは、自分の身内だけに無償の労働をするのではなく、他人にも範囲を広げることで、社会と関わってください。日本人女性は世界でも健康的で、教育水準も高い。そういうパワーのある女性たちが、その力を必要とする人たちのために使い、彼らに愛を与えていただきたいと思います。

女性らしさを保ちながら生きるそうすれば、日本社会にも多様性が生まれます

 
 

講演2日前の2008年8月29日、ミツワ・トーランス店内の三省堂書店で、日系メディアを招いての共同記者会見が開催された。

Q:『女性の品格』を出版されたきっかけは?
A:昭和女子大学学長に就任し、どんな女性を世の中に送り出すべきかを考えたことがきっかけです。また、公務員として子供を持ちながら男性社会で働き、そこから得た経験を若い世代に伝えたいと思ったからです。
 
Q:『女性の品格』を読む男性をどう思われますか?
A:読んでくださった男性方は、「女性だけでなく、男性、ひいては日本人全体にあてはまりますね」と異口同音におっしゃいます。本の後半の「いかに生きるべきか」「社会人としてどのように行動するべきか」については、男女共に共通するところが大きいと思います。責任を取れる人間、社会や周囲の人たちに配慮できる人間になることは、性別に関係なく大事です。
 
Q:男女では、品格に異なる部分はありますか?
A:男性は職業的な分野で、女性はプライベートな場で、それぞれ能力を発揮することが求められます。ですから、品格の基本的な部分は一緒でも、それぞれの役割に応えているうちに品格にも違いが生まれると思います。
 
Q:女性にこだわった理由は?

A:私自身が女性だからということもありますが、日本の女性自体が大きく変わってきていることも理由です。私の母世代の女性は専業主婦でしたが、私の世代は、子供が生まれたら仕事を辞める世代です。今の世代は仕事を続け、家庭だけでなく社会とつながりを持ちたいと思っている世代。私が生きている間だけでもこんなに変わっているので、女性が新たなガイドラインを必要としていると思ったのです。
Q:女性の品格が変わってきた原因は?
 
A:社会の繁栄や少子化などが大きな理由だと思いますが、それよりも、「個性の発揮や創造力の向上が1番大切」という思想の下、次元の高い目標を子供たちに期待するあまり、「基礎」がおざなりになったからだと思います。親として、子供に良い環境を作りたい気持ちはわかりますが、子供に苦労をさせないように何でもやってあげる親の増加が、色々な問題を生じさせているのだと思います。

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