ハリウッドでの経験を生かして日本の人たちを笑顔にしたい。
アン・ハサウェイ、タマラ・モーリー・ハウスリー、マライア・キャリー、チャン・ツィーなど、数々のセレブにメイクを施してきたメイクアップアーティストのMOTOKOさん。2015年、16年にはエミー賞のメイクアップ部門にノミネートされるなど、ハリウッドで活躍する彼女にお話を伺いました。
(2017年7月1日号ライトハウス・ロサンゼルス版掲載)
―日本にいた頃から渡米後まで、銀行員として約11年働かれていましたが、そこからなぜ、メイクアップアーティストになろうと思ったのでしょう?
MOTOKOさん(以下、MOTOKO):昔から、友人にメイクをして、キレイに変身する姿、彼女たちが喜ぶ顔を見るのが大好きでした。国際結婚でLAに移住した後も、休みの日などに友人のメイクをしていたのですが、ある友人に「そんなにメイクが好きなら、仕事にしてみたら?」と言われて。その時から、プロのメイクアップアーティストになることを意識し始めました。また、ほぼ同時期に、知り合いの写真家からプロのモデルをメイクさせてもらう機会を得たんです。
しかし、メイク道具などがプロフェッショナルなものではなかったため、モデルに「なぜこんな人を連れて来たの!?」と言われ、メイクもさせてもらえず帰宅することに。本格的にメイクの勉強をしたい!と思ったきっかけでした。それから約2年間は学費と生活費を貯め、1994年に銀行を退職し、メイク学校に入学。そして卒業する頃には「これが私の仕事!」と迷いなくプロのメイクアップアーティストになることを決め、その道を歩み始めました。
―比較的遅いスタートですが、仕事はすぐ入ってきましたか?
MOTOKO:卒業後は、俳優やモデルのポートフォリオ用のメイク、他のメイクアップアーティストのアシスタントなどをしつつ、銀行でのアルバイトもしました。でも、目標はメイクアップアーティストとして独り立ちすることだったので、とにかくクライアントの要求に応える柔軟性や真摯な態度、人をキレイにしたいという強い気持ちを持って一つ一つの仕事を頑張りました。営業もあちこち回ったり、必死でしたね。でも、そんな努力の結果、1998年に有名なメイク、ヘアのエージェントに所属することができ、これを機に大きな仕事が入ってくるようになりました。
―これまでで、特に印象に残っている仕事は?
MOTOKO:2000年頃から約6年、マライア・キャリーのプライベート時のメイクをしていました。ツアーでは時間との競争だからと、テキパキとこなすことを教えてもらうなど、彼女の仕事に対する姿勢は学ぶことが多く、今の自分の仕事に生きています。
―今年のアカデミー賞で作品賞を獲得した『Moonlight』の出演者、ナオミ・ハリスなど、アフリカ系アメリカ人のメイクを担当されることも多い印象ですが、理由があるのでしょうか?
MOTOKO:今では普通ですが、2000年頃に複数のファンデーションを使って顔の凹凸を強調するようなメイクは、彼女ら独特のトレンドで新しかったんです。そういったメイクを施すのはいい勉強になるし、面白いと思って積極的に仕事を引き受けるうちに、実力を認めてもらえた感じです。ナオミもそうですが、テニス選手のセリーナ・ウィリアムズ、女優のレジーナ・キングなど、多くの著名人から仕事をいただくようになりました。
―ハリウッドで仕事をしていて、大変だったり、つらかったりすることはないですか?
MOTOKO:自信を失ったり、目標が見えなくなってしまったり、それなりに辛いこともありました。でもそのたびに、「この仕事が好き!」という情熱と、「これを乗り越えたら何かが見えてくるはず。Never Give Up!」という思いで頑張ってきました。
―逆にハリウッドで働いていて楽しかったこと、良かったことはありますか?
MOTOKO:4年ほど前に、ユニオン(ハリウッドの映画やテレビ、演劇などの分野で働く技術者やアーティストたちの労働環境を守る組合)への加入が決まったんです。加入には多くの条件があり、かなりの時間がかかります。だから、これまでの自分が認められたようで本当にうれしかったです。ユニオンメンバーには、予算の多い大きな仕事も回ってきやすいですしね。
―トークショー『The Real』で、タマラ・モーリー・ハウスリーのメイクを担当し、2015年、16年とエミー賞のメイクアップ部門にノミネートされました。これもうれしい出来事だったのでは?
MOTOKO:2回とも、授賞式でレッドカーペットを歩いた時は、本当にうれしく、また誇らしかったです。毎回メイクを新しくし、彼女が一番きれいに見えるようにベストを尽くしたことが評価されたのかもしれません。
―今後の展望は?
MOTOKO:これまでの自分の経験を、日本に還元していきたいです。ハリウッドのメイク術を教えるセミナーなどを通して後輩たちを指導し、結果、日本の人たちがもっとキレイになって、笑顔で前向きに生きてくれたらと思っています!
※このページは「2017年7月1日号ライトハウス・ロサンゼルス版」掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。