数々の書籍を執筆し、新聞・テレビ・ラジオでも活躍中の人材活性プロデューサーの大谷由里子さん。大谷さんが提供する企業研修は、「コーチング」技術を取り入れ、「楽しく、ためになり、元気になる」と好評を博している。年300本の講演・研修を行っている大谷さんに、現在に至るまでの経歴、提供する研修の特徴、そして講演に対する意気込みを聞いた。
「人の心を掴む」って、タレントに気持ち良く
舞台に上がってもらうことと同じやないかな
研修のモチベーターは
吉本のマネージャー業と同じ
大学を卒業して、吉本興業に22歳で入社し、3年間マネージャーとプロデューサーの仕事をしました。マネージャー業は、漫才師の横山やすしさんから始まって、宮川大助・花子さん、若井こづえ・みどりさんを担当。その後、番組プロデュースをし、25歳で結婚退社しました。
27歳の時、企画会社を立ち上げ、イベント企画や販売促進の仕事に就きました。会社が大きくなるにつれ、人材育成が大事だとわかってきました。そして、10年前に今の研修プログラムと出会い、7年前に「志縁塾」を立ち上げました。
志縁塾は、主に企業研修をプロデュースし、アメリカから日本に入って来た「コーチング」技術を提供しています。導入した当初は、なかなか受け入れられず、よく「アホか」って言われました(笑)。日本の教育は、「○○しなさい。××しなさい」という〝teach〞が主流。言ってみれば「しっかり勉強しろ」という根性論。それに比べコーチングは、相手に対して「どうしたいの?」と質問形式で答えを導く形式です。
今でこそ日本にも「モチベーター」という言葉がありますが、初めてコーチングの勉強をした時、「これ、吉本のマネージャーの仕事やん」って思いました。タレントのモチベーションを上げ、舞台に送り出すマネージャーの仕事と同じ。ですから、「これ私にもできるかも」っていうのが始めた発端でした。「こんなんでお金取れるんや」「アメリカって、ここまでロジックにするんや!(笑)」とビックリしました。
研修を「楽しくて、ためになり、元気になる」ものにし、参加者にできるだけモチベーションを上げて取り組んでもらえるよう工夫しています。3年くらい前から少しずつ受け入れられるようになり、最近では、「教える側の講師だってパフォーマンスが必要だよね」とか、「参加者を楽しませなければダメだよね」と言う人も増えています。
心を掴むリーダーの条件は
キャパシティーの大きさ
人の心の掴み方は、人それぞれですが、反面、万国共通だと考えます。相手を認めて、良さを引き出して、励まして応援する。これがお互いにできるかってことが大事だと思います。特にリーダーには、必要不可欠なことではないでしょうか。
サンフランシスコにある元小学館の子会社で部長になった友人は、「アメリカ人だと思って全員一緒にしたらダメだ」って話していました。アメリカでは自己主張をしないといけないのは確かだけれど、アメリカ人でも気の弱い人もいれば、気の強い人もいる。人がそれぞれ違うのは、日本もアメリカも同じ。ですから、部下のタイプに合わせてコーチングすべきでしょう。
タレントとマネージャーも同じなんですね。人間同士ですから相性もありますし。叱って育つタイプがいれば、褒めて育つタイプの人もいます。何でも話を聞いてあげなきゃいけない人間がいれば、何でも言ってほしいという人もいる。タイプで分けて対応を考えるべきなのです。
人の心を掴める上司と掴めない上司には、「キャパシティー」に差があります。やはりキャパシティーの狭い上司は、部下の心は掴みにくいと思います。自分が認めないのに、相手が認めてくれるわけがない(笑)。さらに、自分の度量以上の人は集められないし、面倒も見られない。つまり、自分と同等またはそれ以下の人と情報だけが集まって来るのだと考えます。私自身も、自分のキャパシティーを広げることを一番大事にしています。
キャパシティーを構成する項目には、「人の認め方」や「情報量」、そして「経験」もあります。ですから、特に若い子たちには、「何でも経験しようよ」「勉強しようよ」って伝えています。自分が学んだこと、経験したことじゃないと許容量は広がりませんので。
最近の若い子は「やる気がない」などと良くない評価がありますが、やる気がないわけじゃなくて、時代の影響が大きいと思います。昭和の時代は、「洗濯機が欲しい」とか「クーラーが欲しい」とか、色々な欲望がありました。欲しい物がある時、人間は行動します。でも、今の日本は、汗を流して走り回ってまでも欲しい物がないのが現状ではないでしょうか。だから、やる気がなさそうに見えてしまう。
「仲間が欲しい」「皆で笑いたい」とか「皆で元気になりたい」っていう気持ちは、実は今時の若者たちにもすごいあるんちゃうかと思っています。彼らも自分で感じ、興味を持ち、動き出したら、自然に成長するのではないかと思います。ですから、研修も企業と知恵を絞って考えて作っていますし、そういう人間を育てる研修を作りたいと考えています。
人脈作りが楽しみ
心を元気にしに来てほしい
ロサンゼルスは5年ぶりですし、 行く度にアメリカは変わっているので、今回はどんな風に変わったのか見るのが楽しみです。また、 日系コミュニティーが大きいので、日本に近い企業風土だとお聞きしました。それも講演を楽しみにしている理由の1つです。
セミナー会場では、新しい人脈作りを期待しています。今回初めてロサンゼルスの人たちと知り合えるのがうれしいです。特に今は、ネットとかもあるし、知り合ったら長くつながっていけます。皆さんから色んな情報も得たいですし、多くの方と知り合えることが楽しみです。
講演に参加された皆さんには、ぜひ心を元気にしていただきたいです。自分の心が元気でないと、人の面倒は見られません。やっぱり、まずは自分が幸せであるとか、自分の心が元気であるとかが大事だと考えています。
今回のセミナーでは、最終的には「心の元気の作り方」を学んでもらえたらうれしいです。元気の作り方のヒントはいっぱい提供できると思います。ステキな時間を一緒に過ごせるのを楽しみにしています。
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おおたに・ゆりこ◎1963年奈良県生まれ。85年京都ノートルダム女子大学を卒業後、吉本興業に入社。漫才師、故・横山やすし氏のマネージャー業などを務め、88年に結婚退職。90年に企画会社を創業の後、2003年には研修会社の「志縁塾」を設立。年間300本を超える講演・研修をプロデュースするかたわら、地域活性や人材活性、企業活性の活動、執筆を行う。新聞・テレビ・ラジオなどでも活躍中
大谷由里子スペシャル_Pt.1
大谷由里子スペシャル_Pt2