錦織圭選手&マイケル・チャンコーチ、夢のチャリティーマッチが実現!
去る2017年7月29日、ニューポートビーチテニスクラブにて、チャリティーマッチ「マイケル・チャンテニスクラシック2017」が行われました。当日はテニス男子シングルス・ATP世界ランキング9位(2017年8月14日時点)の錦織圭選手がマイケル・チャンコーチとダブルスを組み、過去に世界4大大会で活躍したマーク・フィリプーシス氏&ジャスティン・ギメルストブ氏ペアと対戦。錦織圭選手は公式戦で見せる真剣な表情とは違い、リラックスした様子で試合に臨み、試合後はサインのリクエストにこたえるなどして、ファンと触れ合いました。同イベントは、カリフォルニア州でのアジア系コミュニティーとスポーツ活動を支援する慈善団体「Chang Family Foundation」が主催。試合の途中では、錦織選手の愛好品のライブオークションも行われ、直筆サイン入りのユニフォームやシューズなどが落札されました。収益金は、ホームレスの居住環境向上を目指す非営利団体「Home Aid Orange County」に寄付される予定です。
チャリティーマッチは錦織&チャンペアが勝利
錦織選手は終始笑顔を見せながら10回を超える連続ボレーや、飛び上がってスマッシュを放つ「エア・ケイ」など、同選手ならではの持ち技を披露しました
第1セット、3ゲーム目では錦織選手がボレー中にミスをすると、ギメルストブ氏が「世界ランクトップ10のケイがミス?大丈夫か?(笑)」などと冗談を言って、観衆を沸かせるひと幕も。第1セットはタイブレークまでもつれこむ接戦でしたが、錦織&チャンペアの持ち前の粘り強さを見せつけ、セットを死守しました。
第2セットは接戦だった第1セットに対し錦織&チャンペアの球足が加速し、ゲームカウント6-2でジャスティン氏&マーク氏ペアを圧倒。2セット目最終ゲームでは、錦織選手が連続サービスエースを決めて試合を締めくくりました。
試合中のライブオークションで錦織選手の汗付きシャツ落札
①イベント時に着用のユニクロのウェア(落札価格・400ドル)…エキシビションマッチ当日の試合の合間、錦織選手が実際に着用していた汗付きのシャツ。オークション時は会場で「ケイのDNA付きの貴重な品!」とアナウンスがあり、錦織選手は照れながらもコート上で生着替えし、落札したファンに直接手渡しました。
②ナイキのテニスシューズ(落札価格・400ドル)…錦織選手が先週まで履いていた靴。サイズは9.5インチ。チャンコーチの娘と一緒にコートを歩き、錦織選手自ら競売に協力しました。
試合前の記者会見ではテニスへの熱い思い語る
13歳でテニスの拠点をアメリカに移し、アメリカ生活の長い錦織選手。アメリカ生活で日本よりも好きな点は何でしょう?
錦織:日本よりアメリカにいる時の方が雑念が消えて、テニスに集中できる環境だという点が気に入っています。私の住むフロリダや、ここカリフォルニアはジムやテニスコートの選択肢が多く、気候にも恵まれています。13歳の渡米時は、朝は4時間、日中は2~3時間ほど練習する日々を送っていて、そうした生活を続けるうちに、ジュニアの頃から「将来は絶対に世界的に活躍する」と確信が持てるようになりました。
チャンコーチは、錦織選手の現在の世界ランキングについてどう思っていますか?
チャン:よくやっていると思います。ケイはここ数週間、タフなトレーニングを重ねていて、最近精神面でも大きな成長を見せています。
チャンコーチは、なぜホームレスを支援するこのイベントを主催したのですか?
チャン:私の妻もテニスプレーヤーで、私の家族にとってテニスはかけがえのないものなので、その大切なスポーツを通じて、社会に恩返しがしたいと思ったからです。中でもホームレス支援に注目したのは、ホームレスの方にも家族のいる方はいて、特にそれで苦労している子どもたちの助けになればと考え、このイベントを主催しました。
カリフォルニアで頑張っている日本人に向けて、錦織選手よりひと言、メッセージをお願いします。
錦織:アメリカではいろんな人たちと触れ合うことが大切。勇気を持っていろんな人と接して、新しい経験をしてほしいです。
※本イベント後、錦織圭選手は出場予定だったオハイオ州シンシナティの大会のサーブ練習中、右手首をケガ。2017年8月16日、全米オープンを含む今季残り全試合を欠場すると、錦織選手所属のマネジメント会社が発表しました。試合を長期にわたって欠場するため、世界ランキングトップ10から陥落する見通しですが、来季は完全復帰を目指しています。引き続き、錦織選手の活躍を見守りましょう!
(2017年9月1日号掲載)
プロテニスプレイヤー錦織圭選手 特別インタビュー
精悍な容姿と落ち着いた口調でインタビューに応じた、プロテニスプレーヤーの錦織圭選手。プロ転向1年目の昨年、「デルレイビーチ国際選手権」で、かつて世界ランキング4位のジェームズ・ブレーク選手(米)を破り、見事ツアー初優勝。久しぶりに登場した世界レベルの男子プレーヤーに、日本中が湧いた。2月9日からサンノゼで始まったSAPオープン直前に、世界の大舞台に立つ弱冠19歳の錦織選手が静かに語ってくれた。
◎にしこり・けい
1989年12月29日、島根県生まれ。5歳からテニスを始め、2003年のテニス留学を機に、現在はフロリダを拠点に活躍。07年にプロに転向し、08年2月開催の「デルレイビーチ国際選手権」でツアー初優勝。日本人男子選手のATPツアー制覇は、92年4月に「韓国オープン」を制した松岡修造選手以来、16年ぶり2人目の快挙。09年1月現在、ATP世界ランキング59位
勝つことで
モチベーションを上げる
「デルレイビーチ国際選手権」での優勝は、いかがでしたか。
錦織:もちろんとてもうれしかったですが、それ以上に自分でも驚きました。正直言うと、まったく自信がなかったんです。大会の2週間前まで調子が悪く、無我夢中で大会に臨んだだけ。でも、トップ選手に勝つことで、徐々に自信が湧いてきました。
これから始まるSAPオープンの抱負は。
錦織:昨年はアンディー・ロディック選手(米)に負け、2回戦で敗退。でも自分としては、そんなに悪いプレーではありませんでしたし、それはそれで素晴らしい経験だったと思っています。この大会はインドアなので、個人的には得意なコート。今年は優勝を目指します。
現在の目標は?
錦織:できるだけ早く、世界ランキングのトップ50に入りたいです。4大大会でも良い成績を残したいと思っていますが、直近では全仏オープンでの勝利。そして数年後には、世界ナンバー1の選手になりたいと思っています。
ランキングを上げるために、自分に必要なことは?
錦織:僕のプレーは、フォアハンドとスピードが長所。でも、もっとスピードが必要ですし、何よりもサーブの精度を上げ、凡ミスを極力減らすことが重要だと思っています。そこを重点的に鍛えるつもりです。
プロになって、難しいことと楽しいことは?
錦織:昨年はプロ1年目でしたから、当時のランキングは200位前後。そのため、周りの選手のほとんどは「尊敬すべき相手」でした。つまり、「勝つための相手」という認識が希薄だったんです。だから、試合に勝つことがとても難しかった。でも、強い選手に勝っていくことで次第にモチベーションも上がり、その上、上手くなっていく自分に気付き始めました。それが楽しいことでしたね。
1番大事なのは好きでいること
昨年は、身体の不調やケガに悩まされたそうですが。
錦織:ランキングを上げるためには、試合数をこなさなければなりません。だから今年の目標は、ケガをせずにツアーを回ること。昨年末からの集中トレーニングで、かなり身体もできあがってきました。と思った矢先、実は今年に入ってすぐにケガをしちゃって。でもパワフルな選手を相手にする以上、ケガは付きものかなとも思っていますから、それを前提に身体を調整してきます。
先日の全豪オープンは1回戦敗退でしたが、その敗因は?
錦織:100%の力を出し切れなかったですし、相手が仕掛けてきた駆け引きにも対応できず、自分のペースで試合を運べなかったことです。
精神面での強みは?
錦織:昔からそうなのですが、相手にリードされたりマッチポイントを握られたりしても、自分のプレーを変えることなく、アグレッシブに試合を進められるところです。また、1つのスタイルにこだわらず、多様なストロークで相手に挑む精神力も強みだと思っています。これからも、勝ち負けに関わらず、色んなプレーで相手に挑んでいくつもりです。
モチベーションを常に高く保つための秘策は?
錦織:「オン」と「オフ」のメリハリを付けることですね。最近テニス漬けの期間がしばらくあって、寝ても覚めても考えるのはテニスのことばかり。精神的に不安定だなって自分でも感じていた時、コーチが「忘れることも大事だぞ」ってアドバイスをくださって。そうしたら、翌日から一気に
精神状態が安定しました。
景気や社会情勢が不安定な中、錦織さんの活躍に日本人の期待が集中していますが。
錦織:それはあまり感じないですね。と言うか、無意識に感じないようにしているのかな。周りのスタッフも、その期待が僕のプレッシャーにならないように上手く取りはからってくれていて、お陰でプレーに集中できています。
それが、アメリカを拠点にしている理由ですか?
錦織:日本では街を歩くのも大変ですが、アメリカでは僕のことをまだ誰も知りません。だから、こちらの方が良いということもありますが、それ以上に、アメリカにはトッププレーヤーがいることが最大の魅力です。世界各国からトップの選手が集まって来ますから、本来なら絶対に対戦できないような相手と練習や試合ができます。でもやはり、日本に戻りたいって思うこともありますよ。食べ物が最高ですしね(笑)。
錦織選手の活躍は、日本でテニスに励む小中学生の励みになっていますが、彼らへのアドバイスは?
錦織:皆さんと同じで、僕も子供の頃からテニスが好きで仕方なかった。1人で黙々と壁打ちをしたりして、自己練習もたくさんしました。やっぱりテニスを好きでいることが1番大事だと思います。
(2009年2月16日号掲載)