気血の滞りが原因
東洋医学では気(エネルギー)・血(栄養分)が体内をスムーズに循環している状態を「健康」な状態と考えます。生理痛はこの気血が何らかの原因で滞ることによって起きる現象です。体内の気血の流れが悪くなったり滞ったりすると痛みが生じる、というのが東洋医学の考え方です。
気血の流れが悪くなるにはいくつかの原因がありますが、原因が異なると症状も異なり、大きく5つのパターンに分類されます。
1つ目が、憂鬱感や情緒不安定がよく見られる人に起こりやすく、黒っぽい血の固まりが混ざったり、締めつけられるような痛みを感じたりするのが特徴の「気滞血瘀」パターン。
2つ目が、身体を冷やしたことが原因で、血のめぐりが悪くなって起こる生理痛。刺すような痛みを感じ、お腹を温めたり揉んだりすると楽になるのが特徴の「寒凝胞中(かんぎょうほうちゅう)」パターン。
3つ目が、酒・タバコなどの刺激物、脂っこいものやスパイシーなものを取り過ぎ、月経期や産後(堕胎・流産も含む)に血の流れが悪くなることによって起こる生理痛。重だるい痛みが特徴の「湿熱下注(しつねつげちゅう)」パターン。
4つ目が、体質的に消化器系が弱いために栄養摂取がうまく行われない、また大病や慢性病を患った後などに、気血の虚少が原因で起こる生理痛。出血量が少なく、色も淡く、しくしくと痛み、お腹を揉むと楽になるのが特徴の「気血虚弱(きけつきょじゃく)」パターン。
5つ目が、虚弱体質や多産・性交過多などが原因で、肝腎が弱まったために起こる生理痛。めまいや腰痛を伴うことがあり、絞られるような痛みが特徴の「肝腎虚損(かんじんきょそん)」パターン。
治療は体質改善で
対処法としては、漢方薬を服用したり、身体を温めたり、腰を揉んだり、お灸をしたりというのが、自宅で簡単にできる方法です。体を温めるには「腰湯」という方法が効果的で、横隔膜から下(ちょうど乳首の下あたり)を38℃程度のお湯に40分くらい浸けます。全身がポカポカしてくるのがわかるでしょう。
お灸も非常に効果的で、「関元穴」(へそのした指4本分)・「三陰交穴」(内くるぶしの上指3本分で骨の後方際)に3つずつ据えると良いでしょう。
統計によると、多くの人は痛み止め薬で一時的に痛みを散らしたり、我慢したりするようですが、自分のパターンを詳しく把握し、体質改善を図って根本から治すことがもっとも大切です。そのためにも専門家に相談するべきでしょう。
鍼灸漢方医 前田篤希
日米で資格取得。日・中・米での臨床経験。東洋医学大学教授。