千鳥足や嘔吐は危険信号
年末年始は忘年会や新年会でお酒を飲む機会が多くなりますが、アルコール中毒には、短時間で相当量のアルコールを摂取して起こる急性アルコール中毒と、長期間飲み続けて起こる慢性アルコール中毒があります。慢性アルコール中毒にはアルコール依存症やアルコール性肝障害などがあり、長期間の治療が必要になります。
急性アルコール中毒とは、一過性の意識障害が生じるもので、重症の場合は死に至ることもあります。通常お酒に含まれるアルコールはエタノールで、これは薬物の一種です。言い換えると急性アルコール中毒は、急性薬物中毒でもあるのです。エタノールの致死量は血中濃度にして400~ 500 ml/dlと言われています。
お酒を飲むと、アルコールが胃や小腸から吸収されて血中に入りますが、ほろ酔い程度というのは、血中アルコール濃度が50~100 ml/dlのことで、この段階では身体に障害は出てきません。
血中アルコール濃度が160~300 ml/dlになると、千鳥足になったり、嘔吐が見られます。すると転倒や転落、吐いたものが気管に入ってしまう危険性などが出てくるため、身体への危険性が出てきます。そういう意味で、この症状あたりから急性アルコール中毒と考えることができます。飲酒量と血中アルコール濃度の臨床症状の関係は、個人差が大きいので、一概に断定はできません。
致死量でも早期の治療で死を免れる
「イッキ飲み」などで死亡するケースがありますが、アルコールには麻酔作用があるため、呼吸をコントロールしている呼吸中枢が麻痺し、呼吸が低下すると、最後に呼吸が停止して死亡するわけです。またアルコールを摂取すると、末梢血管が拡張し、体熱が放散されます。すると体温が落ちて34℃以下の低体温になり、そのために不整脈が起こって心臓が停止することがあります。
ただし、致死量の血中アルコール濃度が検出されても、呼吸抑制と低体温に対して治療を行えば死を防ぐことが可能です。泥酔状態にあったり、昏睡状態に陥った場合は、一刻も早く医療機関に連れて行き、適切な治療を受けさせることが大切です。
UCLA卒業後、筑波大学で医学修士取得。USCメディカルスクール卒業。UCアーバイン・メディカルセンターで内科研修。