エコノミー症候群(Economy syndrome)

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フライトの長さは10時間で危険大

米本土と日本間の国際線のように、長時間狭い空間の中で身体を動かさずにじっと座っていると、足の静脈の血液が固まって血栓が起こる可能性があります。
 
血栓が足の静脈に起きた状態で急に立ち上がると、血栓がはがれて血流にのり、肺へ入り、肺の血管が詰まります。すると肺機能が悪くなって呼吸が苦しくなったり、血栓が大きいと倒れて死亡する可能性もあります。これがエコノミー症候群です。エコノミー症候群は病名ではなく、足に血栓ができれば深部静脈血栓、血栓が肺に入ると血栓性肺塞栓と呼びます。
 
エコノミークラスに限らずファーストクラスでも起きますし、機内でなくても椅子にずっと座って血液が循環しにくい状況であれば起こりえます。飛行機の場合、一般的に10時間以上、5千・以上のフライトで起こる可能性が高くなると言われています。
 
危険因子には、肥満、最近手術または足にけがをした、避妊や更年期障害のため女性ホルモン治療を受けている、妊婦、ガンなど内臓疾患がある、心不全など心臓の病気がある、高齢、以前に足の深部静脈血栓にかかったことがある、などが挙げられます。

15分毎に足の体操、1時間毎に立って歩く

通常足に血栓が起こると、片方の足が急にむくむ、ふくらはぎの筋肉がつるなどの症状が現れます。片方の足だけが急にむくんだ場合は要注意です。肺の中に血栓が入ると、呼吸困難、息切れ、過呼吸、息が荒くなる、胸部痛(片方の肺が痛くなる)、咳が出る、痰に血が混じるなどが起こります。
 
予防には15分か20分毎に膝の屈伸やストレッチなど足の体操をし、1時間毎に立って歩きます。足を組まない、アルコールやカフェインは控え、水分を多く取る、楽な服装をする、マッサージ(むくんでいる時は禁物)などが有効です。
 
薬局に行くと、血液循環を良くする薬用ストッキングが市販されていますが、危険因子のある人で長時間フライトの予定がある場合は、事前に医師に相談したほうが良いでしょう。薬用ストッキングとともに、血液をさらさらにする薬などを処方してくれます。

坂本ケネス憲司 医師
プリンストン大卒。シンシナチ大学カレッジ・オブ・メディスン卒。UCサンディエゴ・レジデンシー。UCLA助教授。

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