胃潰瘍はほぼ100%ピロリ菌が原因
ピロリ菌とは、ヘリコバクターピロリという胃の中に住む感染性の細菌のことで、近年、胃潰瘍の原因はほぼ100%ピロリ菌であることがわかってきました。感染者は特にアジア系に多く、1人がかかると家族全員が感染する可能性があります。料理をする人がかかっていたり、1つの皿から皆で取り分けたりすると、かなり高い確率で全員が感染します。
ピロリ菌が発見されたのは約20年前で、研究もここ5年から10年で急速に進みましたが、どのような感染経路をたどるのかなど、多くの事項は、まだ研究段階にあるために解明されていません。
症状は、食前あるいは食後に胃痛がある、胃が重い、嘔吐や吐き気がある、下痢気味、辛いものを食べると胃に差し込むような痛みがあるなど、胃潰瘍の症状と同じです。このような症状がある場合は、医師にピロリ菌検査をしてもらうことをおすすめします。
1人が感染したら全員が検査を
検査は数種類あり、まず血液検査でピロリ菌に対する血清抗体を測定します。それだけでは判定には不向きなので、呼気検査でピロリ菌がアクティブかどうかを調べます。呼気検査は風船などを膨らませ、吐く息を採取して調べる方法です。最も確実なのは生体検査です。
検査は、家族に1人でも感染者が出たら、家族全員が受けましょう。また、放っておくと胃潰瘍から胃ガンを引き起こす可能性があるので、疑いがある場合は早めに検査を受けることが大切です。
治療は、内服薬で行います。2種類の抗生物質と胃酸を和らげる薬の3種類を10日から14日間服用します。
ピロリ菌の除菌で胃潰瘍の再発を防ぐのはもちろん、胃ガンの防止にもなりますので、早期治療が肝心です。
日本生まれの日本人とアメリカ生まれの日本人を比較すると、日本生まれの日本人の方が感染している確率が高いことがわかっています。なぜアメリカ生まれの日本人は感染確率が低いのかは、まだ解明中です。
ピーター・シム医師
USC卒。シカゴ・メディカルスクール卒。USCインターン・レジデンシー。USC感染症フェローシップ。USC臨床教授。