「ひきこもり」は対人恐怖症の一種
日本で問題になっている「ひきこもり」は、対人恐怖症の一種です。人と交わるのが怖いため、家にいる方が安心という状態になり、ひきこもってしまうのです。
アメリカでも対人恐怖症は、薬物中毒、うつ病に次いで3番目に多い精神的な疾患で、全米人口の13%が生涯のうちに1度は対人恐怖症を経験すると言われています。人前でチェックやクレジットカードにサインしたり、レジに並ぶのが怖いというのはよくある症状で、重症になると「人が多い場所に行くと恥をかくのではないか」、そう考えるだけで不安を感じます。
高校生の頃に始まるケースが多く、人生をエンジョイできなくなるので、できるだけ早く治療を受けるようにしてください。
アメリカ人は自分が恥をかくのを恐れるのに対し、日本人の場合は他人に迷惑をかけるのではないかという不安があるのが特徴です。例えばアメリカ人しかいない状況では平気なのに、その中に日本人が混じっていると、突然に恐怖を感じてしまったり、アメリカ人相手なら話せる英語も、日本人が混じると話せなくなったりします。
バーチャルリアリティーを利用した治療も登場
治療には認知セラピーを用います。医師が、なぜ人と交わるのが怖いのかをとことん解明し、リラックスさせて、恐怖心を取り除いていきます。水が怖くて泳げない人に対して、どんなに水泳の重要性を納得させ、モチベーションを高めても、実際に水に入らないと水泳を学べないのと同じ理屈で、患者が実際に実生活に交わらないことには治療できません。医師は少しずつ社会生活に必要なことにチャレンジするよう指導します。
重症でセラピーさえできないケースでは、薬を処方します。薬で対人恐怖症が治るわけではありませんが、恐怖心を和らげる助けにはなります。治療の早さは程度と本人のモチベーションで変化し、軽症だと1カ月で改善され3カ月で完治することもありますが、重症だと6カ月以上かかることもあります。
新しい治療法にバーチャルリアリティーセラピーがあります。コンピューターやシミュレーションなどを使って現実に近い状況を作り出し、治療の役に立てます。
デビッド・スカルピーノ医師
一般成人精神科医。テキサス大学卒。テキサス大医学校卒。UCアーバイン・レジデンシー。