冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点
冷泉 彰彦
プリンストン日本語学校高等部主任。『Newsweek日本版』コラムニスト。
なんちゃって日本食現象を考える
(2024年11月号掲載) 2022年のJETROの調査によると、アメリカ国内の日本食レストラン数は2万3000軒を超える。 日本食の普及のため生まれた認定制度 食文化に国境はない一方で、国や文化圏が変われば嗜好が異なり、自然に味は変化する。一番の例は中華料理で、その味は国ごとに異なる。理由としては中国人は商才があるので、その国の嗜好に合わせて商売をするのが … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「なんちゃって日本食現象を考える」の続きを読む
変わりゆく日本のコメ事情
(2024年10月号掲載) 日本産米の輸出量は右肩上りで、2024年1〜7月は昨年比23%増で過去最高を記録した。 令和のコメ不足 原因はどこにあるのか この夏、日本ではコメ不足が問題になった。長い間、日本ではコメは余っていた。食文化の欧米化が進み、麺類やパンによる小麦の消費が増え、反対にコメの消費が減っていったからだ。その一方で、日米の間では日本の貿易黒字 … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「変わりゆく日本のコメ事情」の続きを読む
こんなに違う日米の部活と民間委託
(2024年9月号掲載) 日本では、スポーツ庁と文化庁が中心となり、公立中学校の部活の民間委託が進んでいる。 初心者歓迎の日本と 選抜するアメリカ 日本では、教員の時間外労働を減らすために部活動(部活)の一部を民間に委託する動きが始まった。また、夏場の猛暑が年々厳しさを増す中で、甲子園の高校野球も10分間のクーリングタイムや午前と夕方に試合を行う2部制などが … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「こんなに違う日米の部活と民間委託」の続きを読む
インバウンド激増で変わる日本の空の玄関
(2024年8月号掲載) 2024年3月、羽田空港国際線の月間旅客者数は192万人を超え、過去最高記録だった。 激増する観光客 どう受け入れ、輸送するのか 海外から日本を訪れる観光客(インバウンド観光客)が急増している。2019年には年間の総数が3188万人まで拡大した後は、コロナ禍のためにいったんは「事実上ゼロ」となった。ところが、コロナ禍後になると一気に … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「インバウンド激増で変わる日本の空の玄関」の続きを読む
試行錯誤を始めた日本の働き方
(2024年7月号掲載) 日本の学生の就活の早期化が問題となり、2021年以降は政府が就活日程の指針を出している。 昭和から令和へ 変わりつつある労働環境 安倍政権時代に始まった日本の「働き方改革」では、まず長時間労働の根絶が進んだ。現在では時間外勤務への厳しい規制は運輸業界にも及んでおり、サービスを落としても労働者を守るという方針で改革が進んでいる。その一 … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「試行錯誤を始めた日本の働き方」の続きを読む
高校の卒業風景、日米の違い
(2024年6月号掲載) 2024年、アメリカではFAFSAに不備があったため、申し込み期限を延長する大学が多くあった。 春に合格発表、秋に始まるアメリカの大学 5月から6月はアメリカの卒業式シーズンだ。中でも大学の卒業式は盛大だが、高校生の卒業式でも、大学と同じようにガウンと角帽で身を包み、一人一人が卒業証書を受け取るのは、明らかに人生の一つのステップにな … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「高校の卒業風景、日米の違い」の続きを読む
日本での鉄道利用、変更点に注意が必要
(2024年5月号掲載) JRパスは日本全国で使えるパス。それとは別に、JR全6社は、各地域限定のパスを販売している。 金額、見た目、ルールも大きく変わったJRパス 訪日外国人の数は年間3500万人に迫り、その勢いはすでにコロナ禍の以前を上回っている。日本行きの航空券は高値が続いているが、一旦入国してしまえば超円安の「恩恵」もあるので、これから日本への旅行や … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「日本での鉄道利用、変更点に注意が必要」の続きを読む
オスカーで アジア系は差別されたのか
(2024年4月号掲載) 社会的成功を収めるアジア人が増え、差別が可視化されるようになった今、次にどうすべきか。 無視や失礼な態度はアジア系だけが理由か アカデミー賞の授賞式でアジア系が差別されたのではないか?という話題があり、日本や中国などでは問題になっている。具体的には、主演女優賞を受賞したエマ・ストーンと助演男優賞のロバート・ダウニーJr.が受賞した際 … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「オスカーで アジア系は差別されたのか」の続きを読む
五輪と万博が嫌いになった日本人
(2024年3月号掲載) 大阪万博は2025年4月13日から約6カ月間開催予定。開催地は大阪湾の人工島「夢州」になる。 日本人は五輪と万博が大好きだった。五輪については、1964年の東京五輪に続いて、72年には札幌での冬季五輪が開催され、98年には冬季五輪が長野でも開かれた。これらの3大会はいずれも大成功に終わり、日本の国際化やスポーツの発展に大きな成果があ … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「五輪と万博が嫌いになった日本人」の続きを読む
能登半島地震とその特殊性
(2024年2月号掲載) 地理的条件が救助や復旧の妨げに 平安時代から続いてきた輪島の朝市。朝市通りの大火では約200棟が消失。行方不明者も多い。 元日の午後4時過ぎ、最大震度7、地震全体のマグニチュードは7.6という大地震が能登半島先端部の「奥能登」を襲った。半島先端部の珠す洲ず市は地震の揺れと共に、直後に襲来した津波の甚大な被害を受けた。輪島市では、大火 … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「能登半島地震とその特殊性」の続きを読む
日本人は親切心を失ったのか?
(2024年1月号掲載) 寄付やボランティア精神を堂々と表明しない日本人 CAFでは、ランキングは回答者が移民か否かや、 信仰する宗教も関係すると報告している。 アメリカで電車やバスに乗っていて、車椅子の人が下車しようとしたら、周囲の人が助けるというのは当たり前の光景だ。ベビーカーでも同様だろう。だが、日本ではこうした光景は見られない。車椅子の人が電車に乗り … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「日本人は親切心を失ったのか?」の続きを読む
結論が出ない日本でのタクシー論争
(2023年12月号掲載) ドライバー不足で、日本もライドシェア解禁か? 日本では、Uberのアプリはライドシェアではなく、タクシーの配車アプリとして普及している。 コロナ禍の期間に団塊世代の引退が進んだことで、日本の運輸業界では人手不足が問題化している。全国の路線バスでは、運転士不足から企業ぐるみの廃業やダイヤの削減などが起きている。より深刻なのがタクシー … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「結論が出ない日本でのタクシー論争」の続きを読む
リモート勤務が定着しなかった日本
(2023年11月号掲載) デメリットがあれど、リモートを模索し続けるアメリカ アメリカでも通常通りに出社する人は増え、再び渋滞が問題になる都市もある。 アメリカでは、コロナ禍後も日本で言うテレワーク、つまりリモート勤務が定着している。現在では100%リモートは少なくなり、全米平均では、週3日出勤で2日がリモートというのが「相場」のようだ。多くの経営者は、で … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「リモート勤務が定着しなかった日本」の続きを読む
日本の台風対策、三つの疑問
(2023年10月号掲載) 強制退避のアメリカ ギリギリまで新幹線の走る日本 日本の主要キー局は東京に集中し、地方の災害の様子は報道されにくい面もある。 地球温暖化は、日本の場合は台風被害という形で現実の脅威となっている。これに対して、気象庁や政府、地方自治体は予報の精度向上を図る一方で、防潮堤や治水工事など防災・減災対策に努力してきた。その一方で、実際に台 … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「日本の台風対策、三つの疑問」の続きを読む
共同親権だけでは解決しない親子の問題
(2023年9月号掲載) 日本でも議論される共同親権 国際離婚では、子どもの生活や権利について裁判が長引くことが多い。 国際結婚が破綻した場合に、日本人の母親が子どもを日本に連れ去り、アメリカ人の父親がこれを告発してアメリカから母親への逮捕状が出るという事例が数多くあった。アメリカ政府は日本政府に対してこの問題の解決を強く迫り、2013年には日本が子どもの連 … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「共同親権だけでは解決しない親子の問題」の続きを読む
日本のインバウンド2500万人、受け入れは限界に
(2023年8月号掲載) コロナ前後で変わった観光客の顔ぶれ 鎌倉や江ノ電は、マンガ『Slam Dunk』の聖地巡りのために訪れる外国人も多くいる。 コロナ禍中は激減していた日本へのインバウンド観光客が、ここへ来て一気に増加している。コロナに関する規制が撤廃されたこともあるが、何よりも1ドル140円台という円安が追い風になっている。特にこの春以降は、毎月の外 … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「日本のインバウンド2500万人、受け入れは限界に」の続きを読む
犯罪横行のため不便になる在外邦人
(2023年7月号掲載) 不便な免税のルールと国際免許証の運用 現在、自動化ゲートは成田空港、羽田空港、中部空港、関西空港に設置されている。 近年、一部の犯罪や悪用が目立つというだけで、在外邦人に著しい不便が押し付けられるケースが出てきている。例えば、一時帰国時の免税店利用だ。従来は、免税店等で購入し、封をした品物を出国時に税関で見せれば免税価格で品物の購入 … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「犯罪横行のため不便になる在外邦人」の続きを読む
簡単ではない羽田の鉄道アクセス改善
(2023年6月号掲載) 蒲蒲線は西部移動の切り札になるか? 東京モノレールは今後も存続し、途中駅や「第3」への輸送を担うという。 アメリカから日本へ移動する場合、日本の空港としては、やはり羽田を利用する場合が多い。国内線に乗り継ぐ場合は別として、そこで問題になるのが「空港アクセス」だ。チョイスはそれなりにある。タクシーや、空港バスの路線網もあるが、中でも一 … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「簡単ではない羽田の鉄道アクセス改善」の続きを読む
日米関係、この30年の変化
(2023年5月号掲載) 食、歴史、野球、変化したアメリカでの受け止め方 広島長崎の原爆投下に対し、米国内では支持と不支持が世代によって割れるようになってきている。 全くの私事で恐縮だが、この3月でアメリカに引っ越して30年となった。この30年を振り返ると、日本とアメリカの関係ということでは大きな変化があった。両国関係は引き続き良好だが、その中身についていえ … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「日米関係、この30年の変化」の続きを読む
駐在員家庭がアメリカ生活になじむには
(2023年4月号掲載) 昔ほど憧れがなくなったアメリカ駐在 アメリカには41万8842人の在留邦人が暮らし、都市別ではLA、NY、SFの順に多い(外務省2022年)。 アメリカに暮らす日本人・日系人のコミュニティーの中で、日本の企業から派遣される駐在員家庭というのは大きな位置付けを占めている。日本では今でも春が人事の季節。コロナ禍から脱しつつある今年は、ア … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「駐在員家庭がアメリカ生活になじむには」の続きを読む
どこへ向かう? 日本の働き方
(2023年3月1日号掲載) 育休を阻む日本の年功序列 日本の育休制度の取得率は、男性13.97%、女性85.1%(2021年、厚生労働省)。 岸田総理が国会での質疑で、「育休中にリスキリング(学び直し)」を推奨すると発言し、激しい批判を浴びた。育児の苦労を知らないという批判であり、確かに発言としては不用意であった。だが、この問題、実はそう簡単ではない。 … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「どこへ向かう? 日本の働き方」の続きを読む
在外邦人の困り事を考える
(2023年2月1日号掲載) 在米邦人は42万人弱増え続ける在外邦人 アンドロイドのマイナンバーカード機能対応は5月から。行政手続きがスマホで行えるようになる。 日本人として海外に暮らす人は年々増加している。外務省の統計によれば、2022年の総数は130万人で、滞在先の1位はもちろんアメリカであり、その数は42万人弱であるという。都道府県と比較すると人口が最 … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「在外邦人の困り事を考える」の続きを読む
アメリカのサッカーは飛躍できるか?
(2023年1月1日号掲載) 2026年ワールドカップはアメリカで開催 日本のサッカー競技人口は推定436万人で、今や野球の384万人を上回る(笹川スポーツ財団調べ)。 2022年のサッカー・ワールドカップのカタール大会が終わった。日本は、グループリーグでドイツとスペインを破ってベスト16に進んだがクロアチアに惜敗。アメリカも同様にベスト16でオランダに3対 … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「アメリカのサッカーは飛躍できるか?」の続きを読む
アメリカ政治に学ぶところはあるのか?
(2022年12月1日号掲載) 討論や演説で鍛えられるアメリカの議員 歴代のアメリカの大統領の演説のフレーズには、後世に語り継がれるものが多々ある。 現在のアメリカの政治は、決して評判がいいとは言えない。左右の分断はあまりに激しくなっており、国際社会からは呆れられている。11月初旬には中間選挙が行われたが、毎度のこととはいえ、相手候補を罵倒するだけのCMなど … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「アメリカ政治に学ぶところはあるのか?」の続きを読む
日本経済の危機感に応えるには
(2022年11月1日号掲載) 円安、GDPマイナス成長をどう捉え、支えるか 9月、政府・日銀は急速な円安を抑止するため、円買い・ドル売り介入を約24年ぶりに実施した。 1ドルが150円のラインを突破した。この円安ショックを受けて、自信喪失が起きるとともに、ようやく日本では「経済はこのままではダメだ」という危機感が出てきている。日本経済が30年間ほとんど成長 … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「日本経済の危機感に応えるには」の続きを読む
20年前のイチローブームとは違う日本の大谷ブーム
(2022年10月1日号掲載) 共に未知数だったアメリカでの活躍 イチロー氏のマリナーズ殿堂入り式典では、大谷選手からのビデオメッセージも放映された。 エンゼルスの大谷翔平選手は、昨年、2021年にアメリカンリーグのMVPに選ばれただけでなく、今年22年はその21年を上回る成績を挙げている。そんな折、8月21日には、同じように日本球界からアメリカに移籍して、 … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「20年前のイチローブームとは違う日本の大谷ブーム」の続きを読む
日本から人の流れを取り戻すには?
(2022年9月1日号掲載) コロナ、円安、食、治安戻らない観光客 日本と同じくアメリカでも、海外旅行より国内旅行の方が人気の傾向が続いている。 日本での訪日観光客受け入れが進んでいない。6月の解禁以来の人数はまだ数千人単位に留まっている。これはアメリカを含む多くの国でビザを要求しているからで、ビザなし渡航が再開されれば、自然に回復するであろう。 一方で … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「日本から人の流れを取り戻すには?」の続きを読む
二重国籍問題を考える
(2022年8月1日号掲載) 問題・矛盾をはらむ日本人の市民権取得 現在、日本では二重国籍に伴う日本国籍の喪失をめぐり、いくつかの裁判が進行中。 在米邦人にとって、二重国籍というのは複雑な問題だ。まず、アメリカは、国内で出生すると自動的に市民権(国籍)が付与され、二重国籍も認めている。反対に、日本は二重国籍を原則として認めていない。日本の場合だが、現在の運用 … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「二重国籍問題を考える」の続きを読む
日本はマスク依存症を克服できるか?
(2022年7月1日号掲載) 外国人観光客と日本人のマスクへのギャップ 日本の外国人旅行客は、まずは旅程が把握しやすい添乗員付きの団体旅行のみ受け入れを始めた。 2年半ぶりに日本に一時帰国する機会があった。5月下旬であったので、すでに強制隔離も自主隔離もなく、検疫プロセスに時間がかかった以外、出入国は比較的スムーズだった。久々の日本だったが、通勤電車は相変わ … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「日本はマスク依存症を克服できるか?」の続きを読む
アジア系への攻撃深刻化、認識を改める時
(2022年6月1日号掲載) 都市を中心に止まらないアジア系への攻撃 ニューヨーク地下鉄はコロナ禍で利用者が減っているが、犯罪率は上昇している コロナ禍による社会不安が恒常化する中で、2020年の後半から全米でアジア系をターゲットとしたヘイト犯罪が増加した。現在でも、この傾向は続いている。20〜21年の全米の被害件数のうち、カリフォルニアが圧倒的に多く、約3 … »冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点「アジア系への攻撃深刻化、認識を改める時」の続きを読む