18歳成人で何が変わるか?
1月8日は日本では成人の日だったが、今年は、振り袖の販売・貸出・着付けを行う業者が、当日に計画倒産して休業し、社会は大混乱に陥った。これを受けて、八王子市のように被害者救済のため、再度成人式を行うと発表した一部の自治体もある。事件の背景には、少子化に伴う新成人の減少という問題があり、振り袖業界で過当競争が起きたためだという。
その一方で、日本の「成人式」という行事そのものが大きく揺れている。背景にあるのは18歳成人問題だ。日本では既に公職選挙法が改正されて、18歳選挙権が実現しているが、選挙権を与えた以上、民法など他の法律でも「18歳が成人」と制度改正をしようという動きがあるからだ。
選挙権が18歳で与えられるのに、現時点では成人式がどうして20歳のままなのかは不明だが、それはともかく、仮に民法改正がされ、関連する法律(200本ぐらいと言われている)も改正されて、本当に成人年齢が「20歳から18歳へ」と変更されたらどうなるのか、日本ではさまざまな論議が起きている。
まず、18歳でも親の同意なく結婚できたり、高額の契約ができたりすることになる。また、性同一性障害の人が裁判所に性別変更の申し立てをする場合も18歳で可能になるという。こうした問題については、アメリカだけなく多くの国では18歳成人が定着して長いので、先行した国を参考にしたらいいのだろう。
ちなみに、アルコールやタバコの制限、公営ギャンブルへの参加に関しては、従来通り「20歳から」という規制が維持される見込みだ。また、パスポートについては、成人向けの「10年旅券」は、これまで20歳からだったのが18歳から申請できるようになる。一方で、重国籍者への日本に対する「国籍選択宣言」の年齢については、22歳から20歳に2年引き下げることも検討されている。
1振り袖の慣習はどこへ向かうのか?
さて、この「18歳成人」が実現すれば、成人式は20歳から18歳に変わることになるが、仮にそうなれば影響が大きいという議論がある。例えば、今回倒産した業者をはじめ、呉服業界などは壊滅的な打撃を受けると言われている。どうしてかというと、18歳という年齢では、ほとんどの新成人はまだ高校生であるから、校則や社会通念の上で「正装は高校の制服」だとなり、重要な式典である成人式には制服を着なくてはならないからだ。そもそも高校生に「晴れ着」は華美だとの声もある。
しかし、よく考えれば成人とは一人前の大人になることを祝うわけで、そのために大人の印として晴れ着を着る習慣があるのだろう。それを「高校生には華美だ」と言うのは、18歳でも高校生なら大人扱いはしないという話になる。これでは「18歳成人」の意味は何なのか分からなくなるというものだ。
そもそも、制服や校則というのは「未熟な」生徒に対して、社会的な教育の一環として行っているわけで、18歳が成人であるならば「休みの日でも外出するときは制服」だとか「スカートの丈」がどうとか「スポーツバックも規定品しかダメ」というような「校則」については、一方的に守らせるというのはおかしいことになる。
そうなると教育関係者などを中心に賛否両論の騒ぎになる可能性があるが、それ以前の問題もある。というのも1月中旬に成人式を行うのでは、18歳にとってはそれこそセンター試験など大学受験で忙しい時期と重なってしまい、式典への参加は不可能だという議論があるからだ。
だからといって、季節を変えて新たに祝日を設定するのも大変だ。そう考えると、「18歳成人」の制度が成立した時点で、もしかすると「成人の日」とか「成人式」といった習慣は廃止されてしまう可能性もある。その場合は「成人式の振り袖」の代わりに、年齢性別を問わず民族衣装を楽しむ日というのを新しく考えてみるのも面白いかもしれない。
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(2018年2月1日号掲載)
※このページは「ライトハウス・ロサンゼルス版 2018年2月1日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。