まだいる避難生活者と進みつつある復興
2011年3月11日に発生した東日本大震災から9年の歳月が流れた。最新の統計では死者1万5899人、行方不明者2529人となっており、その被害の規模の大きさには言葉もない。これに加えて、現時点でまだ避難生活を余儀なくされている人が、全体で4万7737人もいる。そうした人々を中心に、9年後の現在でも、復興はまだまだ途上と言わざるを得ない。
避難者の数が圧倒的に多いのは福島県であり、県外への避難者が現時点でも3万914人という数になっている。原発事故の影響で除染作業中の地域が残っていることもあり、帰還は進んでいない。宮城県、岩手県の場合は避難者の数は少ないが、人口流出、そして過疎化の流れは止めることができていない。
二重被災の問題も起きている。昨年10月の台風19号は長野県など中部地方だけでなく、東北地方にも甚大な豪雨災害をもたらした。特に福島県から宮城県にかけては、震災から復興途上にあった農地などが被害を受けた。また岩手県では沿岸の被災地を走る三陸鉄道リアス線が、この台風によって一部が再び不通になってしまった。
この三陸鉄道については、その後、復旧工事が進み、20年3月20日に改めて全線が開通することとなった。
このケースを含めて、明るいニュースとしては被災地における交通機関の復旧が進んでいるということだ。中でも象徴的なのは常磐線である。昔は首都圏と東北を結ぶ大動脈であった常磐線は、東日本大震災でいわきから岩沼に至る多くの区間が津波の被害を受けた。また福島第一原発の近隣は警戒区域とされて長い間、不通となっていた。
その常磐線は、3月14日に最後まで不通であった富岡駅~浪江駅の区間の工事が完成し、9年ぶりに全線が開通する。併せて、品川・上野発の常磐線特急「ひたち」の1日3往復が仙台まで延伸されることとなり、久しぶりに東京から常磐線経由で仙台までの直通特急の運転となる。所要時間は4時間40分と新幹線とは比べるべくもないが、震災の記憶と復興を確認できる貴重な乗車経験となるのではないだろうか。
この常磐線にはJヴィレッジという駅がある。原発事故の対応拠点となっていたJヴィレッジは、現在は元のサッカー練習場として復旧しているが、臨時に設置されていた駅が3月14日に常設化される。現時点(2020年3月23日)ではこのJヴィレッジが20年東京オリンピックの聖火リレーの出発地点となる予定だ。
一方、同じく全線復旧する三陸鉄道は、復旧後はJRの大船渡線(一部はBLTという専用道路を走るバス運行)から乗り継ぐと、南の盛から、北はNHKのドラマ『あまちゃん』の舞台となった久慈まで行けることとなる。大船渡、陸前高田、釜石など津波で壊滅的な被害を受けた地域だが、それぞれに防潮堤の整備が終わり、震災記念公園や記念館なども建設されている。
観光地として魅力を増す東北
こうした地域では、水産業や水産加工業の復興も進み、観光客の来訪を待ち望んでいる。被災地というと、興味本位での訪問は失礼という考え方もある。現在では、そんな遠慮は不要だし、何よりもアクセスも容易となっている。一時帰国の際の旅行先として、検討してみてはいかがだろうか。
三陸など宮城県や岩手県への足としては、何といっても東北新幹線が便利だが、こちらにも新しい動きがある。現在は「はやぶさ」号が宇都宮以北は時速320キロという国内最速の運転をしているが、東北・北海道新幹線が30年度に札幌まで延伸する際には、さらに時速360キロまでスピードアップを行う計画がある。現在、超高速運転における安全性と乗り心地の実用化をテストするために「ALFA-X」という車両が試運転を重ねており、課題が解決すれば次世代の新幹線車両での高速運転が実現する。そうなれば、首都圏から仙台、盛岡への所要時間はさらに短縮されるだろう。
|
(2020年4月1日号掲載)
※このページは「ライトハウス・ロサンゼルス版 2020年4月1日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。