台風、ハリケーン自然災害に悩まされる日米
日本とアメリカは気象条件が異なるが、アメリカではハリケーン、日本では台風と呼ばれる巨大な熱帯性の低気圧には同じように悩まされている。アメリカの場合は 2005年のカトリーナ、12年のサンディ、17年のマリアの被害はとりわけ深刻で、19年もカリブ海のバハマ諸島を襲ったドリアンの被害は壊滅的だった。
日本も、ここ数年、巨大台風による被害が続出している。関西で大きな被害の起きた18年の台風21号の記憶も新しい中、19年には千葉県に暴風被害をもたらした 15号、長野、埼玉、福島、宮城などに深刻な洪水被害を発生させた19号、そして21号など自然の猛威を改めて感じさせる年となった。
同じように自然災害と戦っているように見える日本とアメリカだが、防災行動のパターンは異なっている。まずアメリカの場合は、ハリケーン接近の予報が出ると、多くの場合は州知事が記者会見に登場して非常事態宣言を出し、テレビやネットが中継する。つまり知事という顔の見えるキャラクターが、必死に説明することで住民に危機を知らせるというわけである。
予報が的中して残念ながら被害が出た場合はどうかというと、知事は迅速に被災地に入ることが多い。政治的パフォーマンスという批判もあるが、知事が現場で激励することで復興への求心力となるのは事実だ。12年のハリケーン・サンディの場合、私の住むニュージャージー州は深刻な被害を受けたが、共和党のクリスティ知事と民主党のオバマ大統領が揃って被災地に登場して、復興への努力を約束したことには高い評価が寄せられた。 一方で、日本の場合は都道府県知事が「顔」を見せることは少ない。事前に非常事態宣言などで危機意識を高める行動をとったり、テレビで会見を中継したりはしない。被災後も、すぐには被災地に入らない。行くと復興の邪魔になるとして批判を浴びるからだ。話題になるのは、被災の後随分してから知事が政府に復興支援の「要望書」を渡しに行くぐらいだ。
住民が直接選んでいるのだから、知事は行政事務を執るだけでなく、コミュニティーの求心力になれば良いのだが、日本の知事には、そのような役割を与えられていないのである。知事経験者で総理大臣になった例が少ない(戦後では細川護煕氏だけ)というのにもその辺に理由がありそうだ。
いつ?どのように?日米で異なる避難の予告
一番大きな違いは避難のタイミングだ。アメリカの場合、巨大ハリケーンの接近予報が出ると発生の 72時間前くらいから、非常事態宣言が出される。大規模な避難が始まり、48時間前くらいになると高速道路は内陸へと避難する人で大渋滞となる。危険な地域の場合は、強制避難命令が発動されて州兵などが配置される。24時間前くらいになると公的交通機関はストップ、高速道路などは閉鎖されてしまう。 一方で日本は、今年3月の「避難勧告等に関するガイドライン」の改訂から避難情報の発令方法が変わり、気象庁は防災気象情報と併せて5段階の警戒レベルを提供するようになった。警戒レベルに応じて各市町村が独自に避難指示や勧告を発令でき、レベル3と4は避難対象など、分かりやすくなったものの、発生 72時間前のように時間で区切るのではなく、風雨が強まってから出すようになっている。交通機関の計画運休も始まったが、運休の可能性の予告が 48時間前で、ハッキリした予告が 24時間前、運休は風雨を確認できるぐらいになってからだ。
このような取り組みの有無にかかわらず、18年の豪雨にしても、19年の一連の台風でも、死者を多く出すことになってしまった。理由としては日本独特の目で見るものしか信じないとか、お上の命令で強制的に動くのを嫌うカルチャーがあるようだ。また高齢化が進み、避難が負荷だとか自宅を離れたくないという心理が強いこともある。人的被害を抑えるためにも、日本でも迅速な事前の避難が普及することを願わずにはいられない。
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(2019年12月1日号掲載)
※このページは「ライトハウス・ロサンゼルス版 2019年12月1日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。