昭和時代には明治時代の名前が古臭かった
日本語が時代によって変化するように、日本人の名前も変化が激しい。例えば、2014年に日本で生まれた赤ちゃんの「名前ランキング」を調べてみると、男の子のベスト3は「大翔(ひろと、はると)」「悠真(ゆうま、はるま)」「悠人(ゆうと、はると)」、女の子のベスト3は「葵(あおい)」「楓(かえで)」「結衣(ゆい)」となっている。
海外にいると日本でのこうした「変化」をリアルタイムで経験できない場合があるので、もしかしたら違和感を持たれる方もあるかもしれない。だが、 このランキングの「ベスト3」は出生届が出されたデータに基づいており、これが現在の日本の「赤ちゃんの名前」の主流なのだ。
ちなみに、日本でも賛否両論のある「キラキラネーム」というのは全く別だ。漢字の音読み訓読みを混ぜたり、 漢字の音の一部だけを取るとか、より大胆なネーミングをしたものである。例えば「光宙(ぴかちゅう)」「希空(のあ)」「黄熊(ぷう)」といったものだ。中には「永久恋愛(えくれあ)」「最愛(もあ)」というように、さらに大胆なものもある。
では、どうして日本の伝統的な名前、例えば男子であれば「太郎、次郎…」とか「正男、一夫…」あるいは「信二、謙三…」、女子であれば「和子、陽子…」「明美、裕美…」といった名前が「消えて」いったのだろうか?
一つには、世代が変わったということがある。今挙げたような「伝統的な名前」というのは、実は昭和の時代に流行した名前であり、今の若い親たちには「自分のおじいさん、おばあさんの世代の名前」という感覚があるのだ。
例えば昭和の末年の当時に例えば男子の名前で「重蔵」とか「五右衛門」などと付けたり、女子に「お三津」とか「ウメ」というような名前を付けることはしなかった。そうした名前は「明治時代」とか「江戸時代」の名前であって、古臭いと思われたからだ。
21世紀に入った現代では、子どもに「太郎」とか「正子」などという名前を付けるのは、それと似たような感覚があるわけで、例えば「大翔」とか「結衣」という方が「当たり前」なのである。また、少子化の時代で子どもは1人か2人というのが「常識」となると、名前に番号の入った「次郎」とか「三夫」といった名前もすたれた。
「キラキラネーム」は就職活動で不利になる!?
いわゆる「キラキラネーム」の場合は、さらに親の強い願望が入っていると言われている。それは「自分の子どもは世界に一人だけのかけがえのない存在」なのだから、その名前も「世界に一つだけ」であるべきだという考え方である。その結果として、大胆なネーミングがエスカレートしてしまうのであろう。
最近では、こうした「キラキラネーム」の世代が大学生になっているが、彼らの名前が就職活動では不利になるとして問題になっている。例えば「光宙(ぴかちゅう)」という名前を持った人は、本人には落ち度はないにしても、「そのような命名をするような判断力のない親に育てられた」若者は「社会人としての能力が劣る」と判断されてしまうらしい。
さらに芸能人の名前となると、実際の戸籍名以上に自由であることから、ネーミングはどんどん変化してきている。「IMALU」とか「AKIRA」といったアルファベットの名前も増えてきたし、「きゃりーぱみゅぱみゅ」のように、外来語由来の部分とオノマトペを組み合わせて平仮名標記をするなどという変わり種もある。
一つ、英語圏で暮らしていると気になるのが、日本人の名前のローマ字表記だ。長い間、英語圏では日本人も「名+姓」の順序で名乗っていたのだが、最近は「姓+名」とした方が日本人のプライドが示せるとして逆にするのが流行している。日本の英語の教科書でもそうする動きだというのだが、これは混乱を招く可能性があるように思う。中国系や韓国系でもそうする動きがあるが、彼らの工夫を参考にしてみるのも良いかもしれない。
|
(2015年5月1日号掲載)
※このページは「ライトハウス・ロサンゼルス版 2015年5月1日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。