(2022年5月1日号掲載)
大谷、佐々木、鈴木、好調な日本人選手たち
春の到来と共にプロ野球のシーズンが始まった。アメリカのメジャーリーグは、昨年ア・リーグMVPを満票で受賞した大谷翔平選手(エンゼルス)が、完全二刀流で1番バッターに定着。すでに見事な投球も披露している。そんな中で、4月10日には、日本から千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手が完全試合を達成したというニュースが飛び込んできた。しかも13連続を含む19奪三振というから驚くべき内容だ。ちなみに、連続奪三振の記録は、それまでの日本では9、メジャーでは10であり、13というのは驚異としか言いようがない。早速アメリカの球界では、「佐々木はいつメジャーに来るのか?」などという話題が盛り上がっている。
今シーズン、日本の広島カープからシカゴ・カブスに移籍した鈴木誠也選手も好調なスタートを切るなど、改めてアメリカ球界から日本のプロ野球への関心が高まっているのを感じる。アメリカの一般の野球ファンの間でも、日本のプロ球界へ注目する動きは確かにある。これはパンデミックの前の話だが、金融関係に勤めていて日本出張が年に数回あるというアメリカ人が、「東京出張の楽しみは東京ドームでの野球観戦」と言っていた。別のアメリカ人も、日本への出張の際にはホテルで必ずプロ野球中継を見るという。
今年のメジャーリーグは、オーナー会議と選手組合の交渉が決裂して開幕ができない可能性があったが、万が一空白期間が長期化した場合は、アメリカの野球専門局では日本プロ野球の中継を検討していたとも伝えられる。
アメリカで開花する日本式野球
アメリカの球界が、日本のプロ野球に関心を寄せているのは、日本人選手の中に将来のメジャーリーガーを発見しようとしているからだけではない。アメリカの一流選手の中でも、契約の切れ目に一時期だけ日本でプレーする選手が多くなっているのだ。数年間、日本で実績を積み、改めてメジャーで活躍するというケースも多い。今年の場合は、日ハムとソフトバンクで4年活躍したニック・マルティネス投手がサンディエゴ・パドレスに移籍して先発ローテーション入りしている。最近の他の例では、マイルズ・マイコラス投手が、巨人に3年在籍の後、カージナルスのエースになっている。
少し以前になると、阪神タイガースに1年在籍したセシル・フィルダー選手がアメリカに復帰後、同じタイガース(デトロイト)で2年連続本塁打王になった例が有名だ。単にメジャー契約に失敗したので日本で下積みを経験したというよりも、日本で緻密な野球を経験し、身体能力を鍛えたことが復帰後の飛躍につながったようだ。
緻密な野球を日本で学んだということでは、日本球界を経験したメジャー監督の場合も当てはまりそうだ。例えば、フィラデルフィア・フィリーズで黄金時代を築いたチャーリー・マニエル監督は、現役時代にヤクルトや近鉄で日本の野球を経験している。また、1986年にメッツをワールドシリーズ制覇に導くなど多くのチームの監督を経験し、チームUSAの五輪代表監督も務めたデービー・ジョンソン氏も巨人でプレーした経験がある。
元来素質のある人材が、日本野球の練習法や細かい作戦に触れることで、アメリカに戻ってからも活躍するというのは、非常に興味深い現象だ。反対に、アメリカ人監督で日本で成功したトレイ・ヒルマン(日ハムで日本一)、ボビー・バレンタイン(千葉ロッテで日本一)などの場合は、後に日本式の監督スタイルをアメリカに持ち込んでいるが、あまり成功しなかった。日本の緻密な現場経験はアメリカでも生かすことができるが、日本式の指導法やマネジメントはアメリカでは通用しないということかもしれない。
コロナ禍が収束し、日米の行き来が自由になれば、日本から大谷選手の活躍を見るツアーは必ず組まれるだろう。同時にZOZOマリンスタジアムで佐々木投手の試合を観戦するアメリカのファンも増えるのは間違いない。
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