(2021年6月1日号掲載)
海外から日本へ 入国後の現状
現在、アメリカから日本への入国は厳しく限定されている。まず日本国籍以外の人は特段の事情がない限り入国できない。具体的には日本人の配偶者と子ども、大学教授、医療関係者などに限られている。これに加えて、日本国籍があっても入国できないケースが出てきた。
まず4月からはPCR検査の陰性証明が厳しくなった。原則として日本政府の発行する用紙に記入した陰性証明が必要で、検体採取が出発の72時間以内であるなど厳格な条件がある。当初は、日本人であっても成田や羽田で入国拒否に遭うケースがあり、その後、各航空会社が搭乗前に確認をするようになった。つまり条件を満たしていないと搭乗できなくなっている。
さらに現在は、入国後の14日間の自主隔離について管理が厳しくなっている。この自主隔離については、当初はチェックが甘く、14日の期間内であってもかなり自由に行動していたケースもあったようだ。だが、その後、変異株の流行が発生する中で、改めて水際作戦を求める声が日本国内で高まり、管理の厳格化が進んでいる。具体的には、位置情報確認アプリなど3種類の指定アプリをインストールしたスマホの携帯が義務化され、毎日情報をモニターされるという。
また、アメリカから渡航の場合、変異株の流行地域など特定の州(ミシガン州、フロリダ州など)については、3日間のホテル強制隔離措置も行われている。こうした傾向は、今後も続く可能性がある。日本ではインド変異株の流入を警戒しており、当面は規制が緩む可能性は少ない。
日本でのワクチン接種者への対応は?
アメリカから見ていると、一つの疑問が湧く。アメリカでは新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでおり、12歳以上における接種率は日に日に上昇している。そんな中で、この夏に日本への一時帰国を計画する人の多くは、ワクチン接種を済ませていることが多いだろう。そして、アメリカではワクチン接種者同士の会食などは、政府の公式見解としても規制を解除しつつある。そうなると、ワクチン接種者が日本に一時帰国する場合に、厳格な隔離措置を受けるのは不自然に思えてくる。当然の疑問である。
例えば、アメリカでも一部の州では「ワクチン・パスポート」といって、ワクチン接種者については接種履歴を表示できるアプリの試験が始まっている。この「ワクチン・パスポート」には、WHOやEUも導入を検討している。また日系を含む多くの航空会社も、この枠組みへの参加を検討中だ。ワクチン接種履歴があれば、日本の入国ももう少しスムーズにならないものか、そう考えるのは全く自然と思う。
だが、日本の場合は、こうした制度の導入が迅速に行われる兆候はない。何よりも、日本では65歳以上の接種希望者について7月末までに全員接種を目指しているが、達成は難しいと言われている。ということは、一般への接種が拡大するのは秋以降となろう。日本国内でワクチン接種が進まない中で、海外からの接種者の入国において隔離を緩めるということは考えにくい。
例えばこの7〜8月、アメリカ側から見れば、アメリカから日本に向かうワクチン接種済みの乗客100名と、日本で普通に暮らしている100名を比較したら、前者の方が安全なグループと考えるのは自然だ。だが、日本から見れば、仮にワクチンを接種していても、感染率がゼロではないので、未知の変異株などを持っているかもしれないアメリカ発の集団は、隔離しないと安心できないということになる。
昨年から今年にかけて、多くの在米邦人、日系人が日本への一時帰国を断念してきた。アメリカではワクチン接種が進むことで、この夏は空前の旅行ブームとなりそうだが、残念ながら日本への一時帰国の条件が緩和されることは望めそうもない。帰国を計画されている方は、計画時にも、そして搭乗の少し前にも、くれぐれも最新の状況を確認されることをお勧めしたい。
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