魅力的なJRパス対象は外国人観光客のみに
日本に一時帰国した際に、ジャパン・レール・パス(通称JRパス)を利用したことのある人は多いのではないだろうか。何と言っても値段がお得で、1週間有効のもので2万9110円である。例えば東京から京都を新幹線「ひかり」で往復すると2万6160円。成田エクスプレスで成田空港から都内までは片道約3000円なので、これらを使うだけで元が取れてしまうというわけだ。人気の北海道新幹線であれば、東京から新函館北斗まで普通に切符を買うと往復4万5380円だから、JRパスのお得感はさらに増す。
このJRパスだが、長い間、外国人だけでなく、「外国の永住権を持っている日本人」および「外国人と結婚して外国に住んでいる日本人」にも購入の権利があった。だが、今年の半ばからこの権利が消滅する。具体的には日本国籍の人はJRパスが使えなくなるのだ。
もう少し正確に言うと、外国人でも日本に居住していてはダメで、海外から「短期滞在」というステータス(ビザ免除もしくは観光ビザなど)で入国したはんこが外国のパスポートに押されているというのが原則になる。
では、どうして、このような変更が行われることになったのだろうか?
一つには、訪日外国人観光客が激増する中で、外国人向けのサービスを拡大したいというJRグループの意図がある。従来は海外でしか買えなかったJRパスを日本に来てから買えるようにしようとしているのだ。その場合には、日本で販売するのだから、日本から見て外国人で、明らかに外国のパスポートで短期入国する人に限って販売することにしないと、日本の中で、同じ日本人なのに外国の永住権を持っていたり、外国人と結婚していたりする人だけが買えるのは不公平だという問題が起きるというのだ。
もう一つには、新幹線のネットワークが便利になり過ぎて、日本の鉄道網をよく知っている日本人の中には、やたらに乗りまくる人が増えているという問題もあるらしい。特に、北海道新幹線の場合、東京と新函館北斗を結ぶ便は1日に10本しかないので、パスを持っている人に何度も乗られると席数の問題が出るようだ。
さらに、このJRパスは自動改札機を通れないので、有人改札を通るのだが、これ以上パスが増えるとこの有人改札が混雑してしまうので、日本人は除外したいということもあるようだ。
また、JR東海・西日本・九州では、同じ新幹線の中でも「のぞみ」と「みずほ」については、JRパスでの乗車を認めていない。これは、ビジネス需要が圧倒的に多い「のぞみ」と「みずほ」の乗客から、観光客の多いパス利用者は切り離して「ひかり」と「さくら」に誘導するためだが、訪日客の増加に伴って、 この「ひかり」と「さくら」の混雑が悪化しているということもある。日本人については便数の多い「のぞみ」「みずほ」に誘導しようということだ。
JRパス終了後、活用してみたい割引や切符
ちなみに、外国の永住権を持っていたり、国際結婚をしている日本人がJRパスを買うことができるのは、2017年の3月31日までで、購入したパスを乗車証と引き換えることができるのは6月30日までという期限が決まっているので注意したい。また、3月8日から開始される日本国内でのJRパス発売については、日本国籍者は一切購入することはできない。
せっかくJRパスを活用してきたのにガッカリという人も多いかもしれないが、朗報もある。従来は使用に制限のあった、ネット予約による最大35%の新幹線の割引が、システムの改善により、順次海外からも申し込めるようになってきている。
また、夫婦で合わせて88歳を越える場合は、「フルムーン夫婦グリーンパス」が使える。これはグリーン車が乗り放題というJRパスに劣らない強力なパスで、5日間有効のパスが2人分で8万2800円となっている(夏の旅行シーズンは使えない)。その他にも、乗り放題切符はいろいろ出ているので研究してみるのもいいだろう。
|
(2017年3月1日号掲載)
※このページは「ライトハウス・ロサンゼルス版 2017年3月1日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。