人気空港に成長を遂げる関西国際空港

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冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点:米政治ジャーナリストの冷泉彰彦が、日米の政治や社会状況を独自の視点から鋭く分析! 日米の課題や私たち在米邦人の果たす役割について、わかりやすく解説する連載コラム

成田・羽田にはない関空3つの強み

関西国際空港

1994年に開港した関西国際空港(関空)は、一時期利用が低迷していた。空港自体の地盤沈下が問題となったり、関空・伊丹・神戸と狭いエリアに3つも空港が必要なのかとか、いろいろな批判を浴びる一方で、欧米への直行便が減るなどして空港の経営が悪化したこともある。だが、2つ目の滑走路が完成し、24時間空港と化した2007年頃から状況は好転してきている。就航都市数は増加傾向にあるし、12年からは黒字経営に転じている。
 
成功の理由はいろいろあるが、何と言っても訪日外国人の増加が大きい。関空のロビーに行くと、出発ロビーも、到着ロビーもさまざまな国から来た外国人で溢れており、時間帯によっては日本人を見つけるのが難しいぐらいになっている。地理的にも中国、韓国に近い関空はアジアからの訪日客のゲートウェイとしては、成田・羽田より便利ということもあるが、理由はそれだけではない。
 
1つは、格安航空会社(LCC)専用の第二ターミナルを作り、国内外のLCCのハブ空港としての地位を確立したということがある。関空の成功を受けて、成田もLCC専用の第三ターミナルを設置したが、いち早く先行した関空ほどの成功は収めていない。
 
2つ目は、京都、奈良、大阪、神戸という観光地を前面に押し出して、外国人観光客を呼び込んでいるということがある。東京も世界的に人気の都市だが、社寺など日本の伝統文化を体験するには、関西4都市の魅力は圧倒的であり、強い集客力を発揮している。
 
3つ目は、二次交通、つまり飛行機を降りてから目的地までの陸上交通が、成田・羽田に比べて便利ということがある。空港の到着ロビーからエスカレーターを上がって橋を渡ると巨大な空港駅があって、JRと南海電鉄が英語・中国語・韓国語などを掲げてお客を呼び込んでいる。そこには日本国内での旅行目的に合わせた「お得な切符」を紹介する各国語のコンシェルジュサービスも用意されている。さらに、JR西日本の「はるか」なら京都まで直行で1時間16分だし、南海の「ラピート」なら最速34分で大阪ミナミの中心である難波駅まで行けてしまう。

外国人が使いにくい成田新たな構想の進む関空

特に3番目の点は、成田や羽田には見習ってほしい点だ。成田の二次交通というのは、鉄道の場合は上野、東京、新宿、横浜といった「主要ターミナル」へお客を回す機能しかなく、バスの場合もホテルにお客とスーツケースを直接運ぶ機能しか持っていない。つまり、お金と時間のある旅行者が来ることを前提に、まずは宿泊地までお客を運ぶだけというコンセプトでできている。LCC導入に合わせて格安バスもスタートしたが、外国人には分かりにくい。
 
関空の二次交通は、まだまだ利便性を高める構想がある。例えば大阪市内までリニアモーターカーを建設して、梅田まで15分で結ぶというプランがある。こちらは半分夢物語かもしれないが、福井県の敦賀から京都経由で新大阪まで建設する北陸新幹線を関空まで伸ばすプランも検討されている。
 
もっと現実的なものとしては、大阪市を南北に走る「なにわ筋」に新しい地下鉄道を建設して、JRの「はるか」も南海の「ラピート」も、この新線を使って新大阪まで40分程度で結ぶ、さらに阪急電車との接続も便利にするという構想も具体化している。
 
関空のターミナルは成田より小さいが、羽田の国際線ターミナルよりは大きく、ショッピング、レストランやフードコートなどの設備は非常に整っている。つまり、訪日外国人だけでなく、在米日本人の一時帰国の際にも魅力的だと言える。西海岸からの直行便も、日系1路線、米系1路線が飛んでいるので次の帰国や出張の際に、西日本に用事のある方は試してみてはいかがだろうか。

冷泉彰彦

冷泉彰彦
れいぜい・あきひこ◎東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒業。福武書店、ベルリッツ・インターナショナル社、ラトガース大学講師を歴任後、プリンストン日本語学校高等部主任。メールマガジンJMMに「FROM911、USAレポート」、『Newsweek日本版』公式HPにブログを寄稿中

 

(2017年5月1日号掲載)
 
※このページは「ライトハウス・ロサンゼルス版 2017年5月1日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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