(2024年12月号掲載)
在外邦人
どれだけの人が投票しているか
10月27日、日本の衆院選が終わった。前回、2021年の衆院選では在外邦人の投票率が20.21%と低かったが、今回はさらに低くなって18.23%となった。前回はコロナ禍の中で郵便事情が悪く、日程が厳しいという事情があった。この点は改善しているはずだが、石破総理が就任後、戦後最短の日数で解散したため、今回はより日程が詰まったことが原因と思われる。
この18.23%という投票率は「在外選挙人名簿の登録者」、具体的には24年の場合は9万5472人を母数とした数字だ。別の統計では、在外邦人の全体数は130万人程度ある。そのうちの成人が有権者と考えると100万人はいるはずだ。そう考えると、投票率は2%に満たないことになる。これでは、制度の存在意義が確立していないと言わざるを得ない。ちなみに、過去最高の投票率は30%で、近年は下がっているという報道もあるが、30%というのは制度発足直後の数字であり、登録者が少ない一方で、登録直後なので投票した人が多かったと考えられ、直接比較はできない。
この問題に関しては、ネット投票が解決策だという声がある。もちろん、画期的な解決策になるだろうし、国内では進まないネット投票の議論を進めるために、在外投票の改善を突破口にするというのは筋が通っている。けれども、いきなりネット投票に飛ぶとなると、どうしても時間がかかる。現在の方式を続ける中でも、少しでも投票しやすくするような議論も必要だ。
投票期間の短さを
解決する方法はあるか
まず、とにかく時間が切迫している。在外公館での投票は、全世界で最も体制が整っている場所で最大6日しかなく、中には数日程度でそれも平日だけという場所もあるという。どうしてかというと、規則により投票用紙は外務省の職員が航空機に乗って日本まで持参する必要があり、さらに投票用紙を仕分けして全国各市町村の選管に転送する日数も加わるからである。その結果、国内の開票日程から逆算して数日しか投票日を設定できない。
ちなみに郵送投票の場合、実は投票用紙というのはいつでも取り寄せが可能だ。衆院の場合は解散がありそうという報道ですぐ請求するとか、参院の場合は夏の選挙の数カ月前に取り寄せることは可能である。問題は「公示の翌日にならないと投票用紙に記入ができない」という規則であり、そうなると今回もそうだが一番早く投函するにしても、開票日の約2週間前と切迫している。そのため、EMS(アメリカのPriority Mail International以上)扱いを推奨するとなっており、その通りにすると最低でも約45ドルの送料を自己負担することになる。
この日程の問題だが、「在外有権者の選挙区」を一本化することでかなり改善する。出国直前の市町村に選挙人登録をしているから煩雑になるのであり、在外邦人の選挙区をまとめるのだ。在外邦人の有権者は100万人いるのだから、衆院の場合は最低でも小選挙区3議席、参院の場合も2議席ぐらいもらってもいいだろう。比例については参院は全国だから問題なし、衆院のブロックは在外票は集計後にブロックごとに案分したらいい。
例えば、出国直前にたまたま静岡1区に住んでいたからという理由で、長期滞在者がいつまでも静岡1区に縛られるというのも妙な話である。それよりも、在外邦人の待遇に関する利害代表として、国会に代表を送る方が意味がある。例えば、在外邦人にとっての税制や年金、教育、銀行預金、送金、出入国、国籍、旅券などの実務の利便性を訴える代表を国会に送ることには意味がある。一方で外交の面では、居住国の利害を在外邦人が代表するかもしれず、数の論理で当選者を決めるのは問題かもしれないが、少なくとも多様な議論が顕在化するメリットはある。その場合、在外票はまず一本化して集計し、中央選管で国内票と合わせるようにすれば、作業日程にもかなり余裕が出ると思われる。とにかく投票率2%という現状には危機感を覚える。
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