JR パスでは乗れない 東海道新幹線「のぞみ」
訪日外国人の増加が続いている。今年、2018 年は、年間3000 万人突破が実現するかもしれない。私の周囲でも、日本へ行ってきたとか絶対行きたいという人がやたらに増えている。
外国人が日本へ行くと、「JRパス」を使うケースが多い。その場合、東京を拠点にして京都や大阪へ行くとなると、東海道新幹線に乗車することになる。多くの人はそのスピードと、スムーズな乗り心地にビックリするようだが、何度か乗るといろいろと疑問が湧いてくるのも事実のようだ。
東海道新幹線には、各駅停車の「こだま」の他に、速達型の「のぞみ」、その中間の「ひかり」の3段階があるが、JRパスではのぞみには乗車できない。のぞみは最も速いタイプで、東京から新大阪まで最速で2時間22分で走るし昼間でも1時間に6本から7本とたくさん走っている。
一番便利そうに見えるのだが、どうしてJRパスの乗客はダメなのだろうか。3つ理由があると考えている。1番目はできるだけ指定席を直前まで空けておきたいからだ。のぞみはビジネス超特急なので、分刻みで動いている出張者がギリギリの時間でスマホ予約をして乗ってくるし、そのような利用者が圧倒的だ。だから、数日前に指定券をまとめて取る海外からの利用客が多くの指定席を押さえるのは困るのだ。2番目は、荷物が多い乗客は、乗車や降車に手間取ること。のぞみはスピードが命であり、名古屋や京都の停車時間も最小限に設定されている中で、遅延は避けたいのである。3番目は、日本の出張者は静かな移動を好むので、憧れの日本に浮かれて大声で話を弾ませがちな観光客とは、できれば区別した方がお互いの幸福ということもあるようだ。
荷物置き場の少なさとその対策
それにしても、東海道新幹線の荷物置き場は少ない。頭上の棚は整備されているが、大型スーツケースを置けるのは各車両の最後部座席の後ろだけで、いつも争奪戦になる。成田エキスプレスや、関空へのアクセス特急「はるか」、あるいは北陸新幹線などでは荷物置き場が充実しているのだが、東海道新幹線の場合は実現していない。
その背景には、「1323」という数字がある。これは、東海道新幹線の16両編成1本の定員で、現在の主力車種であるN700A系だけでなく、退役した300系も、退役しつつある700系も、そして2020年に営業運転を開始する新型の N700S系でも同じだ。定員を揃えているだけでなく、各号車の座席配置も全く同一となっている。例えば、鹿児島中央から来る九州新幹線車両は8両編成で、「1323」になっていないので東海道区間には入れない。
この定員「1323」の座席配置に統一されているのは、遅延時や一部運休になった場合に、車両が変わっても座席指定に混乱が起きないようにするためだ。台風などでダイヤが乱れた次の日に「始発から平常運転」という離れ技には、この座席配置の標準化が必須だ。その「1323」という数字を前提にすると、どうしても専用荷物置き場は難しいのである。
では、どのような対策があるか。まず、JRパスで関西に行く場合だが、朝6時新横浜始発の「ひかり493号」がオススメだ。この電車は新大阪まではのぞみに抜かれないよう「逃げる」ように走って2時間12分で着いてしまう。京都には7時59分着で、観光にはたっぷりと時間が取れる。反対に、時間の余裕のある場合は、いったん北陸新幹線で金沢へ行って特急「サンダーバード」に乗り継ぐと東京から京都まで4時間半ぐらいで着く。
荷物の問題は、大きなスーツケースは東京の宿泊先に置いておいて、関西旅行は身軽に行くのがスマートだろう。そうでない場合は宅配サービスを利用するか、ひかりに乗る場合、できるだけ各車両の最後列に近い席をとって、スペースを確保することになる。
いずれにしても、東海道新幹線は日本の名物である。訪日観光客にも快適に利用してもらいたいものだ。
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(2018年9月1日号掲載)
※このページは「ライトハウス・ロサンゼルス版 2018年9月1日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。