日本での鉄道利用、変更点に注意が必要

ライトハウス電子版アプリ、始めました

冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点:米政治ジャーナリストの冷泉彰彦が、日米の政治や社会状況を独自の視点から鋭く分析! 日米の課題や私たち在米邦人の果たす役割について、わかりやすく解説する連載コラム

(2024年5月号掲載)

冷泉コラム_JRパス

JRパスは日本全国で使えるパス。それとは別に、JR全6社は、各地域限定のパスを販売している。

金額、見た目、ルールも大きく変わったJRパス

訪日外国人の数は年間3500万人に迫り、その勢いはすでにコロナ禍の以前を上回っている。日本行きの航空券は高値が続いているが、一旦入国してしまえば超円安の「恩恵」もあるので、これから日本への旅行や帰省を考えておられる方は多いのではないかと思う。その際に注意が必要なのが、日本へ着いてからの鉄道の利用方法であり、近年これが大きく変化している。
 
例えば、長年、海外からの旅行客に親しまれてきた新幹線を含む鉄道が乗り放題になる「ジャパン・レール・パス(JRパス)」は昨年から大きく変更されている。まず普通車の場合、有効期間1週間のものが3万円から5万円に値上げされた。以前が安過ぎたとも言えるし、コロナ禍で大きなダメージを受けたJR各社にとっては必要な措置であった。これによって、従来は都内などの移動に加え、新幹線で東京から新大阪を往復すればJRパスを買っても十分に「元が取れた」のだが、現在は例えば東京から博多を往復するような移動でなければパスを買わずに個別に購入した方が安いことになった。
 
これと前後して、JRパスそのものが変わった。従来は富士山や桜をあしらった冊子状の「台紙」に切符が貼付されていたが、これが裏の黒い小さな磁気切符に変わった。これに伴い、有人改札口ではなく、自動改札をそのまま使えるようになった。中には数万円の価値のある切符を自動改札に通すと「出てこなかったらどうしよう」と不安になる人もいるそうだが、日本の自動改札機は精度が高く全く問題ない。
 
より重要なのは、指定券の購入方法である。日本のJR各社は人手不足を受けて「みどりの窓口」を大幅に減らしており、その代わりに指定券の購入ができる多機能自販機を設置している。このため、「みどりの窓口」は大混雑となっているのだが、実は最新のJRパスは、QRコードを使って多機能自販機で指定券が買えるようになっている。UIが少々古風で親しみにくいのだが、一旦慣れてしまえば、自分で座席を選んで指定席が買えるので便利だ。一部の外国人購入者の場合には、訪日の前にJRパスを買ってネットで指定券を予約するサービスもある。

カードよりアプリが便利な日本の鉄道

これとは別に交通系ICカードの問題がある。Suicaなどの愛称で親しまれているものだが、現在は国際的な半導体不足のために首都圏では新規購入ができない。例外としては、訪日外国人向けの「Welcome Suica」があるが、現在は羽田でしか買えない。ただ、以前に購入したカードは使用可能だし、10年間操作がなく失効した場合も、各駅の事務室で交換してもらえる。
 
そんな中で、日本国内の移動をスマートで快適に行うために、強くお勧めしたいのがアプリの利用である。まずSuicaに関しては、スマホのアプリとして「モバイルSuica」というのがある。これをインストールして、クレジットカードで金額をチャージすればスマホを自動改札にタッチすることで快適に使用できる。多くの私鉄やバスでも利用が可能だ。この「モバイルSuica」だが、近年ではアメリカのアプリストアからダウンロードできるし、アメリカのクレジットカードでも問題なくチャージが可能になった。さらにスマートウォッチとの連携も可能で、荷物を抱えていても片手で改札口を通れるので大変に便利だ。さらに、登録すれば東北、上越、北陸、北海道の各新幹線の乗車も可能になっている。
 
一方で、東海道、山陽、九州新幹線に乗車する場合は「スマートEX」というアプリが便利だ。座席指定を含めた新幹線の予約・購入が簡単にできるし、チケットレス乗車も可能。また事前予約の場合は割引もある。こちらもアメリカのアプリストアで入手可能だ。これからの日本国内での鉄道利用だが、超長距離や周遊型の移動の場合は、資格のある方はJRパスも依然として選択肢になる。だが、多くの旅行や帰省の場合は「モバイルSuica」と「スマートEX」というアプリでサクッと完結させるのがお勧めだ。

冷泉彰彦

冷泉彰彦
れいぜい・あきひこ◎東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒業。福武書店、ベルリッツ・インターナショナル社、ラトガース大学講師を歴任後、プリンストン日本語学校高等部主任。メールマガジンJMMに「FROM911、USAレポート」、『Newsweek日本版』公式HPにブログを寄稿中
※このページは「ライトハウス・カリフォルニア版 2024年5月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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