(2023年1月1日号掲載)
2026年ワールドカップはアメリカで開催
2022年のサッカー・ワールドカップのカタール大会が終わった。日本は、グループリーグでドイツとスペインを破ってベスト16に進んだがクロアチアに惜敗。アメリカも同様にベスト16でオランダに3対1で敗れて姿を消した。アメリカは、1930年のW杯第1回大会に出場して3位になっているが、この3位が最高で以降は活躍できていない。そんな中で徐々にサッカーが認知されてきたのは、94年のアメリカ大会で開催国としてベスト16に入ってからで、2年後の96年には新しくプロリーグの「MLS」が発足した。だが、その後もW杯では一進一退を続けており、18年のロシア大会の際には予選で敗退していた。
そのアメリカは、次回の26年のW杯では再び開催国となることが決まっている。次回は北米の3カ国、つまりアメリカ、カナダ、メキシコの共催で、開催都市も決まっており、西海岸ではロサンゼルス、サンフランシスコ、シアトルの3都市となっている。この地元開催大会でチームUSAは善戦できるだろうか。確かに現在の若手中心のチームは、26年には今回以上の活躍が期待されているのは間違いない。
サッカーが4大スポーツに肩を並べるには?
それにしても、アメリカのサッカーはなぜ超一流ではないのか、考えてみれば不思議だ。人口は3億人を超えており、スポーツ人口の裾野は世界一だろう。学生スポーツも盛んだし、何よりも経済力があり、プロスポーツの規模も世界の中では突出した存在だ。
その理由については「国民的合意」がある。それは、アメリカでは、4大スポーツというのが確立してしまっているからだ。つまり、野球、アメリカン・フットボール、バスケットボール、アイスホッケーの4種目だ。従って、サッカーには人材が回らないし、スポンサーからの資金も、また人々の関心もこの4大スポーツに集中してしまうからだという説明だ。
確かにこれは否定できない。プロサッカーのMLSはビジネスとしては成功しつつあるが、人気を支えているのは中南米や欧州出身者が中心という声もある。つまり、代々アメリカ育ちという人を4大スポーツからサッカーへと目を向けさせるには至っていないというのだ。ただ、よく考えてみるとこうした説明には疑問もある。まず、五輪の陸上や水泳、あるいはスキーやフィギュアスケートなどは、アメリカは非常に強いし関心も高い。4大スポーツだけが人材と人気を独占しているわけではない。また、少年少女の地域スポーツとしては、サッカーの人気は野球を完全に脅かすレベルまで拡大している。
にもかかわらず、アメリカにおけるサッカー人気は今ひとつだし、確かに人材の裾野にも限界があるようだ。これには、社会におけるサッカーへの理解の問題が大きいと考えられる。例えば、アメフトのファンには、サッカーでは攻撃の際は縦横無尽にMFやDWまで繰り出したり、守備局面ではFWまで戻るという柔軟さが気味が悪いらしい。また、サッカーの「オフサイドルールが興ざめ」という声が多い。ロングパスを通してタッチダウンを狙う面白さとの比較だが、アメフトとサッカーを混同しているだけだ。同じような意見はバスケのファンからも来る。バスケの場合は、3秒ルールなど時間制限が厳格でオフサイドが必要ないので、全く別のスポーツとしての理解が必要なのだが、ここにも混同がある。バスケのファンからは、90分も戦って1点とか2点しか入らないのは時間の無駄という感想もよく聞く。
日本では、1993年のJリーグ開幕以降、「Jリーグ100年構想」などを含めサッカー界は情報発信に努めてサッカーという文化を全国に定着させてきた。サッカー界の実力向上もそうした理解の上に成り立っている。アメリカの場合も、本気でベスト8を目指すのなら、全米におけるサッカー文化の啓蒙に取り組むべきで、その意味では26年を新たな出発点にするぐらいの姿勢が必要ではないだろうか。
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