(2021年2月1日号掲載)
進化・定着しつつある日本のリモートワーク
コロナ禍が続き、日本でもビデオ会議システムによるオンライン会議が行われるようになってきた。当初は試行錯誤があったが、現在はかなり定着している。そんな中で、一部の企業では日本独自の「謎ルール」があるという指摘もあった。例えば、会議が終わったら上司や顧客が退出するまで、他のメンバーは頭を下げて待つなどというものだ。特に、2020年9月にZoomが「カスタムギャラリービュー」という機能を入れてからは、上司を上にしたり、大きく表示したりというルールが導入された企業があるという。
だが、こうしたルールについては、現在では、多くの企業が導入しているわけではない。この種の過剰なマナーというのは、ネット上で噂になる中で拡散したものであり、決して実態を反映してはいないと考えるべきだろう。機能追加に関しては、Zoomの運営サイドが「謎ルール」の噂を信じて過剰反応したという評価もできる。
日本の企業の場合、確かにオンライン会議のマナーが問題になることはあるし、企業内研修を行う動きもある。ただ、その内容は「発言時以外はミュートにして雑音を遮断」とか、「表情によるイエスノーはハッキリと」といった、極めて常識的なものが多い。ちなみに、日本企業の場合は、初期のセキュリティーの問題などを嫌ってか、Zoomはあまり人気がなく、MicrosoftのTeamsが好まれる傾向があるようだ。
中にはコスト意識の高い企業の場合、社内会議では最初と最後の挨拶以外は顔出しをしないで、共有された資料の画面だけを見て、あとは音声で会議を進めるというケースがある。確かにビデオ情報の送受信は、ネットワークのリソースにしても、ハードの消費電力という意味でも負荷はあるので合理的な判断ではある。
一向に進まない教育現場のオンライン化
そんなわけで、日本でも民間ではコロナ禍という経験で、在宅勤務やリモート会議が急速に普及している。その一方で心配なのは教育現場だ。まず大学に関しては、オンライン授業は相当定着しており、アメリカと状況は大きくは変わらない。問題は高校以下である。まず、現在(2021年1月)の日本では感染拡大の深刻な地域では緊急事態宣言が出され、飲食店の営業が厳しく規制されると同時に、職場では7割リモートという努力目標が出されている。けれども、全国の小中高に関しては、ほぼ平常授業が続いている。
ということは、アメリカのようなオンライン授業というのは、現時点では日本の小中高の場合はほとんどゼロということだ。これは、昨年3月に行われた一斉休校の結果が特に感染抑止にならなかったということもあるが、他にもさまざまな理由がある。
まず、学校の側ではノウハウがないし、設備もない。教科書は紙のままだし、PDFを使ってペーパーレスにする文化もない。相変わらずテストは赤ペンで採点して返却するし、通知表には教師も保護者も捺印する。それ以上に問題なのが、各家庭にPCがないということだ。日本ではある時点からビジネス環境以外のネットワークの利用が、ほぼスマホ一本となっており、一般家庭におけるPCやタブレットの普及率が著しく低い。その結果としてオンライン授業はなかなか成立しないということになる。
20年3〜5月、全国で多くの学校が休校した際には、それでもリモート授業が模索された時期があった。だが、多くの場合は、双方向のリアルタイムの授業ではなく、生徒は教員が作成した動画を閲覧するという形態が主であった。これならスマホでの利用ができるからだ。ただ、それも一部の学校の一部の教員に限られていたようだ。
感染抑止ができるのなら、学校を開き続けるのもいいかもしれない。だが、21世紀の現在、危機に際しても対面と紙のコミュニケーションに縛られている姿というのは、小学生はともかく、中高生にとっては本当に良いことなのか、疑問が残るのは事実だ。
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