Q. 今秋からミドルスクールの子供。どのように指導したらよい?
この秋から子供がミドルスクールに上がります。小学校と違い中学校での学習は大変だと聞きます。子供をどう指導したらいいのかアドバイスをください。
A. 成績だけで判断せずに精神的に温かくサポートを
松本輝彦(INFOE代表)
子供の自主性を育てる現地の中学校
現地校の、小学校から中学校への指導方法の変更の理由は、アメリカ社会の伝統的な教育の考え方の中の「16歳で自立」にあります。中学に入ると、「自分で考え、行動し、責任を持つ」自立のためのトレーニングが始まります。勉強や学校生活を通して「自己管理」を自分自身の体で経験するような環境に、子供たちは放り出されます。
親や大人に放り出された中学生は、仲間同士で助け合います。その人間関係が、時に「友達からのプレッシャー」として中学生の肩に大きくのしかかり、大人には理解できないさまざまな行動の原因となります。
学級担任から教科担任へ
小学校との最も大きな違いは、授業が学級担任制から教科担任制に変わることです。
現地校の先生は、それぞれの教室を持っているので、教科担任制に変わることにより、生徒が時間割に応じて教室を移動することになります。小学校より広いキャンパスを、授業終了後の数分の空き時間に、ロッカーから教科書やノートを取り出し、大急ぎで次の教室へ移動します。先生は教室にいますので、始業のベルが鳴った時に教室の自分の机に着席していないと、遅刻とみなされます。このように、生徒自身が行動することが「自己管理」のトレーニングの第一歩です。
小学校との違いは、学習指導にも現れます。特定の科目を担当する中学校の先生が100人以上の生徒を教えることは、めずらしいことではありません。そのため、先生が生徒1人1人の学習状況を細かく把握することが困難で、宿題・テストなどの成績を通しての指導が中心になります。多くの生徒を複数のクラスで教えるために、そのクラスの学習指導のルールが大きな意味を持ってきます。
生徒指導の違い
友達・親・大人からの精神的プレッシャーは、学校・授業の欠席や遅刻・早退などの出席の乱れとして顕著に現れます。また、一段と難しくなった学習内容の成績の変化は、出席の乱れとともに、学校生活だけではなく、学校外での生活の変化も示すサインとみなされます。そのため、出欠や成績の変化に注目して、生徒指導が行われます。
出欠管理は学校の事務室が、成績管理はカウンセラーが担当するのが普通です。出欠・成績に急激な変化が見られた場合は生徒本人を呼んで、その理由を探ります。問題が認められた時には、必要に応じて保護者に連絡を取り、カウンセラーを含めて三者面談を行います。面談で問題が解決できなかったり、友人関係でのトラブルが認められた場合などは、学校区(school district)の心理カウンセラーなどを交えて、より丁寧な指導が行われます。
オープンハウスに必ず出席
「自己管理」を行わせて「自立」させるトレーニングが始まる中学ですが、生徒がその試練を乗り越えるためのサポートは、学校や学校区の中に準備されています。その具体的な内容を、保護者が直接確認できる貴重な機会が、新学年が始まってすぐに開かれる「オープンハウス」です。
生徒の日常の勉強に最も関わりの深い、教室内での学習や成績の付け方などのルールは、それぞれの教科を担当する先生の裁量の範囲が広く、クラスによって大きく異なります。各クラスのルールは、学年の初めに生徒に伝えられます。
「オープンハウス」では、教科担当の先生がルールの詳細を、直接保護者に説明してくれます。特に、成績や評価の具体的な内容を保護者が知っておくことは、時に理解不十分でトラブルを抱える子供のサポートに不可欠です。このように貴重な情報収集の機会であるオープンハウスには、ご夫婦揃って必ず出席してください。
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中学生の時期は、身体だけではなく精神的・心理的な発達の著しい思春期にあたり、生活にさまざまな変化を生じます。日本の学校以上に「自立」を求める現地校、友達、そして保護者からのプレッシャーに、中学生は苦しみます。そんな困難な時期を過ごしている中学生を、「成績」だけで判断せず、精神的に温かくサポートしてあげてください。
(2007年7月16日号掲載)
Q. 英語が苦手な中学生は、どんな勉強をすればよいか?
渡米して3年目になります。先日、7年生になった息子の現地校の先生との面談で、「『日本人の子供はよく勉強する』と言われるのに、彼は成績を上げようという努力をしない。このままでは、留年の可能性すらある」と言われました。小学校では、成績もそこそこで、楽しくやっていました。今後、どんな指導をしていけばいいのでしょうか。教えてください。
A. 中学の勉強は難しくて当然。親も子も根気よく予習することが大切
松本輝彦(INFOE代表)
「日本人の子供は、よく勉強し、成績もいい」は、昔、現地校の先生が数多く口にした言葉です。しかし、そのプレッシャーに苦しんだ子供たちがいたものです。こんなことを聞いたのは久しぶりです。ご相談のケースは、もっと具体的にお聞きしなければならない事柄がありますが、ここでは、中学生が抱えるであろう一般的な問題について考えてみましょう。
中学校の授業
教科担任制の中学校になると、各教科の先生は子供に会うのは1日1コマだけで、1日で100人以上の生徒を指導します。生徒1人ひとりの学習状況を把握しているのは、カウンセラーだけになります。しかし、そのカウンセラーも、何百人もの生徒を担当していて、コンピュータに入力された生徒の学習や出席情報を基に判断するのが精一杯です。
7年生には、この中学校のシステムに適応できない子供が多くいます。1日中、教室から教室へ移動する学校生活になじめず、勉強への集中力や努力が欠如します。
英語力
日本の学校での学習同様、現地校でも小学校4、5年生から、書き言葉中心の学習に入ります。この年齢で渡米して、英語の書き言葉での学習に遭遇した子供が、2、3年で周りについていくのは大変です。英語だけではなく、実は日本語すら完成していない、渡米に最も厳しい年齢であることを理解してください。
学習内容
学校での勉強は、言葉だけではありません。各科目の内容を理解することが要求されます。日本語で学んだことのない、基礎的な術語さえ聞いたことのない内容を、新しい言語で学び、理解するのは、時間をかけて努力するしか方法がありません。
学習は積み重ね
「日本人の子供は、簡単なエッセイやレポートさえ書けない」と、現地校で教える友人に言われたことがあります。当然です。アメリカ人の子供は、低学年からエッセイを書く基礎的なトレーニングを何度も受けてきているのですから。そんな練習をしたことがない日本人の子供が、いきなり書けるわけがありません。中学校の勉強は、キンダーからのさまざまなトレーニングで得たスキルを前提にしているのですから。
中学生の大変さ
このように小学校から上がったばかりの中学生は、他の学齢では見られない問題を抱えます。もちろん、この問題に加えて、思春期、反抗期の苦しみが加わります。この年齢の子供の指導には、親の根気と継続した努力が必要です。
最初にすること
まずは、「自信を持たせる」ことです。英語・社会以外の数学・理科の勉強で成績を上げるサポートを始めてください。ハンデの少ない科目の成績向上で自信を持たせるのです。基礎学力が付いてないからといって、英語の学習をしても即効性はありません。算数か理科の日本語での予習が効果的です。予習がないと、次の日の授業でも何を勉強しているのかわからずに、お客さんになってしまいます。その章で、何を学ぶのか知ることが、第1の目標です。その内容を、日本語で説明してください。
指導するのは、言葉も学習内容も理解できる日英バイリンガルの家庭教師が最高でしょう。しかし、週1回では効果半減です。図表の簡単な説明や、基礎的な計算問題の解き方は、お父さんやお母さんもできます。親が「苦手だ」と言ってしまっては、子供はやろうとはしません。多分、親にとって1番難しいのは、「子供に冷静に話す」ことでしょう。しかし、その努力が、子供にとってどれほど問題の解決につながるかを想像すれば、声も小さくなるのでは。学校の成績が少しでも上がれば、自信もついてきます。その先は、子供自身の努力に期待です。
(2004年2月16日号掲載)
Q. 宿題が大変で毎晩遅くまで勉強。転校も真剣に考えています
ミドルスクール7年生の娘がいます。ホームワークが本当に多くて、毎日何時間も夜遅くまで勉強してやっと終わらせられるくらい。楽しみにしているアクティビティーを欠席することもしばしばです。娘は心身共に疲れてしまっており、我が家では転校も真剣に考え始めました。
A. 子供の現状を把握し、学校から具体的なアドバイスをもらうのが先
松本輝彦(INFOE代表)
ホームワークや家庭学習の量が多くて、お子さんがトラブルを抱えているご相談です。解決案を、手順を追って紹介しましょう。
具体的な解決案
1. お子さんの現状は?
まず、お子さんが家庭学習に長時間かけている勉強の内容について、お子さんに次の質問をして、回答を表にまとめてください。
①どの科目か? 内容が難しいのか、苦手科目なのか
②どんな学習内容か? 数学なら計算問題か、図形の学習か
③どんなタイプの課題か? 教科書やプリントか、エッセイやレポートか
④何時間くらいかかるか? 科目ごとの週平均と最大時間数
2、担任の先生に会う
ミドルスクールでは、教科ごとに先生と教室が異なるのが一般的です。ホームワークが多すぎる教科の先生1人1人に、「何時間くらいの家庭学習を想定してホームワークを出しているのか」を聞いてみてください。そして、お子さんの回答表を見せて、先生の意見を聞いてください。
もし、先生が「そんなに時間がかかるはずがない」と言うのであれば、お子さんの学習方法に問題があるのか、その理由は何か、解決法はあるのか、などの具体的なアドバイスを聞いてみましょう。
3、カウンセラーと会う
それぞれの先生の想定している時間数の合計が予想通り大きなもので、到底お子さんがこなせないような学習量ならば、次にカウンセラーに会います。学校としての家庭学習の想定時間数を確認してください。お子さんの回答表と最も時間のかかる教科の宿題や課題の資料を持参して、実情を訴え、アドバイスをもらいましょう。
4、クラスの変更を考える
教科担任とカウンセラーから納得のいく説明がなければ、クラス変更が可能かどうか調べます。学校や学校区によって異なりますが、習熟度別クラスを組んでいるミドルスクールが多くあります。習熟度の高いほうからオナーズ、レギュラー、シェルター(ESL)などが典型です。
もしお子さんがオナーズのクラスにいるならば、レギュラーに変更するのも1つのチョイスです。どのクラスでも学習内容は同じが原則ですが、学習進度や宿題の質・量、指導方法などに差がありますので、クラスを変更することで、家庭学習も楽になるはずです。
クラス変更は、教科担当の先生とカウンセラーのOKが必要でしょう。納得がいかない理由でクラスの変更が認められない場合は、校長への直談判となります。
5、転校する
最後は学校区(School District)に相談に行くこともできます。転校は、通学区域のある学校では、転校先の学校の許可などが必要です。また、転校先の学校ではどんな指導をしているのか、よく調べる必要もあります。
学習のサポート
教科担任の先生から具体的なアドバイスがあった場合は、お子さんの学習をご両親がサポートすることも考えてください。
現地校では、4~6年生で徹底してエッセイの書き方の基礎を指導し、7年生以降ではその指導を前提にエッセイを書かせます。この基礎練習が充分にできていないために、エッセイに苦しんでいる日本人の子供が多くいます。このタイプの子供には、ご両親や家庭教師などによる、日本語での書き方説明が効果的です。
時間がかかる理由として、これまで学習したことのない内容の宿題を1人でがんばってやっているケースを多く見てきました。
米国の学校教育の特徴
アメリカの学校では、スタディースキルのトレーニングも大きな目標にしています。そのトレーニングの中には、与えられた課題について調べてレポートを書く、ブックレポートを書くなど、時間のかかるものが多くあります。トレーニングですので、生徒のレベルが上がると、より内容の豊富な宿題や家庭学習を与えて、練習量を増やしていきます。宿題が多いのは、現地校での学習が進んでいる証拠です。
アメリカの教育は上がるにつれて、日本にはないトレーニングが受けられます。こうして身に付けたスタディースキルは、日本の帰国子女受け入れ校から「宝物」と評価され、期待されています。
(2006年4月16日号掲載)
Q. アメリカの学校の成績はどのようにつけるのですか?
中学生の子供を持つ母親で、日本から来たばかりです。成績のつけ方について、アメリカの公立校ではどのようになっているのか教えてください。
A. 成績のつけ方は学校区により違う。個々の努力を反映した評価が一般的
松本輝彦(INFOE代表)
「子供のジャーナルのノートを見たが、英語のスペルが間違っていたり、主語や動詞がめちゃくちゃな文を書いている。なのに、先生はその間違いを指摘していないし、訂正もしていない」。こんな、お母さんからの苦情をよく聞きます。
アメリカは「絶対評価」、日本は「相対評価」
成績のつけ方は学校区で大きく異なります。ここでは、一般的な「評価」の例とその考え方についてみています。
アメリカの学校では、子供の評価は「絶対評価」によることがほとんどです。この方法には
①客観的な評価基準(例えば統一試験)に対して、どのレベルの成績が取れるか
②一人一人の子供の学習上の到達目標に対してどれだけ達成できたか
の2つの評価方法が含まれます。
中学レベルになると、レギュラークラスでは①の方法を、レギュラークラスの基準で評価するのが困難なESLクラスでは、②の方法が取られる学校区が見られます。どちらにしても、子供一人一人の努力を反映した評価方法になっています。
日本の学校で採用されている「相対評価」は、特定の子供の学力がクラス全体の中でどの位置にあるかを示します。40名のクラスだと、最も良い「5」の子供と、最も悪い「1」の子供が、各クラスに必ず2名ずついます。クラスの大部分は「3」です。この方法だと、クラス間や学校間の格差が問題になるため、日本の学校でも絶対評価を採用する都道府県が、徐々に増えてきています。
評価される3つの項目、「学力」「努力」「態度」
アメリカでは子供の学校での生活に対して、学力・努力・態度の3項目が評価されます。
■学力(ACADEMIC)
勉強の成果に対する評価です。宿題・試験・小テスト・プロジェクト・レポートなどのアカデミックな課題に対する成績をまとめたものです。
先生により異なりますが、ほとんどの先生は、前記の課題のそれぞれ全体の成績に対する割合(%)を決めておいて、そのうちの何%を生徒が獲得したかで、成績を決めていきます。例えば、宿題(30%)のうちの80%を取ったとすると、30×80=24%で、宿題の成績として24%を獲得したことになります。同じ計算を他の課題すべてに行って、学期の終わりに82%を獲得したとすると、別表「学力」の評価に示した成績範囲(80-89%)の成績が取れたことになり、「B」がもらえます。
■努力(EFFORT)
学力の評価は、学習の結果に対する評価ですが、「努力」はその成果を上げるために、どのような努力をして勉強したかに対する評価です。例えば、学力の評価が「C」であっても、その成績を上げるために個人的に非常な努力をすると、先生は努力に対する評価で「A」をつけます。もちろん、その逆もあります。
■態度(CITIZENSHIP)
学習態度に対する評価です。学校は勉強だけ教えるところではなく、「良きアメリカ市民を育てる」ことが公教育の大きな目標とされています。他の子供への思いやりがあり、ルールを守り、他人を尊重した態度が取れ、協調性がある、などの態度を示したり、態度の顕著な向上が見られた場合は、「秀でている」として「O」の評価が下されます。その評価により、子供の授業中の態度を垣間見ることができます。
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「日本の学校では成績は学期の終わりに先生が決めるもの」でしたが、アメリカの学校では、「自分の成績は自分の努力の結果」と考えるようになります。この成績のつけ方の違いが、子供の努力の差となっているようです。
(2005年4月16日号掲載)
Q. 成績低下で自信喪失。現地校での勉強方法は?
7年生の息子は3年前に渡米し、現地校で学んでいますが、1学期の成績がC、D、Fばかりで、これまでで最低でした。最近は「どう勉強したら良いのかわからない」と、自信を失っています。日本では小学校生活を楽しみ、成績も良かったのです。将来の進学の準備よりも、現地校での普段の勉強で、子供に自信を取り戻してやりたいと思っています。どのように勉強させれば良いでしょうか?
A. 成績評価方法を理解し、スタディー・スキルを身につける
松本輝彦(INFOE代表)
ご相談のお子さんに必要なのは、現地校で良い成績を取るための勉強方法のトレーニングをすること、特に重要なのは、家庭学習の練習をすることです。
最初に現地校の成績のつけ方を理解し、それから具体的な対策、勉強法を考えてみましょう。
現地校での成績評価方法
秋の新学年が始まってすぐの「Back to School」で、教科担当の先生が、成績評価の基準・ルールを保護者に説明します。宿題、課題、レポート、小テスト、中間・期末テストなどの評価がどのような割合で成績に反映されるか、課題などを期限より遅れて提出した場合の評価などが具体的に示されます。もちろん、生徒自身にも十分説明されます。時には、保護者・生徒から確認のサインを求める先生もいます。
例えば、宿題の評価が「A」ならば4点、「C」ならば2点、未提出ならは0点というようにポイントが与えられます。その合計が、その時点での獲得可能な総ポイント数の何%かで成績が算出されます。91%以上ならA、81~90%ならばBというように、先生や学校によって評価基準が決められています。先生は常に宿題やテストなどを記録し、その時点での評価を把握しています。各生徒の記録をプリントして、配布してくれる先生もいます。ですから、日本と違って現地校では、いつでも生徒自身が自分の成績を知ることができるのです。
「日本の時に比べて、3倍は勉強している」と、多くの子どもが言います。誰でも、返却された宿題や課題にその都度「D」や「F」の評価がついていたら気になります。そして、その理由が、「適当にやった」「提出が遅れた」など自分自身でわかっていたら、成績改善のために、どうすべきかを自覚できます。その結果が3倍の勉強量なのです。
なぜ成績が悪かったのか
成績に「D」がついているのは、日々の学習である宿題や課題がしっかりできていない、ということに尽きます。ほとんどの先生は、中間・期末テストだけでは良い成績を取れないように、日々の学習をしっかりやることで「C」が取れるように、成績評価基準をデザインしているからです。「宿題を含めた家庭学習の標準時間数」を学校や学校区が決めているのもそのためです。
お子さんの1学期中の成績の推移について、特に宿題や課題などの家庭学習の提出状況や評価について、詳細に振り返ってみてください。提出を忘れた(していなかったのかも知れません)から「F」、いい加減に提出したから「D」だったのではありませんか。もしそうならば、成績が悪かったのは、勉強がわからなかったからではなく、家庭での学習を怠っていたからです。
家庭教師に勉強方法を教わる
一緒に宿題や課題をして、勉強方法を教えてくれる「家庭教師」を探してください。小学校高学年から現地校で勉強してきた人で、日本語で説明できる人がベストです。高校生や大学生で十分です。できるだけ頻繁に来てもらってください。
家庭教師の候補者には、「5段落エッセイが書けるか」「レポートには何が必要か」「ノートの取り方・書き方を知っているか」などの質問に答えられる人にお願いしましょう。
実はこの質問は、中学校の先生が「小学校で当然身につけているはず」と考えている勉強方法、いわゆる「スタディー・スキル」を聞いているのです。ご相談のお子さんのように、小学校高学年で渡米した場合は、これが身についていないので、それを教える必要があります。それが、家庭教師の役割なのです。
スタディー・スキルは「宝」
「点数を取るためだけの勉強方法をすすめている」と思われるかも知れません。しかし、それは誤解です。スタディー・スキルこそが、日本の教育では得られない、アメリカで教育を受けた子供たちの「宝」なのです。その理由については、別の機会にゆっくりご説明しましょう。
今は、スタディー・スキルをお子さんに身につけさせることを考えてください。成績が上がることをお子さんが体験したら、きっと自信が戻ってくるでしょう。
(2007年1月16日号掲載)
Q. テストで良い成績でも「A」が取れません。
現地校の中学生の母親です。私の子供は、いつもテストでは良い成績なのに、「A」が取れません。どうしてでしょうか?
A. 家庭学習に問題があるかもしれません。
松本輝彦(INFOE代表)
お母さんは、お子さんのクラスの先生がどんな成績の付けけ方をしているか、ご存知ですか?
まず、各クラスの成績の付け方、特に、テスト以外にどんな項目の成績を基に、科目の評価(A-F)をしているのか確認してください。
中高生であれば、学期の初めに、成績の付け方や教室でのルールが書かれたプリントを受け取って、それらについて説明を受けているはずです。そのプリントに保護者のサインを求める先生もいます。また、秋の新学年が始まってすぐにあるオープンハウスに出席されたことがあるならば、保護者の方ご自身も説明を受けているはずです。ご記憶はありませんか?
アメリカの学校のほとんどの先生は、成績の付け方(項目・評価基準)についてルールを作り、それに基づいて評価をしています。その評価方法については、児童生徒・保護者に公表しています。
現地校での児童生徒の学習評価は、一般的に、試験・宿題・課題などを基にして決められています。ほとんどの先生が、例えば、試験30%・小テスト20%・宿題30%・授業参加20%など、項目別の配分を決めています。その配分をより細分化して、学期中に宿題を15回出した場合、宿題の評価がAならば2点、Bならば1.5点など、毎回の得点を与えます。
このように評価のルールがはっきりしていますので、先生に聞けば、生徒は自分自身の成績を、学期中いつでも知ることができます。最近では、インターネットで毎日の成績が見られるようにしている学校区や学校も増えて来ているようです。
「日本の学校の時よりも、3倍も勉強するようになった」。こんな言葉を、子供からよく聞きます。その理由を聞くと、「日本の学校では学期の終わりに通知表をもらうまで、自分の成績はわからない。アメリカの学校では、先生の成績の付け方がはっきりしているし、毎日の宿題やテスト結果がすぐに成績の上昇下降に反映される。自分の成績は、自分の勉強の結果と自覚している」という趣旨の答えでした。
子供たちの学校生活への評価は、ここで紹介した学業成績(Achievement)の評価のほかに「学習(就学)態度(Study Habit / Work Habit)」や「生活態度(Citizenship / Social Attitude)」の評価があります。「学習態度」は、指示に従う・課題を時間内に終わらせる・ノートの整理ができる、などの勉強の仕方について、「生活態度」は、共同作業・自己コントロールなどの授業中の生活態度についての評価です。
現地校から送られてくる成績書(Progress Report / Report Card)の内容や表記の仕方は、学校区、小・中・高の学校レベルによっても大きく違っています。しかし、それらの評価内容や方法・基準がわかると、子供の学校生活全般がよりはっきりと見渡せるようになります。
ご相談のように、テストの成績がいいのに評価が付かないのであれば、宿題・課題・レポートなどの家庭学習に問題があるかもしれません。
先生から学習の記録をもらってみてください。テストの成績や家庭学習の課題など、学期の初めから日付順で詳細な学習記録をプリントアウトしてくれるはずです。それらを見て、宿題・課題の提出の有無とその評価を確認してください。その記録を見せて、お子さん自身の記録・記憶と差がないか確認してください。
もし、家庭学習にも問題がないなら、次に、お子さんの学校では、どんな点数で「A」の評価を付けるのか、確認してください。「Aは90%から100%」などと、点数の範囲で評価が決められています。お子さんの点数は、その範囲に入っていますか?
もう1つの可能性は、お子さんの授業中の態度です。授業に積極的に参加しているかどうか、例えば、ディスカッションで自分の意見を明確に述べたり、授業中に何度発言しているかなどが、学習成績の評価に加味されている場合もあります。
それでも、はっきりしないようなら、先生の記録の間違い・記録漏れなどの可能性もありますので、先生に直接問い合わせてみてください。
(2008年4月16日号掲載)