『Friday Night Lights』ロケ現場レポート!

新年特別企画

Zach Gilford
シカゴ出身。ノースウェスタン大学卒業後、映画『The Last Winter』『Rise: Blood Hunter』やテレビ『Law & Order: Special Victims Unit』等を経て、『FNL』のナイーブな高校生マット役で活躍中
 
Adrianne Palicki
オハイオ出身。俳優を目指してLAに。『Lost in Space』の映画化で、ジュディー・ロビンソン役を射止めた他、TV『North Shore』『CSI』『Smallville』などに出演。『FNL』の不良女子高生タイラ役で活躍中
 
Scott Porter
ネブラスカ出身。オーランドのユニバーサルスタジオで芸能活動を始め、東京ディズニーランドでも働く。『Altar Boyz』『Toxic Audio』で数々の賞候補に挙がるほどの実力派。『FNL』で半身不随の元スター選手を演じる
 
Taylor Kitsch
バンクーバー出身。2002年、NYでシーラ・グレイの門下生となり、03年故郷に戻り、映画『Snakes on a Plane』『The Covenant』などに出演。TV『Godiva』『Kyle XY』を経て、『FNL』のティム役で活躍

「Friday Night Lights」
Fri 21:00-22:00(NBC・Drama)

 
オースティンの大学のアメフトチームのコーチとなったエリック・テイラー(カイル・チャンドラー)は、ディロンに残した家族とチームが気になっていた。1年で州チャンピオンにまで育て上げたチームが、後釜コーチのえこひいきと軍隊式訓練で元の木阿弥になったと知り、舞い戻って来るのだが…。
半身不随のジェイソン(ポーター)、スターの座を追われたマット(ギルフォード)、チームを追い出されたティム(キッチ)、殺人事件に巻き込まれたタイラ(パリッキ)など、悩み多き高校生が赤裸々に描かれる

私の好きなアメリカが詰まった『Friday Night Lights』(FNL)。2006年秋から欠かさず観ている。残念ながら視聴率は今ひとつで、これほどの秀作も生き残るのに四苦八苦。
制作陣、キャスト、広報にも友達ができ、ロケ現場に招待された。シーズン2の撮影が始まったばかりの現場でお目にかかったのは、主役エリック・テイラーを演じるカイル・チャンドラー以下、若手俳優4人。
美しい学園都市オースティンで、初日に案内されたのはマット(ザック・ギルフォード)の粗末な家。撮影班が動くのも苦労するほどの空間しかないが、本作がリアルなのは地元の民家や建物を借りて撮影しているからだ。父のイラク出征後、アルツハイマーの祖母の世話をしながら、フットボールの練習に励む高校生マットを演じるギルフォードは、画面と変わらない好青年。
「番組のファンとして、今後何がどうなるか? と心待ちにしています」と語るのは、番組のドキュメンタリー式撮影の関係上、放送を観るまで、編集時にどのカットが使われるか不明という裏の事情がある。

ポーターの初めての本格的芝居

夕方、タイラ役エイドリアン・パリッキと会った。舞台風の即興の芝居については、「ゲスト出演するベテランでさえ、戸惑っているのを見ると、いかにユニークな撮影をしているか改めて感じます」と言う。
夏休みにゲスト出演した『Supernatural』で、自由に動き回っていたらNGが出て、「テープが貼ってある位置で台詞を言わなくちゃいけなかったんだ!」と再認識。本作はカメラが役者を探してくれるので、自由に動き回れ、自然な芝居ができる環境になっている。
出番がないにも関わらず、わざわざ来てくれたスコット・ポーター。シーズン1はいきなり半身不随になり、両親やガールフレンドを気遣うあまり、自分はおざなりにしていた。やっと自分と向き合い、「ディロンにいるべきか」「コーチ助手を続けるべきか」などを考える。
「自分をありのまま受け入れた時、新たな人生が始まると体験者から学びました」と語る。車椅子の演技はスタントマンを使わず、自分でこなす頑張り屋さんだが、「これが初めての本格的な芝居」という発言にびっくり。数年前、東京ディズニーランドで歌って踊った体験や、規律正しい日本から戻って来た時の逆カルチャーショックについても語ってくれた。
インタビュー後、中古車販売店でのシーンを見学させてもらったが、撮影は真夜中まで続いた。お疲れさま。

テレビ経験の浅い僕らを信用してもらっている

2日目は、荒れ野原を撮影のために整備した球場に案内された。番組終了時には、地元に寄付する予定とか。
スターになる要素を持ちながら乱行が祟り、チームから追い出され、波瀾万丈のシーズンを送るティム役のテイラー・キッチ。父親に捨てられ、親代わりの兄にも見捨てられ、どんどん深みにはまって行く。おまけに、新任コーチはティムの宿敵スマッシュに肩入れする。
本日のシーンは、二日酔いで練習に現れたティムへの体罰。8回目にやっと監督からOKが出て、キッチより撮影を見ている方が疲労困憊してしまった。
大人に裏切られてきたティムは人間不信。自暴自棄になりかけている時に、信頼していたテイラーが戻って来る。「チャンドラーは役者として尊敬できる大先輩だから、今後のからみが楽しみです」と語る。
舞台風の撮影方法は役者に自由を与える反面、場面を把握する責任が重くのしかかるが、「テレビではまだ経験の浅い僕らを信用してもらっているので、やり甲斐があります」と話すキッチは、あれだけの重労働をこなしたにも関わらず、涼しい顔だ。
翌日、観光にと思って立ち寄った街角には、見慣れたベースキャンプが。町中至るところで撮影しているのに、オースティンの地元民は意外にも無関心。私が番組の宣伝までして、帰途についた。

[業界コボレ話]
放送作家ストの真っ最中に行われた海外の放送局向けインタビューは大盛況。現在、主にABCで放送中の番組に出演する俳優70人が5分間、1対1の質疑応答に応じてくれた。なかには最近のスキャンダルに関する質問を恐れてレポーターを1人に限定する「おっかなびっくり」組や、当日のドタキャン組もあったが、楽しい4日間だった。
これまで多数のインタビューをしたが、放送用となると俳優の緊張度が高い。私はテレビレポーターではないので、相手が気持ち良く発言できる雰囲気作りが仕事。しかし、顔の知れたレポーターともなると、自分がどう映っているかが優先で、俳優に気を遣う余裕などない。「どんな質問をしているのだろう?」と考えてしまった。

俳優 ジェームス・パーソンズ

演じたい役=はまり役の稀なケース

James Parsons
テキサス州ヒューストン生まれ。ヒューストン大学で演劇専攻、大学院ではコミュニケーション/テレビ/映画を研究。劇団のニューヨーク公演時にエージェントが付き、仲間と集団引っ越し後、舞台で活躍。テレビ『Ed』『Judging Amy』のゲスト出演、CF、映画『Garden State』『The Great New Wonderful』等を経て、2007年『The Big Bang Theory』のシェルドン役に抜擢された成長株。本拠地はブルックリンだが、番組収録のため現在LA在住。

今年、オタクが主人公の話題作の中で、唯一好調の『The Big Bang Theory』。昔ながらのコメディー形態で公開録画されている本作の成功は、物理学者シェルドンを演じるジェームス・パーソンズの名演技によるところが大きい。リハーサルの合間に話を聞いた。

現実にオタクをご存知ですか?

パーソンズ(以下P):小学校の同級生に紙を食べる変な子がいました。今思えば、頭が良すぎて、僕たちとは比べものにならないレベルのことを考えていたのかなと、時々、あの子を思い出します。奇人変人扱いされた体験は誰にでもあるのでは?

シェルドンは自覚症状のないオタク、レナードはいやいやオタク。このバランスが絶妙!

P:天才児が大人になって、社交の場でもつい真理の探求癖が出てしまう。真実や結果しかない科学の世界では、礼儀や婉曲な表現は無用の長物ですから。レナードはシェルドンを理解できる、天才と凡人の間を行き来するオタクです。

演技上、1番苦労することは?

P:台詞を覚えるのにこれほど苦労したことはありません。舌がもつれるような専門用語をいかにも自然に口にしながら芝居するのに、神経がピリピリ(笑)。

内容がわからないと、台詞が覚えにくいということですか?

P:何を言っているのか、まったく不明ということもありますが、シェルドンの「万事を明確に」の使命感を表現するために、言葉を正確に発音したいと思う僕の完璧主義のせい。

創作者ローリーは“Beautiful mind”を描きたかったそうですが、どの業界でも天才は子供のようでは?

P:天才は情熱の対象がすべてで、一喜一憂が尋常ではありません。だから人間として成長しないのか、萎縮してしまうのか? 感情は科学に貢献しないから不要と決めてしまったのかも知れませんね。センサーを通さず言葉を発するのは、子供の本質。子供のように振る舞っても社会が許すのか、許してもらって当然と思っているのか。

役者になりたいと思ったのは?

P:小さい頃から映画スターになると宣言していたようです(笑)。高校時代、『Noises Off』という芝居で、演じる喜びとでき映えが同等になったことがあり、これで生きて行こうと決めました。安定を求めた時期もありましたが、大学を休学して手当たり次第挑戦したら、脇役が転がり込んで。以来7年余り役者を。小さい頃から順調に歩んで来たと言うか、苦労した感覚がないラッキーな人間です。

今回の抜擢は一大チャンス。ローリーに「はまり役!」と言わせたゆえんは?

P:役作りに全力投球したから!? パイロットシーズンには無数の脚本を読みますが、演じたい役とはまり役が一致した稀なケース。台本を読んだ時に、この役なら誰よりもうまくできると思いました。後悔しないように役作りに時間をかけ、何を要求されても即興でできるように準備してオーディションに臨みました。プロデューサーが揃うオーディションも稀で、2人の前で実力を発揮できたのも星の巡り合わせ! 幸運の扉が開いた時、飛び込む準備ができていたということですね。

[業界コボレ話]
WGA会員である放送作家が遂にストを決行した。DVDとネット配信収益が争点で、撮影所と作家側の歩み寄りは今の所見られない。ストは予想されていたので、随分撮り溜めしていたものの、毎晩生で録画する深夜のトークショーが第1の被害者。『The New Adventures of Old Christine』や『Two and a Half Men』を始めとする公開録画番組や『Desperate Housewives』『The Office』に被害が及んでいる。
例年1月再開の『24』は、順延を発表。『Lost』は8話まで収録済み。今シーズンは8話+中休み+8話で計画していたらしく、1月に再開される。
ドラマが盛り返した矢先のストは、リアリティー再興を示唆。1月のプレス
ツアーが危うい! 他人事ではない!!

創作/制作総指揮者 ハート・ハンソン

起業家と雇われ社長の関係

ヘビメタのギタリストの道を断念後、トロント大学で英文学と政治理論を専攻。小説コンテストに入賞し、自転車カナダ横断日記を地元新聞に投稿。修士号取得中に宿題で書いた脚本をCBC局が購入してテレビ界に入り、『Traders』でジェミニ賞受賞。1999年、エージェントに逆らってLAに移住。『Cupid』『Snoops』を経て、『Judging Amy』では3年で制作総指揮まで昇格。『Joan of Arcadia』制作に関与後、2004年『Bones』を創作。

現役の法人類学者が書き下ろした小説の主人公を基に、ハート・ハンソンが創作した『Bones』は、人間ドラマ色の濃い科学捜査モノ。火曜日放送の『Bones』と『House』は、いずれもカナダ勢の作品。『House』創作者のショアと密かに、「カナダの日」と呼んでいるとか。本場での運試し秘話を尋ねた。

プロデューサーの役割はシーズンごとに進化しますか?

ハンソン(以下H):3年目は新鮮さが薄れて行く分、ファンをいかに引きつけておくかが課題。50話余り制作したので、「◯話と似てない?」という会話が出るようになりました(笑)。

創造過程にワクワクするのが放送作家だと思いますが、番組が落ち着くと、創作意欲が湧いてきませんか?

H:仲間がパイロットを撮っていると聞くと、ムズムズしますね(笑)。「もうたくさん!」と思ったら、後継者に任せて新作を手がけるかもしれません。番組創作と制作指揮は、起業家と雇われ社長の関係ですから。

カナダでご活躍だったのに、なぜLAに?

H:『Traders』のジェミニ賞をもらいに舞台に向かう途中、潮時か? と。「大リーグで運試ししたい」とエージェントに言ったら、「絶対無理」のひと言に発奮したものの、40近くで売り込みに行くのは惨めでした。当時放送していた番組の中で、リサーチなしで書ける『Ally McBeal』を名刺代わりに書いたので、LAではコメディー作家のレッテルを貼られて。

ドラマがお好きですよね?

H:『Cupid』の後、『Judging Amy』でスタッフライターに雇われましたが、創作者バーバラ・ホールに気に入られたのは、感性が似ていたから。どの番組でも創作者と同様のレンズを持ち合わせていて、そういう先輩が番組を制作していたのはラッキーでした。大家族で育ち、皆が何を考えているのか観察しながら大人になりました。シーズン1でボーンズの口癖だった「どういう意味?」は、息子から「お父さんの口癖だ!」と指摘され、意味を分析してドラマ
材料にしているのだと(笑)。

FOXのお抱えプロデューサーになられた経緯は?

H:デビッド・ケリーの『Snoops』を自ら辞めたのに、なぜかFOXに推してくださったようです。番組の創作が任務ですが、パイロットが番組にならない場合は、同社が制作中の番組を手伝うのがお抱え。僕の契約は6年になりますが、中には遊んでいる人もいますよ。

『Joan of Arcadia』が打ち切られ、未だに残念無念。

H:天才ホールの番組立ち上げの助っ人に駆り出されました。僕はFOX、ホールは当時ソニーのお抱えだったので、普通は考えられないことですが、13話ならと。神様に翻弄される女子高生のドラマはもっと続けたかったですね。

放送作家にアドバイスを。

H:既存の番組のカラーやスタイルを変えずに書けるかどうかが登竜門です。既存の番組の脚本と、オリジナル作品のパイロットの脚本が揃うと鬼に金棒。人を唸らせるほど良いサンプルを書けば、必ず誰かの目に留まります!

[業界コボレ話]
40人の子供が大人の監視なしで、ゴーストタウンを切り盛りするリアリティー番組『Kid Nation』に、すっかりハマっている。
町への貢献度を称え、子供評議員が贈る2万ドル相当の純金の星を巡り、大人の世界と同様の策略が渦巻く。人目につく作業のみを買って出るずる賢い子や根回しに余念がない子を見抜く賢い子供たち。見かけで人を評価する美少女コンテスト荒しの子だけが騙されるのは実に痛快!
日本では刹那主義の気力のない子供が増える一方だが、この番組を見る限り、米国の少年少女は捨てたものではない。持って生まれた直感や無邪気さを守ってやれば、大人顔負けの知恵を発揮してくれそうだ。希望が湧く。

編集者 エリック・ゴールドファーブ

今を逃したらいつ? の気力で

アリゾナ生まれ。アリゾナ大学でメディア芸術を専攻、97年LAに移住。制作助手から始め、編集助手としてドラマ『The Chronicle』『SpecialUnit 2』等に関与。00年、編集者に昇格、スピルバーグの『Taken』を経て、ノンフィクションに転向。『Burned』『What Should You Do?』『Totally Busted』で編集担当。05年より『The Amazing Race』の編集で活躍中。リアリティーで05年よりエミー賞を3年連続受賞した、今注目の成長株。

これまで十数人の編集者と仕事をして、縁の下の力持ちの存在に気づいていた。07年度エミー賞候補者のパネルインタビューで、「リアリティー番組は編集者の媒体」と熱く語ったエリック・ゴールドファーブ。『The Amazing Race』で3年連続、最優秀ノンフィクション編集賞に輝いたゴールドファーブに尋ねた。

3度目のエミー賞、おめでとうございます。

ゴールドファーブ(以下G):初回は05年、受賞で夜勤から解放されたのが何よりの贈り物でした(笑)。編集は地下牢での孤独な仕事なので、陽の目を見たのもうれしいです。

昔から編集の仕事に興味が?

G:大卒の若僧が映画監督になれる訳がないので、制作進行係(PA)で業界に。半年ほど観察し、ライターか編集ならと的を定めたら、編集助手職が降って湧いて。Avid(編集ソフト)を習得するのに、通勤時間が惜しくて1カ月ほど車で寝泊まりしました。ヘマばっかりでしたが、必死だったので、クビにはなりませんでした(笑)。2年半で編集者になり、00年からフィクションを3年余り、リアリティーに転向して4年。

フィクションとリアリティーの編集の違いは?

G:脚本があるフィクションでは、1時間ドラマで処理する映像が13~14時間、リアリティーでは200時間が普通。僕はドラマで技術を覚えましたが、リアリティーはデジタル化が大仕事。

膨大な量の映像を43分に編集するプロセスは?

G:経験を積めば、必須の場面が200時間のどこにあるか察しがつきます。各チームの行動に筋が通るように、上位チームから順を追って編集し、放送時間の2~4倍のラフカットにします。起承転結が決まったら、映像の続き具合を点検、音を入れてから再チェック。1話あたり4~5週間で「編集者版」が上がり、プロデューサー/制作総指揮者の変更に1週間。最終決定はCBSですが、「あーでもない、こーでもない」が2~3週間続いて放送版になります。

『The Amazing Race』はいつからの関与ですか?

G:シーズン6です。ある番組の編集にルームメイトを雇ったお返しに、『The Amazing Race』の編集を辞める時に僕を推薦してくれました。

今の仕事を選んで良かったと思いますか?

G:既にコンセプトが固まったフィクションより、創作力を活かせるのが醍醐味。フィクションだと、10人が編集しても似たり寄ったりですが、リアリティーは客観的な差が出ます。

リアリティー番組では、放送後に参加者の不平不満を耳にしますが…。

G:契約書を結んだ時点で肖像権を放棄した訳ですから、局側は映像を自由に使えます。人間はプレッシャーをかけられると本性を出しますから、通常繕って生きている人の言い訳では?

将来の夢は?

G:5年後にはテレビ番組を世に出す計画。映画創りが夢ですが、テレビの方は話が進んでいます。『The Amazing Race』での実績を足がかりに飛躍したいです。今を逃したらいつ? の気力で、全力投球です!

[業界コボレ話]
遂に出た! 今秋初の打ち切り。予想通り、ミュージカル・ミステリー『Viva Laughlin』。だが、『Cavemen』を始めとする数本が、まだ生き残っている。
今年は低視聴率の番組を各局が辛抱強く見守っているのかと思いきや、放送作家のストのため、早々に打ち切ると穴埋めできないからだと判明。1月のプレスツアー開催も危ういとか。スト決行となった1988年は、非組合員作家にチャンスが巡って来たと聞いた。スタッフライターへの近道かも?
おすすめの新番組で更新が決まったのは『Mad Men』。『The Big Bang Theory』『Private Practice』『Samantha Who?』。『Pushing Daisies』は出だしは好調だったが、毎週視聴率が低下して不安。『Big Shots』は下手をすると…。

俳優 カイル・チャンドラー

苦しみに一抹の光を見出す

11歳までシカゴ郊外、高校卒業まで南部の片田舎で育った。ジョージア大学で演劇専攻中にABCのタレントスカウトに合格、『China Beach』の端役、『Tour of Duty』の脇役を経て、『Homefront』で一躍主役に抜擢された。『Early Edition』で役者として地位を確立、最近では映画『King Kong』、TVドラマ『Grey’s Anatomy』のゲスト出演でエミー賞候補に。昨年よりピーボディー賞受賞の秀作『Friday Night Lights』のコーチ役で活躍中。

昨夏からインタビューを申し込んでいたが、LAにいないことを理由に広報に再三断られ、業を煮やしてロケ地まで出向いた。持ち前の温厚な人柄で誰からも慕われているカイル・チャンドラーの仕事ぶりを目の当たりにして、『The Lyon’s Den』で演じた悪役に信憑性がなかった訳が頷けた。

『Friday Night Lights(FNL)』は、私がオクラホマ留学中に体験した「アメリカ魂」を描いたようなドラマです。

チャンドラー(以下C):僕も11歳で、シカゴ郊外の屋敷街から、ジョージアの田舎に放り込まれた口(笑)。カルチャーショックの上、南部訛りがわからなくて…。

その体験が『FNL』のエリック役の土台ですか?

C:高校時代(79年)に、KKKが町に来ると大騒ぎ。反面、時間がゆっくり流れ、人情味溢れる世界も体験。引っ越し当時、隣家は白人家族2軒、アフリカ系が1軒の水道もない赤貧の村。でも暗くなるまで遊んでいると夕食を振る舞ってくれ、美味しい物は客人に、という人情がありました。あの時の心温まるムラ社会体験が土台。

フットボール体験は?

C:州チャンピオンを獲得したばかりのチームに入り、コテンパンにやられました。障壁を乗り越える方法、努力を重ねれば何でもできる等、スポーツを通じて自分探しをするって大切だと一目置くようになりました。翌年父が亡くなって辞めてしまって以来のフットボール。攻撃本能がないから、コーチで十分!(笑)。

エリックとタミーは、現実はもちろん、テレビでも珍しい「対等な夫婦」ですね?

C:「これが普通では?」って感じです。最初にブリットン(妻役)と、どういう夫婦にしたいか話し合って、絶対に離婚しない、させないでくれとプロデューサーに頼みました。

ずっと役者になりたいと?

C:兄姉が法律、医学、心理学の道に進んだので、いずれかに、と思ったりもしましたが、大学3年まで目標もなく…。たまたま会った役者の紹介でオーディションに受かり、初舞台で拍手喝采を受けて病みつきに。大学を中退してハリウッドに来る勇気はどこから? と、今でも謎。ABCがお抱え俳優を雇った最終年の12人に入って以来、楽観主義クラブの会員(笑)。仕事にあぶれたことがありません。

映画『King Kong』のおどけ役は、息抜きとして貴重な存在でした。

C:ジャクソン監督から電話をいただいて出演が決まってからも、カイル違いじゃ? 「マクラクランの間違いでした」って言われないかとビクビク(笑)。役作りを徹底的に話し合う民主的な監督で、最初のシーンで笑いがとれたので、色々と提案したらどんどん膨らんだ役です。『FNL』でも即興の台詞やユーモアを盛り込む芝居が求められるので、予行演習になりました。

お手本は?

C:父が亡くなった時、心理学者の兄に「苦しみに一抹の光を見出せ」と言われ、肝に銘じて生きて来ました。人は辛苦を嘗めて大人になる、試練に希望を見出せば、苦しみではなくなると諭してくれた兄です。

[業界コボレ話]
占いによれば、今年は人生最高のラッキーな年。確かにエミー賞審査もしたし、念願の授賞式にも参加できた。登竜門テレビ評論家協会に晴れて入会できたし、『FNL』ロケ現場訪問のお誘いもいただいた。
私が夢に描いたデジタル録画装置も登場。同時間枠に4番組録画できる優れモノ。3本目から泣きの涙で諦め、再放送を祈っていたのは過去の話。
15年程前、好きな役者の名前を登録しておけば、自動的に録画してくれる機械が欲しいと言って笑われた。それが実現したのも今年。最新の商売道具の優秀さを嬉々として友達に話し、「仕事バカとはこのことか?」と笑ってしまった。2007年も残り少なくなったが、本の執筆依頼はいつ? ワクワク!

ニューシーズン・プレスツアーリポート

今年からケーブル局のプレスツアーに参加が許され、7月12日から計17日間の長~いツアーになった。ケーブル局は金持ちだ♪ 印刷代の高そうな凝ったパンフレット、番組にちなんだ手土産が席に山積みされる。ホテルに宿泊している評論家の部屋には、毎日つけ届けがあったらしい。
なかでもHBO主催のパーティーは、オシャレなブティックホテルのプールサイド、星空の下でスターらと歓談しながら、シャンペン、チョコレート、ロブスター、ステーキ食べ放題のうえ、帰りにお土産まで頂戴した。それでも昔より財布の紐が堅くなったとかで、口を開けば不平不満ばかりの評論家諸氏。ワクワク、ドキドキ、何にでも感謝感激する私が目ざわりな訳だ。
 
(c)Jason Merritt/Filmmagic

[業界コボレ話]
今秋の新番組の主人公がニューフェイスばかりと、前回書いたが、プレスツアーでもキャストや制作陣に必ず投げかけられた質問だった。
『House』のヒュー・ローリーは、「(ギャラが)安いからに決まってる」と苦笑する。二十数人に上るイギリス、スコットランド、オーストラリア、デンマークからの出稼ぎ俳優は、経費削減に必死の撮影所にとって、願ったり叶ったりのはずだったが…。「Dialect Coach(方言指導)」を雇って発音矯正しなければならないのは、誤算だった。アメリカ人役だから変なアクセントや意味不明の台詞は御法度だが、予算が組まれていない上、コーチの数に限りがあるという「需要と供給」の関係が、まったく考慮されていなかったようだ。
映画『SAYURI』で一緒に仕事をしたコーチは、猫の手も借りたい忙しさ。映画ではコーチは高給取りだが、年間の仕事数に限りがある。しかも、テレビは付け焼き刃で逸話をこなすため、最低1年はコーチが不可欠らしい。コーチ不足解決が先か? 打ち切りが先か? 意外な落し穴という裏話。

 
 

父は俳優、叔母は往年の歌手シルビー・ヴァルタンという環境で育ち、10歳で米国に移住したマイケル・ヴァータン。かつて『Alias』の主役ジェニファー・ガーナーと公私共に恋仲だったが、ガーナーがさっさとベン・アフレックとできちゃった結婚して、今は「花の独身」。
最新作『Big Shots』では、皮肉にも妻に浮気されて傷つく、繊細なジェームス・ウォーカー役を演じる。「共演者は皆家庭持ち、仕事が終わっても飲みに行く相手がいない、デートに花束を持参したいけど、どう解釈されるか不安で躊躇してしまう」とパーティーで打ち明けてくれた。
繊細過ぎるのか、失恋の傷口が塞がらず怖じ気づいたままか? 花でもシャンペンでも、いつでもお相手しますよ。スターにだって悩みはあるのだ。
 
(c)2007 American Broadcasting Companies, Inc.

[業界コボレ話]
今秋の新番組は『Lost』等の大所帯の群像劇からスケールダウンした「4人組」が主流。
『Desperate Housewives』男版と言える『Big Shots』は、結婚や恋愛に一喜一憂する男盛りCEO4人。庶民レベルの男4人組が毎日1台の車で通勤する『Carpoolers』。富も地位も手にし、『Sex and the City』のビッグになった、21世紀の女4人組の『Lipstick Jungle』と『Cashmere Mafia』。どちらに軍配があがるか?
犯罪捜査モノには手を出さないはずのABCは、女刑事、検事、検死官、レポーターが事件を解決する『Women’s Murder Club』で勝負。
懲りずに登場する群像劇は、『Cane』や『Dirty Sexy Money』。「恵まれていても悩みはある」と口を酸っぱくして言われてもねぇ…。共感を覚えないのは私のひがみ?

 
 

番組の制作陣やキャスト(局から評論家のあしらい方を伝授されていると聞く)が登場し、評論家の質問に答えるパネルインタビューを次々とこなすプレスツアー。私は強烈な照明が照らし出す舞台からも見えるかぶりつきに座るため、パーティー席上で、「最前列でニコニコしていた人だ!」と、覚えていてくれる制作者あり、「笑顔に救われたわ!」と、白状するマナ板のコイ状態のスターあり。
今年は距離が近かったのか、意思疎通が頻繁にあり、カイル・チャンドラーやマイケル・ヴァータンとの対話を目撃した仲間に冷やかされた。目が合うとニッコリの役者や、私を認めるや否や舞台から「元気?」と尋ねてくれるお馴染みも増えた。これだから止められない!
 
©2007 American Broadcasting Companies, Inc.

[業界コボレ話]
『On the Lot』は、監督志望者に毎週異なるジャンルの映画を作らせ、一般投票で勝者を選ぶ『American Idol』の映画版。DreamWorksの契約を手にしたウィルは、才能はもちろんのこと、人柄が抜群。
ハリウッドには、才能があってもなくても威張っている輩がごまんといる。人柄がいかに大切か体験した私は、「この人と仕事したいか?」探知機の針が敏感になった。夢を実現する険しい道を踏みしめて来た人には、ウィルの勝利は我が身のことのようにうれしかったのでは?
番組の低視聴率は、芸能界の内幕に誰も興味がないことを実証した訳だが、終盤戦に残ったのが好青年ばかりだったのは、視聴者も見るところはしっかり見ている証拠。女性が残らなかったのは遺憾だが、ウィルの映画に期待したい。

 
 

昨夏、私が「何かやましいことでも?」大賞を差し上げた『Shark』のジェームス・ウッズ。独りでまくしたて評論家を煙に巻いたが、今年は共演の美女ジェリー・ライアンとインタビューに登場。ウッズのセクハラ、差別発言は野放し状態。「PC (Politically Correct)で行きま賞!」を贈り、改善を期待する。
クリストファー・タイタスとジョシュア・マリーナが完全に仕切った『Big Shots』のパネルインタビュー。意味不明の答えだけでなく、内輪の冗談を交わし、繊細なマイケル・ヴァータンをからかうことしきり! 目立ちたがりの子供のような行動は目に余ったので、「お黙りで賞」を贈りたい!

[業界コボレ話]
私が応援していた『Friday Night Lights」がほとんど無視され、興味を失った矢先に、エミー賞取材に席を用意しますと言われた。引き受けたのは良いが、着て行く物がない! 仕事着は、埃だらけのセットのどこにでも座れるジーンズに限るので、ドレスなどすっかりご無沙汰。着飾っても女優に勝てる訳がないから、逆に目立たない方が良いと思うが、張り合っている広報のお嬢さん方もいて、「クライアントより目立ってどうするの」と意見したくなってしまう。
6年前は、ドレッシーなスーツで参加するつもりだったが、結局テロで参加できなくなった。「あのスーツで良いかな?」と思ったら、イブニングと指定された。仕方がないので、生まれて初めてイブニングを購入。奮発していたら、稿料から足が出てしまった。トホホ。

 
 

ABCの新番組『Dirty Sexy Money』のパネルインタビューに、久しぶりに登場したグレッグ・バーランティ。当コーナー初回インタビューで紹介したハリウッドの「希望の星」は、着実に輝きを増している。『Brothers & Sisters』の制作陣に加わり、サリー・フィールドのエミー賞受賞スピーチにもあがる大物になった。荒波に揉まれた結果か、(見た目も)昔より逞しくなってうれしい。
主役ニック(ピーター・クラウザ)の妻を演じるゾーイ・マックレラン。昔、『JAG』で海軍の下士官を好演したが、完璧な変身を遂げたため、パイロットを観た時も気がつかなかった。プロフィールを読んで初めて、「大人になったな」と改めて見直した。ますます輝いてほしい。
 
Photo: (c)2007 American Broadcasting Companies, Inc.

[業界コボレ話]
エミー授賞式会場への道が黒のリムジンやタウンカーで埋め尽くされた光景は圧巻だった。リムジンの横を車で走ると、「誰が乗っている?」と目を凝らす癖がついているが、この日は道行く人が覗き込んでくる姿が滑稽だった。どうせ見えないのだから、あの癖は止めようと反省。
授賞式は、出費の割には期待外れが私の感想。レッドカーペットを心ゆくまで楽しめなかった、会場1階が立ち入り禁止で、天井桟敷からスターを拝まなければいけないなど、プレスツアーの方がワクワク、ドキドキ度は何十倍も高いと再確認した次第。
だが、アメリカ・フェレーラが主演女優賞、『30 Rock』が最優秀コメディー賞に輝いた快挙は忘れ難い。助演女優賞を受賞したキャサリン・ハイグルは穴馬だっただけに、純粋にはしゃぐ姿が新鮮だった。

 
 

1年振りのプレスツアー初日。Hallmark局は、団塊の世代が対象なので、昔懐かしいタレントを起用したオリジナル映画満載だ。
映画の広告に登場した俳優エリック・ラ・サールはベントン医師を演じたベテランだが、『ER』のことを聞かれ「良い体験だったけど、過去をほじくり返してもムダ」と、けんもほろろ。確かにそうなんだけど…。私の大好きなカーターをいびる、高慢ちきな外科医は演技ではなかったと確信した次第。
一方、評論家に混じって昼食を共にした『Somewhere in Time』で名を馳せたジェーン・シーモア。6人出産した後も40キロを維持=霞を食べているとばっかり。食べ物を口に運ぶ瞬間を目にしてしまった!
 
Charlie Galley @ Getty Images

[業界コボレ話]
私も初参加させていただいた『Television Week』誌恒例の評論家投票2008年夏版が発表された。最優秀25作の1位に輝いたのは当然と言える『Lost』だが、これがエミーにつながるだろうか? 2位 『The Wire』、3位『30 Rock』。私の大好きなドラマ『Friday Night Lights』は5位で、視聴率1位を誇る『House』より上だったのはうれしい限り。ほかにもうれしいのは、コメディーの秀作『The Big Bang Theory』と『The New Adventures of Old Christine』の入選と、小粒のダイアモンドのような癒し系ドラマ『Eli Stone』が、かろうじて入選したこと!
驚きはCWの『Gossip Girl』が24位に入っていたことだ。ほかにいくらでも質の高い番組はあるのに! 理由が知りたい。
「最悪!」に選ばれたのは懺悔をクイズ番組にした『The Moment of Truth』。人の運命を弄んだ下品な番組だったから当然だ。
ただし、今年1月6日から6月20日までに未放送の逸話を放送していなければ、投票の対象にならない。脚本家のストで今年はスケジュールが大幅に崩れたので、投票したくても資格がない番組もあった。

 
 

ストの影響で、15話のみの尻切れトンボのまま、打ち切り? と懸念された『Friday
Night Lights』。10月からシーズン3が再開される。吉報! と喜んだのだが…。
よくよく聞いてみると、オリジナル番組が欲しかったDirecTVが制作に関与し、今回は13話限り。加入者を増やすための餌なのだ。従って、加入していない私はシーズン3が始まっても、指をくわえて眺めているしかない。
来年2月NBCで放送されるとは言うが、最初から応援していた番組をDirecTVにさらわれてしまったような気がするのは私だけだろうか? 積み残しされたような気分で、DirecTVに乗り換えるより、加入者を探して録画してもらおうと企んでしまう。
 
© SCI FI/James Tappin, © USA Network, All Rights Reserved.

[業界コボレ話]
6月下旬から、HBOやBBCのパイロットが届き、「この調子で地上波局の新番組も来るのか?」と思いきや…。パイロットが間に合わなかった『Crusoe』『My Own Worst Enemy』『90210』、変更だらけの『Life on Mars』『Eleventh Hour』『Privileged』、パイロットの海賊版をYouTubeで観ろと言う『Fringe』など、不安材料だらけ。
最たる例がNBC『Kings』のパネルインタビュー。タイトルや役名から時代劇を想像したが、プロモ写真はNYが舞台の法廷ドラマの雰囲気。プロデューサーの意味不明の説明に、数人が追求し続け、主役のイアン・マックシェインの逆鱗に触れてしまった。評論家に噛みついてどうする? 前途多難の番組だ!

 
 

『Ally McBeal』で、アリーの初恋の相手ビリーを演じたギル・ベローズを覚えておられるだろうか? 同じ役を長く演じたくないと早々に降板し、以来アリーの相手役は入れ替わり立ち替わりとなったが、番組は火が消えたようになってしまった。時々「ベローズはどうしたかな?」と思っていたら、FOXの『24』に出演しているらしい。11月のつなぎ編放送の宣伝にプレスツアーに駆け付けた(写真左端)。
映画、舞台、祖国カナダのテレビに出ていたらしいが、ビリーの面影はどこにもない。髪が薄くなったからか、長めの髪はボサボサ。革ジャンにジーパンで、目に入った瞬間「これ誰?」と思ったほど。歳と共に魅力を増すジョージ・クルーニーの秘訣は何なのだ?
 
© FOX

[業界コボレ話]
米国のテレビ業界もアイデア不足なのか、放送作家ストでシリーズ化が間に合わなかったのか、昨年の海外タレント輸入ブームに変わり、海外の作品を米国版に焼き直すブームのようだ。
話題は、イギリスで放送された『Life on Mars』。デビッド・E・ケリーが米国版にすることで期待が集まったが、フタを開けてみたら、パイロット撮影後にケリーは降りてしまい、主役のジェイソン・オマラのみが残って新制作陣とNYでやり直し。
ほかにもイギリスの作品は『Worst Week』『Eleventh Hour』、オーストラリアから拝借した『Kath & Kim』、珍しいところではイスラエルの番組を焼き直した『The Ex List』など。このブーム、吉と出るか?

 
 

LAに越して間もない頃、『Alias』で注目を浴びたJ.J.エイブラムスにインタビューした。まるで言葉にして発しないと、脳が一杯になるかのように早口で話すエイブラムスを前に、「何歳かな?」と思うばかり。あれから5年余り、14歳にしか見えない!
 
話題作『Fringe』のインタビューに登場。『Felicity』以降は複雑怪奇な筋で有名だが、新作も1話でも見逃すと意味不明になるかと質問が出た。「まだ放送中に、久しぶりに『Alias』を観たら、3分で混乱したよ。『これ誰だっけ?何の関係があるんだ!』と、画面に向かって叫んだほど。あれじゃ、誰も理解できないよ!」と創作した本人の懺悔。あー、良かった。終盤には『Alias』を放棄した私、頭が悪い訳ではなかったのだと納得。めでたし、めでたし。
 
Photo: © FOX

[業界コボレ話]
エミー賞とはスケールが違うものの、テレビ評論家協会も毎年秀作を表彰する。昨年は、『Friday Night Lights』が皆のお気に入りだったので、数部門で表彰されたが、授賞式に参加できず悔しい思いをした。
 
今年は晴れて投票、授賞式にも参加。私のお気に入りは『Mad Men』で、3賞を受賞した。
 
HBOの『John Adams』はミニシリーズ賞を受賞、制作総指揮のトム・ハンクスのスピーチに会場が湧いた。今や映画界の大物だが、駆け出しの頃は『Bosom Buddies』というコメディーで女装していた。ハンクスが『Mad Men』の創作者マット・ワイナーと歓談する姿は感慨深かった。「ここから傑作が?」と、想像力が膨らんだからだ。

 
 

シャンペン色のドレスで、『The Starter Wife』のプレミアを知らせるデブラ・メッシングのUSA局のCF。ハル・ベリーに次いでメッシングのベストドレッサーぶりは有名なのだが…。
 
小枝みたいな身体に、袋のようなグリーンのドレスでインタビューに登場したメッシング。胸元がはだけて、気にしている様子。これってテープで留められるはずでは? ダサいポニーテールもいただけない。評論家仲間に聞いたところ、プレスツアーではベストドレッサーのタイトルは当てはまらないらしい。いつもノーブラで露出度の高いドレスで現れて、目のやり場に困るとか。レッドカーペットに立つ時は、優秀なスタイリストを雇っているに違いない。雲泥の差にがっかりしたというお話。
 
Photo: © NBC/Chris Haston

[業界コボレ話]
職業柄、言葉が放つエネルギーに敏感になり、師と仰ぐオープラ・ウィンフリーを真似て、ニュース番組を日常から閉め出した。心の糧になる番組を厳選して観るようにしている。
 
9月1日号でご紹介した『The Bonnie Hunt Show』が、まさにそれ。「幸せを呼ぶ」トーク番組には、ハントと同類項の地に足の着いた善人が登場する。
 
9月11日のゲストは幼友達に腎臓を寄贈したオースティンと、普通の大学生に戻れたジョナスの若者2人。テロ追悼話でなく、「人間、捨てたものではない!」と心が温まった。貴重なトーク番組も、低視聴率では打ち切られるので、同番組をぜひ観ていただきたい。公開録画体験したい方、この番組は狙い目かも?

放送作家/プロデューサー/監督 スティーブン・ネイサン

情熱を実現した世界一幸せな人間

バッファロー出身。ニューヨークで演劇を勉強、1971年ヒット・ミュージカル『Godspell』のイエズス役で一躍有名になり、ニューヨークとロサンゼルスで舞台、映画、テレビに出演。76年テレビ『Laverne & Shirley』の脚本を書いて以来、放送作家に転身。『Everybody Loves Raymond』『Family Law』『Joan of Arcadia』など300話余りを執筆。現在『Bones』の制作総指揮者の1人として活躍中。

好きなテレビ番組の中でも、『Joan of Arcadia』はソニー撮影所で仕事をしている時に、録画を見学させてもらったので思い入れが深い。創作者はインタビューに応じないので、番組制作者なら誰でも! と思っていたら、『Bones』のパネルインタビューで、スティーブン・ネイサンに出くわし、45話で打ち切られた秀作を偲ぶことができた。

『Joan of Arcadia』には企画から関与されましたか?

ネイサン(以下N):バーバラ・ホールとハート・ハンソンに会った翌年、ホールが『Joan…』を創作。シーズン1半ばで引き継ぎを探していると、ハンソンから連絡がありました。ちょうど仕事を探していたので、ハンソンから10日ほど引き継ぎしてもらって、番組終了まで関与しました。

脚本も書かれたようですね?

N:はい、すっかり惚れ込んだ番組なので。友達の死を高校生がどう処理するかを斬新に描いた逸話が、最も印象に残っています。大学進学で離ればなれになる主人公のジョーンとアダムの不安や、深入りしない決心など、心の機微を描いた心温まる自慢の番組でした。『CSI』に始まった科学捜査ドラマ全盛期で、生きる意味を模索する女子高生の話は、繊細かつ哲学的過ぎて色褪せて見えたのでは?

宗派を越えた「心の旅」ドラマでしたね。

N:神はこういうもの、人間はこう行動すべきと説くのが通常で、「神とは何か?」から入る画期的なドラマだったと思います。日常の現象を見て、偉大な力が宇宙を司っていると認識できても、それを何と呼ぶかは個人が決めること。今、制作しているミステリー『Bones』では、ブレナン博士は無神論者、ブース捜査官は敬虔なクリスチャンと、両極端に設定してあるので、信念を貫く2人に神について議論を交わしてもらいます。

『Family Law』は、映画『Crash』のポール・ハギス、『House』のデビッド・ショアと3人で制作しておられましたが、カナダ3人組ですか?

N:私はバッファロー生まれですから、近いと言えば近いですね。ハギスとショアは『Due South』を一緒に制作したカナダ組。ハギスとは長い付き合いで、制作が決まった時に声をかけてくれました。法廷ドラマを書くのも、制作も、この番組が初体験でした。

家庭裁判所で活躍する弁護士という内容の濃いドラマで、私は大好きだったのですが、気がついたら消えていましたね?

N:キャストが若者ウケしなかったのかな?(笑)。シーズン1は、番組のカラー設定に書き直しばかり。白黒の判定でなく、灰色の濃淡を表現する自由を満喫できる番組でした。

『Bones』は今までの番組とはひと味違いますね?

N:ハンソン創作なので、飛びつきましたが、謎解きドラマは初めて。数学の問題を解くようで、苦労してます(笑)。『CSI』は精巧に創られたドラマですが、私の好みから言うと冷たいと言うか、生真面目過ぎて、息抜きがないと言うか…。どんなに深刻な問題を抱えていても、笑える一瞬があるはず。それが人間でしょ?

舞台俳優から業界入りされて、転身はどのように?

N:1977年に出た『Busting Loose』で共演した友達と一緒に書いた脚本を、創作者ロウェル・ガンツに見せたら、即座に『Laverene & Shirley』のスタッフライターに迎えられました。5年ほど映画に集中しましたが、脚本が放送されるまでの即時性が好きで、テレビに逆戻り。役者は単なる将棋の駒、欲求不満がたまる一方だったので、はけ口が書くことでした。役者から入って、脚本を書いて、プロデューサーになり、監督もして、世界で1番幸せな人間です。情熱を実現できるって、稀ですからね。

好きな番組の打ち切りは、ファンにはショックですが、創作者にとっては泣きの涙ですか?

N:馬鹿と思われるかもしれませんが、制作して放送されただけで満足です(笑)。創作の過程が楽しくて。

放送作家を目指している人に。

N:私は幸い役者から転身したので、偉そうなことは言えません。現在放送されている好きな番組のカラーを的確に表現した一話を書いて、エージェントを探すことかな。新人ライターを育てる、気の長いエージェントが理想的ですね。

[業界コボレ話]
エミー賞候補が発表された。Academy of Television Arts & Sciences(ATAS)の新選考法のおかげで、今年は晴れて第2次選考会員となり、ドラマとコメディー各10本を5本に絞る過程に参加。エミーの歴史に参加でき、この上ない名誉!
以前は地味な秀作が候補にあがると、「さすが!」と業界人を賞讃したが、番組単位ではなく、選考日に観る逸話で採点する義務があるので、欠かさず観ている番組では、「えー! 何でこの話?」と、選択を疑うことしきり。
最優秀ドラマ候補にあがった『Boston Legal』は、1年以上前に見切りをつけた番組だったが、カトリーナ被災を扱った逸話は涙を誘った。どの逸話を提出するかが決め手という裏話である。最優秀逸話ドラマ部門と呼ぶ方がふさわしい!?

俳優/コニー・ブリットン

対等な夫婦なんて羨ましい!

ボストン生まれ。7歳でバージニア州の田舎町に引っ越す。学芸会の脚本を書く程、芝居に魅せられたが、ダートマス大学ではアジア学を専攻、中国へ短期留学した。同大卒業後、ニューヨークに引っ越し、演劇を勉強。舞台、映画での活躍が認められて、テレビ進出のためロサンゼルスに。『Spin City』に配役され、ニューヨークに逆戻り。『The West Wing』『24』を経て、2006年より『Friday Night Lights』のタミー・テイラー役で活躍中。

マイケル・J・フォックスとコメディー共演経験もあるコニー・ブリットン。『Friday Night Lights』では、コーチの妻・タミー役を熱演し、エミー賞候補の噂もある実力派に飛躍。夏休み中も、番組のプロモーションに多忙なブリットンに聞いてみた。
 
(c)2007 Turner Broadcasting Systems

『Friday Night Lights』は、1話から質がまったく落ちなかった稀な秀作ですが、秘訣は?

ブリットン(以下B):パイロットはピーター・バーグが監督しましたが、制作が始まると、私たちはロケ地のオースチン、ライターはロサンゼルス、監督は毎話替わる、ショーランナーも違うなど、正直言って不安でした。でも、台本も良いものが上がってきたし、撮影班も第一級…、プロ意識と番組への情熱が快挙の秘訣かしら。

バーグ監督のビジョンが、全員に浸透していたんですね。

B:本から映画、映画からテレビと展開する4年間に、何をどう語りたいかが固まった、バーグの情熱の結晶です。原作は1988年のフットボールシーズンをルポしたものですから、テレビ用に登場人物を創作し、制作に入る前から役作りについてとことん詰め、キャストと制作陣にビジョンが明示されました。

フットボール文化を体験した私には、懐かしいドラマであり、アメリカが今抱えている問題も盛り込まれていて、新鮮でもあります。

B:私はバージニアの田舎育ちなので、都会っ子には想像できないほどフットボールは好きですよ。でも、テキサスってフットボールに対する思い入れが尋常でない、根が深いと感じる貴重な体験の毎日でした。

テレビ版では、タミーを芯の強い南部の女にするとバーグ監督が約束してくれたから、この仕事を受けたと、プレスツアーで発言しておられましたが?

B:フットボールのドラマに女の出番があるの? と不安だったし、従来、コーチの妻/主婦/母親=刺身のツマ、だったので、古い習わしを打ち破れるのだろうか? と心配でした。タミーだけではなくて、女性がしたたかに描かれているので文句なし。大満足です!

エリック・テイラー(コーチ)の口癖「女房に聞けば間違いない」は、下手をすると恐妻家の逃げ口上に聞こえますが、タミーは人生の羅針盤として絶対的信頼を得ていますね。

B:エリックとタミーは真の伴侶だと思います。女房の尻に敷かれた男が、嫌味や皮肉で言っているのではなくて、深い信頼の絆が根底にある理想的な夫婦。対等な夫婦なんて羨ましい。

配役はどちらが先に?

B:カイル・チャンドラーに決まるまでに、随分時間がかかったようです。私は映画版でも、コーチの妻役をやらせていただいたのですが、当時、まだテレビドラマ『24』に出ていて、「どうしよう?」と迷っていたなんて信じられないわ(笑)。

アジア学専攻から俳優という転向に驚きました。

B:小さい頃から芝居が好きでした。異文化や未知の世界を見て博学になると、芝居の助けになるかな? と思って、中国に短期留学して、中国語をちょっと。丁度、中国への関心が高まっていたし、第1外国語を決める時に、バージニアの田舎では絶対に考えられない言語が良いと思って。少々遠回りはしましたが、芝居で食べていけるのは、夢のような話。

夏休みはどうされますか?

B:久々にLAでゆっくりしたいとも思うし、エチオピアの孤児の目から見たドキュメンタリーを3年も編集しているので、今年こそ完了させたいとも思うし。秋にオースチンに戻った時、充実した夏だった! と言えるように頑張ろうと、意気込むだけ(笑)。

シーズン2も素晴らしい演技を期待してます。

B:去年の夏、プレスツアーでおっかなびっくり番組発表した時から、ずっと応援してくださって感謝してます。良い作品と信じて支持してくださった評論家から元気と勇気をもらいました。皆さんの応援と口コミがなかったら、とっくの昔に打ち切りになっていたと思います。

[業界コボレ話]
2007-08年の新番組の中で、「面白そう!」と思った3作品。
まず、『Big Shots』は結婚や恋愛に一喜一憂する、女性化した男4人組の物語。マイケル・バルタンとディラン・マックダーモットが主役のちょっと美味しいドラマ。目の保養にもなりそう。
ホッとするのは『Samantha Who?』。記憶喪失になって自分が「嫌な女」だったと知り、善人になろうと試行錯誤しながら第2の人生を歩むサム(クリスティーナ・アップルゲイト)のコメディー。明るく、楽しく、笑える!
リアリティー番組では、『Kid Nation』。8~15歳の子供40人が、ゴーストタウンを切り盛りする様子を記録したもの。大人顔負けのパイオニア精神と民主政治が期待できそう。

脚本家/制作総指揮 グラハム・ヨースト

米国の健全さ、懐の深さに脱帽!

トロントで生まれ育ったが、今年米国に帰化。大学卒業後、ニューヨークでテクニカルライターの仕事を5年、1987年LAに。『Hey Dude』で放送作家の訓練を受け、『The Powers That Be』『Band of Brothers』等を経て、2002年『Boomtown』で注目を浴びた。映画『Speed』『Broken Arrow』等、映画とテレビの世界で活躍。『Raines』が打ち切られ、『Band of Brothers』続編の脚本を手直し中。

1件の犯罪を複数の「目」で語る異色捜査ドラマ『Boomtown』を創作したグラハム・ヨースト。被害者と対話して殺人事件を解決する『Raines』でも、ヨーストらしいユニークな世界を映像化したが、いずれも短命に終わってしまった。「よそ者」の観点から米国を語る放送作家として、今後も大いに期待したい。

『Raines』が継続されなくて、とても残念です。

ヨースト(以下Y):今朝、娘の学校で話をする際に、パイロットを観せたんですが、映像がキレイなので、我ながら感心してしまいました(笑)。「新番組だったらヒットするかな?」程度の後押しだったので、仕方ないと思っています。NBCが空前のヒットを模索するのはわかるのですが…。

『Boomtown』も24話まで。あの体験から何を学ばれましたか?

Y:編集室で通しで観ると筋が通っても、コマーシャルでぶつ切りになって、「誰の視点だっけ?」と混乱を招いたので、HBOで制作すべきでした。物書きとしては、配役が良ければ良い本が書けるというのも実感しました。短時間で台本を書けると自負していましたが、テレビは時間との競争。「完璧ではないけど、この辺でいいか」の妥協ができるようになりました。でも、優秀な撮影班を雇えば、筋を書き換えて、方向転換が容易にできる媒体ということも学びました。

昔から脚本家を目指しておられたのですか?

Y:父がカナダの映画評論番組に出ていたので、芸能界にどっぷり浸かって育ちました。今でも、「最近、面白い映画観た?」で会話が始まるほど。それでも具体的に計画があった訳ではなく、大学卒業後2年程トロントで遊んでから、真面目にやろう! と。ニューヨーク大学で夏期講座を取ったし、友達もいたので、自然にニューヨークに足が向きました。『Soap Opera Digest』『Spy-Tech』『Vitamins & Minerals』など、原稿料を払ってくれるならどこにでも投稿して、5年(笑)。

腰痛からスパイ用具の記事まで、テクニカルライターとして活躍された後、芸能界への転向はどのように?

Y:出版社の友達を通じて、素敵な女性に会ったのですが、残念ながら彼がいて…。彼がNickelodeonで番組制作をしていて、皮肉にも仕事をもらいました。1年後、同局初のオリジナル番組『Hey Dude』のライターに起用され、本格的に放送作家になりました。2年ほどして映画の企画を思いついたので、友達に話したら面白いと言われて。『Speed』が生まれて、人生が大きく変わりました。

いつもユニークな世界を創造されますが、今後の企画は?

Y:『Band of Brothers』続編の本の手直しをしています。舵取りは、スピルバーグとトム・ハンクスに任せています。でも、『Boomtown』も『Raines』もアイデアから編集までやったので、いったん何もかも仕切ってしまうと、一部だけに関わるのは歯痒いですね。この2作はどうしてもやりたくて我慢してもらいましたが、ロサンゼルスに住んでいないので、家族にも負担が…。それを考えると、次は映画が良いかな? と。今のところ未定です。

米国に帰化されて、プレスツアーにミニ星条旗を持って登場されましたが、ユニークな観点は変わりませんね?

Y:「よそ者」の目で客観的に見ているから、ここで生まれ育った人とは違いますね。文化的背景が違うと、周囲を見るフィルターが違いますから。慣れっこになってしまって気がつかない点を指摘できるし、そういう観点を発表する機会があるのが米国の健全さ、懐の深さですね。

お手本にしてこられたのは?

Y:やればできる! と示してくれた父。何冊も本を出しましたから。それと、英国生まれ、トロント育ちで、『The Flying Nun』や『The Partridge Family』などを創作し、ハリウッドで大活躍したバーナード・スレード。背景がよく似ているので、希望を与えてくれた人です。
 
(c)2007 ABC FAMILY

[業界コボレ話]
2007-08年の新番組は、主役に新人を起用した番組が圧倒的に多い。ネームバリューがない分、内容で勝負に出るのか? と観たが、それも期待薄で、「ワクワク度」が上がらない。
『Sex & the City(SATC)』の原作者・ブッシュネルの本『Lipstick Jungle』のTV化と、『SATC』の制作者・スターの手になる『Cashmere Mafia』は、富も地位も手にし、”Mr. Big”になった現代女性を描く酷似作品のようだ。
コンピューターオタクがスパイに変身する『Chuck』、社交性ゼロのオタクコメディー『The Big Bang Theory』『The IT Crowd』、悟りの境地で事件解決に乗り出す元囚人の『Life』、元悪徳弁護士の『Eli Stone』は異色だが、長続きするか? 根暗ムードが続きそう。

監督/俳優/歌手/実業家 コニー・スティーブンス

「生きる=美しい」の方程式に書き替える

ジャズミュージシャンの両親の影響で、幼い頃からバンドで活躍。14歳で父に付いてロサンゼルスに移住し、映画『Rock-a-Bye Baby』でデビュー。ワーナー・ブラザース初のアイドルとして養成され、『Hawaiian Eye』のクリケット役で世界的に有名に。芸能界で活躍しつつも、Forever Springs化粧品で富を築き、実業家の手腕も発揮。俳優の地位向上のためSAG役員として活躍する傍ら、今夏初めて映画監督に挑戦、俳優とは逆の立場を体験予定。

『Hawaiian Eye』のお茶目な歌姫・クリケット役で全世界を魅了した、往年のアイドル、コニー・スティーブンス。そのスティーブンスにインタビューが叶って、感無量! 子供の頃、こんな日が来るとは想像だにしなかった。『Hawaiian Eye』以降、ほとんど見かけなくなったスティーブンスの近況を聞いたが、昔話に花が咲いて…。

ご両親ともジャズ界のプロ。芸能界入りを目指してLAに?

スティーブンス(以下S):父にくっついて越して来て、具体的な計画があった訳では…。好きなことをやっていれば、いつか認められるってナイーブに信じていました。

ジェリー・ルイスに抜擢されて、一躍アイドルに?

S:ワーナー・ブラザースに移って1年ほどゲスト出演して、芝居の実地訓練を受けた後です。当時は流れ作業の大量生産を目指した“Studio System”で、お抱えはベルトコンベアに乗せられて、撮影所の言いなり。でも、給料をもらって好きなことをさせてもらえるだけでありがたかったわ。「スターになりたい!」ではなくて、「次に何をさせてもらえるの?」って、無邪気に目を輝かせている17歳でした。『77Sunset Strip』が登場して、私立探偵モノが売れたから、私の番組の舞台はハワイにしてってお願いしました。ハワイのクラブで歌って本土に戻ったばかりで、ハワイが大好きだったので。まだハワイが州になる前のことよ。

クリケットは、テレビアイドル第1号だったそうですね?

S:独り暮らしの歌姫/カメラマン、しかも探偵の真似事までさせてもらうおてんば。当時は、どんな波紋を投げかけているか考えたこともなかったけれど、ずっと後になって脚本家と話していて、「働く女」の先駆けだったと気が付きました。女の自立に向かって視聴者の意識を少しずつ変えていたなんて、テレビの力って凄いわね!(笑)。

相変わらず魅力的な声なので、ジャズCDが聞きたいです。

S:アラスカの秘境で、目だけしか見えない完全装備でお土産物屋に入って口を開いたら、「コニー・スティーブンスじゃないか!」と地元の老人。中国でも声でバレてしまって、お忍び旅行はできないって娘が笑うの(笑)。番組が大ヒットして音楽活動を辞めてしまったことを、ビル・コスビーに「宝の持ち腐れ!」と、叱られたことがあります。ラスベガスで時々ショーを上演して満足してたけど、映画が終わったら、新しいアルバムを考えてみるわ。

実業家としても大成功を収めておられますね?

S:インフォマーシャルの出演依頼がありましたが、商品が気に入らず、「こうした方が良い」「あれを使ったら?」などと提案しているうちに、「納得のいく化粧品を作ってみたら?」と、言われて化粧品事業を始めました。離婚して、娘がまだ学校に行っていたので、収入になると思って飛び込みましたが、芸能界の仕事も続けられて…。もう15年になります。

慈善活動、俳優組合の役員もしておられますが、よく時間がありますね?

S:1日36時間あれば良いのにね。ブルックリン時代、祖母が作った差し入れをホームレスに届けて、食べるのを確認するのが、小学生の私の仕事でした。この歳になって、子供の頃の習慣を実行しているだけです。

今後の夢は?

S:7月から自作の西部劇を映画化します。随分前に書いたものですが、長い間映画にしたい、したいって言っていたら、友達に「自分で撮ればいいじゃない?」と言われて、決心しました。心の準備ができたので、ミズーリ州で撮影開始よ。

美しく歳を重ねる秘訣は何ですか?

S:キレイに歳をとるぞ! って宣言するのが第一歩。美=若さの方程式が崩れない社会では至難の業ですが、「美」を追いかけるのではなく、「生きる=美しい」の方程式に書き替えましょう! 心身ともに健やかになるには、しなやかさ、明るい展望、不平不満をためないこと。胸のわだかまりをさっさと処理して、滓をためないと、キレイに歳を重ねることができます。

[業界コボレ話]
『Grey’s Anatomy』シーズン3は、創作者のライムズがスピンオフに気を取られ、お粗末そのもの。シェパード医師の女々しさが、目についた。恋人メレディスが九死に一生を得たのに、生きる気力の希薄さを拒絶反応と読み取り、事故以来すねたまま。優柔不断を絵に描いたようなジョージが、妻ケリーとイジーの間を揺れ動くのは仕方ないとしても、女が強いから番組がもっていたと言うのに…。
夫とヨリを戻せないアディソンは、愛人マクスティーミーも放り出し、子供が欲しいとLAへ。誰よりも雄々しかったケリーまで、夫をつなぎ止める手段に「子供」ときた! 「動機が不純?」と問題にならない所が、昼メロに成り下がったと批判したくなる所以。

制作総指揮者/ヴィーナ・スード

ハリウッドって、意外と公平!

コロンビア大学の映画・テレビ学学士号、1999年にニューヨーク大学(NYU)の修士号を取得。ジャーナリスト、リアリティー番組の監督を経て、2002年ABC / Disney Writing Fellowshipを獲得。テレビ番組『Push, Nevada』で実地訓練を受けたが打ち切られ、『Cold Case』創作者に抜擢されて、シーズン1から関与。4年でスタッフライターから制作総指揮者に昇進、エリート街道まっしぐらのインド系アメリカ人。今後の活躍が大いに期待される有望株。

シーズンを重ねるごとに、いぶし銀のような味わい深さを放つ『Cold Case』。立ち上げ時から創作者を支え、遂に番組の舵取りを任されたヴィーナ・スード。出世街道まっしぐらのスードは、放送作家養成奨学金のおかげで、今日の自分があると言う。このいわゆる「徒弟制度」の効果のほどを聞いてみた。

修士号取得からハリウッドへはほんの数年ですね?

スード(以下S):1999年にNYU(ニューヨーク大学)を卒業して、リアリティー番組『The Real World』の監督の仕事にありつきました。ABC / Disney Writing Fellowshipを獲得して、ハリウッドに来たのが2002年1月。脚本家や放送作家を育てるための徒弟制度のようなもので、最初に手がけたのが『Push, Nevada』。プロに混じって創作過程を体験させてもらいました。番組は打ち切られましたが、幸運にも(『Cold Case』創作者の)メレディス・スティームに拾ってもらいました。女刑事って、ほとんどが刺身のつまでしょ(笑)。駆け出しなのに、女刑事が主役の番組で働けるのは光栄の至りです。

リアリティー番組体験は、冷たい目で見られませんでしたか?

S:低予算でササッと制作した程度の低いものと、一般的には批判されましたが、隠れてこそこそ観ている人も多かったので、制作体験やコツなどをよく聞かれました(笑)。裏話やここだけの話など、皆、興味津々で、話のネタに困らなかったし、脚本で評価してもらいました。ハリウッドって、意外と公平。

制作総指揮者(Exec. Producer)が、番組制作者の中では1番上の地位ですよね?

S:スティームにスタッフライターとして雇われ、ストーリー・エディター、上級ストーリー・エディター、副プロデューサー、プロデューサー、中級プロデューサー、副上級プロデューサーを経て、シーズン4でスティームと同じ、EPに昇進しました。

EPの仕事内容は?

S:スティームに替わって、番組の舵取り、ライター雇用/養成、監督選択など、制作の指揮役です。CBSや撮影所との接点でもあります。責任重大ですが、経験豊かなスタッフに囲まれているので、何とか…。

迷宮入りした事件捜査ドラマ『Cold Case』の制作で、1番のご苦労は?

S:年代も設定も、毎回舞台が変わるので、ミニ映画を1本撮るほどの労力がかかる点です。

テクニカル・アドバイザーを雇っておられるとか?

S:番組のモデルの現役刑事の携帯に電話して、仕事の邪魔を(笑)。セット常勤は、元LAPDの刑事さんです。

シーズンごとにどんどん良くなる稀な秀作ですが、秘訣は?

S:ビジョンを的確にライターに伝えられる頭の良いスティームは、番組のカラーやキャラクターをしっかりと定義して礎を築きました。お陰でライターは自由に好きな「家」を建てられます。間違った建材で家を建てようとすると、指摘される前にライターが気づきます。4シーズン分の台詞をすべて記憶しているライターもいるんですよ!

音楽もキャラクターと言えるドラマですが、選曲はどのように?

S:脚本を書くライターに任せています。筋書きと年度に合わせて、ヒット曲のリストをもらって選ぶ、1番楽しいプロセスです。CDが届いたら、聴き込んでムード作りに使います。音楽好きのライターは、好きな曲から物語を創作します。執筆中に「完璧!」と思っても、画像にかぶせると合わなくて、夢にまで見たシーンがコロッと変わってしまい、がっかりすることもしばしばなんですよ。

撮影所のライター養成課程はおすすめですか?

S:まともに正面からアプローチしようと思えば、まずエージェントを見つけないといけない。新人は経験がないから、エージェントは作品を読んでくれないという悪循環を避けられます。業界トップの重役やプロデューサーが、直々に手取り足取り指導しますから、放送作家を目指す人には、夢を実現する最短距離ですね。

[業界コボレ話]
米国テレビ技術科学アカデミー(ATAS)で、『Medium』の創作者グレン・ゴードン・キャロンと主役俳優が、舞台裏を披露するイベントに参加した時のこと。終了後、昨年インタビューさせていただいたお礼をと、キャロンを目指したが、既にファンに囲まれていた。
私の挨拶はすぐに終わるんだけどな…と、我慢強く待った。年輩の女性は、放送日を月曜日に戻せと粘り、アジア系の中年女性は自筆の脚本を手渡そうとした。脚本はエージェントか弁護士を通さない限り、絶対に受け取ってもらえないのが常識だが、食いさがる。
仕方なく1歩前に踏み出した途端、作家志望が般若の形相でギロリ。「ギョッ!」。「assertive」と「aggressive」の違い、聞いてないの!?

俳優/解放運動家 キャシー・ナジーミ

自信のない人が煙幕をはるもの

サンディエゴで生まれ育ったレバノン系2世。幼い頃から自作自演が得意で、サンディエゴ州立大学で演劇と女性学を専攻。芝居仲間と書いた『Kathy and Mo』をニューヨークでヒットさせて注目を浴び、1992年映画『Sister Act』で一躍有名に。テレビでは『Veronica’s Closet』やアニメ『King of the Hill』のペギー役の声優を経て、2006年11月より『Numb3rs』のフィンチ学部長役で活躍中。子育てと解放運動に多忙なため、今回の脇役は理想的と話す。

映画『Sister Act』で演じた無邪気なシスター・メアリー・パトリックは、ミッションスクール体験で傷ついた私を癒す力があった。ナジーミもサンディエゴ州立大学(SDSU)が母校と聞いてますます親近感を感じ、長年インタビューしたいと思っていた。画面で観る前向きの姿勢と逞しさは本物で、すっかり元気をいただいてしまった。

『Numb3rs』のフィンチ博士はバランスのとれた素敵な女性ですね。

ナジーミ(以下N):子育てに忙しくて、TV出演は考えていなかったのですが、嘘がないミリーに惚れました。「デキる女」は皆、ネコに囲まれて、寂しく冷凍食品を食べてる訳じゃないのよ! と、表現したくて(笑)。

創作者に会って感激したので、欠かさず観ています。

N:内容が内容だから、時々訳がわからなくなったりするけれど、「数学って意外と面白い!」と思わせるのは、並大抵の仕事ではありません。創作者の頭が良いってことね。

芝居への興味はいつ頃から?

N:歌ったり、踊ったりが好きで、政治に興味がある変な子でした。SDSUに入った時には、信条を芝居で表現したいという野望があって、演劇と女性学を専攻。”Sisters on Stage”という女性解放が目的の劇団で芝居をしましたが、大学でも演劇部の芝居には配役されませんでした。だから、友達のモー・ギャフニーと、ウーマンリブを面白おかしく描いた『Kathy and Mo』を書き下ろし、サンディエゴで2年上演して、ニューヨークに乗り込みました。最初はキャバレーで上演して、オフ・ブロードウェイからHBOスペシャルになりました。

女性以外にも、数々の団体のために奔走しておられますね?

N:ある程度名前が知れたので、今のうちって感じで、あちこちで講演したり、アラブ系アメリカ人、ゲイ、動物など、さまざまな団体の支援をしています。サンディエゴは、「ビキニ姿の金髪美女が日光浴している」イメージで、そこから外れるとよそ者扱いされるビーチタウン。子供の頃、「絶対に成功しない人」というレッテルを貼られ、学芸会に出してもらえない、演劇の授業さえ受けられないのけ者でした。「今に見ていろ!」と、劇場の案内係のバイトをして、プロの芝居をいっぱい観て、自作自演しかないと学びました。私の思春期の70年代は、ウーマンリブや人権運動華やかなりし頃で、体制に疑問を抱くこと、変えようと運動を始めることが奨励された時代だったから、活動することが当たり前になってしまいました。

日本人の俳優志望者に先輩からひと言。

N:尊敬する人が、いかにそこまで辿り着いたか研究することをおすすめします。100万人に1人しかハリウッドでは成功しない、型にはまらないからダメと、頭から否定的な業界人がごまんといますが、あれは「自分の仕事を取られるのでは」と、自信のない人が煙幕をはっているだけ。人生一度、可能性は無限!を信じて、挑戦しましょう。私でさえ「隙間」を見つけたのですから、誰でもやればできるはず。絶対に諦めないで!

[業界コボレ話]
3時間近く惨殺と謎解きを見せられた挙句、「えっ? 結局、何なの?」と、時間を無駄にされた映画『Zodiac』。
テレビ映画でも最近は2時間がせいぜい。面白くなければ、チャンネルを替えれば良い。おまけにテレビは無料だし、出かける手間も一切不要。
イベント性が良いと映画好きは言うに違いないが、忙しい私にはイベントもへったくれもない。さらに、「なぜ」を追求したがる日本人の悪い癖が遺伝子に組み込まれているせいか、猟奇殺人犯の動機が提示されないと、不満が募るだけ。
終止符を打つことが生きて行く上で大切と悟った今、1話完結型の人間ドラマ『Cold Case』や『Without a Trace』が、ますます光り輝いている。

俳優/オードリー・マリー・アンダーソン

(情熱+献身+やる気)×2

幼い頃からモデルをし、日本で働いたことも。ニューヨーク在住中に演劇学校で訓練を受け、エージェントに巡り会い、ロサンゼルスに。1994年『Beverly Hills 90210』の端役に始まり、『Once and Again』のカーラ役、『Without a Trace』等にゲスト出演。TV映画『A Painted House』や映画『Drop Dead Sexy』『Moonlight Mile』を経て、2006年1月より『The Unit』のキム役で活躍中。

『The Unit』のキム役、オードリー・マリー・アンダーソンと夫・ボブ役、スコット・フォーリーに会うと、話題は決まって日本。スコットは幼い頃の体験談、アンダーソンはモデル時代に回った九州の話。おまけにアンダーソンは、大の日本びいきのレストラン経営者の恋人と、昨年日本の市場調査に出かけた。シーズン2の撮影も残りわずか、初めての大役・キムの成長ぶりを聞いてみた。
 
ⓒ2006 CBS Broadcasting Inc.

キムが1番苦労の多い役ですね。

アンダーソン(以下A):夫の居場所も知らされない、上司夫人からは女の役目を諭され、キムは必死で抵抗しました(笑)。状況が掴め、キムの目標は家庭を守ることで、服従しかないと悟りました。我が道を行く女は強いけど、妥協できる女も別の強さを持っていると思います。

キムの抵抗を応援していたのに、最近の「長い物には巻かれよ」が残念です。

A:ライターはムラ社会順応を選んだので、簡単に「巻かれて」ほしくない私は、抵抗があります。シーズン1はあがき、2は服従。納得しての服従ではないので、3ではまた摩擦が起きるようです。

夫は職場での出来事を妻に打ち明けられない、妻も留守宅を守る苦労を夫に伝えない。それで夫婦は成立するでしょうか?

A:話し合いがないと、長続きしないでしょうね。でも、強い絆があれば、秘密の部分があっても大丈夫なのでは? 夫不在の暮らしを確立してしまうと、退職した時が…(笑)。

日本の熟年離婚がまさにそれですね。

A:相手が何を考え、どう感じているか不明のまま何十年も経つと、向き合った時には「こんなはずでは?」と、思うからでしょ。感情や意志の疎通がないと、人間って他人に戻ってしまいますね。

キムが夫の使命を夢で読み取ってしまう「Sub-Conscious」が斬新でした。

A:夢や第6感など超能力の域だったので、番組のジャンルから離れるのではと、躊躇したようですが、創作者のマメットが「やってみよう!」と。

俳優への転身は?

A:子供の頃から役者になりたくて、モデルは予行演習。お金も貯まったので、「いざっ!」て感じでね(笑)。ニューヨークにいる間に演劇学校に通いました。幸い、すぐにエージェントが見つかって、仕事が入るようになりました。

ロサンゼルスで仕事を始めて何年ですか?

A:7年前の『Once and Again』が、初めて役が付いた仕事。『The Unit』のキム役は、別の人でパイロットを撮影後、再度オーディションがありました。自分では適役と思っていなかったので、びっくり! 今考えると、気の強い女が求められていたから、私になったのね(笑)。

日本人の俳優志望者にアドバイスを。

A:言葉と文化の壁があるから、人の2倍も3倍も大変だと思いますが、(情熱+献身+やる気)×2かしら? 良い刺激をくれる人で周囲を固めて、もらったエネルギーを宇宙に戻すことですね。

[業界コボレ話]
地上波5局のうち、視聴率で言うと4位のNBC。今シーズンは話題作が数本出て、「質」を強調するものの、『Heroes』しかヒットしなかったので、気になるのは話題作の今後。
『Friday Night Lights』が、放送界で最も権威あるピーボディーを受賞して、おっかなびっくり6話のみ更新、『30 Rock』はシーズン2を迎えることになった。ベテラン『Medium』も6話のみの更新。放送時間を『Studio 60』に明け渡し、移転した先が『Lost』の裏。それはないよ!
視聴率が下がったのは編成の問題。おまけに、『Studio 60』を数話で打ち切ったNBC。視聴率が取れないのは当然と言える。「質」を謳うなら、もとの鞘に収めていただきたい。

脚本家/プロデューサー ジェニー・ビックス

おっかなびっくりの領域に追い込む

生粋のニューヨークっ子。広告代理店で5年間勤務後、コメディアンを目指してGotham City Improvに入団。舞台に立つより、脚本家の道を選び、ロサンゼルスに移住。『Seinfeld』『Dawson’s Creek』の逸話を執筆後、映画『What a Girl Wants』『The Nanny Diaries』の執筆も手がけた。『Sex and the City』で数々の賞を受賞し、『Leap of Faith』を経て、2006年より『Men in Trees』で活躍。夢はミュージカルの創作。

ウッディー・アレン監督を崇めながら大人になった、生粋のニューヨークっ子、ジェニー・ビックス。一世を風靡した『Sex and the City(SATC)』でロマンチック・コメディーの腕を磨き、現在『Men in Trees』を制作中。バンクーバー=ロサンゼルスの往復を繰り返す、ノリにノッているビックスに聞いた。
 
Photo: Photographer/Christina Peters

面白いだけでなく、貴重なメッセージが盛り込まれた、勉強になる番組ですね。

マリンのナレーションは私が書くので、「役に立つ」とか、「生き方を見直した」とか聞くのは何よりうれしいです。「快適な生活と引き替えに?」と、おっかなびっくりの領域に主人公を追い込むとドラマになるし、マリンの二の舞を踏みたくない視聴者に予防策を提示できたらと。

親友ジェーンが、アラスカの恋人とは長続きしないと悟って、ニューヨークに帰ったのは賢明ですね。「デキる女」症候群として書かれたのですか?

恋愛ではどうしても女が舵取り役ですが、社会でも女の方が「デキる」と、両方に力の配分という負担がのしかかります。「デキる女」だけど、愛も家庭も諦めていないという面は、第2話でマリンのウェディングケーキを捨てきれないジェーンで表現しました。でも、彼には「デキる女」の面しか見せていないので、深入りすれば衝突の危険が…と、ニューヨークに逃げ帰りました。

ABCへの売り込みはどのように?

タネを明かすと、87年に『Susie’s Alaska Men』という雑誌を見たABCが、テレビ化の権利を買ったことが発端で、制作してみないかと、お話がありました。男は懲り懲りと失望した女を、男世界に放り込んだらロマンチック・コメディーになります。『SATC』のライターが、いつも「恋愛の大家」として引き合いに出され、何も悟っていないから失敗談が書けると主張しても、誰も信じてくれなかった。その体験から、祭り上げられた大家の「医者の不養生」を描きたいと提案しました。

放送作家になるまでの経緯を聞かせてください。

広告代理店に5年勤め、企画・売り込みをじっくりと仕込まれました。退職してGotham City Improvという即興劇団に入ってコメディアンを目指しましたが、舞台に立つより脚本を書く方が性に合っていると悟って、LAに来ました。マイケル・パトリック・キングというプロデューサーと仕事をしたおかげで『SATC』に引っ張ってもらいました。

ロマコメを選ばれたのは?

昔から夢や希望が一杯のロマンチックな話を書くのが好きで、書いているうちに専門になってしまったというのが本当のところ。恋愛関係を分析して、それを乙女チックな目で見るのが好きです。スパイものを書けと言われても絶対無理!(笑)

同ジャンルを目指しているライターにアドバイスを。

どのジャンルでも同じですが、書けば書くほど上達するはず。大切なのは、「どうしても伝えたい!」と、情熱を注ぎ込める内容を選ぶこと。自らの感動体験は、絶対に人の心を動かすものです。

[業界コボレ話]
『Dancing with the Stars』がシーズン4にして、これまでの視聴率を上回って華やかに再登場した。日本で同様の番組を観たが、若い女優対中年女優の一騎討ちだった。ぴちぴちギャルはフラメンコの大御所から、中年女優は日本人夫婦プロから手ほどきを受け、最後にプロ3人が判定する趣向。
ギャルの飲み込みの早さには、師匠もびっくり! しかし、練習しないので、大御所が激怒。一方、中年は、勘も覚えも悪いが、師匠夫婦に励まされて毎日努力する。早い話が、ウサギとカメ。
カメの勝利を目の当たりにし、私の人生に出没するウサギがちらついた。カメの底力と努力の価値を再認識させる良い番組だった。日本人って、根性モノ=努力が大好きな国民なのだ!

エンターテイメント・ライター/ジム・コルッチ

生みの苦しみは記憶に残らない

ペンシルベニア大学でコンピューターとマーケティングを専攻しながら、学園誌に映画評論を投稿。プログラミングやメディアリサーチを経て、『TV Guide』『CBS Watch』『In Touch』誌に投稿するライターに転身。著書に『Will & Grace: Fabulously Uncensored』『The Q Guide to the Golden Girls』。アニメ番組の企画、衛星ラジオ放送でテレビ評論、他分野の本執筆など活躍は多岐に渡る。夢はテレビ番組創作。

プレスツアーで知り合ったジム・コルッチは、テレビ番組のオフィシャルガイドを2冊も書いた大先輩。ツアー終了後、『The Q Guide to the Golden Girls』の出版記念イベントに招待された。『Desperate Housewives』の創作者、マーク・チェリーをパネラーに迎える程、今を時めくコルッチだが、素顔は意外や意外…。
 
Photo: Photographer/Erica Berger
ⓒLifetime All Rights Reserved.

大物、チェリー参加の楽しいパネルディスカッションでしたね。

コルッチ(以下C):3カ月前からおうかがいを立てていましたが、スケジュール調整ができるか不明という返事ばかり。半ば諦めていたら、12月中旬に確約の電話が入って。『The Golden Girls』で放送作家として1人前に育ててもらった思い入れが深いし、裏話を披露する機会は珍しいから、休みを返上して来てくださったのでしょう。本を書く時も、『Desperate Housewives』で復帰直後の忙しさの中、2度もインタビューに応じてもらって、感激!

『Golden Girls』のどこに惚れ込んで、本まで書かれたのですか?

C:「女友達は永遠!」。恋人も欲しいけど、結婚する必要はない。傷つけば友達とチーズケーキに慰められる。共感する女性は多いはず。知的な台詞と衣裳は、ゲイ仲間に大受けなので、本の切り口はゲイの視点です。

大好きな番組の本を2冊書いて、「やった!」と思った瞬間は?

C:憧れの創作者と俳優に会えたこと。フリーのライターの醍醐味は、憧れの人を目前にして、「夢じゃないよ! よくここまで来たもんだ!」と思う瞬間。幸せの頂点では「生みの苦しみ」は、記憶に残っていないから不思議(笑)。あの頂点よ、もう1度→次を書かなきゃ! と焦る程。

昔からジャーナリスト志望?

C:作文が好きなテレビっ子でしたが、気後れして将来の夢はジャーナリストとは書けない子。専攻はマーケティングとコンピューター! 数学や分析は嫌いではないけど、コンピューター専攻なんて自虐的ですよね(笑)。気が狂わないように、学園誌に映画評論を投稿したり、暇を見つけては書いてました。「いつかプロに」が、心の隅にあったのかな? でも、「テレビのことを書こう!」と決めてからですよ、飛躍できたのは。

卒業後、すぐに決心を?

C:とんでもない! 就職して経理関係のプログラミングを少々、広告代理店に転職してマーケティングを7年。会社は食べるためと割り切って、「メディアリサーチが大好き!」という演技を続けつつ(笑)、フリーで投稿していました。昼間にインタビューが入り、個室の戸を閉めてこそこそやったり、取材で休暇を取らざるを得なくなったりして、「限界!」と退職。

もの書きにアドバイスを。

C:書いて、書いて、書きまくること。好きな番組のスペックやパイロット、企画書など。いつか花開きそうになった時に、毛色の違うサンプルから選んでくださいと言えないと、蕾で散ってしまいますよ。ただ、僕も完璧にやっているという訳ではないので、悪しからず(笑)。

[業界コボレ話]
1年間休職し、テキサスの田舎町に家族と移り住み、フットボール文化をルポしたビッシンガーの著書『Friday Night Lights』。テレビ番組は原作を遥かに越え、近年稀に観る秀作だ。若者に夢と希望を託す大人は、完璧ではないが、1本筋が通っているし、女性は現実的で逞しい。米国の底力はこういう町にまだ息づいているのかもしれない。
残念ながら、秀作=ヒットの図式は成り立たず、NBCがじっと我慢の子で継続するか、5月で一巻の終わりになるのか? 視聴率が高かったのに姿を消した『Commander in Chief』や、1シーズンで完結の憂き目に遭った知的な『Jack & Bobby』の仲間入りか? この手の秀作が四苦八苦とは、世知辛い世の中になったものだ。

アメリカTVファンの聖地 ワーナースタジオ博物館のテレビ歴史展

LAに引っ越して来て以来、ほとんどの撮影所やテレビ局を見学したが、テレビの歴史を体験できる展示がないのが不満だった。数年前、テレビ芸術科学アカデミー(ATAS)から、センチュリーシティーにテレビ博物館を建設したいが、会員の意見を聞きたいというアンケートが舞い込んだ。
ちょうど日本の広告代理店の視察旅行を企画しており、LAには目新しいアトラクションがないと指摘されたばかりだったし、制作の裏話などが聞ける空間が欲しかったので、大喜びで賛成した。結局、この案はボツになったが、2005年1月に、ワーナー撮影所内の博物館に、テレビ歴史展が設けられた。

* * *

50年代の西部劇『Cheyenne』『Maverick』に始まり、60年代には私立探偵モノが全盛期を迎えた。底抜けに明るい、アメリカの良さがぎゅっと詰まったような『77Sunset Strip』『Surfside 6』『Hawaiian Eye』の原本、全米の放送局に送られたプロモ資料、出演者が撮影所に勢揃いした1961年の団体写真やレコードは、喉から手が出る程。
 
大道具から衣装まで
1番人気の『Friends』

『77Sunset Strip』のクーキー、『Hawaiian Eye』のクリケットの衣装もあり、67年にジャック・ワーナー氏が撮影所を手放すまでのクラシック作品コーナーの目玉だ。だが、10年近く制作した『The F.B.I.』にまつわる物が一切見当たらないのは、制作会社が別にあってワーナーには何も残っていないから。しかも、その会社はもう存在しないから、歴史の一部がゴミ箱に捨てられた可能性があると考えると哀しい。
 
70年代は『Roots』と『Wonder Woman』が代表、衣装やスクリーンテストを受けた女優の一覧表が面白い。80年代からは『Murphy Brown』や『Alice』の衣装だけと、少々寂しい。
 
過去15年間、活気を帯びたワーナーからは、数々のヒット作が生まれた。94年に始まり、現在も放送中の『ER』。番組で一躍スターになったジョージ・クルーニーの写真入り身分証明証にも、思わず手が出そうに。『Ocean’s13』を撮影していたクルーニー様の後光の差す姿に見とれたのは昨年のこと。
 
セット仕立てで展示されているモニカの台所から、向かいのジョーイとチャンドラーの室内と各キャラクターの衣装。NBCの『Friends』は展示の1番人気。番組の大道具から衣装までほとんど保管していると言うので、場所を聞いたが教えてもらえなかった。盗みに行く訳はないんだけどな…。
 
『Friends』のスピンオフ『Joey』や、NBCの『Third Watch』、『The West Wing』からは、バートレット大統領の机からスタッフの衣装など、かなりの空間を占領中だ。
 
WBの看板娘的番組『Gilmore Girls』(現在CWで放送中)や、現在進行形の『Cold Case』『Without a Trace』『Smallville』『Veronica Mars』『Two & a Half Men』『Nip/Tuck』『One Tree Hill』などにまつわる展示があるが、撮影所内で出演者にばったり会う方がうれしいかも? 内容は一部変わっても、本年11月頃まで継続する予定。
* * *

テレビ歴史展の見学は、撮影所ツアーに組み込まれているので、VIPツアーセンターで当日券を買って参加。テレビ録画が休みの5月から7月末までは、空のセット見学はできるがアクションは期待できない。「行くからにはスターにバッタリ!」を狙うならこの3カ月は外した方が良い。
 
07年3月現在、ワーナーで撮影されているのは、『ER』『The New Adventures of Old Christine』『Cold Case』『Without a Trace』『Two & a Half Men』『George Lopez』『The War at Home』など。
 
VIP Studio Tour
3400 Riverside Dr.
Burbank
☎818-972-8687
http://www2.warnerbros.com/vipstudiotour/
♦$42(2時間15分)
*8歳以上のみ
Delux Tour
♦$150(5時間)
月~金:10:30am
*1日12席限定
 
写真:モニカのアパートのセット展示(『Friends』)
Photographer: Cynthia Martinez
(c) Warner Bros. Entertainment.

[業界コボレ話]
NBCは『Studio 60 on the Sunset Strip』に見切りをつけ、新番組『The Black Donnellys』を開始。一方、ABCは『Men in Trees』をしばらく休み、3月15日から新番組『October Road』を放送する。さらに『Six Degrees』が3月23日午後9時に再開。随分テコ入れしたと聞くので、手放しで喜んで良いのかどうか?
『Grey’s Anatomy』の脇役、アディソン・モンゴメリー・シェパード(ケイト・ウォルシュ)を主人公にした2時間ドラマを5月に放送予定のABC。好評であれば、アディソンはシアトルのグレイス病院を去り、新たな医療ドラマが誕生。CBSは『CSI』、NBCは『Law & Order』のフランチャイズを持っているので、ABCもいよいよか?

俳優/監督/プロデューサー デビット・ジェームス・エリオット

「変な癖」がないのを買われて

カナダ生まれ、1989年にロサンゼルスに移住。ジュリアードに匹敵するライヤーソン・ポリテクニック学院演劇科を卒業した正統派。『Street Legal』『The Untouchables』『Melrose Place』を経て、『Seinfeld』のゲスト出演が引き金となり、95年から『JAG』のハーモン・ラブ役を10年。2005年『JAG』完了後、NBCの『Medium』のゲスト出演を経て、06年より『Close to Home』のコンロン検事役で活躍中。TV映画やシリーズの企画・制作・監督も手がける。

100万ドルの笑顔に魅せられ、『JAG』ファンになった私。初対面は、昨夏『Close to Home』に登板が決まった時だったが、インタビューに漕ぎ着くまで半年。役者など考えたこともなかったと話すが、幸運の女神もエリオットの笑顔に誘われて、微笑みっぱなしのキャリアだ。
 
Photo: Al Silfen, Robert Voets/CBS

なぜ、『JAG』は2年目からCBSに移ったのですか?

エリオット(以下E):NBC版はゲスト出演の俳優が目玉の1話完結方式で、相棒・メグが僕の演じたラブと議論できない上下関係の設定が弱点でした。人間ドラマに変えたから、CBSでは長寿番組になりました。

10年も同じ役って、飽きませんか?

E:アクション、ミステリー、ロマンスと3拍子揃っていたし、海兵隊に入りたかったので、夢が叶った仕事。でも、脚本執筆や監督もさせてもらったし、米軍がからむ事件を語り尽くしたので潮時だと。「まだやってるの?」って言われて数年なんて潔くないし、後悔する作品を残したくなかったので…。

番組完了とともに、髪を伸ばされましたね?

E:週に1回クルーカットにした反動。短い髪型は老けて見えるし(笑)。ドラマとは言え、軍規でがんじがらめでした。
昨年パイロットに名前が挙がっていましたね。

昨年パイロットに名前が挙がっていましたね。

E:SFドラマ『Sixty Minute Man』のパイロットに出ましたが、残念ながらシリーズになりませんでした。将棋の駒のまま歳をとるのも芸がないから、今後は友達と共作の企画を持ち込んで、制作側に転身中です。

『Close to Home』の検事役は、『Medium』のアリソンの夢の中の夫・ダナム弁護士とそっくりですね?

E:2人ともひと筋縄ではいかない野心家。陰のある男は役者として演じ甲斐があります。

高校を中退して、ロックバンドで食べていく計画だったそうですが?

E:昼間はベルト工場で働き音楽活動をしましたが、見切りをつけて復学。演劇史の授業で生まれて初めて『リア王』を読んだら、先生に見込みがあると言われ、演劇学校の名門を受験しました。1千人受けて30人が合格、卒業した6人のうち、役者で食べているのは僕だけ。子役から演劇を目指していた受験生と違って、「変な癖がついてない」のが良かったらしいです(笑)。卒業後は、しばらく舞台。カナダ最大のヒット劇で、ドサ回りを2年しましたが、テレビに抜擢されて、5年間レギュラー出演しました。ハリウッドに越して来たのは89年です。

『Seinfeld』の端役が引き金になったとか?

E:『The Untouchables』『Melrose Place』など順調に歩んで来ましたが、カール役で運が変わりましたね。直後に『JAG』のオーディションに受かって10年ですから。

お手本は誰ですか?

E:率直で頼りになる父から、人間として大切なことを学びました。

日本人俳優にアドバイスを。

E:諦められるなら1日も早い方が(笑)。「絶対に諦めないぞ!」という気力と、常に勉強して技を磨くことが大切。これで良いと満足しないこと。

[業界コボレ話]
伝染病のように日本を襲った中学生の自殺。親はオロオロ、政治家は法律でいじめを規制しようと焦り、教育者は責任逃れに忙しい。
答えを模索していた私は、正月に放送されたオープラの「Challenge Day」にびっくり。デトロイトの高校での実験は、口をきいたこともない同級生60人が、秘密を明かすのが第1歩。誰もが家族という名の重荷を背負い、傷つき、孤独感にさいなまれていることを体験。「優等生」「いじめっ子」「金持ち」等のレッテルの下には、傷だらけの仲間がいるのを目の当たりにして、人種、性別、貧富の差を越えた共通点に気づく。
外観はどうであれ、人間は似たようなものだと子供たちに実感させることが、解決の糸口かも知れない。

俳優/コービー・ベル

試しに…で、はや10年

ロングビーチ出身。サンノゼ州立大学で演劇を専攻し、主席で卒業。『ER』に出演後、『L.A. Doctors』と『Third Watch』のパイロットを射止め、1998年『L.A. Doctors』を1シーズン完了し、『Third Watch』に移行。新人ながら、熱血漢・デイビス役を6シーズンこなした。UPNの『Girlfriends』を経て、2006年秋より『The Game』のジェイソン役で活躍中。06年、映画『Drifting Elegant』を制作/出演、舞台活動もしている。

『ER』のテレビ初出演から『Third Watch』の熱血漢・デイビス警官役に抜擢された新人のコービー・ベル。下積み体験はないが、2代目のおごりもない稀な俳優だ。安定を求めて押し殺してきた芝居への情熱と、父親から受け継いだ才能は、プロの目には明らかだったのか?
 
(c)2006 The CW Network LLC. Bruce Birmelin / The CW

コメディーへの180度転換は、意図的なものですか?

ベル(以下B):『Third Watch』では生真面目な部分しか見せられなくて、撮影の合間は仲間とハメを外していました。面白い面を見せたかったので、あえてコメディーを探しました。(役の)ジェイソン・ピッツはフットボールチームのキャプテンなのに、あきれる程ケチ。コントラストが滑稽だと思いました。

『The Game』は『Girlfriends』からのスピンオフですね?

B:『Girlfriends』のプロデューサーが、ジェイソンを起用して創作した番組です。仕事がしやすい環境を作ってくれるし、キャストも仲が良い、3週間働いて4週目は休み、休暇は5カ月…、これ以上の職場はありませんよ!

ジェイソンの白人の奥さん・ケリーとの摩擦が見所ですよね?

B:人種の違う男女が結婚すると、必ずすれ違いがあるから、面白いでしょ?

俳優になりたいと思ったのは?

B:幼い頃、学芸会で。でも、役者で食べていけるとは思わなかったので、教師になると決めていました。

大学での専攻は?

B:演劇です(笑)。

有名なお父さんの影響ですか?

B:父が大学を出た70年代に、アフリカ系オペラ歌手はいなくて、しばらくフィフス・ディメンションで歌っていました。80年代にやっとオペラ歌手、90年代にはブロードウェイで活躍し、何度もトニー賞候補に挙がりましたが、仕事に波があったことを子供心によく覚えています。「お前なら成功する」と、父はいつも言ってくれましたが、僕は教師になって地道に生きていこうと、芸能界に背を向けて。でも、教師になる前に試しに…で、もう10年!

「試しに」何を?

B:父のマネージャーが、僕の芝居を気に入り、エージェントを紹介してくれました。『ER』の役がついてから、仕事が途絶えたことがありません。

『ER』で発掘された訳ですね?

B:プロデューサーのジョン・ウェルズとクリス・チュラックは『ER』以来、デイビス役は僕と決めていたと、『Third Watch』に出て何年か経って聞きました。そうと知っていたら、オーディションであんなに緊張しなかったのに、人が悪いな!って(笑)。

今後やりたい役は?

B:役で決めずに、流れのままに。「あれがやりたい!」と入れこむと、ダメだった時の失望が大きいから、予防線を張っているだけかも知れません。運良くここまで来たので、これからは「おまけ」だと思って、何でもやります。

ハリウッドで成功したい日本人俳優にひと言。

B:有名になることに労力を無駄遣いしないで、好きな芝居の技を磨くことに専念すると良いと思います。

[業界コボレ話]
インタビュー中で、何回か話題になった放送局主催のライター養成プログラムのウェブサイトをご紹介。「今年こそは!」と思っている方は、応募してみては? 俳優や監督も応募可能なプログラムもあるので、要確認。
The Walt Disney Studios / ABC TV Fellowship Program(ABCtalentdevelopment.com)
CBS Mentorship Initiative(CBSdiversity.com)
Fox Diversity Development(Fox.com/diversity/programs.htm)
NBC Talent Diversity Initiative(www.DiversecityNBC.com)
Warner Bros.(www2.warnerbros.com/writersworkshop)

俳優/フェリシティ・ハフマン

まだまだ、学ぶことがいっぱい!

離婚した母親と兄姉の頑張りを見て育った。8人兄姉の末っ子。10歳で劇団キャンプに入団し、演劇に病みつきに。NYUで演劇を勉強した後、20年余り舞台、映画で活躍。1998年、テレビ『Sports Night』で実力を発揮、『Frasier』『The West Wing』のゲスト出演を経て、2004年から『Desperate Housewives』のリネット役で活躍中。05年エミー賞、06年映画『Transamerica』でゴールデングローブ賞等、数々の演技賞を受賞。

TV界を揺さぶった『Desperate Housewives』で、キャリア組からの転身主婦・リネットを演じ、数々の演技賞を受賞したフェリシティ・ハフマン。今や押しも押されぬ実力派だが、腰の低さと誠実さは業界一と言っても過言ではない。

リネットは1番現実的な役と言えますね?

ハフマン(以下H):きりきり舞いしていても、絶対に助けを求めないタイプ。嫉妬深いし、窮地に追い込まれたら、卑怯なこともやってのけるから、台本読みで「そんなことしちゃうの!」とびっくり。ドラマではありだけど、私にはできません。

今シーズンのヤマ場は、夢見る夫・トムをどうするかですね?

H:結婚前の夢を実現させようと、しゃかりきになっている中年男…。「こんな状況、現実味があるの?」と思いながら演じていますが、「ウチもそうだったのよ!」と、体験者から反響を呼んでいます。脚本が良く書けているということね!(笑)。

俳優になりたいと思ったのは?

H:7歳の頃、母の出張中に姉たちが『ロミオとジュリエット』に連れて行ってくれ、オリビア・ハッシーに憧れました。もっとも私はおしゃべりが過ぎて、母に劇団に押し込まれて病みつきになった口ですが。ヘレン・ミレンやダイアン・ウィーストをお手本にしてきました。

長年の下積み中、「諦めなくて良かった!」と思った瞬間は?

H:マドンナの代役のリハーサルで、監督に「それ、それ!」と褒められた時。『Cryptogram』のドニー役でOBIE賞をいただいた時は、先輩から「君もプロだよ」と言われたようでうれしかったわ。SAGカードはまぐれでもらった訳じゃない! って感じ(笑)。

リネット同様、家族優先の毎日ですか?

H:中年になると女は「内」に、男は「外」に目を向けるとか。でも、自分のことを考えるだけで、後ろめたくなりますね。自分優先を悪びれずにできる女性は、優雅で良いなと思う反面、どこか非難している自分がいて。家族のためには、自分優先が1番だとはわかっていますが、まだまだ修業が足りない。

憂さ晴らしは?

H:やることは山とあるし、家族サービスもしたい…と思いながら読書。フィクションの世界に浸るのが贅沢な時間ですが、すぐに現実に引き戻されてしまって。昔は買い物で憂さ晴らしできたのに、興味がなくなって。物欲は卒業したのかな?

俳優はフリーの職人と位置づけておられますが、アドバイスを。

H:未熟な私は、失敗の繰り返し。しょっちゅうつまずいては、立ち上がって歩き始めます。

誰でも失敗して成長するものですね?

H:人間って苦しまないと変わらないし、大人にならない生き物。子供のあどけない顔を見ると、「可哀想に、これから苦しいわよ!」って思ってしまうの(笑)。中年になると凝り固まってしまうから、心も身体も柔軟にと心がけています。傷つくまいとすると、こぢんまりまとまって、徐々に自分が死んでいくもの。大きく羽ばたくことも忘れないようにしています。未知の危険にも挑戦しないとね。まだまだ、学ぶことがいっぱい!!
 
Photo: (c)2006 American Broadcasting Companies, Inc.

[業界コボレ話]
テレビ東京の『ソロモン流』は、旬の人を取りあげるドキュメンタリー番組。なかでも料理愛好家・平野レミさんは刺激的だった。高校を中退すると言うレミさんに、反対するどころか「好きなことをやりなさい」と言ったお父さん。シャンソン歌手を目指したが、鳴かず飛ばずで廃業、ひょんなことから料理分野で活躍するようになった。
料理の大家になった今、06年12月シャンソンCD発表に漕ぎ着けた。異分野での大活躍は、好きなシャンソンに行き着くための遠回りだった。この道は行き止まりとか、楽しくないと思ったら、しなやかに方向を変えてみよう。本当に好きなことなら、いずれゴールに行き着くもの。私もこんな「偉大な父親」が欲しかった!

プロデューサー/脚本家 キャリー・ライザー

「これだけは譲れない!」を大切に

Kari Lizer
『Matlock』のアシスタント役で有名な元女優。30歳以降、役が付かず、子育てをしながらできる仕事として、脚本を執筆。女優を続けながら、1994年『Weird Science』のスタッフライターに。『The Empty Nest』『Boston Common』などを経て、98年『Maggie Winters』を創作したが、16話で打ち切られた。『Will & Grace』に執筆・出演後、協議離婚やバツイチの子育て体験を基に『The New Adventures of Old Christine』を創作。世のバツイチ女性への応援歌としている。

コメディー低迷のなか、創作2本目の『The New Adventures of Old Christine』の大ヒットで、コメディー界に彗星のごとく登場したキャリー・ライザー。しかし、紆余曲折を経て成功を手にした苦労人なのだ。脚本家への転身談や本作の人気の秘密を聞いてみた。

今シーズン、クリスティーンはどんな体験を?

ライザー(以下L):シーズン1は、元亭主とヨリを戻すかと思わせる所で終了し、今シーズンは、「離婚は間違いだった?」「毎日顔を突き合わせるのなら、夫婦に戻った方が楽?」と、揺れ動くクリスティーンを描きました。結局、リチャードは、別の若い恋人・クリスティーンの元へ、クリスティーンはバツイチのまま子育てに奮闘します。

本作のアイデアはどこから?

L:両親の揃った16人の園児が、3年生では12人が片親になっている現実と、子供を第一に考えた協議離婚体験を描いた番組があっても良いかなと。(クリスティーン役の)ジュリア・ルイ・ドライファスとは感性が同じで、私の声で私の体験を演じてくれます。

クリスティーンは応援したくなるキャラですね。

L:「それはないよ!」的状況や、「そんな人、絶対どこにもいないよ!」的人物が、最近多いですね。人間らしさに欠けるキャラだと笑えません。『Seinfeld』の人気の秘密は、4人がどう振る舞っても、どこか共感できるから憎めない点。巨匠ノーマン・リアーの番組を観て育ったので、現実味があり、親近感が持てるコメディーを目指しています。

『Seinfeld』で名を馳せたドライファスを迎えた感想は?

L:チームワークを大切にし、超真面目に仕事に取り組む女優。番組を創作、維持していく責任を半分背負ってくれる、最良のパートナーでもあります。彼女が引き受けてくれたからこそできた番組です。

脚本家へ転身された経緯は?

L:学校が嫌いだったので、芝居に逃げてここまで。芸能界は長かったのに、歳には勝てませんでした(笑)。役に就けなくて、配役してもらおうと自作自演の舞台を始めました。でも、入って来たのはスタッフライターの仕事。随分迷いましたが、SF番組『Weird Science』でプロにしてもらいました。

転身組ながら、居心地良さそうですね?

L:長いですからね…もう、慣れました(笑)。でも、『Maggie Winters』を創作した時は、右も左もわからず、自信もなかったので、信念のない番組になってしまって打ち切りに。あの体験から、「これだけは譲れない!譲らない!」と信念を通せるようになりました。

脚本家志望者にアドバイスを。

L:最初はAmerican Film Instituteの学生映画制作用の短い脚本を何本も書きました。映像化の過程を見る貴重な体験になりました。映画はオリジナル作品が少ないので、サンプルとして書いてみるのも手でしょう。テレビを目指す人は、ワーナーやディズニーのインターン制度、地上波局の多様化プログラムを積極的に利用してみては?書いて、書いて、書きまくること!
 
Photo: Justin Lubin / Warner Bros.

[業界コボレ話]
技術的にはデジタル化などが進んでいるものの、映像媒体の報道で「!?」と思うことが多い日本。新聞や雑誌の記事に赤線を引き、超拡大した記事を画面に映して読み上げるワイドショーの報道方法は、乱暴としか言いようがない。
米国でも紙媒体は大いに利用されるが、あくまで情報源。制作時に新たに脚本を書いたり、映像を集めて報道する。
紙面で表現できない映像を見せてこそ、テレビではないのか?私には制作者の怠慢としか思えないが、計り知れないウラの事情があるのか?1度、日本のテレビ関係者に聞いてみようと思うのだが、いまだその機会に恵まれず、里帰りの度に苦笑してしまう。

脚本家/デイナ・スティーブンス

1日も早くJ.J. になりたい!!

Dana Stevens
ロサンゼルス生まれ、アリゾナ育ち。UCLAで演劇を勉強し、俳優・脚本分析を経て、1994年『Blink』で映画界にデビュー。98年、メグ・ライアン主演の『City of Angels』をドイツ映画から焼き直した脚本で一躍有名になり、スピルバーグ、シドニー・ポラック、リドリー・スコット監督と企画を練っている。『What About Brian』でテレビ界進出、『Felicity』で男女の心の機微を描いた売れっ子のJ.J. エイブラムスの指示を仰いだ。

俳優から創作に転向したデイナ・スティーブンス。テレビ界ではまだ新人だが、売れっ子プロデューサー、J.J. エイブラムスの門下で活躍中。男女関係を正面から斬る割には、完璧な捨て台詞や、非現実的な恋を実らせるファンタジーを提供する。

『Felicity』が好きで、J.J. エイブラムスの門を叩かれたとか?

スティーブンス(以下S):映画のスケジュールを調整して、数年温めていた『What About Brian』のパイロットを書こうと決心しました。『Lost』も『Desperate Housewives』もまだ世に出ていない2004年秋、エージェントがJ.J. と会わせてくれました。ABCのお抱えプロデューサーと組むのに躊躇しましたが、蓋を開けてみたらABCの快挙! ラッキーでした。

『~Brian』は、最初のひらめきのまま映像化されていますか?

S:既婚者は独身に、独身者は結婚に憧れる「隣の芝生」現象を描きたかったのですが、言い分が通らなかったことも多く、私が考えたドラマとは別物。話の展開に待ったがかかったり、配役に文句が出て悔しいことも。映画ほど切り刻まれませんが、早く、J.J. になりたい(笑)。

アイデアはどこから?

S:日常の何気ない風景に想像力が刺激されて。それに夢や望みを叶えるファンタジーの粉をふりかけます。

アイデアから番組にする過程を教えてください。

S:ジャンルや内容が想像できるような「pitch(売り言葉)」で惹きつけ、パイロットの内容、13話単位の展開、登場人物や配役をプレゼンします。気に入ってもらったら、パイロットを書きます。クリスマス前までに75本余りの脚本が出揃い、1月末に7~8本のパイロット撮影が決まります。約3カ月で、配役、監督選びをこなして、撮影、編集をして完成させなければなりません。パイロットには、2~3話分の制作費が出るので、贅沢に制作できます。パイロットが揃ったら、局は試写と会議を繰り返し、どの番組を購入するか決定します。ここまで漕ぎ着けたら、制作本数を契約し、放送時間枠の話し合いがあります。

昔から、脚本家を目指しておられたのでしょうか?

S:役者になりたくて演劇を勉強中、劇作家養成課程が必須でした。卒業後、テレビの端役では食べられず、脚本を読んでレポートを書く仕事をしました。当時の彼(映画の脚本家)にすすめられて、書くようになりました。

登場人物をしっかり設定すれば、物語は自ずと展開すると言いますが?

S:ファンタジーの世界に住む「実在の人」になります。リック・ゴメスは、私の想像したデイブ像とはかけ離れていましたが、今ではリックの声で台詞が浮かんで来ます。マージョリーを巡って恋敵になったブライアンと、親友のアダムの葛藤も、個人的にはブライアンを選んでほしいと願う反面、ブライアンの性格からすると、駆け落ちはないな…と。確かに勝手に動き出しますね(笑)。
 
Photo: (c)ABC Company, Inc.

[業界コボレ話]
『Heroes』が好調だが、内容は抜群なのに視聴率が取れない『Friday Night Lights』や、業界人にしかウケない『Studio 60』など、ヒット作に恵まれないNBC。『Seinfeld』『Friends』以来、年々視聴率が降下、今では地上波5局中4位。NBC Universal Televisionは、2年間に従業員700人を削減し、午後8時枠はクイズやリアリティー番組に切り替えていくと発表。ABCのヒットドラマのせいで、リアリティー番組が減り始めたご時世にだ。
創作や番組の質という意味では、秋風ならぬ木枯らしが吹き荒れた感じ。ABCが4位の座に甘んじていたのはつい昨日のこと。NBCも「ダメもと」精神で、画期的な番組作りをするか、秀作を我慢して見守るしかないのでは?

俳優/レイチェル・ハリス

己を知って、親友になるのが鍵

Rachel Harris
オハイオ州出身。幼い頃から家族を笑わせる芸人で、大学では音楽/演劇を専攻。卒業後、ニューヨークで舞台女優を目指したが4年で諦め、94年ロサンゼルスに。雇用主の俳優から役をもらいTVデビュー。即興劇一座でコメディーに惚れ込み、TV『The Daily Show』『Curb Your Enthusiasm』『Fat Actress』に出演。T-MobileのCFで全米の注目を浴びた。『Notes from the Underbelly』のクーパー役の他、映画『For Your Consideration』公開も控えている。

T-MobileのCMで、口から生まれたような不動産業者を演じたレイチェル・ハリス。コメディアンと呼ばれることに抵抗はないらしいが、いずれはドラマと決めている才色兼備のハリスに話を聞いた。

T-MobileのCM、もう流れないのが残念でたまりません。

ハリス(以下H):あれでも最初の契約よりずっと長く流れたんですよ。脚本はあったのですが、即興の台詞も監督に喜ばれ、楽しい仕事でした。

業界入りのきっかけは?

H:大学では音楽専攻でした。コンサートやオペラで舞台に立っているうちに、芝居にも興味が出て…。でも、学芸会が好きだったから、目立つことが好きなのかしら(笑)。大学を出て、NYに4年いましたが、アルバイトしている時間の方が長くて。エージェントにすすめられて、1994年からLAです。

Groundlings演劇学校出身で、講師もしておられるとか?

H:採点するのが苦手。ネタが面白いかどうかって、主観的な評価でしょ? 「私の感性にたまたま合わなかっただけ。他の先生や学校だったら、及第の生徒かも?」とか考え過ぎて。最近は忙しいので、先生は廃業!

最初からコメディアン志望だったのですか?

H:NY時代は、『人形の家』のような古典を目指し、LAに来た当座もドラマばかり。ロイ・シャイダー家の子守りをしている時に、彼の主演番組『Seaquest』で役をもらってTVデビュー! それでも芽が出なかったのは、ドラマ向きではなかったから。Groundlingsに行って、「コメディーだ!」とひらめきました。早いうちにSAG(俳優組合)カードを手に入れたのはラッキーでした。

SAGに入るって大変なんですよね?

H:組合証があるとないとでは大違い。役者の第1難関はクリアしたけど、維持していくのも大変。『Beverly Hills 90210』『Flying Blind』などで、エキストラを山ほどやりました。

たまにはドラマもやりたいですか?

H:人情の機微を表現したいのが役者。ドラマをやらせてくれるプロデューサーが出て来ると良いなと思っています。

今回はどんな役ですか?

H:『Notes from the Underbelly』のクーパーは、積極的に独身を貫く離婚専門弁護士。独りで楽しく生きられ、子供に縛られたくない現代女性です。しかも、言い訳しない、引け目を感じない、私好みの女です。

子育ての番組は苦手なんですが。

H:子供を生むことと引き換えに、何を犠牲にするかを正面から見つめるリアルな話です。独身を通すクーパーの意見も反映され、人生の転換期の感情の起伏が面白いので観てください。

コメディアン志望の俳優にひと言。

H:私も来て早々は、ロサンゼルスの人になりきろうとしました。でも、オハイオ出身を認めて納得したら、仕事が舞い込むようになりました。己を知る、好き嫌いを認識する、とにかく自分の親友になることですね。そして、お手本になる人を見つけて、丸写しではなく、ユニークさを強調すると良いのでは?
 
Photo: (c)Kyle Widdler, Eric Wagner

[業界コボレ話]
「頑張って!」と応援したくなる主人公が少なかった今年の新番組。早々に葬られた『Smith』『Kidnapped』『Vanished』はその典型だった。視聴率が低いにも関わらず、かろうじて残っている『Studio 60 on the Sunset Strip』『The Nine』『Help Me Help You』も、ハマるのは待った方が良い。
私の2006年トップ3の運命は、と言うと、『Friday Night Lights』がシーズン1のみ確定、『Six Degrees』と『Justice』は、苦戦中だ! 面白い番組が残るとは限らないのが辛いところ。05年の秀作『Commander in Chief』のセット見学に行ったのが今年1月。10月にも同撮影所を訪れたが、また腹が立ってしまった。なぜキャンセルの憂き目に?納得がいかない!

俳優/スレーカ・マシュー

現在のバランスを維持したい

Suleka Mathew
インド生まれ。2歳でバンクーバーに移住。10歳で演劇に興味を持ち、中学校の演技指導で開花。大学時代、友達の紹介で演劇学校に通い、テレビデビュー。以来、テレビ、映画、舞台で活躍、カナダのヒット作『Da Vinci’s Inquest』で4年、検死官を好演。サンダンス映画祭で絶賛を浴びた『Touch of Pink』や『The Score』、TV『The West Wing』『Stargate SG-1』などにゲスト出演。現在『Men in Trees』のサラ役で活躍中。

映画より登場人物を身近に感じるし、笑わせてくれる、世界観を変えてくれると、TV絶賛のスレーカ・マシュー。カナダの『CSI』に匹敵する『Da Vinci’s Inquest』で検死官を4年演じた後、ハリウッドに目を向けた。今回の異色な役をさらりと演じるマシューに、役者としての過去、現在、未来を聞いた。

役者が天職だと思ったのはいつですか?

マシュー(以下M):「絶対、役者!」と信じていた訳ではなく、小学生で情熱の種を植え付けられたと言うか…。15歳で演技の勉強を始め、劇団がよく公演に来る高校に入ったのもラッキーでした。親の言うなりに大学で一般教養を取っていましたが、「何か違うな?」と。20歳の時、子役から頑張っていた幼馴染みに出くわして、彼女の先生、ピーター・ブレック(『Big Valley』のニック役で有名)を紹介されました。先生からプロの役者とは何かを学び、半年後にエージェントが見つかり、3度目でオーディションに受かって、インド系カナダ人の高校生役でテレビ界デビュー。メークやセットでの礼儀、今では無意識にやっていることも、すべてここで習いました。

役者として心していることは?

M:ゲスト講師、ジーン・ハックマンの言葉「台詞を書き変えるのは役者の仕事ではない。脚本家の意図を見抜いて、いかに表現したら役に馴染むかを考えることだ」です。

『Men in Tree』のサラ役はいかがですか?

M:心と身体で考えるサラ役は新鮮でワクワクします。創作者のジェニー・ビックスは優秀で温かい人ですし、共演者は主役のアン・ヘイシュ以下皆、芸達者だけでなく、楽しく仕事ができる人ばかり。画期的なアイデアを育む環境を作ってくれるABCと、秀作を見抜く目があるワーナーに見守られて最高。時々、夢ではないかと、疑ってしまいます。

今後の目標は?

M:仕事も大切ですが、人間として成長するためには、バランスが大切だと思います。家族、恋愛、友情、健康、好奇心、独りの時間など、全要素にエネルギーを注ぐことが目標です。今年はバランスが取れていたので、ずっと維持したいです。

役者になりたい人にひと言。

M:アーティストとして自分を磨く傍ら、ビジネス面は経験豊かな賢明な人に任せること。アジア人の役は絶対数が限られていますから、伝えたいことがあったら、自作自演で始めるしかないのかな? 職業を身体で表現できるかどうか、オーディションに行く前に確認するのも大切です。医者はそれなりの動作をするものだと、演じてみるまでわからなかったという私の体験からです。ビリー・ボブ・ソーントンが「仕事は難しくはない。仕事がない時に、持ちこたえる気力が鍵だ」と、言っています。失業中って、感謝の念と忍耐力が薄れるでしょ? そんな時こそ、演技を磨き、力を蓄えるべきですが、私も下積み時代はバイトで食べていました。職種は24と多岐にわたり、業界を色々と見ることができたのは、役者としては肥やしになっていると思います。
 
Photo: (c)2006 ABC / BOB D’AMICO

[業界コボレ話]
今秋、My13局に登場した『Desire』と『Fashion House』はスペイン語圏のメロドラマ『Telenovela』を忠実に再現。『Fashion House』はデザイナー志望のミシェルと、彼女にひと目惚れした息子を盗られてなるものかと妨害する、ワンマン女社長を描く。
観ていて10日で嫌になった。社会の掟や運命に弄ばれる被害者がいない。欲望の赴くまま行動する人に、同情の余地はない。「耐えるから応援したくなるのが人情!」と思うのは東洋的なのか?現実では社長や姑に逆らえないから、ラテン系は『Telenovela』で憂さ晴らしするのか?米国向けにしたから耐える女がいないのか?さしあたり、ジャンルでは異色の『Ugly Betty』を楽しもう!

俳優/監督/プロデューサー スコット・フォーリー

役作りのプロセスが何より好き!

Scott Foley
父親の転勤で子供時代を東京・京都・シドニーで過ごし、セントルイスの高校を卒業。18歳でロサンゼルスに引っ越した。アルバイトをしながら演劇学校に通い、下積み6年余り。1997年、エージェントに巡り会い、翌年『Dawson’s Creek』のクリフ役を射止めた。テレビ『Felicity』『A.U.S.A.』や映画『Scream 3』、舞台『The Violet Hour』を経て、今年1月から『The Unit』で、逞しい特殊精鋭部隊のブラウン隊員として活躍中。

『Felicity』の優しい青年役から大きく成長し、「男の中の男」を演じるスコット・フォーリー。『The Unit』の撮影の合間に、成功の秘訣を聞いてみた。

プロフィールには、「日本語堪能」とありますね?

フォーリー(以下F):3~8歳まで、日本に4年半いました。弟2人は日本生まれですが、僕は長男なので、責任感に燃えて日本語を使っていました。(笑)。でも、すっかり忘れましたね。

津波救援活動でタイにいらしたそうですね。

F:『The Unit』を13話撮影してプレスツアーに出ましたが、半年の休暇となりました。独りで旅するのも寂しいし…。大工仕事が好きで、Habitat for Humanityに連絡したところ、プーケットの北の漁村で働く口があって、粘土の粗末な家ですが、1カ月で4軒建てました。

『The Unit』の大ヒット、おめでとうございます。

F:まだ駆け出しなので、次々と出演依頼が来る訳ではありません。脚本をデビッド・マメット大先生が書いておられると聞いて、どんな役でもいいからやりたいと、焦りましたよ。

夫が仕事に没頭できる環境を整えるのが妻の使命、というテーマは、日本社会並みですね?

F:女性は家族を1つにまとめる「糊」の役。女性がいないと、軍隊も、国も成り立たないという、今までになかった番組です。

高校を卒業して、片道切符でハリウッドに来られたのは?

F:進学するほど成績が良くなかったと言うのが当たっているかも(笑)。本当に他に何もできないんですよ。ウエイター、バーテンダー、保険の勧誘、ミセス・フィールズのクッキーの売り子と、役者のお決まりコースを6年やりました。

エージェントを見つけるのが難関では?

F:エージェント名簿を買って、写真と履歴書を送りましたが、手応えなし。先輩のエージェントのアシスタントが独立するので、役者を探していると聞いて。クライアントを探している、業界では駆け出しのエージェントが狙い目かな?

この仕事の前は、ニューヨークにいらしたそうですね?

F:『The Violet Hour』で初舞台を踏みました。観客の前で、通しで演技できる舞台は、何にも勝る体験。撮り直しも、監督からの待ったもありませんから、純粋に役になり切れます。稽古の前に、脚本について意見を交わしたり、この台詞の意味は? と考えたりする、役作りのプロセスが何より好きです。

今後は何をしたいですか?

F:A&Eの『Firestorm』の制作・主演が最新のプロジェクト。監督も体験したし、このまま優秀な人と仕事が続けられたら最高!

日本人俳優にアドバイスをお願いします。

F:まず、本当に好きな仕事かどうか、自問してください。真剣な役者の役をまぐれで取ってしまうのは残酷! 好きなことなら、目を逸らさずに、驀進あるのみ! 1に忍耐、2に忍耐、3、4がなくて、5に忍耐。僕の奥義を披露すると、うまく行く、行かないは別として、ゴール到達に必要なことを、毎日必ず3つ実行します。その積み重ねです。
 
Photo: Monty Brinton / CBS (c)2006 CBS Broadcasting Inc.

[業界コボレ話]
ユニバーサルスタジオで『Waterworld』のライブショーを見た。ヘレンは男が束になっても負けない強い女で、活劇にうっとり。ところが、マリナーが登場するや否や、か弱い姫に早変わり。シンデレラ願望が女を駄目にすると言われて久しいのに…。
クリスティン・アームストロングは、手記“What I wish I had known about Marriage”で、結婚が女を変えると警告。元自転車レース選手・ランスの「完璧な妻」を演じ、結婚を守るため「自分らしさ」を犠牲にしたと語る。
自己主張の強い米人女性でも? と驚いたが、「完璧な妻」像にがんじがらめになり、自分を窒息死させているのは、実は女性自身なのだ。結婚前の女性に読んでいただきたい手記である。

脚本家/監督/制作総指揮 ピーター・トーラン

自分でやるっきゃない! と監督まで

Peter Tolan
マサチュ-セッツ大学で学び、卒業を待たずにミネアポリスの劇場で俳優から音楽ディレクターまで体験。1988年『Murphy Brown』のスタッフライターでテレビ業界入り。『Home Improvement』『The Larry Sanders Show』など90年代前半にヒット作を次々と手掛け、2001年、デニス・リアリーと『The Job』を共同創作。映画『America’s Sweetheart』『Analyze That』『Just Like Heaven』などを経て、04年から『Rescue Me』を制作総指揮中。

大好きな『Rescue Me』の共同創作者、俳優デニス・リアリーとピーター・トーランに会う機会に恵まれた。漫才コンビのような2人の出会いや創作の経緯、ニューヨークでの撮影裏話などを、トーランに聞いた。

『Rescue Me』は俳優・リアリーとの共同創作ですね?

トーラン(以下T):9・11テロの当日、現場近辺で『The Job』のロケをしていて、消防士の物語をやろうと話しました。『The Job』が打ち切られた後、地上波局とやり合うのはもう懲り懲り、2度とテレビには手を出すまいと決めていたのですが…、デニスから連絡があって、重い腰を上げました。

2人は長いお付き合いですか?

T:『The Job』制作で抜擢されました。映画で刑事役をしたデニスから、「テクニカルアドバイザーから聞いた刑事の実態をテレビ番組にしたい」と、連絡がありました。脚本を書いてくれと言う役者に会うと、品定めされているなと感じますが、デニスとは波長が合って、幼馴染みと再会したよう。でも、「試しに書いてみたから、読んでくれ」と脚本を渡されて、「やばい!」と思いました。仕切りたがりの役者と仕事をするほど惨めなことはありませんから、とっとと逃げるしかないと(笑)。ところがなかなか面白い本で、次の展開は? と想像しながらページを繰ると、半分ほど予想が当たるので、一緒に良い本にしたい! と思いました。以来、デニスの感性を活かしながら、とげとげしい箇所を私が和らげる、甘すぎる箇所をデニスが辛口にする、理想的なチームになりました。

『Rescue Me』の見所は?

T:「英雄だって辛いんだぞ!」と語る人間ドラマです。仕事柄、感情を押し殺さないと、自分の身ばかりか仲間も守れない。弱味を見せたら信用を失いますからね。その癖が私生活でも抜けない、不器用な消防士の生き様を観てください。

実際に消防士の従兄弟を亡くし、支援財団を設立したほどのデニスだから、内情に詳しい訳ですね?

T:デニスの知り合いがさまざまな形で登場します。あくまでも実態をそのまま伝えたいので、笑いを取るために事実を曲げたりしません。「やっと実態を描いた番組ができた」と消防士から言われるのが1番うれしいです。

消防士ファンなので番組を観ましたが、すぐ結婚相手には相応しくないと悟りました。

T:穏やかな家庭生活では物足りない、アクション常習者ですからね。いつも緊張していないと不安になり、身を滅ぼす「アクション」にのめり込む人種です。消防士の犠牲にならないように女性を救う公共サービス番組ですよ(笑)。

『Rescue Me』では監督もしておられますね?

T:『The Job』で制作総指揮をしていると、現場にはいるものの、1日に20分しか仕事がなくて、苦痛で、苦痛で。どうせ現場にいるのだから、監督でもするかって感じで始めました。『Rescue Me』のパイロットは人に任せられない! 自分でやるっきゃない! と思いました。それがエミー賞監督賞の候補にあがってしまって、びっくり!(笑)。苦労して書いた本を最後まで見届けたいという気持ち、人に渡してとんでもない解釈をされるより、自分でやった方が早いと言うか…、説明する時間がもったいないと言うか(笑)。

ジャンル、形態を問わず大成功を収めておられますが、秘訣は何ですか?

T:いつも上を見て、学び、吸収するように心がけています。仕事の幅を広げると同時に、いかに自分を表現するか? をいつも考えています。自分を正確に表現したいので、監督までして詳細をコントロールすることになってしまいます。

20年余り業界で活躍しておられますが、脚本家として不可欠なことは?

T:まず自分がどういう人間かを熟知して、周囲に流されないようにすること。視聴者を楽しませるよう、面白おかしく話して聞かせること。深みのある人間になることの3点です。

[業界コボレ話]
単なる娯楽としてテレビを利用するか、それ以上の意味を持たせるかは、人それぞれ。私は幼い頃から現実逃避の手段として使っており、なくてはならない存在だったと最近気がついた。
現実を見つめ直す道具として利用できるようになったのは、あるリアリティー番組のお陰と言っても過言ではない。ライフコーチが人生の指南役を務める『Starting Over』の功績は大きい。「人のふり見て我がふり直せ」をモットーに、毎日テレビにかじりついて学習したものだ。無料でカウンセリングを受けていたに等しい。
この貴重な番組、シーズン4は未定と聞いて心穏やかではない。スイッチ1つでカウンセラーが我が家に来てくれる番組だったのに。夢よ、もう1度!

俳優/エリック・クローズ

やっとヒット作に恵まれた!

Eric Close
7歳からサンディエゴで育ち、USCでコミュニケ-ションを専攻。医学部志望だったが、大学で友人制作の映画に出演して、幼い頃の夢を実現することを決意。小劇場での芝居が認められ、映画、テレビにゲスト出演。1996年『Dark Skies』、98年『The Magnificent Seven』、99年『Now and Again』で主役を演じたが、いずれも打ち切り。2002年よりCBSの秀作『Without a Trace』の危なっかしいFBI捜査官・フィッツジェラルド役で活躍中。

ハンサムな好青年タイプでそれなりに活躍していたが、90年代後半に主演の番組が相次いで打ち切られた。2002年に始まった『Without a Trace』で、危なっかしい優等生捜査官を演じて好調に推移。シーズン4の収録を終えてくつろぐクローズに聞いた。

サンディエゴで育ったとのことですが…どちらですか?

クローズ(以下C):1976年から85年まで、エルカホーンやデルマーに住んでいました。ノードストロームのラホヤ店でバイトしていたこともありますよ。

USCでコミュニケーションを専攻された理由は?

C:「父と同じ医者になろうかな? 喜ぶだろうし」という程度の気持ちで医学部を目指しましたが、ついていけませんでした(笑)。スペイン留学中に、映画制作希望の学生と知り合い、小学校の頃の夢を思い出して…。それでも、役者では食べていけないと思って監督を目指しました。とりあえずコミュニケーション学科を卒業して働いていたら、「映画に出てほしい」と言われることが多くて。モデルの弟が、コマーシャル俳優で組合(SAG)に入るのが近道と教えてくれました。「役者になれ」と、神に針路修正されたようなスムーズな方向転換でした。レールを乗り換えて15年経ってしまいました。

えー、もう15年!?

C:役者の道は険しいですからね。15年この世界にいますが、3年以上同じ番組に出るのは初めて。『Dark Skies』も『Now and Again』も打ち切りの憂き目に遭ったので。

この番組が決まった時、今度こそ長続きすると予感していましたか?

C:定職に就けてありがたいと思っていたら、ヒット作になったというか…(笑)。役者で業界に入るのが近道だったし、好きだから芝居をしていますが、監督になる夢はまだ諦めていません。来シーズンは演出もさせてもらう予定ですし、家族で企画している本の映画化もあるし。

お気に入りの番組は?

C:『The Magnificent Seven』のカウボーイ役ですね。歴史が好きなので。『McKenna』もロケが多くて、ハイキングやキャンプが好きな僕には楽しかったです。巨匠グレン・ゴードン・キャロンの手による『Now and Again』の主役をいただいたのは名誉でした。先シーズン『Without a Trace』では、優等生・マーティンの鎮痛薬依存を演じられて、役者冥利に尽きます。

創作者のスタインバーグさんと、役について意見を交わされますか?

C:それもこの番組の良い点で、本読みの後、役者同士で実際に演じてみて、台詞の改善を提案します。ライターには脱帽! 毎週、意外性の高い面白い話を次々と書くのは、並大抵ではありませんよ。僕にはできませんね(笑)。

今後、どういう役をやりたいですか?

C:自分にないものを演じるのが醍醐味だから、汚れ役や悪役をやりたいです。過激なものは、好みではありませんが…。

役者を目指す日本人にアドバイスを

C:ある程度実績をあげたら、人脈を作ることです。Hollywood Habitat for Humanityのような組織…。でも、売名のために行かないでくださいね。そういう意図がミエミエだと、逆効果ですから。活動を共にすると友達の輪が広がります。もう1つ、明確で、わかりやすい英語で台詞が言えるように勉強するのも大切です。母はハンガリー出身で、言葉で苦労しているのを見て育ちましたから、いかに大変かは百も承知です。僕も日本で出演する機会があったら日本語の勉強をしますよ。スペインにいた時も、英語で押し通さず、スペイン語を勉強しました。苦労しましたけどね(笑)。

[業界コボレ話]
今回も日本のテレビ事情の報告。相変わらずバラエティー番組が主流で、たまに登場するドラマも原作は漫画が多く、どこか現実離れしていて没頭できない。毎晩楽しみにしているのは『ワールド・ビジネス・サテライト』。最新のビジネスニュースやトレンドをまとめた、情報好きな日本人特有の番組だ。頑張っているプロや企業の底力を感じ、「へー、日本人もなかなかやるじゃん!」と元気を頂戴する。
『プロジェクトX』に似た『プロフェッショナル』、旬の人を紹介する『ソロモン流』、経営者や達人に聞く『カンブリア宮殿』も見応えがある。ドキュメンタリー王国日本では、何かを極めた人がドラマなのかもしれない。日本人は超現実的?

脚本家/ジェームス・ダフ

パイロット16本目にして大成功!

James Duff
役者から出発したが、暇な時に書いた芝居『Home Front』がヨーロッパ・中東・オーストラリアで爆発的ヒット、米国では映画化までされた。映画、テレビに執筆し、エミー賞候補に。連続ドラマ『Popular』『Felicity』『Wolf Lake』『The Agency』などを執筆後、パイロット15本を次々と創作。2005年、TNTのオリジナル刑事モノ『The Closer』を創作、ケーブル史上初の高視聴率番組となった。6月からシーズン2が始まっている。

画期的なオリジナル番組が続々登場するケーブルテレビの中で、ひと際輝くTNTの『The Closer』。放送作家、ジェームス・ダフがユーモアたっぷりに〝できる女〟を描くまでの経緯を聞いてみた。

今、最高に面白い『The Closer』の創作者とお話できて光栄です

ダフ(以下D):最高かどうかは別として、役者・演出・脚本、すべてがうまく調和した賜です。私は毎日、シンフォニーを作曲しているような気がします。主演のキラ・セジウィックは演技派の上、人柄も良いのが何より。才能と人柄が一致しない人が多いですからね(笑)。

番組創作の経緯は?

D:TNT局から最高視聴率の『Law & Order』と対になる番組が欲しいと話がありました。LAPDの特別班が良いと思ったのですが、ユニークさが足りないと迷っていたら、プロデューサーのグリアー・シェパードが、女主人公にしたらと提案して、「決まり!」でした。CBSの『Cold Case』も女刑事が主役ですが、まだ同僚と先輩の男性に支えてもらっています。キラが演じるブレンダは、詫びず、媚びず、男を使う役です。

現代女性がリアルに描かれている訳ですね?

D:ブレンダは、子供の頃から抱えている問題に直面したくないから、仕事に逃げています。その分、私生活がおざなりになる悪循環。できる人ほど、悩みは多いものです。

ブレンダは「私の分身」と述べていますね?

D:南部出身、子供の頃各地を転々とした。失恋数回。政治や政府に関心が高い。証明できるまで、信じない。仕事を完璧にしようとするあまり、職場での駆け引きが下手。でも、ブレンダは口が固い…、そこが私と違います(笑)。

視聴者の反応は?

D:「できる女」が主人公なので、中年女性から絶賛されています。従来は男みたいに行動してやっと一人前でしたが、ブレンダは「生意気な女」と言われても、決して引き下がらない現代のヒロインです。女だからこそ成功した好例。毎日女性と働いて気づいたのは、誰も「女らしさ」を家に置いて出勤してこないことです。

ブレンダに年下の恋人の可能性は?

D:1年目はブレンダが逆境をどう乗り切るかが中心でしたが、何回かそれらしき逸話を書きました。40代の大人の女のロマンスを描くのは、結構大変です。大人の女は、見た目ではなく、中味をじっくり吟味しますから、恋人にするかどうか見極めるまでに時間がかかります。

テレビ界に入られたきっかけは?

D:ニューヨークで役者とアルバイトの合間に書いた芝居がウケて、ロンドン、ヨーロッパから全世界で興行に。映画の脚本を書くためにロサンゼルスに越して来て、居ついてしまいましたが、映画になるまでの時間は、氷河が溶けるのを待っている感じで…(笑)。初めて書いたテレビ用脚本がエミー賞候補にあがって、それ以来テレビです。企画の進行が抜群に早くて、物書きには魅力ですが、その分怖いし、挑戦ではありますね。

実際の放送までなかなか漕ぎ着けられない「パイロット工場」だったと聞きましたが?

D:自慢じゃないけど、『The Closer』で16本目の制作です。ほとんどがパイロットだけでポシャりました。やっとケーブル放送まで辿り着いたという感じですね。地上波は、まだ語り口を変えることに抵抗していますから。この番組は良い役者に恵まれたので、手持ちカメラでドキュメンタリー風に録画しています。

貴重なお時間、ありがとうございました

D:インタビューをとりつけるのに、忍耐強く待っていただいて、こちらこそ光栄です。現実から遮断された世界でコツコツ書いていますから、番組への確かな手応えを確認できると、大いに励みになります。スタッフにも伝えます。きっと喜びますよ!

[業界コボレ話]
昔あれだけ憧れた米国のTV番組が、今の日本ではケーブルや衛星放送で毎日観られる。しかも、米国ではもう観られないものも結構あって、ウハウハ喜んで観ている。大好きだった『Felicity』は週1回、米国では観たことも、聞いたこともない『Bull』は毎日観てしまう。字幕付きで生の声が聞けるもの、吹き替えでも英語で観られるものもある。
日本の地上波局は、朝から晩まで「大事件!」について井戸端会議を流し、食傷気味の私は、ついケーブルに走る。お陰で昔懐かしい『ドクタースランプ・アラレちゃん』や、友人の俳優のデビュー作まで観る機会に恵まれた。しかも、日本ではアラカルト方式が採用されており、好きな局を追加できる。うらやましい限り!

俳優/ウエントワース・ミラー

アーティスト魂と官僚の脈を併せ持つ

プリンストン大学で英文学専攻。アカペラグループに所属し、世界巡業。幼い頃、芝居に魅せられ、弁護士家業を継がず、卒業後にハリウッドへ。10年余りの下積み中、映画やテレビに多数ゲスト出演、ABC『Dinotopia』で初主演した。2003年、映画『The Human Stains』で演技力を発揮し、マライア・キャリーのミュージックビデオ、CBSの『Joan of Arcadia』を経て、05年『Prison Break』の主役を射止めた。現在スター街道まっしぐらの有望株。

2005年夏、『Prison Break』のパイロットを観て、「ヒット間違いなし!」と、ミラーに励ましの言葉をかけた。1年目を撮り終えてロケ先から戻り、ホッとひと息ついたミラーに話を聞いた。

『Prison Break』初年度はいかがでした?

ミラー(以下M):僕が演じるマイケル・スコフィールドには複雑な事情があるので、2時間の映画ではとても演じきれません。マイケルの多面性を、時間をかけて演じられることが、役者として何よりもうれしいです。

オーディションを受けたのは?

M:必要とあらば卑劣なこともやってのけ、「これでも、まだ応援してくれますか?」と視聴者に挑戦する役。昔ながらの「英雄」ではなく、白黒はっきりしない灰色の役なので、やり甲斐があると思ったからです。

卒業してすぐLAに越して来られたそうですが…

M:両親に安定した職業を選ぶように育てられ、芝居は諦めていました。でも、映画やテレビが大好きで…。制作会社に就職し、企画部の上司が放送局に転職したので、くっついて行きましたが、「何か違うな…」と。だったら「一か八か勝負するしかない!」と思いました。

芝居にとりつかれたのは?

M:小学校の学芸会です。父に手伝ってもらった紙粘土で作った恐竜のかぶりもので舞台に立ち、大喝采を受けた時。あの感覚が忘れられなくて。

TVガイドが「今、最もセクシーな俳優」と絶賛しています。将来の夢は?

M:今を楽しまないのは賢い生き方ではないので、当分この番組を堪能します。いずれは映画もやりたいし、心理スリラーやロマンチック・コメディーにも挑戦したい。目標は性格俳優。

思慮深い印象を受けるのですが、芸能界で生き残る自信は?

M:銀幕や画面に顔を出す人にはプライバシーはないも同然。アイドルになればなるほど、役者としては信憑性が落ちるので、何もかもさらけ出す必要はないというのが僕の信念です。

10カ国の混血って、本当ですか?

M:ジャマイカ、イギリス、ドイツ系ユダヤ、アフリカ系アメリカが父方で、母はロシア、フランス、オランダ、シリア、レバノンの混血。特にどの人種に親近感を感じる訳ではなく、カメレオンになれるから、役者としては強みかな?

誰の影響で今日の自分があると思いますか?

M:好きなことをあくまで追求する頑張りを教えてくれた両親。役者でも現実に対処できないと、どんなに才能があっても駄目ですから。ジョン・マルコビッチ、ストッカード・チャニング、デンゼル・ワシントンなどもお手本です。

ハリウッドを夢見る日本人俳優にアドバイスを

M:業界に入り込むためにはアーティストの魂と官僚の脈が必要です。有名になるまでは、どんなに疲れていても、アルバイトから戻ったら履歴書と写真を郵送する作業を怠っては、才能があっても芽が出ません。エージェントが名前も顔も知らなければ、仕事にはなりませんからね。

[業界コボレ話]
5月中旬、スポンサーに発表された秋の新番組。視聴率好調で現状維持のCBSはドラマ3本とコメディー1本のみだが、早々に打ち切られた『Heist』の生真面目版『Smith』はいかがなものか?
ABCはヒット作を3本持っているが、秋に10本、春は5本で試行錯誤を続行。秀作『Commander in Chief』を打ち切る浅はかさには、開いた口が塞がらない。スペイン語圏で大ヒットした番組の米国版『Betty The Ugly』が良い。
木曜のコメディー枠から視聴率を挽回しようと必死のNBC。切り札は、『20 Good Years』と『30 Rock』。とにかく笑える。カイル・チャンドラ-がコーチを演じる『Friday Night Lights』は、視聴率が取れそうなスポ根ドラマ。

プロデューサー/ローリー・マッカーシー

貧乏時代のけちけちデート体験から発想

Laurie McCarthy
ボストン大学で化学、哲学を学び、ジャーナリズムを専攻。卒業後、アラスカの魚加工工場で働いたり、グラフィックデザイナー助手、ソフトウエアの広報など、さまざまな職業を体験。昼メロのメッカ・ニューヨークでインターン、ライター助手、スタッフライターを経て、番組を創作するプロデューサーに。『Beverly Hills, 90210』『Felicity』『CSI: Miami』『The Handler』を執筆後、初のシリーズ『Windfall』を創作。

「転職組」作家多しと言えど、マッカーシーの職歴は半端ではない。工員から広報まで、多岐にわたる体験を活かし、放送作家の道を着々と歩んできた。『Windfall』創作までの経緯を聞いた。

漁業に携わっていたって本当ですか?

アラスカでボロ儲けした人の話を聞いて、就職先もなかったし。サケの処理工場は、3Kの最たるもの。服役経験のある人が、刑務所の方がマシと言うほど(笑)。

放送作家に落ち着いたのは?

仕事を渡り歩いた結果、書くことが共通項と気づきました。ニューヨークで自作の本を売り込みに歩いていたら、昼メロの看板が目に入り、ABCの受付で、ライターになりたいと宣言。頭を疑われましたが、泣きついたらインターンに採用され、そこからはトントン拍子。2年もしないうちに、ライターが書いた本を監修するまでに。

ハリウッドへの進出は?

昼メロ放送作家としてWGA(作家組合)賞を受賞した時に、『Homicide』の脚本を書いていたトム・フォンタナに会いました。憧れのフォンタナの番組用に脚本を書いたら、エージェントが仕事を見つけてくれました。

昼メロからの移行は?

昼メロ=下手な作家という固定観念を破るのに苦労しました。最初の大きな仕事が『Beverly Hills, 90210』だったから、複雑な心理描写は無理と見下されて…。

『Windfall』が初の創作番組ですか?

はい。2年前、FOXでパイロットまで撮りましたがボツに。「やっと子育てに専念できる」と思ったら、1週間後にはNBCから連絡があって、あれよあれよと言う間にプレミア。

宝くじが当たった後のドラマですよね?

若い頃、お金に苦労して、けちけちデートばかりでした。「好きな人が宝くじを当てたら、そのままつき合うか?」「お金の心配がなくなった時、人はどう変わるのか」と、よく思いを巡らしていたので、肉づけして番組にしました。

私は変わらないと思うのですが

まず周囲が変わるので、人間関係が豹変します。誰も知らなければ大丈夫と思うでしょ?でも、内緒にしていて、トレーラーで細々と暮らしている伯母さんが生活に困っていたらどうします? 知らん顔はできないでしょ?

模範にしている人は?

ジーン伯母さん! 猫を25匹飼って、〝狭いながらも楽しい我が家〟のトレーラー住まいです。ニューヨークに住んでいた頃、しばらく私を育ててくれて、贅沢はできなかったけど、楽しかったことだけ覚えています。それから、昼メロの大家、アグネス・ニクソン。

物書きに転職したい人にアドバイスを

鉛筆と紙があれば書けるから、業界に入り込むのが先ですね。上司に恩を売って、読んでもらうことかな?(笑) NBCのWriters’ Development Program に応募してみるのも手かも。ユニークな観点の放送作家が求められていますから。

[業界コボレ話]
テレビで健康に良いと紹介されると、即座にスーパーの棚が空になり、品切れ状態が続くという現象は日本では日常茶飯事。これは日本だけだと思っていたが、5月に『Oprah』の健康シリーズで若返りに必須の5食品が発表された。
 
未加工のナッツが良いと聞き、早速、買いに行ったが、生かどうか袋に表示がない。電話で問い合わせたところ、炒ったものと明示した袋に切り替え中とか。ご親切なことだと思ったら、係員は、放送以来、問い合わせが殺到し、即応する必要があったと付け加えた。放送数日後にである!
 
米国人も食生活改善に目覚めたのか、単なるブームかは不明だが、Oprah の影響力を実証する出来事ではあった。

俳優/ダニー・ピノ

オールスターゲームで活躍している気分

Danny Pino
マイアミで生まれ育ったキューバ系アメリカ人。6年生の学芸会から演技に病みつきになり、フロリダ国際大学で演劇を専攻後、奨学金でNYU 大学院。修了後は東部の劇場で舞台経験を積み、2001 年『Men, Women and Dogs』でテレビ出演。02 年、マドンナに選ばれて『Up for Grabs』に出演し、ロンドンで舞台を体験。テレビ映画『Lucy』でデジー・アーネス役をこなし、03年から『Cold Case』で準主役、スコッティー・バレンズ役で活躍している。
 
Photo:Nigel Parry/CBS/Warner Bros.TV©2005 CBS Broadcasting Inc.

インタビューを申し込んで1年余り。プレスツアー、撮影所などで10回近く会っているので、お互いにかえって緊張してしまった正式インタビュー。『Cold Case』の忘れ難いシーンについて聞いてみた。

『Cold Case』には6本目からの登場でしたね?

P :ラッシュ刑事の相棒・バレンズ役を探していると、CBSから話がありました。最新の技術で迷宮入りした事件を再捜査するというメレディス・スティームの閃き、ブラッカイマー指揮、達者な役者揃いと、まるでオールスターゲームでプレーしているような気分。

視聴者の反応は?

P :地味な刑事モノなので、賞をもらったり、ニュースになったりはしませんが、根強いファンがいて、よく励ましの声をかけられます。

有名になったから、次の仕事を探す予定ですか?

P :有名、僕が?(笑) 毎週顔をさらしているから、映画や舞台の話も色々とありますが、この番組はチームワーク抜群だし、すごい人に巡り合えるから、仕事兼勉強。番組が続く限りやりますよ!

刑事の私事が徐々に明かされていますが、役者としてはいかがですか?

P :婚約者が謎の自殺を遂げ、バレンズは自責の念で頭が一杯…それでも仕事に出ないといけない。公私の葛藤が盛り込まれると芝居が楽しいです。それに「体験」というレンズを通して事件を見るから、他の刑事とは見方が違うことを表現できて、やり甲斐があります。

婚約者の遺品を片づけるシーン、感動的でした。

P :アリッサの遺品を片づけていて、何か目に焼きつく物が必要だと直感しました。プロポーズした時の思い出の真っ赤なドレス! かけがえのない人を失った痛みをドレスで象徴しようと思いました。監督や脚本家と相談して、心の整理はついたものの、ドレスだけは捨てきれない「未練」を表現することに。

自殺か他殺かは、いずれ明らかになりますか?

P :自殺の可能性が高いので、「なぜ止められなかったのか?」という、自責の念に駆られます。他殺だったら怒りをぶつける相手がいて、心の処理がしやすい。毎日、仕事でやっていることだし。自殺だと、怒りは自分に向けなければなりません。今、そんな心境だと解釈しています。

小学生で役者という天職を発見したって本当ですか?

P :楽しいなと思いましたが、まさか役者で食べていけるとは…。大学院まで行って、勉強しているうちに真剣になりました。想像できないような人生を垣間見ることができるのが役者の特権だし、挑戦でもあると思います。9カ月間は、フィラデルフィア市警察の刑事として考え、行動する訳ですからね。

俳優を目指す人へのアドバイスは?

P :「これしかない!」という気迫と情熱ですね。オーディションに落ちてばかりでも、「この監督でダメなら、気に入ってくれる監督を探すぞ!」という自信も大切。でも、自信をつけるためには、常に前進していないといけないから、人間として成長することかな。

[業界コボレ話]
今月だけ、ディズニーチャンネルに加入して取材することになり、80 数局にアクセスできるが、観たい局は数えるほどしかない。そこで、思い出したのがマケイン上院議員が提唱している、好きな局だけを選択する「アラカルト」方式。視聴者にはかえって高くつくという理由で否決されたが、FCC(連邦通信委員会)新会長は、視聴者の立場から反論して、論議が再開された。
ケーブル業者は「業界の料金設定に政府が口を出すな」「新方式では新局や番組が生まれない」と、現状維持を主張。ケーブル会社の地域独占でさえ覆されそうな昨今、視聴者に選択肢がないと、自由の国アメリカの名が廃る。新会長、頑張って!