アイオワ州(16)/アメリカ中西部

「マディソン郡の橋」の舞台・トウモロコシ畑が広がる農業州

アイオワ州の旗

東の境界をミシシッピ川、西の境界をミズーリ川に挟まれた農業州・アイオワ。氷河時代の終わりに流れ込んだ氷河が肥沃な土地を生み、全米A級土壌の4分の1が同州に集中している。

アイオワ(Iowa、IA)州の基本情報
人口(2023) 3,207,004人
面積 55,838.9mile2
人口密度 (2020) 57.1人/mile
州都 デモイン(Des Moines)
州知事(2024) Kim Reynolds(共和党)
州のニックネーム Hawkeye State
人種の割合 白人89.8% / 黒人4.4% / アジア系2.8% / ヒスパニック6.9% / ネイティブ・アメリカン0.6%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $70,571
貧困家庭の割合 (2022) 11.0%
住宅平均価格 (2018-2022) $181,600
平均家賃 (2018-2022) $914
観光情報サイト Travel Iowa
オフィシャルサイト Iowa.gov

(出典元:U.S. Census Bureau)

先住民との激しい戦い歴史が刻まれた砦

恵まれた土壌と地平線が続く平坦な土地は、90%以上が農業に利用されており、生産高の4分の1は海外に輸出されている。トウモロコシ栽培ではイリノイ州と全米1位を競う。人口の約75%が農業関連の仕事に従事している。
 
1673年にフランス人開拓団が到着。1803年、トーマス・ジェファーソン大統領がフランスから1500万ドルで買い取った「ルイジアナ購入地」の一部としてアメリカ領になる。当時多くの先住民が住んでおり、白人の定住に抵抗していたため、攻撃に備えて多くの砦が作られた。マディソン砦は同州で最も古い砦。1812年、ソーク族とフォックス族が砦を包囲して火を放った。現在でも、すすに覆われた状態の砦を見ることができる。
 
1830年までにはほとんどのソーク族がイリノイ州へ強制退去されられたが、1832年、ソーク族の酋長、ブラック・ホークは立ち退きを拒否し、白人移民軍と全面戦争に突入。ブラック・ホーク戦争と呼ばれている。ホークの激しい抵抗は、先住民の大虐殺で終結。移民軍は休戦の白旗も無視して先住民を皆殺しにした。州のニックネーム「ホークアイ・ステート(鷹の目州)」は、ホークの目があまりに鋭かったことから付いたと言われている。

人気映画のロケ地は一大観光名所に

人種比率では白人が圧倒的に多く、中でもドイツ系が約40%を占め、ミシシッピ川西岸のデュピュークは「アメリカのハイデルベルグ」の異名を持つ。全米で最大のオランダ人居住地でもあり、オランダ村も多い。
 
牧歌的な中西部を代表する同州では、1935年以来、250本以上の映画が撮影された。中でも有名なのは『マディソン郡の橋』だろう。この映画が公開されて以来、舞台となったローズマン橋は観光名所となり、主人公・フランチェスカの家も一般公開されている。また、『フィールド・オブ・ドリームズ』はダイアースベルで、『ツイスター』はエイメスで撮影された。

 

ミズーリ州(17)/アメリカ中西部

西部発展の要トム・ソーヤの舞台

ミズーリ州の旗

ミズーリ州は1899年、同州選出のバンデイバー下院議員が「証拠を見せないと信用できない」と発言して以来、「Show Me State」と呼ばれ、州民は「疑い深い人」の代名詞となった。

ミズーリ(Missouri、MO)州の基本情報
人口(2023) 6,196,156人
面積 68,727.3mile2
人口密度 (2020) 89.5人/mile
州都 ジェファソン・シティ(Jefferson City)
州知事(2024) Michael Parson(共和党)
州のニックネーム The Show-Me State
人種の割合 白人82.5% / 黒人11.7% / アジア系2.3% / ヒスパニック4.8% / ネイティブ・アメリカン0.6%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $65,920
貧困家庭の割合 (2022) 13.2%
住宅平均価格 (2018-2022) $199,400
平均家賃 (2018-2022) $957
観光情報サイト Visit Missouri
オフィシャルサイト Missouri.gov

(出典元:U.S. Census Bureau)

バドワイザービールピーナツバターの発祥地

1764年にピエール・ラクリドとレーン・オーガスト・チャトーが、毛皮の交換基地として、フランス王ルイ9世にちなんだセントルイスを作り、以降多くのフランス人が移住。しかし、1803年、アメリカ合衆国がナポレオンよりルイジアナ一帯を購入し、合衆国の領土は倍加、セントルイスは中部の中心都市となった。ミズーリは1812年、24番目の州として合衆国に加盟した。
 
同州は、サンタフェ街道やオレゴン街道などのターミナルとして、また南北戦争後はサンタフェ鉄道の始発駅として西部の発展口としての役割を担った。
 
1904年にはルイジアナ領土購入100周年を祝った米国初の万国博覧会がフォレストパークで開催され、ソフトクリーム、ホットドッグ、そしてハンバーガーが初登場した。また、同州と言えば、ピーナツバター、そしてバドワイザーで有名なアンハイザー・ブッシュ社発祥の地としても知られている。

マーク・トウェインやシェリル・クロウの故郷

同州にはドイツ系の移民によって始められたワイナリーがワイン街道沿いに点在、ミズーリワインとして名高い。1927年には「スピリット・オブ・セントルイス号」でチャールズ・リンドバーグが大西洋横断に成功。セントルイスの人々は資金調達に奔走した。また、65年にはゲートウェイアーチと呼ばれる超近代的な建物がセントルイスに完成した。
 
マーク・トウェインは同州のフロリダで生まれ、4歳でハンニバルに移り住み、少年時代を過ごした。当時の家は今も博物館として残っている。トム・ソーヤやハックルベリーの物語の舞台はハンニバルだ。また、俳優のブラッド・ピットやミュージシャンのシェリル・クロウも同州の出身。
 
同州には4億年の間に形成された6000以上の鍾乳洞穴が点在している。この洞窟は南北戦争時、南部連合のゲリラや逃亡奴隷を隠すために使用され、現在は観光地として人気が高い。

 

ノースダコタ州(18)/アメリカ中西部

小麦生産の一大拠点・グレートプレーンの最北端

ノースダコタ州の旗

日本の約半分の面積がありながら、人口は65万人足らずのノースダコタ州。「ひとけのない州」との印象が強く、広大な平野の州と称されることもある。

ノースダコタ(North Dakota、ND)州の基本情報
人口(2023) 783,926人
面積 68,976.5mile2
人口密度 (2020) 11.3 人/mile
州都 ビズマーク(Bismarck)
州知事(2024) Doug Burgum(共和党)
州のニックネーム The Peace Garden State
人種の割合 白人86.6% / 黒人3.6% / アジア系3.6% / ヒスパニック4.6% / ネイティブ・アメリカン5.3%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $73,959
貧困家庭の割合 (2022) 11.5%
住宅平均価格 (2018-2022) $232,500
平均家賃 (2018-2022) $912
観光情報サイト North Dakota Office of Tourism
オフィシャルサイト NorthDakota.gov

(出典元:U.S. Census Bureau)

ビーバーやバッファロー毛皮取り引きの拠点

同州はチェイニー族やスー族を始め、ネイティブアメリカンが古くより遊牧する土地だった。その後フランス領になったが、1803年にルイジアナ購入で合衆国の準州に。貿易の拠点がレッド川盆地に作られ、バッファローやビーバーなどの毛皮の取り引きが開始された。蒸気船やキャラバンワゴンのルートの発達により、取り引きはさらに広がった。
 
南北戦争後、ノーザン・パシフィック鉄道が開通し、ドイツ系移民を流入させる目的で鉄道会社が州都ビスマルクを造都。1868年に準州はサウスダコタとノースダコタが連結した状態にまで縮小し、モンタナやミズーリは州として独立した。
 
1889年にサウスダコタから分割し、39番目の州として合衆国より認証。ドイツ系やスカンジナビア系の移民が押し寄せ、1920年までに人口が65万人まで増加した。彼らはホームステッド法により自分たちの土地を手に入れ、厳しい気候下でも育つ穀類の生産を始めた。

肥沃な土壌がもたらすオーガニック栽培のメッカ

ノースダコタ州は厳しい冬の寒さでも知られる。同州は北米大陸のど真ん中に位置するため、大陸性気候の影響が大きく、冬は激しい寒波に見舞われる。しかし、農業は同州経済の大きな基盤となっており、特にデュラム小麦は国内80%以上の生産高を誇る。また、ヒマワリや大麦、オーツ麦、ライ麦の生産でも国内有数だ。これら農産物に欠かせない同州の土壌はウィリアムソイルと呼ばれ、220万エーカーにわたり分布している。この土質はフィート芝やジューングラスなどの天然有機物が多く含まれ、有機野菜の栽培にも適している。
 
1951年に北西部で発見された油田や天然ガスも、同州の経済にとって貴重な収入源のひとつ。また、褐炭と呼ばれる石炭の一種も年間350万トンも産出され、アメリカの石炭産業の中心になっている。

 

サウスダコタ州(19)/アメリカ中西部

血塗られた歴史を刻んだ・先住民と政府軍の激戦地

サウスダコタ州の旗

人口密度が全米平均の8分の1で、「行けども、行けども、人に出会わないのが魅力」と言われるサウスダコタ州。現在も一大先住民勢力のスー族など、6万2000人の先住民が暮らしている。

サウスダコタ(South Dakota、SD)州の基本情報
人口(2023) 919,318人
面積 75,789.6mile2
人口密度 (2020) 11.7人/mile
州都 ピア(Pierre)
州知事(2024) Kristi Noem(共和党)
州のニックネーム The Mount Rushmore State
人種の割合 白人84.2% / 黒人2.6% / アジア系1.8% / ヒスパニック4.9% / ネイティブ・アメリカン8.5%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $69,457
貧困家庭の割合 (2022) 12.5%
住宅平均価格 (2018-2022) $219,500
平均家賃 (2018-2022) $878
観光情報サイト Travel South Dakota
オフィシャルサイト SouthDakota.gov

(出典元:U.S. Census Bureau)

『ラスト・サムライ』に登場。カスター将軍と無差別攻撃

1743年、ヨーロッパ人としてはフランス人が初めてこの地に足を踏み入れた。1760年、ミネソタ州からチパワ族に追いやられて来たスー族が、先住民を追い出して当地に定住するが、以降、政府軍や他の民族との抗争が続く。
 
1855年、政府軍が現在の州都・ピーアを買収して軍の駐屯所を設置。州の中央を南北に流れるミズーリ川以西が、スー族居留地と定められた。しかし1874年、スー族居留地内で金鉱が発見されると、政府軍はスー族追放に乗り出した。
 
この戦いで政府軍の指揮にあたったのが、ジョージ・カスター将軍。カスター将軍の名前は、映画『ラスト・サムライ』にも登場する。将軍は合衆国第7騎兵連隊を率いて戦うが、1876年、スー族の反撃に遭い、将軍を含む265人の隊員全員が死亡した。
 
1890年12月29日、ウンデッド・ニーで、政府軍は野営中のスー族に対して機関銃による無差別攻撃を行い、女性・子供を含む約150人が犠牲となった。『ラスト・サムライ』の中で、クルーズの悪夢にしばしば登場する無差別攻撃は、この攻撃のことを指している。

「民主主義の総本山」マウント・ラッシュモア

同州が合衆国に加盟したのは1889年。金鉱が発見された後、政府はブラックヒルズを没収したが、100年以上を経た1980年、最高裁は政府に対し1億ドルの補償支払いを命じた。だが、アメリカン・インディアン運動(AIM)は、「金は要らないから土地を返せ」と反発。この問題は今も同州に暗い影を落としている。
 
サウスダコタと言えば思い出すのが、ジョージ・ワシントン、トーマス・ジェファーソン、セオドア・ルーズベルト、アブラハム・リンカーンの4大統領の顔が彫られたマウント・ラッシュモアだ。1827年に始まった彫刻作業は、5752フィートの山に、14年の歳月と100万ドルを費やして完成した。

 

ネブラスカ州(20)/アメリカ中西部

広大なトウモロコシ畑とグレートプレーン

ネブラスカ州の旗

グレートプレーンの真ん中に陣取るネブラスカ州。同州の平坦な大地を流れるプラット河をオット族が「平坦な河(ネブラスカ)」と呼んだことから、州名が付いたと言われている。

ネブラスカ(Nebraska、NE)州の基本情報
人口(2023) 1,978,379人
面積 76,796.2mile2
人口密度 (2020) 25.5人/mile
州都 リンカーン(Lincoln)
州知事(2024) Jim Pillen(共和党)
州のニックネーム Cornhusker State
人種の割合 白人87.5% / 黒人5.4% / アジア系2.8% / ヒスパニック12.3% / ネイティブ・アメリカン1.6%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $71,722
貧困家庭の割合 (2022) 11.2%
住宅平均価格 (2018-2022) $205,600
平均家賃 (2018-2022) $987
観光情報サイト Nebraska Office of Tourism
オフィシャルサイト Nebraska.gov

(出典元:U.S. Census Bureau)

ホームステッド法からアメリカンドリーマー1号

1541年にスペインの探検家、フランシスコ・ヴァスクエズ・コロナドが中西部一帯を探検し、全域をスペイン領と宣言した。しかし、スペイン政府は植民地を作ることはせず、17世紀後半に同州を含む一帯はフランス政府によりルイジアナと名づけられ、フランス領となった。1803年のルイジアナ購入により、合衆国の一部に。
 
1840年代に入ると、オレゴン街道やモルモン街道などが貫くプラット河流域は西部移住のメッカとなった。治安の良さや鉄道の発達から開拓者が爆発的に増え、人口は急激に増加。1862年に制定されたホームステッド法(21歳以上の市民は誰でも公有地160エーカーを5年耕作すれば自分の所有地にできるという法律)は、西部開拓に拍車をかけ、ダニエル・フリーマンがこの法律を利用して作り上げた第1号の農場は今も同州に残っている。

米国史上初の無投票大統領、G・フォードの出身地

ネブラスカと言えば、広大な畑と放牧、農業のイメージが強い。第2次世界大戦後、ミズーリ河の本格的な灌漑工事が始まり、ネブラスカの乾いた土地は潤い、肥沃さを増した。
 
平坦な大地が続く同州だが、自然が作り上げたさまざまな地形も散在する。そのひとつがスコッツ断崖。西に向かうネイティブアメリカンや開拓者たちの行く手を阻み、遠回りを余儀なくさせたという険しい大地である。
 
同州出身の著名人といえば、1974年に大統領選を経験せずに大統領になったジェラルド・フォードがいる。1973年に、ニクソン政権下でアグニュー副大統領がスキャンダルで辞任し、ニクソンが当時下院議員だったフォードを指名。しかし翌年、ニクソンがウォーターゲート事件で辞任したため、米国史上唯一の無投票大統領フォードが誕生したのである。また、公民権運動の指導者で1965年に暗殺されたマルコムXも同州出身である。

 

カンザス州(21)/アメリカ中西部

人より牛が多いと揶揄された・「禁酒日」を設ける保守的な土地柄

カンザス州の旗

夏と冬の寒暖差が大きいカンザス州。『オズの魔法使い』で“平らで灰色の土地”と表現されたように、痩せた土壌のグレートプレーン(大平原)がどこまでも広がっている。

カンザス(Kansas、KS)州の基本情報
人口(2023) 2,940,546人
面積 81,736.8mile2
人口密度 (2020) 35.9人/mile
州都 トピーカ(Topeka)
州知事(2024) Laura Kelly(民主党)
州のニックネーム Cornhusker State
人種の割合 白人85.9% / 黒人6.2% / アジア系3.2% / ヒスパニック13.7% / ネイティブ・アメリカン1.3%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $69,747
貧困家庭の割合 (2022) 12.0%
住宅平均価格 (2018-2022) $189,300
平均家賃 (2018-2022) $986
観光情報サイト Kansas Office of Tourism
オフィシャルサイト Kansas.gov

(出典元:U.S. Census Bureau)

バッファロー狩りの最盛期、ワイアット・アープの舞台

16世紀初めにスペイン人が入植したが、支配権は後に移民したフランス人に移っていく。1803年のルイジアナ購入により合衆国の一部に。しかし、1854年から1856年にかけて州境が定まるにつれ、奴隷州になるか自由州になるかを巡って争いが頻発し、南北戦争のきっかけとなった「流血のカンザス」という事件に発展した。そして1861年、正式に自由州として合衆国に加盟した。
 
乾燥した草地では放牧が盛んだ。シカゴと西部を結ぶカンザスパシフィック鉄道(現ユニオンパシフィック鉄道)とサンタフェ鉄道が州内を通過することから、牛輸送の拠点となる。
 
同州は西部劇の舞台としてもよく登場する。映画『ワイアット・アープ』で登場するダッジシティーは、1870年代半ばには西部の無法者の中心地となった。バッファロー狩りの最盛期だった時代、毛皮を持ち込むハンター、賭博や娼婦などの無法地帯となり、ワイアット・アープ、パット・マスターソンらの優秀な保安官が活躍した。

小麦・航空機の生産で世界をリード

産業面では、畜産だけでなく、小麦を始めとする穀物の生産地として世界的に有名だ。開拓当時は”A Hard Land in the Heartland”と呼ばれるほどの厳しい気候と土壌だったが、現在の小麦生産は全米で1、2位を誇る生産規模。食品加工や製パン、製粉の最新技術でも知られる。また、同州最大の都市ウィチタは、現在、ボーイング社、セスナ社、レイセオン社などが拠点を置き、航空機の製造で世界をリードしている。
 
州民のほとんどは19世紀に入ってきた北欧、ドイツ、ロシアからの移民の子孫。保守的な同州では日曜日が「禁酒日」となっており、日曜日は酒店は閉まり、スーパーなどでもアルコール類を販売しない。しかし、酒類の購入が許可される年齢はほとんどの州が21歳以上なのに対し、同州は18歳以上という矛盾した部分もある。

 

デラウェア州(22)/アメリカ南部

合衆国に1番乗り・進取に富んだ州気質

デラウェア州の旗

全米で2番目に小さいデラウェア州。しかし、ニューヨークから車で約3時間、ワシントンDC、フィラデルフィアからは2時間のメガポリス内にあることから、人口密度は高い。

デラウェア(Delaware、DE)州の基本情報
人口(2023) 1,031,890人
面積 1,948.0mile2
人口密度 (2020) 508.0人/mile
州都 ドーバー(Dover)
州知事(2024) John Carney(民主党)
州のニックネーム The First State
人種の割合 白人68.0% / 黒人23.8% / アジア系4.4% / ヒスパニック10.3% / ネイティブ・アメリカン0.7%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $79,325
貧困家庭の割合 (2022) 9.4%
住宅平均価格 (2018-2022) $305,200
平均家賃 (2018-2022) $1,286
観光情報サイト Delaware Office of Tourism
オフィシャルサイト Delaware.gov

(出典元:U.S. Census Bureau)

開拓の歴史とともに歩んだ古い港町

デラウェア州を含むこの辺りは、ヨーロッパからの開拓団が最初に降り立った地であり、後に最初の移住者が定住した場所でもある。「メイフラワー号」がマサチューセッツ州に到着した1620年より14年も前に、イギリス人ヘンリー・ハドソンがこの地を訪れている。
 
1682年、ペンシルベニア植民地の創始者となったウィリアム・ペンが、友人のヨーク公ジェイムズから権利を得て都市機能を整備し、今日のデラウェアの礎を築いた。古い港町ニューキャッスルはペンが上陸してきた場所で、最初に州都が置かれた街。現在も17、18世紀の街並みが残っている。
 
1787年12月7日、デラウェア州がアメリカ合衆国憲法を建国13州中最初に批准したことから、「ファーストステート」と呼ばれる。独立戦争では、奴隷制度を認めていたにも関わらず北軍として戦い、奴隷解放の一役を担った。進取に富んだ州気質は今なお続き、同州では珍しく州虫として、てんとう虫が定められている。これは1974年、地元の小学生が州議会に投げかけ成立したものだ。

会社設立を優遇する州法で多国籍企業が本社登記

州の主な産業は化学工業、機械、繊維、食料品などの加工業で、州最大の都市ウィルミントンは一大工業地帯となっている。この小さな州になぜそれほどの工場が集まったかといえば、会社設立を優遇する州法があるうえ、利息や投資所得について州税が免除されたり、付加価値税や売上税がない税制優遇措置があるためだ。また、州政府は海外企業に対しても広く門戸を開いており、登記するだけで実際の事業活動を州外および海外からコントロールできるようになっている。そのため、多くの多国籍企業が同州に本社を置いている。
 
デラウェア州を代表する企業がデュポン社である。フランス人デュポンは、1802年ウィルミントン近くに火薬工場を設立。デュポンの死後も事業はさらに拡大し、現在ではプラスチック製品、化学製品、合成繊維などの世界最大の化学工場として君臨している。

 

メリーランド州(24)/アメリカ南部

独立戦争の中心舞台は・今先端技術のデジタル・ハーバーに

メリーランド州の旗

首都経済圏に位置するメリーランド州は、首都ワシントンDCと密接な関係を持ち、数多くの歴史的決定が下された連邦政府の奥座敷である。

メリーランド(Maryland、MD)州の基本情報
人口(2023) 6,180,253人
面積 9,708.6mile2
人口密度 (2020) 636.1人/mile
州都 アナポリス(Annapolis)
州知事(2024) Wes Moore(民主党)
州のニックネーム Old Line State, Free State
人種の割合 白人57.3% / 黒人31.7% / アジア系7.1% / ヒスパニック11.5% / ネイティブ・アメリカン0.7%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $98,461
貧困家庭の割合 (2022) 9.6%
住宅平均価格 (2018-2022) $380,500
平均家賃 (2018-2022) $1,598
観光情報サイト Visit Maryland
オフィシャルサイト Maryland.gov

(出典元:U.S. Census Bureau)

要塞に掲げた星条旗。アメリカ国歌発祥の地

17世紀初頭にイギリス人探検家ジョン・スミスがこの地を地図に記して以来、イギリスがワシントンDC、デラウェア州を含んだ同州一帯を支配するようになった。1631年、イギリス国王チャールズ1世はローマカトリック教信者のセシル・カルバート・ボルティモア男爵に同一帯を賦与した。1635年にカルバート卿は200名のカトリック教徒を従え入植するが、土地の所有や権力を巡り同地一帯を治めるプロテスタント系の州議会と対立。入植者たちは1775年に独立戦争を起こし、1784年パリ条約が同州の議事堂にて批准され、合衆国が正式に誕生した。
 
しかしその後、1812年戦争と呼ばれるイギリスとの争いが再び勃発。戦いに勝利したアメリカ軍が掲げた星条旗をフランシス・スコット・キーが仰ぎ、「星条旗」という詩を詠み、後にアメリカ国歌となった。

21世紀を担う先端技術産業の中心

同州はデジタル・ハーバーと呼ばれる情報技術、航空宇宙工学、通信関連やバイオテクノロジー産業の中心地である。なかでもモンゴメリー・カウンティーは全米3位のバイオテックセンターで、ヒト遺伝子の情報解析に貢献したセレラ・ジェノミック社などが研究所を構える。米国食品医薬品局など、19の国立研究所も同カウンティーに集中。ジョンズ・ホプキンス大学を始め57校もの高等教育機関や研究所もあり、21世紀を担う生命科学の首府として注目を集めている。
 
首都ワシントンDCのすぐ隣に位置するため、同州は政治色の濃い地域でもある。大統領の山荘キャンプ・デービッドは周囲から隔絶されたカクティン山中にある。この山荘では、エジプトとイスラエルの和平成立が実現した1978年の会談を始め、重要な会談が数多く行われた。ワシントンDCから近い地域はニューメリーランドと呼ばれ、連邦政府の職員や高級官僚のベッドタウンとなっている。

 

ワシントンDC(24)/アメリカ南部

連邦機関が集まり・米国の歴史が眠る国家の中枢

ワシントンDCの旗

ホワイトハウスや国会議事堂など、国家の重要機関が密集するワシントンDCは、どの州にも属さない特別区。正式名称は「Washington District of Columbia」という。

ワシントンDC(Washington, D.C.)の基本情報
人口(2023) 678,972人
面積 66,437.5mile2
人口密度 (2020) 115.9 人/mile
特別区長(2024) Muriel Bowser(民主党)
人種の割合 白人76.8% / 黒人4.6% / アジア系2.0% / ヒスパニック14.0% / ネイティブ・アメリカン2.0%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $101,722
貧困家庭の割合 (2022) 15.1%
住宅平均価格 (2018-2022) $705,000
平均家賃 (2018-2022) $1,817
観光情報サイト Washington Office of Tourism
オフィシャルサイト DC.gov

(出典元:U.S. Census Bureau)

政府機関は一般公開。『ルーツ』のリサーチも

合衆国の首都として計画的に作られた都市で、東京・山の手線の内部とほぼ同じ面積。市の誕生は1791年だが、実際に首都がDCに移転したのは1800年12月1日。1974年までは連邦政府の管轄下にあり、市長は大統領に任命されていた。大統領選挙に参加するようになったのも1964年のことである。現在も下院議員はいるが、上院議員はいない。
 
DCは連邦政府の立法、行政、司法の機関だけを持ち、観光業以外の際立った産業はない。主な連邦機関にはホワイトハウス、連邦議会議事堂、印刷局、FBI本部、合衆国最高裁判所などがあり、いずれも一般に公開されている。国立公文書館には独立宣言、合衆国憲法、人権宣言などの貴重文書が所蔵されている。一般の人でもリサーチセンターで蔵書を活用することができ、奴隷として連れられてきた祖先、クンタ・キンテを通して黒人の歴史を書いた『ルーツ』のアレックス・ヘイリーも、ここで祖先の歴史をたどった。

世界最大の博物館複合体。スミソニアン博物館が林立

フロリダのディズニーワールドを抜き、家族旅行先のトップに君臨するDC(2001年実績)だが、その魅力は連邦機関だけではない。スミソニアン協会が運営する世界最大の博物館複合体17のうち、16がDCにある。
 
国家に貢献した人物の偉業を称えて造られた建物も多く、白い石柱の塔はワシントン記念塔。リフレクティング・プールを挟んで対面にあるのが、リンカーン記念館だ。壁には有名なゲティズバーグでの演説”that government of the people, by the people, for the people”が刻まれている。この記念館の階段の上にマーチン・ルーサー・キング牧師が立ち、「私には夢がある…」と演説したのは1963年のこと。リンカーン記念館の近くには、ベトナム戦没者慰霊碑があり、犠牲者6万人の名前が長さ151メートルの御影石の壁に刻まれている。

 

ウエストバージニア州(25)/アメリカ南部

財政難からの脱出が課題・心の故郷『カントリー・ロード』

ウエストバージニア州の旗

故ジョン・デンバーの名曲『カントリー・ロード』で知られるウエストバージニア州。歌の中でも山岳地帯を連想させる歌詞があるが、同州のニックネームもずばり「Mountain State」だ。

ウェストバージニア(West Virginia、WV)州の基本情報
人口(2023) 1,770,071人
面積 24,034.8mile2
人口密度 (2020) 74.6人/mile
州都 チャールストン(Charleston)
州知事(2024) Jim Justice(共和党)
州のニックネーム The Mountain State
人種の割合 白人92.8% / 黒人3.7% / アジア系0.9% / ヒスパニック2.1% / ネイティブ・アメリカン0.3%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $55,217
貧困家庭の割合 (2022) 17.9%
住宅平均価格 (2018-2022) $145,800
平均家賃 (2018-2022) $831
観光情報サイト West Virginia Office of Tourism
オフィシャルサイト WV.gov

(出典元:U.S. Census Bureau)

州競売のでたらめ話がまかり通る深刻な財政難

昨年1月、ネットオークションサイト「eBay」にこんな出品があった。「私はウエストバージニア州の皇帝で、この商品の世話人に任命されました。州を競り落としませんか。行政権、住民と住民の所有物は含まれませんが、皇帝の座はお譲りします」。サイト管理者は悪質なジョークとしてすぐに削除したが、わずかの間に入札が殺到した。
 
このようなでたらめ話を多くの人が信じたところに、ウエストバージニア州の悲哀がある。同州の2005年度の財政赤字は1億2000万ドルに達している。また、1983年から失業率が8.6%から18%に跳ね上がり、全米一になった。
 
それでも近年は、温暖な気候と風光明媚な山岳地帯、南北戦争史跡などをセールスポイントに観光に力を入れていることもあり、93年に11.1%だった失業率が2000年12月には5.6%まで好転。社会福祉の恩恵を受けている人の数は、実に74%も減少している。

保守的な土壌が垣間見える映画『オクトーバースカイ』

1861年、同州はバージニア州から分離し独立州となったが、分離の背景には人種構成が影を落としている。東部はイングランド系、西部はアイルランド系が多数を占めるが、州議会は東部中心に進められ、交通網や学校の整備などで西部は冷遇されていた。18世紀半ばから19世紀にかけて、石炭や天然ガス、石油が相次いで発見され、自立の見通しがついたところで南北戦争が勃発。東部が北部連邦から脱退すると、西部は残留を決め、分離が確定的になった。
 
1930年代、世界恐慌の影響をまともに受けた同州では、F・ルーズベルト大統領のニューディール政策が浸透し、保守的な土壌を育んだ。石炭産業の暗転と保守的な土地柄を如実に描いた映画に、『オクトーバースカイ』がある。これは炭鉱の町、コールウッドに生まれたホーマー・ヒックマンのベストセラー自伝『ロケットボーイズ』を映画化したものだ。

 

バージニア州(26)/アメリカ南部

北米初の入植者の定住地・大統領8人を輩出

バージニア州の旗

正式な州名は「Commonwealth of Virginia」。「Commonwealth」とは共同体のことで、意味において「State」との違いはないが、同州の歴史は古く、1619年にさかのぼる。

バージニア(Virginia、VA)州の基本情報
人口(2023) 8,715,698人
面積 39,471.7mile2
人口密度 (2020) 218.6人/mile
州都 リッチモンド(Richmond)
州知事(2024) Glenn Youngkin(共和党)
州のニックネーム The Old Dominion
人種の割合 白人68.5% / 黒人20.0% / 7.3アジア系 / ヒスパニック10.5% / ネイティブ・アメリカン0.6%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $87,249
貧困家庭の割合 (2022) 10.6%
住宅平均価格 (2018-2022) $339,800
平均家賃 (2018-2022) $1,440
観光情報サイト Visit Virginia
オフィシャルサイト Virginia.gov

(出典元:U.S. Census Bureau)

独立を担った立役者がずらり

1607年、北米で最初に入植者が定住したのはイギリス人、ジョン・ジェームズが開拓したジェームズタウン。当時は先住民のポーハタン族が居住しており、1617年ジョン・ロルフが酋長の娘・ポカホンタスと結婚した。1619年、初の議会が開催され、時のヤードリー総督が「より良い共同体(Commonwealth)のために」と語ったのが「Commonwealth」の名称の始まりだ。
 
バージニアは植民地13州の中でも最大の面積と人口を抱える州で、初代大統領ジョージ・ワシントン、独立宣言の起草者で第3代大統領のトーマス・ジェファーソン、第5代大統領ジェームズ・モンローなど、独立の立役者となった超大物がずらり。合衆国に加盟したのは1788年で、独立13州の中では10番目と意外に遅かった。
 
バージニア出身の大統領は8人。第12代までのうち実に7人が同州出身と突出して多いことから、「大統領の母」というニックネームもある。

首都のベッドタウン。連邦関係の施設も多い

南北戦争までの主要産業は奴隷労働力を主にしたタバコであったため、奴隷制をめぐって1861年、合衆国から離脱。地理的に南北の境界に位置し、数多くの激戦地にもなった。現在でも全米に残る激戦地帯の3分の1が同州内にある。南軍のロバート・リー将軍、トーマス・・ストーンウォール・・ジャクソン将軍など、歴史に残る名将も多い。
 
同州はポトマック川を挟んで首都ワシントンDCと隣接しており、アーリントン国立墓地、国防総省、CIAなど、連邦関連の施設が多いのも特徴。
 
バージニア州は大統領以外にも多数の著名人を輩出している。探険家ルイスとクラーク、黄熱病の発見者ウォルター・リード軍医、小説家のエドガー・アラン・ポー、俳優のウォーレン・ビーティー、シャーリー・マクレーンなどが同州の出身だ。

 

ケンタッキー州(27)/アメリカ南部

草競馬で有名な牧草地帯・古き良きアメリカの代名詞

ケンタッキー州の旗

『My Old Kentucky Home』やダービー、バーボンウィスキーなど、牧歌的で古き良きアメリカのイメージが強いケンタッキー州だが、南北戦争の激戦地となった残酷な歴史もある。

ケンタッキー(Kentucky、KY)州の基本情報
人口(2023) 4,526,154人
面積 39,480.9mile2
人口密度 (2020) 114.1人/mile
州都 フランクフォート(Frankfort)
州知事(2024) Andy Beshear(民主党)
州のニックネーム Bluegrass State
人種の割合 白人68.5% / 黒人20.0% / ネイティブ・アメリカン0.6% / アジア人7.3% / ヒスパニック10.5%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $60,183
貧困家庭の割合 (2022) 16.5%
住宅平均価格 (2018-2022) $177,000
平均家賃 (2018-2022) $902
観光情報サイト Kentucky Tourism
オフィシャルサイト Kentucky.gov

(出典元:U.S. Census Bureau)

豊かな河川交通。英雄リンカーンのお膝元

アパラチア山脈の西側に位置する同州は、「ブルーグラス・ステート」と呼ばれるように、穏やかな牧草地帯が広がる。ミシシッピ川とオハイオ河が合流する地点で、輸送に利用可能な河川の総距離は1770キロと、本土で最も恵まれている。産業では機械工業が盛んで、トヨタ自動車を始めとする日系企業も多く進出している。
 
18世紀半ば、探検家ダニエル・ブーンの来訪以来、イギリス人、そしてフランス人と次々に白人が定住。1792年、15番目に合衆国に加盟した。
 
南北戦争時には、北と南を分けるメイソン・ディクソン線のすぐ南側に位置していたため、南北双方の州気質が存在していた。奴隷制度を認める州として発展していながらも、戦争中は北軍として戦った。また、第16代大統領アブラハム・リンカーンと同時期に南軍同盟大統領となったジェファーソン・デイビスは同州出身であったため、州内では親類や知人の間でも争いが絶えず、戦争中の4年間は最も激しい戦いとなった。

バーボンの本場KFC発祥の地

世界のトウモロコシ生産量の半分を産出するコーンベルト地帯に位置する同州は、バーボンウィスキーが生まれた場所でもある。しかし、銘酒の本場でありながら、同州の半分以上の地域では現在、酒の売買は法律に違反する。
 
1875年より始まったケンタッキーダービーは世界3大ダービーのひとつで、毎年5月の第1土曜日にルイビルのチャールズタウンズ競馬場で開催される。また、「ケンタッキー」といえば「フライドチキン」というぐらい、KFCは世界に浸透している。カーネル・サンダースがこの地で始めたチキン料理の店はまたたく間に評判になり、60年代以降、KFCの名は、全米、世界に知れ渡ることになった。同社の本社は同州にあり、その業績はルイビルにあるカーネル・サンダース博物館でも知ることができる。

 

ノースカロライナ州(28)/アメリカ南部

ナスカーレースで沸く東のシリコンバレー

ノースカロライナ州の旗

西部には美しい景観を誇るアパラチア山脈が走り、大西洋に面した東部は閑静なビーチ、沖にはアウターバンクスと呼ばれる野鳥獣保護地域に指定された島々が点在する観光地でもある。

ノースカロライナ(North Carolina、NC)州の基本情報
人口(2023) 10,835,491人
面積 48,607.4mile2
人口密度 (2020) 214.7人/mile
州都 ローリー(Raleigh)
州知事(2024) Roy Cooper(民主党)
州のニックネーム Tar Heel State
人種の割合 白人 69.9% / 黒人22.2% / ネイティブアメリカン1.6% / アジア人3.6% / ヒスパニック10.5%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $66,186
貧困家庭の割合 (2022) 12.8%
住宅平均価格 (2018-2022) $234,900
平均家賃 (2018-2022) $1,093
観光情報サイト Visit North Carolina
オフィシャルサイト nc.gov

(出典元:U.S. Census Bureau)

消えた初期の開拓団「CROATOAN」の謎

16世紀末に、イギリス人ジョン・ホワイト率いる入植グループがローノークに植民地を作り上げるまで、同州は30ものネイティブアメリカンの部族が暮らす地域だった。1587年には、ホワイトの孫でもある初のイギリス系2世、バージニア・デールが同地で誕生。同年、ホワイトは資材の調達のために開拓団を残し帰国、1590年に再び戻ってきた。が、幼いバージニア・デールを始め、他の開拓団は忽然と姿を消し、木には「CROATOAN」とだけ記されていた。この神隠しの謎は未だ解明されていない。
 
1705年同州で初めての町が作られた。しかし、ネイティブアメリカンとの確執が深刻化するとともに、重税を課すようになった本国イギリスに対する入植者たちの反発が高まり、1774年、エデントンに住む女性たちがイギリス式の茶をボイコット。「エデントンの茶会」として世に残る出来事に。1799年、12番目の州として合衆国に加盟した。

RJレイノルズをはじめ、全米最大のタバコ生産地

州の中心地はハートランドと呼ばれ、州都ローリー、ダーラム、チャペルヒルを結んだ「リサーチ・トライアングルパーク」にはハイテク産業施設が密集し、デューク大学やノースカロライナ大学など名門大学も多い。同州最大の都市、シャーロットは、NASCARレースの本拠地として、また金融の中心地として知られている。東部のハイポイントは家具の町として有名。
 
タバコ産業も盛んで、ラッキーストライクで有名なアメリカン・タバコ社や、RJレイノルズ社がある。また、下着メーカーとしておなじみのへインズ社は、同市にある噛みタバコの製造工場から発展したと言われている。炭酸飲料のペプシコーラも、同州にある薬局で販売された消化酵素ペプシン入りの治療薬が原型。現在、本社はニューヨークにあり、タコベルなどのファーストフードチェーンも率いる大企業に成長している。

 

サウスカロライナ州(29)/アメリカ南部

南部文化が花開いたアメリカ南北戦争勃発の地「サウスカロライナ州」

サウスカロライナ州の旗

サウスカロライナ州は合衆国から脱退した最初の州で、アメリカ南北戦争の幕開けの舞台となったが、その戦争は皮肉にも、北軍のシャーマン将軍が同州を焼き討ちしたことで終結に至った。

サウスカロライナ(South Carolina、SC)州の基本情報
人口(2023) 5,373,555人
面積 30,055.8mile2
人口密度 (2020) 170.2人/mile
州都 コロンビア (columbia)
州知事(2024) Henry McMaster(共和党)
州のニックネーム Palmetto State
人種の割合 白人 68.9% / 黒人21.2% / ネイティブ・アメリカン0.6% / アジア系2.0% / ヒスパニック6.6%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $63,623
貧困家庭の割合 (2022) 14.0%
住宅平均価格 (2018-2022) $216,200
平均家賃 (2018-2022) $1,065
観光情報サイト Visit South Carolina
オフィシャルサイト SC.gov

(出典元:U.S. Census Bureau)

独立戦争当時からサウスカロライナ州は経済・文化の拠点

1670年チャールストン港の近くにイギリス人が定住。チャールズ1世の名前をラテン読みし、「カロライナ」と名付けられた。1710年にノースカロライナとサウスカロライナに分裂。その後、他のヨーロッパ人も押し寄せ、奴隷貿易の始まりとともに大農園が出現し、チャールストン港は貿易や文化の拠点となった。
 
独立戦争の頃には植民地の中でも豊かな街に発展しており、全米でゴルフが初めてプレーされたのも、初のオペラ公演が行われたのもチャールストンだ。
 
独立後、綿織機の発明で綿花の栽培が盛んになり、サウスカロライナ州の経済は繁栄。だが、この頃から奴隷法などを巡り、連邦政府との溝が深まる。サウスカロライナ州出身のジョン・カルホーンが連邦法実施拒否を唱えたのを契機に、一気に連邦政府との緊張が高まり、1860年12月20日、連邦政府からの離脱を宣言。多くの南部州が追随し翌年4月、南軍が連邦軍の駐屯するチャールストン港サムター要塞を攻撃し、アメリカ南北戦争の幕が切って落とされた。

3人のジャクソンを輩出・裸足のジョーもサウスカロライナ州出身

南北戦争で大きな打撃を受けた経済も、20世紀に入ると繊維業の発達とともに復興。近年は豊かな歴史と温暖な気候で、観光業が大きな収入源となっている。チャールストンは、ニューオーリンズとともに南部文化が花開いた土地でもある。「狂乱の20年代」に大流行したダンスの名前もチャールストンだ。
 
サウスカロライナを代表する人物に、3人のジャクソンがいる。第7代大統領のアンドリュー・ジャクソンは、丸太小屋で生まれた初めての大統領。2人目は公民権リーダーのジェシー・ジャクソン師、3人目は映画『フィールド・オブ・ドリームス』でおなじみ、シューレス・・ジョー・ジャクソン(裸足のジョー)だ。裸足のジョーは生涯打率.356を誇るホワイトソックスの名打者だったが、1919年のワールドシリーズで八百長事件が発覚、裁判で無罪となったものの永久追放処分になった悲運のヒーローだ。

 

ジョージア州(30)/アメリカ南部

アメリカの郷愁を誘うサザンホスピタリティー

ジョージア州の旗

ミシシッピ以東最大のジョージア州。面積は日本国土の40%に相当する。北にはブルーリッジ山脈を抱え、南にはワニが生息するオケフェノキー沼、東は太平洋に面している。

ジョージア(Georgia、GA)州の基本情報
人口(2023) 11,029,227人
面積 57,701.1mile2
人口密度 (2020) 185.6人/mile
州都 アトランタ (Atlanta)
州知事(2024) Brian P. Kemp(共和党)
州のニックネーム Peach State
人種の割合 白人59.0% / 黒人33.1% / ネイティブ・アメリカン0.6% / アジア系4.8% / ヒスパニック10.5%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $71,355
貧困家庭の割合 (2022) 12.7%
住宅平均価格 (2018-2022) $245,900
平均家賃 (2018-2022) $1,221
観光情報サイト Explore Georgia
オフィシャルサイト Georgia.gov

(出典元:U.S. Census Bureau)

南北戦争で伝統が崩壊。アフリカ系エリートの誕生

ジョージアといえば、『風と共に去りぬ』を思い浮かべる人も多いだろう。1800年代前半は綿花王国として君臨、多くの大農場が生まれた。綿織機の発明で綿花栽培は利潤の高い産業となったが、一方、広大な農場で働く多くの人手が必要となり、奴隷取引に拍車をかけた。
 
リンカーン大統領の奴隷解放政策に反発し、1860年連邦から脱退。「南部同盟」を結成する。翌61年、南北戦争が勃発。首都アトランタは焦土と化し、州のほぼ全域が破壊された。
 
敗戦によって、南部奴隷州としての価値と生活様式が根底から覆されたが、反面優秀なアフリカ系エリートを数多く生み出した。マーチン・ルーサー・キング牧師もアトランタ出身。1971年にアトランタ市長に当選したメイナード・ジャクソンは、南北戦争復興以来、南部で初めて誕生したアフリカ系市長だ。以来アトランタ市長はアフリカ系が続き、市議会、警察署長もアフリカ系で占められている。

近代都市に残るアメリカの郷愁

大豆、トウモロコシ、ピーカン、ピーナツなどの農業や牧畜も盛ん。ジョージアが生んだ大統領、ジミー・カーターもピーナツ農園の息子だった。南北戦争後もプランテーション経済は維持され、繊維産業を中心に発展。1960年代以降は、ノースカロライナからテネシー、ジョージア、アーカンソー以南を通りカリフォルニアへと続く「サンベルト」に乗った工業化が進み、アトランタ市は高層ビルが建ち並ぶ近代都市となり、コカコーラ本社やCNNセンターがある。
 
南北戦争で徹底的な焦土作戦に遭ったため、南部の歴史を残した街並はない。しかし、サザンベルと呼ばれる南部美人を賞賛した騎士道的な精神や、客人を温かくもてなすサザンホスピタリティーは今でも根強く残っている。州歌となったレイ・チャールズの『我が心のジョージア』とともに、アメリカ人の郷愁を駆り立てている。

 

フロリダ州(31)/アメリカ南部

太古の自然が残る本土最南端の地

フロリダ州の旗

本土最南端の地はフロリダ州のキーウエスト。フロリダ半島の南端からフロリダキーズと呼ばれる小さな島が点々と、南端のキーウエストまで伸びている。

フロリダ(Florida、FL)州の基本情報
人口(2023) 22,610,726人
面積 53,633.7mile2
人口密度 (2020) 401.4人/mile
州都 タラハシ― (Tallahassee)
州知事(2024) Ron DeSantis(共和党)
州のニックネーム Everglade State, Orange State, Sunshine State
人種の割合 白人76.8% / 黒人17.0% / ネイティブ・アメリカン0.5% / アジア系3.1% / ヒスパニック27.1%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $67,917
貧困家庭の割合 (2022) 12.7%
住宅平均価格 (2018-2022) $292,200
平均家賃 (2018-2022) $1,444
観光情報サイト Visit Florida
オフィシャルサイト My Florida

(出典元:U.S. Census Bureau)

「若返りの泉」求めてアメリカ本土発見

コロンブスのアメリカ大陸発見に同行していたスペイン人探検家、ホワン・ポンス・デ・レオンが1513年、自分の探検団を引き連れて再度挑戦。プエルトリコに到着した後、伝説の「若返りの泉」を探してさらに北上、フロリダに辿り着いた。フロリダはヨーロッパの開拓団が初めて踏んだアメリカ本土。1565年に創設されたセントオーガスティンは、全米で初めて開拓団が定住した街だ。
 
その後、1763年から20年間はイギリス領となるが、1822年にアメリカに割譲されるまでスペインに統治されていた。合衆国加入は1845年。

温暖な気候に惹かれ集まる裕福な引退者

沼地や川や湖が網の目のように交錯しているせいで、フロリダ半島の海抜はゼロに近い。上流の水が流れ込んでできたエバーグレーズ大湿地帯は州南端のほぼ全域を占め、その7分の1がエバーグレーズ国立公園に指定されている。ここでは、亜熱帯ジャングルなどの自然や野生動物の生態系が、ほぼ太古のまま保存されている。
 
1年を通して温暖なフロリダ州のニックネームは、ずばり「サンシャイン・ステート」。全米のバケーションスポットがあるだけでなく、パームビーチなどの高級住宅街には定年後に移住してきた裕福な引退者も多い。
 
また、1959年のキューバ革命以来、キューバからの亡命や難民が急増。ヒスパニック系の人口比率が、州全体では16.8%なのに対し、マイアミ-デード・カウンティーでは57.8%と半数以上を占めている。マイアミが「北のハバナ」と呼ばれるゆえんだ。
 
恵まれた気候を生かし、柑橘類の産地としても有名。全米のオレンジジュースの80%はフロリダ州で作られている。その一方、ハリケーンによる被害も多く、1992年に南フロリダを襲ったハリケーン・アンドリューは、100億ドルに及ぶ被害を出した。

 

テネシー州(32)/アメリカ南部

ブルースやカントリー・音楽が盛んなエルビス・プレスリーの故郷

テネシー州の旗

テネシー渓谷の一帯にはもともと、政府によってオクラホマに追いやられたチェロキー族が住んでいた。州名もチェロキー族集落の名前「Tenase」に由来している。

テネシー(Tennessee、TN)州の基本情報
人口(2023) 7,126,489人
面積 41,227.1mile2
人口密度 (2020) 167.6人/mile
州都 ナッシュビル(Nashville)
州知事(2024) Bill Lee(共和党)
州のニックネーム Butternut State, Volunteer State
人種の割合 白人78.3% / 黒人16.7% / ネイティブ・アメリカン0.5% / アジア系2.1% / ヒスパニック6.4%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $64,035
貧困家庭の割合 (2022) 13.3%
住宅平均価格 (2018-2022) $232,100
平均家賃 (2018-2022) $1,047
観光情報サイト Tennessee Office of Tourism
オフィシャルサイト Tennessee State Government

(出典元:U.S. Census Bureau)

ブラックミュージックやカントリー発祥の地

テネシーは1540年にデソト探検隊が通過し、17世紀にはフランスやイギリスの領地になった。その後もバージニアやノースカロライナなどに吸収され、1796年にテネシー州として正式に合衆国に加盟した。
 
州都のナッシュビルにあるザ・ジュビリー・シンガーズ・オブ・フィスク大学は、後のブラックミュージックの基礎となる黒人霊歌を世界に紹介し、音楽都市として一躍ナッシュビルの名を世に広めた。その伝統は今日も受け継がれ、同州出身のミュージシャンには「ブルースの女王」のベシー・スミス、「ブルースの父」のW・C・ハンディ、「ブルーグラスの父」のビル・モンローと、「~の父」「~の母」が目白押し。
 
だが、「王様」とくればただ1人。「ロックンロールの王様」、エルビス・プレスリーだ。プレスリーの豪邸「グレースランド」は一般公開されており、世界中から多くのファンが訪れる。
 
同州で生まれたのはブラックミュージックだけではない。ブリストルの街はカントリーミュージック発祥の地。今やナッシュビルはカントリーの震源地と言われている。

広島原爆開発を担った原子力研究所も

1968年、ナッシュビルでマーチン・ルーサー・キング牧師が暗殺された。キング師が凶弾に倒れたロレインモーテルは、現在は全米公民権博物館として保存されている。
 
テネシー州ではこれまで第7代大統領アンドリュー・ジャクソン、第11代ジェームズ・ポーク、第17代アンドリュー・ジョンソンと3人の大統領を輩出している。2000年の大統領選で史上最少の僅差に涙を飲んだアル・ゴアも同州出身。
 
東部のオークリッジに原子力研究所が設立されたのは1940年代。この研究所は広島に投下された原爆開発にも関与した。現在はアメリカ科学エネルギー博物館が建てられ、「エネルギーの世界首都」の別名を持つ。

 

アラバマ州(33)/アメリカ南部

差別の歴史を乗り越え・南部経済発展の中心地へ

アラバマ州の旗

『アラバマ物語』で有名な同州は、人種差別の激しい州というイメージが強い。しかし、ディープサウスの中心地のひとつとして、長い伝統と独自の文化を誇り、近年は経済発展もめざましい。

アラバマ(Alabama、AL)州の基本情報
人口(2023) 5,108,468人
面積 50,633.20mile2
人口密度 (2020) 99.2人/mile
州都 モンゴメリー(Montgomery)
州知事(2024) Kay Ivey(共和党)
州のニックネーム Camellia State, Heart of Dixie, Yellowhammer State, Cotton State
人種の割合 白人68.9% / 黒人26.8% / ネイティブ・アメリカン0.7% / アジア人 1.6% / ヒスパニック4.9%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $59,609
貧困家庭の割合 (2022) 16.2%
住宅平均価格 (2018-2022) $179,400
平均家賃 (2018-2022) $925
観光情報サイト Sweet Home Alabama
オフィシャルサイト Alabama.gov

(出典元:U.S. Census Bureau)

アラバマ共和国を名乗り南部同盟の中心的存在に

アラバマという州名を聞くと、真っ先に小説『アラバマ物語』(原題:『To Kill a Mockingbird』)を思い浮かべる人も多いだろう。1930年代、人種差別と戦うため立ち上がった1人の弁護士の物語だが、ここからアラバマ=人種差別の激しい州、と短絡的にイメージしてしまいがちだ。確かにマーチン・ルーサー・キング牧師は同州のバーミンガム市を「米国で最悪の人種差別都市」と呼んだ。公民権運動が激しい63年、同州知事に就任したジョージ・ウォーレスが「今日も差別、明日も差別、永遠に差別」と公言したことはあまりにも有名だ。
 
しかし、アラバマはサザンホスピタリティーの地でもあり、ディープサウスの中心地として長い伝統と独自の文化を持ち、州民はこれを誇りに思っている。
 
アラバマ州に最初の人類が居住したのは、9000年から1万年前のこと。16世紀からはこの地を舞台に、スペイン人、フランス人、イギリス人による激しい覇権争いが繰り広げられた。1814年、アンドリュー・ジャクソン将軍指揮下の入植軍がインディアンを打ち破ると、入植者が急増。1819年、22番目の州として合衆国に加盟した。しかし1861年、北部連邦を脱退してアラバマ共和国を名乗り、結成直後の南部同盟に加わり中心的役割を演じる。

ヘレン・ケラーからカポーティーまでを輩出

同州最大の都市は、南部を代表する工業都市・バーミンガム。鉄鋼業が産業の中心で、石油、石炭、天然ガスの生産も盛ん。一方、農業では大豆、ピーナツ、トウモロコシの生産量が多い。
 
同州生まれの有名人には、三重苦を負いながら障害者福祉に貢献したヘレン・ケラー女史、作家のトルーマン・カポーティ、俳優ではコートニー・コックス・アーケットがいる。音楽関係では、「ジャンバラヤ」を大ヒットさせたハンク・ウィリアムズ、ナット・キング・コール、ライオネル・リッチーら。また、生涯本塁打660本を放った野球のウィリー・メイズ、ボクシングのヘビー級チャンピオンのジョー・ルイスらがいる。

 

ミシシッピ州(34)/アメリカ南部

ブルースの生まれ故郷・公民権運動の表舞台

ミシシッピ州の旗

気候が温暖で四季の変化に富んだミシシッピ州。まさにディープサウスと呼ぶにふさわしい南部の中心である同州の名産物は、全米最大の捕獲量を誇るキャットフィッシュ(ナマズ)である。

ミシシッピ(Mississippi、MS)州の基本情報
人口(2023) 2,939,690人
面積 46,913.1mile2
人口密度 (2020) 63.1人/mile
州都 ジャクソン(Jackson)
州知事(2024) Tate Reeves(共和党)
州のニックネーム Magnolia State, Hospitality State
人種の割合 白人58.8% / 黒人37.8% / ネイティブ・アメリカン0.6% / アジア系1.2% / ヒスパニック3.6%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $52,985
貧困家庭の割合 (2022) 19.1%
住宅平均価格 (2018-2022) $151,000
平均家賃 (2018-2022) $896
観光情報サイト Visit Mississippi
オフィシャルサイト MS.gov

(出典元:U.S. Census Bureau)

いまだに癒えない南北戦争の傷跡

フランス人探検家ロバート・キャベリアー・デラサイルが1862年にミシシッピ川流域をフランス領と宣言、各地が次々と開拓されていった。しかし、フランス、イギリス、スペインの3カ国の同地を巡る争いは続き、1763年、同地の権利はフランスからイギリスの手に。住民が合衆国への帰属を望んだため、1817年に20番目の州として合衆国に加入した。
 
しかし、南北戦争勃発へ時代が傾き始めると、同州は合衆国より離脱。同州出身のジェファーソン・デービスが南部連合大統領として、南軍を率いた。戦時中、同州は主戦場となり、特にヴィックスバーグは激戦地と化した。
 
南北戦争後もアフリカ系差別は続き、ケネディ大統領の登場により、同州は公民権運動の渦中に。1962年にはアフリカ系の青年ジェイムズ・メレディスの州立大学入学願書受理の訴えを連邦最高裁が認め、政府は陸軍まで投入し、抵抗を抑えて就学を支援した。

30以上のカジノが並ぶ「南のラスベガス」

同州はブルース、ゴスペルなどの発祥地である。特にブルースはアフリカから奴隷労働のために連れてこられた人々が故郷独自の音楽を思い出しながら、綿畑など野外労働の場で歌ったもの。差別に満ちた時代に生きた彼らのやるせない想いとギターの弾き語りのスタイルが融合し、ブルースは進化を続けながら全米に広がった。
 
近年、メキシコ湾岸周辺はホテルやゴルフ場が整ったリゾートタウンとして人気上昇中だ。1994年にギャンブルが解禁になり、30以上のカジノが建設され、「南のラスベガス」とも呼ばれている。
 
また、デルタ地域には南北戦争前に建てられたアンテベリウムホームと呼ばれた豪邸が現在も数多く残り、歴史的なベッド&ブレックファーストとして宿泊でき、貴族的な当時の南部の生活が体験できる。

 

アーカンソー州(35)/アメリカ南部

クリントン前大統領を生んだ・国内随一の米どころ

アーカンソー州の旗

州内には5つの国立公園、45の州立公園、13の湖と2つの山脈、そして州を横切るアーカンソー川を有する。「The Natural State」のニックネーム通り、自然に恵まれた州だ。

アーカンソー(Arkansas、AR)州の基本情報
人口(2023) 3,067,732人
面積 52,023.8mile2
人口密度 (2020) 57.9人/mile
州都 リトルロック(Little Rock)
州知事(2024) Sarah Huckabee Sanders(共和党)
州のニックネーム Bear State, Land of Opportunity, Natural State, Wonder State
人種の割合 白人78.5% / 黒人15.6% / ネイティブ・アメリカン1.1% / アジア系1.8% / ヒスパニック8.6%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $56,335
貧困家庭の割合 (2022) 16.8%
住宅平均価格 (2018-2022) $162,400
平均家賃 (2018-2022) $868
観光情報サイト Arkansas Office of Tourism
オフィシャルサイト AR.gov

(出典元:U.S. Census Bureau)

マッカーサー元帥の生家は州立公園として一般公開

アーカンソー州でまず思い浮かぶのは、ビル・クリントン前大統領だ。ホープの生まれで、幼少時代は富裕層の別荘地として人気の高い温泉町、ホットスプリングスで過ごした。ジョージタウン大学の学生だったクリントンは、ジェームズ・フルブライト上院議員の事務所で働く。
 
フルブライトは多数の日本人を奨学金でアメリカ留学に招き、日本の政治、経済、学術各界の人材を育てた人であるが、彼もまたアーカンソーに縁が深い。アーカンソー大学を卒業後、母校で学長を務め、同州から上院議員に選出された。もう1人忘れてならないのが、ダグラス・マッカーサー元帥。州都リトルロック市内にある彼の生家は現在、マッカーサー州立公園として一般に公開されている。
 
中南部に位置し、面積の半分が森林地帯。2000フィートの山脈に囲まれた州北西のオザーク地方には、国で初めて川として指定されたバッファローリバーや数々の州立公園が点在する。また、州東部のデルタ地方は平原地帯で農業が盛ん。

全米唯一のダイヤモンド鉱山も

16世紀半ば以降、ミシシッピ川中流の西岸に広がる領域はスペインとフランスが支配権を握っていたが、1803年のルイジアナ購入で合衆国の領土に、1819年には準州となる。1936年には人口6万人という条件に達し、25番目の州として正式加盟した。
 
主な生産物は米を始め、ブロイラー、綿花、大豆、穀物、ブドウなど。全米最大手の精米会社ライスランド社や養鶏のタイソン社の本社も同州にある。全体として南部の農業州といったイメージだが、1906年にダイヤモンドが発見された、全米で唯一の鉱山も有する。世界でも珍しい一般公開された鉱山で、一攫千金を夢見て人々がダイヤモンド堀りに訪れる。また、アルミニウムの主原料であるボーキサイトもその生産量が全米一(2001年実績)だ。

 

ルイジアナ州(36)/アメリカ南部

ジャズの熱気とヨーロッパの優雅さ

ルイジアナ州の旗

南部気質とヨーロッパ文化が共存するルイジアナ州。人口の30%以上がアフリカ系で、白人はフランス系カトリックの人口が大半を占める背景に、深い民族摩擦や融合の歴史がある。

ルイジアナ(Louisiana,
LA
)州の基本情報
人口(2023) 4,573,749人
面積 43,193.1mile2
人口密度 (2020) 107.8人/mile
州都 バトンルージュ(Baton Rouge)
州知事(2024) John Bel Edwards(民主党)
州のニックネーム Pelican State
人種の割合 白人62.5% / 黒人32.8% / ネイティブ・アメリカン0.8% / アジア人1.9% / ヒスパニック5.8%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $57,852
貧困家庭の割合 (2022) 18.6%
住宅平均価格 (2018-2022) $198,300
平均家賃 (2018-2022) $996
観光情報サイト Louisiana Office of Tourism
オフィシャルサイト Louisiana.gov

(出典元:U.S. Census Bureau)

史上最高の“お買い得”不動産

この地に最初に降り立ったのは16世紀にメキシコ湾より上陸したスペイン人。17世紀後半には、探検家ラサール率いる「アカディアン」と呼ばれるフランス人入植者たちが到着した。アパラチア山脈からロッキー山脈までの広大な土地を、太陽王ルイ14世にちなんでルイジアナと名づけ、フランス領であると世界に宣言。
 
その後、フランス、スペインやその他の植民地から、クレオールと呼ばれる移民が流入。しかし、数々の遠征赤字で貧窮したナポレオンは、1803年に同地をアメリカに1600万ドルという破格値で売却してしまう。この「ルイジアナ購入」により、合衆国は領土がほぼ2倍になり、西部への拠点を手にした。そして1812年、ルイジアナ州として合衆国に加盟した。
 
同州は農業州として発展したが、19世紀まではミシシッピ川を使った流通業も盛んで、西部と東部をつなぐ交通と商業の一大中心地であった。しかし、19世紀後半に鉄道網が発達し、河川交通は衰退。20世紀にメキシコ湾で石油と天然ガスが発見され、現在は石油関連産業が同州経済の中心となっている。

さまざまな文化が溶け合う・ケイジャン・クレオール

ルイジアナといえばケイジャン料理やクレオール料理が有名。これらの料理は元来、ヨーロッパ伝来の食文化であるが、その後オクラを始めとするアフリカ原産の野菜などがミックスされて、現在の濃厚な味わいのルイジアナ料理に発展した。
 
同州最大の都市、ニューオーリンズのフレンチクオーターには、セントルイス・カセドラルなど仏式建造物が多く建ち、街角にもフランス情緒が感じられる。また、同市はジャズの街としても有名。ジャズは奴隷として連れてこられたアフリカ系の人々が、本国で培ったリズム感をベースにしている。同州は20世紀の巨匠ルイ・アームストロングを筆頭に数々のミュージシャンを輩出している。

 

オクラホマ州(37)/アメリカ南部

多彩な先住民部族が集まる・共存の歴史の地

オクラホマ州の旗

早い者勝ちで土地が無償で与えられたことから「Sooner」のニックネームを持つオクラホマ州。先史時代の恐竜の化石から先住民の涙の歴史まで、多彩な顔を持っている。

オクラホマ(Oklahoma、OK)州の基本情報
人口(2023) 4,053,824人
面積 68,577.8mile2
人口密度 (2020) 57.7人/mile
州都 オクラホマシティ(Oklahoma City)
州知事(2024) J.Kevin Stitt(共和党)
州のニックネーム Boomer State, Sooner State
人種の割合 白人 73.0% / 黒人 7.9% / アメリカインディアン 9.5% / アジア人 2.6% / ヒスパニック 12.1%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $61,364
貧困家庭の割合 (2022) 15.7%
住宅平均価格 (2018-2022) $170,500
平均家賃 (2018-2022) $934
観光情報サイト Oklahoma Office of Tourism
オフィシャルサイト Oklahoma.gov

(出典元:U.S. Census Bureau)

世界中から人が集まった、早い者勝ちの土地確保線

オクラホマ史に残る最も古い記録は、1541年まで遡る。スペイン人探検家コロナドが、「失われた黄金の街」を探して立ち寄ったのが最初だ。
 
1820年代初期、アメリカ東南部に居住していた先住民族が、オクラホマに強制移住させられた。道中病気やケガで死亡した先住民は4000人に上ると言われ、中でもチェロキー族の強制移住の道程は「涙のトレイル」と呼ばれている。
 
南北戦争後、オクラホマは牧畜ブームに乗ってカウボーイの時代に突入した。白人が大挙して押し寄せたため、政府は先住民の共同地域を取り上げ、白人の土地を確保するための条約を決議する。この条約は論議を呼んだ。土地を解放奴隷への示談に使うのではないかと噂が立ったからだ。
 
政府は新しい土地を求めて集まった人々の圧力に負け、1889年から95年にかけて6回の土地開放を実施した。土地開放が公示されるや否や、世界中から集まった人々がより良い土地を求めて州内を駆け巡った。中央および北オクラホマの一帯は数時間で持ち主が決まったという。

先住民の居住数は全米最多

主な産業は農業で、生産高は麦が全米4位、ピーカンが5位、ピーナツが6位、牧畜は4位となっている(2003年実績)。
 
オクラホマには25万人以上の先住民が住んでおり、その数は全米最大。しかし、カリフォルニアのような「先住民居住区」はないため、他人種が混じった先住民の割合が多い。
 
南北戦争後にテキサスから移住したカウボーイも多く、オクラホマの馬の保有数は全米一(2003年実績)だ。また、恐竜の化石などの先史時代の遺物300万以上を有するノーマンのノーブル自然史博物館は世界最大の自然史博物館。展示されるアパトサウルスの化石は世界最大を誇る。
 
オクラホマ出身の有名人には、俳優のブラッド・ピット、歌手のジョン・デンバー、映画監督のロン・ハワードらがいる。

 

テキサス州(38)/アメリカ南部

石油とカウボーイとNASA・テキサス流は大きさが自慢

テキサス州の旗

アラスカに次いで全米第2の面積を誇り、日本の約1.8倍。「大きいこと」はステーキからほら話までが“テキサス流”と形容されるスケールの大きな州だ。

テキサス(Texas、TX)州の基本情報
人口(2023) 30,503,301人
面積 261,193.9mile2
人口密度 (2020) 111.6人/mile
州都 オースティン(Austin)
州知事(2024) Greg Abbott(共和党)
州のニックネーム Lone Star State
人種の割合 白人 77.4% / 黒人 13.4% / アメリカインディアン 1.1% / アジア人 5.7% / ヒスパニック 40.2%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $73,035
貧困家庭の割合 (2022) 14.0%
住宅平均価格 (2018-2022) $238,000
平均家賃 (2018-2022) $1,251
観光情報サイト Let’s Texas
オフィシャルサイト Texas.gov

(出典元:U.S. Census Bureau)

アラモの戦いで勝利の末勝ち取った9年の独立

テキサスの歴史は「アラモの砦」なしに語れない。1682年、最初に同地の開拓に成功したのはスペイン人だったが、3年後にはフランス人が入植し、フランス領を宣言。長い間スペイン領になったりフランス領になったりした末、1821年メキシコがスペインから独立してメキシコ領となった。
 
1835年、メキシコ政府との対立から義勇軍が蜂起して反乱を起こす。翌年、義勇軍182人はサンアントニオにあるアラモの砦で、4000人近いメキシコ軍相手に13日間におよぶ抗争を続けたが、夜明けの襲撃に遭い全滅。だが、1836年のサンジャシントの戦いで、サンタアナ将軍率いるメキシコ軍を、サム・ヒューストン将軍率いるテキサス軍が破り、同年独立を宣言。テキサス共和国が誕生した。
 
1845年、アメリカ合衆国に加盟。南北戦争では南軍につき、戦後は牧畜が主要産業となった。市場はネブラスカやカンザスへも広がったため、フォートワースにストックヤードと呼ばれる牧畜の市が立つようになり、カウボーイのイメージが定着した。

初の月面着陸指令を出した、ヒューストンの宇宙基地

20世紀初頭に油田が発見され、石油産業、製造業、航空産業などが発展。1980年までに全米第3位の州に成長した。近年は航空宇宙、通信、医療・バイオテクノロジー、ハイテク産業の伸びがめざましい。
 
ヒューストン市には宇宙開発基地のNASA(アメリカ航空宇宙局)がある。初の月面着陸の指令を出したのもここだ。
 
テキサス生まれの大統領は、第34代アイゼンハワー大統領と第36代ジョンソン大統領だ。その他の有名人には、事業家のハワード・ヒューズ、歌手のジャニス・ジョップリン、第2次世界大戦で太平洋艦隊司令官だったチェスター・ニミッツ提督、元CBSキャスターのダン・ラザー、映画『俺たちに明日はない』のモデルになった銀行強盗のボニーとクライドなどがいる。

 

モンタナ州(39)/アメリカ西部

広大な大地を覆う“大空”の州

モンタナ州の旗

雄大なロッキー山脈が南北に走る山岳地帯、州中部から東部にかけては平坦な穀倉地帯と、風光明媚なモンタナ州のニックネームは“大きな空”。広大な地表の屈曲を覆う空の広さに由来している。

モンタナ(Montana、MT)州の基本情報
人口(2023) 1,132,812人
面積 145,509.2mile2
人口密度 (2020) 7.4人/mile
州都 ヘレナ(Helena)
州知事(2024) Greg Gianforte(共和党)
州のニックネーム Treasure State, Big Sky country
人種の割合 白人 88.7% / 黒人 0.6% / アメリカインディアン 6.5% / アジア人 1.1% / ヒスパニック 4.5%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $66,341
貧困家庭の割合 (2022) 12.1%
住宅平均価格 (2018-2022) $305,700
平均家賃 (2018-2022) $974
観光情報サイト Montana Office of Tourism
オフィシャルサイト Montana.gov

(出典元:U.S. Census Bureau)

リトルビッグホーンの戦いの舞台

モンタナはフランスによって発見され、ルイジアナ地域の一部とされていた。1803年、合衆国がフランスより同地を含む一帯を購入した。当時、東部から白人が移住してきたため、東部のネイティブアメリカンの部族は北西部に移動し、もともと西部に居住していた部族はさらに西に追いやられた。
 
1851年、合衆国政府とネイティブアメリカンはスティーブンス条約を交わし、狩猟権が一定の土地に限定されることになった。しかし、明け渡した土地の代わりに終身年金や食料補給等が保障された。
 
しかし1862年のゴールドラッシュ後、政府は約束した保障を守らなかった上、武力を盾に白人開拓者の流入を促し、居住区自体を北に追いやったため、両者の対立が激化。1876年、政府の手柄を立てることに躍起になっていたカスター将軍が一軍でスー族に乗り込んでいき、政府軍を全滅に導いたリトルビッグホーンの戦いと呼ばれる悲劇も発生した。しかし、新兵器と絶対的な人数で政府軍に太刀打ちできなくなったネイティブアメリカンたちは次々に白人に服従していった。

広大な大陸氷河グレーシャー国立公園

同州は7つの国立野生動物保護地域、313もの州立公園、国立公園第1号のイエローストーンの一部、そしてロッキー山麓のグレーシャー国立公園を有する。グレーシャーの園内には50を越す氷河があり、氷河によって削られた氷河湖の数は200以上を数える。
 
19世紀から同州のヨーゴ峡谷は・矢車菊の青・と呼ばれる濃く青いサファイアが産出することで知られたが、スリランカ産との価格競争に敗れ忘れ去られていた。しかし近年、同州の広範囲な地域で産出する小粒な天然サファイアが、加熱処理技術の進歩により、その透明度の高さと独特な色彩が実現した。そのため、このサファイア人気が再び高まり、年間産出量は数百万カラットに達するという。

 

ワイオミング州(40)/アメリカ西部

女性を尊重したカウボーイ・ワイルドウエストの歴史

ワイオミング(Wyoming)州の旗

先住民の言葉で「大きな原っぱ」を意味するワイオミング州。その名の通り広大な土地がどこまでも広がり、州最大の都市、シャイアンでも人口はわずか5万人強だ。

ワイオミング(Wyoming、WY)州の基本情報
人口(2023) 584,057人
面積 97,063.0mile2
人口密度 (2020) 5.9人/mile
州都 シャイアン (Cheyenne)
州知事(2024) Mark Gordon(共和党)
州のニックネーム Equality State, Cowboy State
人種の割合 白人 92.3% / 黒人 1.2% / アメリカインディアン 2.8% / アジア人 1.1% / ヒスパニック 10.8%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $72,495
貧困家庭の割合 (2022) 11.8%
住宅平均価格 (2018-2022) $269,900
平均家賃 (2018-2022) $933
観光情報サイト Wyoming Office of Tourism
オフィシャルサイト State of Wyoming

(出典元:U.S. Census Bureau)

ワイルドウエストの大スターまで誕生

州のニックネームのひとつは「カウボーイ州」。州都のシャイアンは先住民の部族の名前で、ララミーも西部劇を彷彿とさせる。ララミー砦はゴールドラッシュで西へ向かう人々の休憩場所として、また政府軍の駐屯地として栄えた。
 
オレゴントレイルが州内を走っていたことから、何千人もの人々が同州を通過した。定住後はシャイアン族やスー族などと政府軍の争いが続いた。
 
当時活躍した有名人に、バッファロー・ビルことウィリアム・コディがいる。コディはララミー砦に設立された郵便会社、ポニーエクスプレスの配達人だったが、後にバッファロー・ハンターとなり4000頭のバッファローを狩り、バッファロー・ビルの異名を得た。先住民との戦いに参加後、「バッファロー・ビルのワイルドウエストショー」を設立、エンターテイナーに。このショーは大人気を博し、北米はおろかヨーロッパツアーまで実現している。

19世紀には既に女性参政権が成立

州のもうひとつのニックネームは「同権の州」だ。女性の参政権が認められたのはなんと1869年。「女性参政権の母」と言われたエスター・モリスは、全米初の女性裁判官。1894年にはエステル・リールが女性初の公選人として教育委員会委員長に就任している。1924年には、これも全米初の女性州知事が誕生。
 
同州には所得税がない。また、法人税もないが企業誘致には成功していない。だが百貨店チェーンのJCペニーは同州が起源。また、天然資源が豊富で、州の財政も石炭、天然ガス、原油に頼っている。
 
もうひとつの大きな収入源は、イエローストーン国立公園に代表される観光資源。グランドテートン国立公園では、西部劇の名作『シェーン』が撮影された。また、デビルズタワーは全米初の国定記念物。高さ250メートルの岩は、スピルバーグ監督の映画『未知との遭遇』のロケにも使われた。

 

コロラド州(41)/アメリカ西部

平均高度は全米一・自然と人々が調和する山岳州

コロラド州の旗

コロラドはスペイン語で”Color Red”の意。この名は、赤い土砂が流れ込み赤く染まったコロラド川に由来する。建国100周年の年に合衆国に加盟したため、「Centennial State」の愛称も。

コロラド(Colorado、CO)州の基本情報
人口(2023) 5,877,610人
面積 103,610.1mile2
人口密度 (2020) 55.7人/mile
州都 デンバー(Denver)
州知事(2024) Jared Polis(民主党)
州のニックネーム Centennial State, Mountain State
人種の割合 白人 86.2% / 黒人 4.7% / アメリカインディアン 1.7% / アジア人 3.8% / ヒスパニック 22.5%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $87,598
貧困家庭の割合 (2022) 9.4%
住宅平均価格 (2018-2022) $465,900
平均家賃 (2018-2022) $1,594
観光情報サイト Colorado Tourism
オフィシャルサイト Colorado.gov

(出典元:U.S. Census Bureau)

第2次大戦中も日系人の権利を守る

コロラドはもともとプエブロインディアンの暮らす地域だったが、1706年スペイン征服後、1803年に東部が米国領になり、1848年にはメキシコ戦争の結果、西側も米国領となった。
 
アジア系人口は2・2%と少ないが、日系人が古くから移り住んだ場所でもある。太平洋戦争が始まり日系人への排斥がひどくなると、時の州知事のライフ・カーは、「日系人も米国に忠誠を誓う人々であり、人種が敵と同じだけだ。不安なく来たれ」と呼びかけ、多くの日系人が集まった。集まった数千の日系人は州の戦争努力に忠実に協力し、戦後も勤勉に働き、州の文化、経済発展に尽くしたと言われている。
 
さて、コロラド州と言えば雄大なロッキー山脈である。州最高峰のルバート山は標高4398メートル。州の平均高度が全米一ということでも知られている。マラソンの有森裕子や高橋尚子がデンバーを高地トレーニングの地に選んだのも、こうした地理的条件があってのことだと言える。

環境を守るためオリンピック開催を返上

ロッキー山脈に関わる連邦政府機関としては、山梨県富士吉田市と姉妹関係にあるコロラドスプリングス市郊外の米空軍士官学校と北米防空司令部(NORAD)がある。特にNORADは冷戦時代、対ソ核戦略の中枢的役割を果たした。
 
高地であり、しかも空気のきれいな土地だということで、冷戦時代には軍需関連のハイテク企業も軒並みデンバーに集まった。日系企業も数多く進出している。
 
州都デンバーはまた、1度決まったオリンピックを返上したかつてない都市として知られている。1974年の冬季オリンピックのことだ。理由は環境破壊。現在も住民の多くは熱心に環境問題に取り組み、豊かな自然を守っている。コロラド州は、21世紀に残された自然と人々が共存する稀有な土地と言えるのかもしれない。

 

ニューメキシコ州(42)/アメリカ西部

ネイティブアメリカンの聖地・色濃く残るメキシコ統治の面影

ニューメキシコ州の旗

かつてはメキシコだった同州は、現在もスペイン語が頻繁に使われ、スパニッシュスタイルの家が軒を連ねる。ネイティブアメリカンの建築様式、アドビスタイルの建物も多い。

ニューメキシコ(New Mexico、NM)州の基本情報
人口(2023) 2,114,371人
面積 121,280.1mile2
人口密度 (2020) 17.5人/mile
州都 サンタフェ(Santa Fe)
州知事(2024) Michelle Lujan Grisham(民主党)
州のニックネーム The Land of Enchantment, The colorful State
人種の割合 白人 81.1% / 黒人 2.7% / アメリカインディアン 11.2% / アジア人 2.0% / ヒスパニック 50.2%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $58,722
貧困家庭の割合 (2022) 17.6%
住宅平均価格 (2018-2022) $216,000
平均家賃 (2018-2022) $966
観光情報サイト New Mexico True
オフィシャルサイト NM.gov

(出典元:U.S. Census Bureau)

ネイティブアメリカンの高地からメキシコへ

標高1200メートルの高地砂漠である同州の最初の居住者、サンディア族が訪れたのは2万5千年前。1世紀にアナザシ族が移り住み、彼らは高い外壁を築く現存のプエブロインディアンに進化していく。スペイン人、ホアン・デ・オネートは1598年、同地に最初のスペイン人による州都、サンホアン・デ・ロスキャバレヨスを築いたが、1610年には新しい州都、サンタフェが作られた。
 
19世紀初頭には、ゼブロン・パイク中尉率いるアメリカ人開拓団のニューメキシコ入りが許された。1821年には、メキシコがスペインより独立。1846年には米墨戦争が始まり、アメリカの植民地となった。1854年、合衆国政府はニューメキシコおよびアリゾナ両州南部をメキシコから買い上げた。1912年、ニューメキシコは47番目の州として合衆国に加盟した。

ビリー・ザ・キッドが暗躍したリンカーン郡戦争

1870年代にサンタフェ鉄道が開通した頃から牧場経営が盛んになり、西部劇でも知られるリンカーン郡戦争の舞台にもなった。リンカーン郡で牧場経営をしていたタンストールとマーフィーという2人の牧場主が、殺し屋集団を雇うまでに争い合うようになり、ついには暴動にまで発展した。この事件を有名にしたビリー・ザ・キッドは保安官を殺したことでお尋ね者になり、21歳で射殺されるまでに21人を殺害したとされている。
 
第2次世界大戦中、合衆国のトップシークレットであったマンハッタン計画は、同州のロスアラモスで進行され、1945年7月16日に、州南部のホワイトサンズ実験場で原子爆弾の実験に成功した。
 
同州は観光地として知られ、石膏の白い砂漠が275平方マイルにわたって広がるホワイトサンズ国立公園や、幻想的な石灰岩の鍾乳洞が100以上も残存するカールスバッドケイバーン国立公園などが有名。また、州都サンタフェは芸術の街として知られている。

 

アイダホ州(43)/アメリカ西部

ジャガイモとハイテクが共存・未開の大自然が残る宝石の州

アイダホ州の旗

州面積の63%が州政府が管理する荒野や未開の大自然で、人口密度は低い。「フランク・チャーチ・オブ・ノーリターン・ワイルドネス」は本土48州中、最大規模の自然が保存された原野だ。

アイダホ(Idaho、ID)州の基本情報
人口(2023) 1,964,726人
面積 82,623.3mile2
人口密度 (2020) 22.3人/mile
州都 ボイジー(Boise)
州知事(2024) Brad Little(共和党)
州のニックネーム Gem State
人種の割合 白人 92.6% / 黒人 1.0% / アメリカインディアン 1.7% / アジア人 1.7% / ヒスパニック 13.5%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $70,214
貧困家庭の割合 (2022) 10.7%
住宅平均価格 (2018-2022) $331,600
平均家賃 (2018-2022) $1,061
観光情報サイト Visit Idaho
オフィシャルサイト The Official Website of the State of Idaho

(出典元:U.S. Census Bureau)

州民の誇りはアイダホポテト

アイダホと言えば、真っ先に思いつくのがアイダホポテト。同州では自動車のナンバープレートにも「Famous Potatoes」と記載され、大きくてホクホクしたアイダホポテトは州民の誇りになっている。州面積の約3分の1が農地で、1993年のジャガイモ生産量は130億ポンドを超える。収穫の約75%はフレンチフライ用に断裁されて冷凍されるか、インスタントマッシュポテト用に加工される。
 
州都のボイジーの緯度は北海道とほぼ同じ。だが、冬の寒さは北海道ほど厳しくなく、雪が降り続くのは稀。また、標高は飛騨高山とほぼ同じで、高地のせいか乾燥していて比較的穏やかで恵まれた天候だ。

全米最大のダイヤモンドを発見

「アイダホで有名なのはポテトチップかマイクロチップ(半導体)」とも言われ、半導体メーカー、マイクロンはボイジーに本社を置いている。また、ヒューレット&パッカードの本社はカリフォルニア州だが、ボイジーにも一大拠点を築き、ボイジー第2の企業になっている。
 
州名はインディアンの言葉で「山の宝石」を意味する。その名の通り、アイダホ州では72種類におよぶ宝石や輝石が生産され、中には世界中でここでしか取れない貴重なものもある。北部のシルバーバレーでは、1884年以来40億ドル以上の貴金属を生産している。マックコール近郊ではアメリカ国内最大の20カラット近い大きさのダイヤモンドが見つかった。しかし、19世紀半ばにゴールドラッシュを迎えたアイダホシティーは、ゴーストタウンと化し、今は観光名所になっている。
 
中東部アーコには世界初の原子力発電所があり、アーコの街には1953年より原子力エネルギーが供給されている。その東方のアイダホフォールズ近郊の原子力研究所には、放射性廃棄物が貯蔵されているが、放射能漏れ事故も起きており、その安全性が課題となっている。

 

ユタ州(44)/アメリカ西部

保守的な風土を築くモルモン教の総本山

ユタ州の旗

州都・ソルトレイクシティーにそびえるのは、モルモン教の総本山、テンプル。40年の歳月と350万ドルをかけて建立され、1万1623本のパイプからなるパイプオルガンを備えている。

ユタ(Utah、UT)州の基本情報
人口(2022) 3,417,734人
面積 82,355.1mile2
人口密度 (2020) 39.7人/mile
州都 ソルトレイクシティ(Salt Lake City)
州知事(2024) Spencer James Cox(共和党)
州のニックネーム Beehive State, Mormon State
人種の割合 白人 90.0% / 黒人1.6% / アメリカインディアン 1.5% / アジア人 2.8% / ヒスパニック 15.1%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $86,833
貧困家庭の割合 (2022) 8.2%
住宅平均価格 (2018-2022) $408,500
平均家賃 (2018-2022) $1,302
観光情報サイト Visit Utah
オフィシャルサイト Utah.gov

(出典元:U.S. Census Bureau)

モルモン教徒が切り開いた歴史

ユタ州に人が住んでいた痕跡は、1万2000年前まで遡る。州の名前もユテ族(山の人の意)に由来し、シエラネバダ山脈とロッキー山脈に挟まれた高地。ザイオン国立公園やブライス国立公園、アーチーズ国立公園など数々の名国立公園を有し、1996年にはクリントン大統領によってグランドステアケース・エスカレート・ナショナルモニュメントにも指定された。もともと連邦政府の公有地だったこともあり、現在でも州の65%が国有地だ。
 
スペイン領、メキシコ領となった後にアメリカに譲渡されたが、本格的な歴史の幕開けは、モルモン教徒の到来を待つことになる。1820年、ニューイングランドの農民の子、ジョセフ・スミスは神からの啓示を受けたが、迫害され西へ移動した後、イリノイで殺された。後継者となった教祖、ブリガム・ヤングが1万5000人の信者を連れてさらに西へ大移動し、1847年、ついにグレートソルトレイクに辿り着き、ソルトレイクシティーの建設に着手した。

良質のパウダースノー。冬季オリンピックも開催

モルモン教徒は同性愛、妊娠中絶、酒、タバコ、婚前交渉、ギャンブルに加え、カフェインも禁止する厳格な規律を持ち、勤勉さを重視する。1863年に銀が発見されてモルモン教以外の人も増えたが、現在でもモルモン教徒が州人口の約70%を占める。合衆国に正式に加盟したのは1896年、45番目だった。
 
第2次世界大戦後は化学兵器の実験や弾道ミサイル開発の一大拠点となった。しかし、隣州のコロラドにあるロッキー山脈軍需工場から廃棄される核廃棄物の問題などで、近年住民の反発を引き起こしている。
 
高度が高いことからスキー場は良質のパウダースノーを誇り、2002年には冬季オリンピックも開催された。オリンピック会場にもなったパークシティーは、「サンダンス映画祭」の開催地としても有名だ。

 

アリゾナ州(45)/アメリカ西部

砂漠気候を近代化で克服・引退者に人気の観光州

アリゾナ州の旗

州の花・木がサボテンなら、州の鳥もサボテンミソサザイと、サボテンづくしのアリゾナ州。どこまでも砂漠が続く独特の風土は、月面や火星表面と酷似していると言われている。

アリゾナ(Arizona、AZ)州の基本情報
人口(2023) 7,431,344人
面積 112,623.1mile2
人口密度 (2020) 62.9人/mile
州都 フェニックス(Phoenix)
州知事(2024) Katie Hobbs(民主党)
州のニックネーム Apache State, Grand Canyon State
人種の割合 白人 81.9% / 黒人 5.5% / アメリカインディアン 5.2% / アジア人 3.9% / ヒスパニック 32.5%
1世帯当たりの平均収入 (2022) $72,581
貧困家庭の割合 (2022) 12.5%
住宅平均価格 (2018-2022) $321,400
平均家賃 (2018-2022) $1,308
観光情報サイト Visit Arizona
オフィシャルサイト AZ.gov

(出典元:U.S. Census Bureau)

最低気温華氏81度、砂漠らしい夏の厳しさ

気候はフェニックス12、1月の平均気温が華氏66度、最低気温は41度と比較的温暖。しかし、実際は砂漠気候の特徴として1日の気温の変化が激しく、最低気温が氷点下を下回ることも珍しくない。1年のうちでもっとも暑いのは7月で、平均最高気温は華氏106度。最低気温も81度という酷暑ぶりだ。このように厳しい気候風土のアリゾナ州に人が住めるようになったのは、エアコンが普及してから。わずか半世紀前の出来事だ。
 
そんなアリゾナだが、最初の人類が住み始めたのは1万2千年以上前と古い。紀元前500年頃までにはメキシコから原始農法が伝わった。1821年にスペインから独立したメキシコがアリゾナを含む西部一帯を領有し、1846年の米墨戦争でメキシコが敗れ、同53年のアメリカによる南部購入まで、アリゾナはメキシコの領地だった。

サンシティーが代表する、引退者に人気の人工都市

厳しい自然が作り出した風景には素晴らしいものが多く、グランドキャニオン、ペトリファイドフォレスト国立公園、オルガンカクタス、サンセットクレーター国立記念公園など、全米、世界中から多くの観光客を集める。その一方で、州外から多くの引退者がアリゾナ州に移住してきている。フェニックス北西のサンシティーを代表として、ツーソン、ユマなどは、引退者が快適に暮らせるよう計画的に開発された人工都市だ。
 
エアコンの普及と同時に、コロラド川などにフーバーダム、ホースメサダムなど巨大なダムが相次いで完成し、水資源と電力が豊富に利用できるようになったことが、急速に都市化が進んだ理由だと言われる。人口は1960年からの30年間で実に3倍に増加し、近年も年間2ケタの伸び率で増加が続いている。しかし、富裕な州外からの移住者と、昔から同州に住む低所得者との経済格差は広がる一方で、今後の州の解決すべき大きな課題となっている。