駐在員ビザ(Lビザ)からグリーンカードを取得するには?

駐在ビザからグリーンカードに短期間で切り替えはできますか?

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、「L-1」ビザにて、2015年に米国の支社に駐在員として赴任してきました。日本では大学を卒業した後、約10年間勤務、その後シンガポール社の支社長を務め、日本の会社の海外事業部で半年勤務した後、米国支社の副社長として赴任しました。本来ならば、私の「L-1」ビザの切れるころに、アメリカでの任期が終わり、本社へ戻る予定でしたが、パンデミックのため本社からの交代要員を赴任させるのが困難になり、本社から継続してアメリカに滞在するよう依頼されました。そのため、社内規定の例外として永住権の申請も視野に入れてよいと言われています。将来的には日本、あるいは他の国に赴任する可能性もありますが、妻も子どももアメリカでの長期滞在を希望しているので、永住権が取得できればと考えているのですが、「L-1」があとわずかで失効してしまいます。何かよい方法はないでしょうか。

A:「L-1」ビザが失効するまでに、Eビザを取得する方法も考えられますが、永住権を希望されておられるので、本コラムでは「L-1」ビザから永住権への切り替えに関して説明します。

条件を満たせば、短時間でLビザからグリーンカードに切り替えができる可能性あり

最初に考慮すべき選択肢として、あなたが第一優先でのグリーンカード申請の条件を満たしているのであれば、Eビザなどへの切り替えを行うことなく切り替えられる可能性は十分にあります。通常、永住権を申請する場合にはまず、労働局での審査過程を踏み、労働局からの認可(「Labor Certification」)を取得する必要があります。この方法では、移民局への申請ができるまでに現在12~20カ月を要しています。ですが、あなたは日本の会社での勤務経験があるため、一定の条件を満たせば、第一優先の「多国籍企業の重役等」のカテゴリーに含まれる可能性があり、この場合は労働局での審査を飛ばすことができます。

あなたの場合、以下の①〜④の条件を満たしていることを証明すれば、第一優先で永住権の申請が可能です。

①日本(米国外)にある会社と米国にある会社が親子関係にあること。これには、米国にある会社の50%以上の株式を日本(米国外)にある会社が直接的に所有している場合、また米国の50%以上の株主が日本(米国外)の会社の50%以上の株式を所有している場合も親子関係にあると見なされます。あなたは「L-1」ビザを持っているので、この条件は満たしているはずです。

次に、②米国の会社で部長あるいは重役クラスなどの管理職に就いていること。移民局では一般的に、これに関して申請者の下に部下がいるだけでは十分でなく、申請者の下に部下を持つ役職の者がいることが要求されます。言い換えると、会社の組織図において申請者の下に2段以上のピラミッド型の管理体系があることが必要ということです。第一優先の申請を行うには、申請者の下に、少なくとも合計で8~10人以上の部下がいた方がよいです。

また、③LビザあるいはEビザにて米国に入国する前の過去3年間のうち少なくとも1年間以上、部長あるいは重役クラスなどの管理職として日本、(米国外)にある親会社(子会社、系列会社でもよい)、またはその関連会社で勤務していたこと。

上記の②、③に関してですが、あなたの場合、アメリカに来る直前の海外事業部においてあなたの部下が仮に10名いなかったとしても、条件は「米国に入国する前の過去3年間のうち、少なくとも1年間以上」なので、シンガポールで支社長をしていた時の役職を用いることができます。

最後に、④米国での役職が短期のものではなく、永久的なものであることです。これには、米国での会社が日本(米国外)の親会社より永住者を送らなければならないほどの規模のものであると見なされなければならず、それには相当額の売り上げと相当数の従業員の存在が要求されます。

 

プランBとして一度他ビザに切り替える方法も検討

これらの条件を満たしていれば、労働局を通すことなく、直接移民局に永住権の申請書を提出できます。申請は、米国にある会社が設立されて1年以上経過していれば申請が可能で、申請者自身が米国で働いている必要もありません。また永住権は、配偶者および21歳未満(永住権取得時期の年齢)の子どもも同時に取得することができます。

移民局への申請は、「I-140」および「I-485」の申請書を同時に移民局に提出します。この時点で、あなたの米国での滞在資格が確保されます。その後、就労許可、一時渡航許可が下りれば、就労を継続できるだけでなく、海外への出入りも可能になります。万が一、あなたがこの第一優先での申請の条件を満たさない場合は、Eビザに切り替えた後、第二優先、あるいは第三優先にてグリーンカードを申請する方法を考慮することになります。

 

(2022年2月1日号掲載)

短期間でLビザから永住権に変更する方法

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、6年半前に日本の親会社より米国の子会社に赴任してきました。当初は5年以内に帰任命令が出るものと思っていましたが、こちらでの勤務が予想外に長期になり、残り約半年で私の持つ駐在員用L-1ビザの有効期限が終了。これ以上の延長もできないことが分かり、子どものことも考え永住権の申請をしたいのですが、今からでも間に合うでしょうか。

A:雇用を通しての永住権の割り当ては通常、第1〜第5優先の5つに分けられ、多くの申請者は第2優先、あるいは第3優先に区分されます。
 
今回のケースで重要なのは、あなたとあなたの勤務している会社が第1優先での永住権申請の条件を満たしているかどうかということです。もし、双方ともその条件を満たしているのであれば、半年経ってL-1ビザの有効期限が切れてもアメリカに合法的に滞在しながら永住権を申請できる可能性が十分にあります。
 
通常、専門職用のHビザなどから永住権を申請する場合には、まず労働局での審査を受け、認可(Labor Certification)を得る必要があります。しかしながら、この申請方法では移民局への申請が開始できるまで1年から3年ほどを要しています(2014 年6月時点)。
 
日本の会社での勤務経験があるため、一定の条件を満たせば第1優先の「多国籍企業の重役」などのカテゴリーに含まれる可能性があります。この場合は労働局での審査を省略することができます。第1優先の対象者には他に、「極めて高度な技術や能力、知識を保持する者」「著名な教授」「研究者」のカテゴリーがあります。以下の条件を満たしていることを証明すれば、第1優先における永住権の申請が可能です。
 
①日本(米国外、以下同)の会社と米国の会社が親子関係にあること
米国にある会社の50%以上の株式を日本にある会社が直接的に所有している場合。また、米国の会社の株主の50%以上が日本の会社の50%以上の株式を所有している場合も親子関係にあるとみなされます。
 
②米国の会社で部長、あるいは重役クラスなどの管理職に就いていること
移民局では一般的に、申請者の下に部下がいるということだけでは十分でなく、申請者の下に部下を持つ役職の者がいることが要求されます。つまり、会社の組織図において申請者の下に2段以上のピラミッド型の管理体系があることが必要ということです。第1優先の申請を行うには、申請者の下に少なくとも合計で8人以上の部下がいる方が良いと言えます。
 
③米国入国前の3年間で少なくとも1年以上は管理職に就いていること
Lビザ、または貿易・投資駐在員用のEビザで米国に入国する場合、入国以前の過去3年間で、少なくとも1年間以上、部長あるいは重役クラスなどの管理職として日本にある親会社、またはその関連会社で勤務していなければいけません。
 
④米国での役職が短期のものではなく、永久的なものであること
米国での会社が日本の親会社より永住者を送る必要があるほどの規模だと考慮されなければならず、それには、相当額の売り上げと、相当数の従業員の存在が要求されます。
 
これらの条件を満たしていれば、労働局を通すことなく、直接移民局へ永住権の申請書を提出することができます。申請には米国と日本にある会社の両方から決算報告書、会社設立に関する書類など、会社が実際に存在し経営を行っていることを示す書類が必要となります。ただし、特に米国の会社の経営状態が芳しくなく(流動資産も乏しく)、従業員が少ない会社などは、前述の条件を満たしていたとしても、移民局から永住権の認可を受けることは困難です。

米会社設立1年以上なら子どもの永住権も申請可能

この第1優先枠での永住権申請の時期に関しては、米国にある会社が設立されて1年以上経過していれば申請が可能で、申請者自身が米国で働いている必要もありません。また永住権は配偶者、および21歳未満(永住権取得時期において)の子どもも同時に取得することができます。
 
申請に関しては、「 I-140(Immigration Petition for Alien Worker)」、および「 I-485 (Application to Register Permanent Residence or Ad just Status)」を同時に移民局に提出します。この後、約2、3カ月で就労許可、また一時渡航許可が下りるので、就労を継続できるだけでなく海外への出入りも可能です。この方法だと1年弱で永住権を取得できます。
 
もし、前述の第1優先での申請条件を満たさない場合は、Eビザに切り替えた後、第2優先、あるいは第3優先にて永住権を申請する方法もあります。
 
(2014年6月1日号掲載)

短期間でLビザから永住権を取得するには?

瀧 恵之 弁護士

Q:日本の本社で10年間勤務した後、7年前に米国支社に駐在員として赴任して来ました。ところが、あと3カ月で私の所持しているL-1ビザの有効期限が切れ、これ以上の延長はできないことがわかりました。子供のことも考え、永住権(グリーンカード)の申請を考えています。今から手続きを開始して、間に合うでしょう か?

A:グリーンカード申請カテゴリーの「第1優先」の条件を満たしていれば、まだ間に合う可能性は十分あります。
 
通常、H ビザ等から永住権を申請する場合には、労働局での審査過程を経て、まず労働局から認可(Labor Certification)を取得する必要があります。しかし、この申請方法では、労働局での審査の後に移民局へ申請できるまでに4カ月(すべての手続きが最短期間で終了したと仮定)はかかります。雇用を通しての永住権の取得は、第 1~4優先にカテゴリーが分けられています。そして、多くの申請者は、第2、 あるいは第3優先のカテゴリーに区分されます。
 
ところが、あなたの場合は、日本の会社での勤務経験があるため、一定の条件を満たせば、取得までの期間が最も短い第1優先「多国籍企業の重役等」のカテゴリーに含まれる可能性があります。この第1優先枠には、ほかに、極めて高度な技術、能力、知識を保持する者、著名な教授、研究者があります。第1優先での申請の場合、労働局での審査を省くことができます。
 
以下のことを証明することによって、第1優先カテゴリーでの申請が可能です。
 
①日本(海外)にある会社と米国にある会社が親子関係にあること
これには、米国にある会社の50%以上の株式を、日本(海外)にある会社が直接的に所有している必要があります。また、米国の50%以上の株主が、日本(海外)の会社の50%以上の株式を所有している場合も親子関係にあるとみなされます。
 
②米国の会社で、部長、あるいは、重役クラス等の管理職に就いていること
移民局では、一般的にこれに関して、申請者の下に部下がいるというだけでは十分でなく、申請者の下に部下を持つ役職の者がいることを要求しています。つまり、申請者を頂点として2段以上のピラミッド型の管理体系があることが必要ということです。
 
③Lビザ、あるいは、Eビザにて、米国に入国する前の過去3年間のうち、少なくとも1年以上、部長、あるいは重役クラス等の管理職として日本(海外)にある親会社(子会社、系列会社でも良い)、または、その関連会社において勤務していたこと
 
④米国での役職が短期のものではな く、永久的なものであること
これには米国の会社が、日本(海外)の親会社より永住者を送らなければならない程の規模であるとみなされなければならず、それには相当額の売り上げと、相当数の従業員の存在が要求されます。
 
これらの条件を満たしていれば、労働局を通すことなく、直接、移民局へ申請書を提出することができます。

第1優先枠は取得まで約1年Eビザに切り替え申請も可

申請には、米国と日本(海外)にある会社の両方から、決算報告書、会社設立に関する書類等、会社が実際に存在し、経営を行っていることを示す書類が必要となります。もし会社の経営状態が芳しくなく、 従業員が少ない場合などは、たとえ前記の条件を満たしていても、移民局から永住権の認可を受けることは困難になります。
 
申請時期に関しては、米国にある会社が設立されて1年以上経過していれば申請が可能で、申請者自身が米国 で1年以上働いている必要はありません。また、この場合、永住権は、申請者の配偶者、および21歳未満(永住権取得時)の子供も同時に取得することができます。移民局への申請に関しては、Immigration Petition for Alien Worker(I-140)および、I-485を同時に提出します。提出後、約2~3カ月で就労許可が下り、また一時渡航許可が下りるので、就労を継続できるだけでなく、米国外への出入国も可能です。なお、この方法で最終的に永住権を取得できるまでには、現在約1年弱を要しています。
 
もし第1優先での申請条件を満たさない場合、いったんEビザに切り替えた後、第2優先、あるいは第3優先で永住権を申請する方法も考えられます。
 
(2010年9月1日号掲載)

アメリカ市民権の申請・取得の流れと方法

永住権から市民権に切り替え。申請のプロセスを教えてください

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、アメリカ人の夫を通してグリーンカードを取得しました。また、2019年の冬が2年の期限付きグリーンカードの有効期限で、10年間有効のグリーンカードの申請を行いましたが、コロナパンデミックのため、遅れに遅れてつい先日、10年のグリーンカードがやっと送られてきました。今後政治がどう変わっていくかも心配なのでアメリカ市民権の申請を考えているのですが、申請方法について詳しく教えてください。

A:一般的に、アメリカ市民権を申請する資格としてはまず、永住権を取得してから5年を経過している必要がありますが、米国市民と結婚した場合は3年でよいとされています。

 

アメリカ市民権申請は、3年間または5年間の期間満了の3カ月前から申請を開始することができますので、配偶者がアメリカ市民でない場合は、4年9カ月で申請が可能になります。あなたの場合は、永住権を取得してから2年9カ月を経過していれば、アメリカ市民権申請の開始が可能です。ただし、永住権取得から3年ないし5年の期間が経過するまで、宣誓式には参加することができません。ただ、実際には現在、全ての手続き完了まで約1年を要しているので、現在この3カ月の期間が経過していないために宣誓式の参加を延期されるということはありません。また、この規定の3年ないし5年のうち、合計してその半分(3年の場合は18カ月)以上は米国に滞在していなければなりません。加えて、この規定期間の間は米国に継続的に居住する必要があり、もし米国を長期間不在にすると市民権の取得ができない場合があります。
 

詳しく説明しますと、①6カ月未満の不在は米国に継続的に居住していると見なされます。②6カ月以上1年未満の不在の場合は、米国における継続的な居住を放棄したこと見なされ、市民権の取得に影響を及ぼす可能性があります。この場合は、申請者が米国における継続的な居住を放棄していないという客観的な証拠を提出することにより、市民権申請が認められる余地がありますが、この立証責任は申請者にあります。特に最近では、審査が非常に厳しくなり、このカテゴリーに入るケースの場合、申請書に説明や証拠書類が添付されていない場合は、申請書自体が審査に入る前に送り返される場合もあります。③1年以上不在の場合は、市民権を申請する条件としての継続的な米国での居住条件を満たさないと見なされます。ただし、出国前に、「N-470」という申請書を移民局に提出することで、海外に居住している期間も米国に滞在しているのと同じように換算されます。これは、「Preserve Residence」と呼ばれる申請方法で、米国軍隊に属している、米国政府機関、米国の会社からの派遣、あるいは宗教目的による場合などがあたります。ここで言う米国の会社は、会社の50%以上が米国市民に所有されている会社を指します。

これらの条件を満たしている場合、「N-400」という申請書類に写真(2枚)、パスポート、グリーンカード(表裏)のコピーに申請料765ドルを添え、市民権申請ができます。市民権申請後、約2カ月で指紋採取の通知が来ます。指紋採取の後は、約6〜10カ月程度でインタビューになります。ここでは、前述のアメリカ滞在期間の確認がなされるとともに、アメリカの政治や歴史に関するテストを受けることになります。このテストは、6割以上正解すると合格です。

市民権の面接の際の問題が変更。事前の勉強がより重要に

ここで注目されるのが、2020年12月1日以降に市民権を申請した場合は、面接の際に出題される問題が新しくなったことです。今まで10問出題されていたものが、20問出題されることになり、問題の内容も常識的に誰でも知っているような内容が減り、アメリカで小中高の義務教育等を受けていないほとんどの人にとっては、事前準備をしておかないとパスするのが困難と言える内容に変わっています。ただ、問題と解答は公開されているため、事前に勉強(問題と答えを暗記)をしておくことができるので、パスするか否かは、勉強次第ということになります。

あなたの場合、事前の勉強に加えて、特に気を付けた方がよいことは、婚姻関係が継続されていることを証明できる書類を多く準備しておくということです。例えば、婚姻後のJoint Tax Return、保険、共同名義の車や不動産、あるいは賃貸借契約書、写真など、夫婦生活が継続されていることを証明する書類を十分に準備してインタビューの臨まれることをお勧めします。

最後に、インタビュー後、約1〜2カ月で宣誓式になります。ここでは宣誓式を行い、帰りに帰化証明書を受け取ることになります。アメリカのパスポートの申請もこの場で行えます。ただしパンデミックの間は、面接の終わりに個々に宣誓を行うことで宣誓式を省略するのが一般的になっています。

 
(2021年1月16日号掲載)

米国の市民権取得を計画中、その申請方法は?

瀧 恵之 弁護士

Q:グリーンカードを取得し5年が経ちます。米国市民権の取得を考えているのですが、その申請方法について詳しく教えてください。

A:アメリカ市民権の申請資格として、まず永住権を取得してから5年を経過(米国市民と結婚した場合は3年)している必要があります。期間満了の3カ月前から申請を開始することができるので、永住権を取得してから4年9カ月(米国市民と結婚した場合は2年9カ月)を経過していれば申請の開始が可能です。また、この規定期間(5年ないし3年)のうち、合計してその半分(5年の場合は30カ月)以上は米国に滞在していなければならないため、もし米国を長期間不在にすると、市民権が取得できない場合があります。
 
詳しく説明しますと、①6カ月未満の不在は、米国に継続的に居住しているとみなされ、②6カ月以上1年未満の不在の場合は、米国における継続的な居住を放棄したとみなされ、市民権の取得に影響を及ぼす可能性があります。②の場合は、申請者が米国で継続的に居住することを放棄していないという客観的な証拠を提出することで申請が認められる余地があります。しかしこの立証責任は申請者にあるため、特に最近は審査が非常に厳しくなりました。このカテゴリーに入るケースの場合、申請書に説明や証拠書類が添付されていないと、申請書自体が審査に入る前に送り返される傾向にあります。
 
③1年以上米国を不在にした場合は、市民権を申請する条件としての継続的な米国での居住条件を満たさないとみなされます。ただし、出国前にN-470という申請書を移民局に提出しておくことにより、海外に居住している期間も米国に滞在しているのと同じように換算されます。これは、Preserve Residenceと呼ばれる申請方法で、米軍に属していたり、米国政府機関、あるいは米国の会社からの派遣、そのほか宗教目的による場合などがこれに当たります。ここで言う米国の会社とは、会社の50%以上が米国市民によって所有されている会社のことを指します。N-470を提出するには、提出前の1年間は継続して米国に滞在している必要があります。宗教目的の場合に限っては、帰国後に提出することもできます。

必要書類と申請料金の内訳、犯罪の有無もポイントに

上記の条件を満たしている場合、N-400という申請書類に写真(2枚)、パスポートとグリーンカード(表裏)のコピー、そして申請料の680ドルを添えて送付し申請すれば、約6週間で指紋採取の通知が来ます。ここで、過去に犯罪歴がないか確認されますが、問題となるのは軽犯罪以上なので、スピード違反などの軽犯罪に達していないものは問題になりません。
 
軽犯罪の中で、却下の対象(その可能性がある)となるのは、ドメスティック・バイオレンスと道徳に反する犯罪(Crime Involving Moral Turpitude)の2つです。ドメスティック・バイオレンスとは、夫婦(離婚後の前夫・妻を含む)間、あるいは恋人間の暴力行為を言います。また道徳に反する犯罪には、麻薬に関する犯罪(Controlled Substances)、詐欺(Fraud)、窃盗(Theft)、および暴力に関する犯罪(Crime of Violence)などが含まれます。従って、飲酒運転等の犯罪歴があったとしても、裁判所から下された条件を満たしていれば、それを証明することにより、ほとんどの場合市民権を取得できます。この証明には、裁判所から発行されるDocket Reportsなどが有効です。ただし、執行猶予期間(通常3年)内だと、期間が終了するまで認可を延期される可能性があります。また、仮にドメスティック・バイオレンスや道徳に反する犯罪を犯していても認可される可能性はあるので、そのような場合は、専門の弁護士への相談をお勧めします。

面接とテストありテストは6割以上正解で合格

指紋採取後、約3、4カ月で面接になります。ここでは、前述のアメリカ滞在期間の確認と共に、アメリカの政治や歴史に関するテストを受けます。このテストは、口頭と筆記のどちらかで行われ、6割以上正解すれば合格です。出題される問題はほとんど決まっているので、事前に準備ができます。移民局のサイトにある例題100問に加えて、アメリカの大統領、副大統領、カリフォルニア州の知事、カリフォルニア州の上院議員2人の名前がよく出題されます。また、「日本とアメリカが戦争した場合どちらを守るか?」といった問題が出題されることもあります。50歳以上でグリーンカードを取得して20年以上になる場合、あるいは55歳以上でグリーンカードを取得して15年以上になる人は、通訳の同伴が可能です。面接後、約1、2カ月で宣誓式が行なわれ、帰化証明書を受け取ることになります。
 
(2013年7月1日号掲載)

米国での永住権を取得後、市民権取得のプロセスとは

吉原 今日子 弁護士

Q:私は、6年前に仕事を通して米国での永住権を取得しました。現在、日本人と結婚を考えています。永住権申請には2~3年が必要と聞きましたが、彼女は現在日本に住んでいますので、このままでは何年もの間、離れ離れの生活となってしまいます。米市民との結婚であれば結婚相手に永住権を取ってあげやすいと聞いたので、市民権取得を考えています。申請のプロセスについて、教えてください。

A:米国市民権申請の資格としては、まず永住権取得から5年(米国市民と結婚した場合は3年)以上経過している必要があります。期間満了の3カ月前から申請を開始することができますので、永住権を取得してから4年9カ月(同2年9カ月)経過していれば、申請開始が可能です。なお、同期間のうち通算してその半分以上(5年の場合は30カ月)米国内に滞在していなければなりません。また、申請3カ月前にはアメリカ国内に滞在する必要があります。
 
さらに、米国に継続的に居住する必要があり、長期間(例えば6カ月以上)不在にすると、市民権の取得ができない場合があります。通常、不在期間が6カ月以上1年未満の場合は、継続的な居住を放棄したと見なされ、市民権取得に影響を及ぼすおそれがあります。ですから、過去5年間のうち2年6カ月以上米国に滞在していても、連続して6カ月以上米国を離れていたことがあると、取得できない可能性が高いと言えます。
 
この場合、申請者が米国における継続的な居住を放棄していないという客観的な証拠を提出することで、申請が可能になる場合があります。この証拠を提示する責任は、申請者側にあります。審査が厳しくなっているため、このケースに該当する場合、申請書に十分な説明や証拠書類が添付されていないと、審査前に申請書が送り返されることもあります。

市民権取得の申請に必要な条件

市民権取得の申請をするためには、次の条件を満たす必要があります。
 
① 18歳以上であること。
②居住者として所得税を申告し、その支払いを行っていること。
③過去の結婚で生まれた子供と別居している場合、養育費支払いの証明を提出。取り消し小切手、所得税払い戻し、元配偶者からの証明も必要。
④道徳に反する犯罪を起こしていないこと。過去5年以内に逮捕歴があったり、過去に重罪で逮捕されたことがある場合、その最終処分の供述書を裁判所から取り寄せる。さらに、更正しているという供述書が必要な場合もある。
⑤ 18歳から31歳までの間に永住権を取得した男性の場合は、面接時に18歳から26歳までの間にアメリカの義務兵役に登録していた証明が必要となることもある。
 
なお、DV(家庭内暴力)や道徳に反する犯罪歴があっても、認可される可能性はあります。飲酒運転などの犯罪歴も、裁判所から下された条件を満たしたことを証明すれば、ほとんどの場合は取得できます。この証明には、裁判所から発行される「Docket Reports」などが有効です。ただし、執行猶予期間内の場合、期間終了まで再申請を待たされる可能性があります。

市民権取得のためのインタビューとテスト内容

市民権取得の申請プロセスは、書類「N-400」を記入して移民局に提出し、指紋採取を行った後、 インタビューと筆記テスト(口述試験の場合もあり)を受けます。インタビューでは会話能力が測られ、ビザ関連資料について質問されるほか、筆記テストで英語の読み書き能力が測られる場合もあります。
 
また、米国の歴史、政治に関する基礎知識が試されるテストも行われます。難易度はアメリカの小学4年生程度です。口述か筆記のどちらかで行われ、通常6割以上正解で合格。出題問題は、ほとんど決まっているので、事前にしっかりと勉強しておくことが大事です。
 
なお、インタビューの際に通訳を付けられますが、以下の条件が必要です。
●身体の障害を証明できる
●50歳以上で、合法的な永住権保持者として20年以上、米国内に居住
●55歳以上で、合法的な永住権保持者として15年以上、米国内に居住
 
合否はその場で知らされ、合格者には宣誓式の通知が郵送されます。通常はインタビュー後、1~2カ月で宣誓式となります。指定日に指定された会場で行われる宣誓式に出席します。会場では、アメリカの国家に関するビデオを観た後、宣誓式を行い、帰りに帰化証明書が配布されて米国市民となります。 申請料は、指紋押印の85ドルを含めて680ドルです。市民権取得の手続きには、現在4~6カ月を要しています。
 
(2012年12月16日号掲載)

米国外に長期滞在した後に米国市民権を取得するには?

吉原 今日子 弁護士

Q:私はグリーンカードを保持しており、アメリカに10年滞在した後、日本の会社から仕事のオファーを受け、日本に2年滞在しました。先月、アメリカに戻り、今後はアメリカでずっと暮らす予定なので、市民権の申請をしようと思います。私は、申請を行うことができますか?ちなみに、「Re-entry Permit」は取得しています。

A:あなたの場合、日本での滞在期間中に、アメリカを訪れたかどうかが問題となります。
 
市民権を申請する資格として、まず、永住権取得後4年9カ月が経過(米国市民と結婚した場合は2年9カ月)している必要があります。また、申請前の過去5年間に、合計してその半分以上は米国に滞在していなければなりません。米国市民と結婚している場合は、2年半ですが、市民権取得の時まで婚姻を維持している必要があります。また、この期間中は、米国に継続的に居住する必要があり、長期間不在にすると、取得できない場合があります。
 
①連続して6カ月未満の不在の場合
米国に継続的に居住しているとみなされます。
 
②連続して6カ月以上1年未満の不在の場合
米国における継続的な居住を放棄したとみなされ、市民権の取得に影響を及ぼす可能性があります。申請者が米国における継続的な居住を放棄していないという客観的な証拠を提出することにより、申請が認められる余地があります。この立証責任は、申請者にあり
ます。特に最近、審査が非常に厳しくなり、このケースの場合、ほとんど認められていないのが現状です。
 
③連続して1年以上不在の場合
市民権を申請する条件としての継続的な米国での居住条件を満たさないとみなされます。

長期国外滞在の場合にはPreserve Residence の申請を

注意していただきたいのは、「Reentry Permit」は、あくまでグリーンカードを失わないためのものであり、米国市民になる権利を保持するためのものではないということです。米国市民になる権利を保持するには、出国前に「Preserve Residence」の申請書を移民局に提出しておく必要があります。この申請を出国前に行っていれば、海外に居住している期間中も、米国に滞在しているのと同様に換算されます。
 
ただし、Preserve Residenceの申請を行っても、連続6カ月以上の海外滞在は免除されても、過去5年間の合計でその半分以上、米国に滞在していなければならないという条件は免除されません。もしPreserve Residenceの申請も行っていれば、日本での滞在期間は2年ですので、今すぐに市民権取得の申請ができます。
 
仮にPreserve Residenceの申請を行っていなかったとしても、2年間のうちに、たとえ1日でもアメリカに戻り、“連続して”半年以上アメリカを離れていなければ、やはりすぐに市民権の申請が可能です。しかし、Preserve Residenceの申請を行わず、アメリカを連続して半年以上離れていた期間があった場合には、すぐに市民権の申請を行うことはできせん。アメリカに戻った日から数えて、4年半待つ必要があります。
 
米国市民権申請のための条件を満たしている場合、「N-400」という申請書類に写真(2枚)、パスポート、グリーンカード(表裏)のコピーに、申請料680ドルを添え、申請を行うことができます。申請後、約6週間で指紋登録の通知が来ます。ここで過去において犯罪歴がないかどうかの確認がされます。
 
次に、約2~3カ月でインタビューになります。ここでは、前述のアメリカ滞在期間の確認がなされると共に、アメリカ政治や歴史に関するテストを受けることになります。このテストは、口頭と筆記のどちらかで行われ、通常6割以上正解すると合格です。出題される問題は、ほとんど決まっていますので、事前に勉強しておかれることをおすすめします。
 
移民局のサイトにある例題100問に加え、アメリカの大統領、副大統領、カリフォルニア州知事、カリフォルニア州出身の連邦上院議員2人の名前がよく聞かれます。また、「日本とアメリカが戦争した場合、どちらを守るか?」といった興味深い問題が出題されることもあります。
 
このインタビューでは、50歳以上で、グリーンカード取得後20 年以上になる場合、あるいは、55歳以上で、グリーンカード取得後15年以上になる人の場合、通訳を連れて行くこともできます。
 
最後に、インタビュー後、約2~3カ月で宣誓式になります。宣誓式当日に米国市民になった証明として「Naturalization Certificate」を受け取ることになります。
 
(2011年6月1日掲載)

米国市民権申請の資格・方法とは?

瀧 恵之 弁護士

Q:米国市民権の取得方法、資格について詳しく教えてください。

A:市民権申請の資格としては、まず、永住権取得から5年以上経過(米国市民と結婚した場合は3年)している必要があります。期間満了の3カ月前から申請を開始することができますので、永住権を取得してから4年9カ月(同2年9カ月)経過していれば、申請を開始することが可能です。
 
ただし、永住権を取得してから5年(同3年)の期間が経過するまで、宣誓式に参加することはできません。しかし、実際にはすべての手続きに約1年を要していますので、今のところ、この3カ月が経過していないということで、宣誓式の参加を延期しなければならないということはありません。
 
また、この規定期間(5年ないし3年)のうち、合計してその半分以上(5年の場合は30カ月)は米国に滞在していなければなりません。また、この期間中は、米国に継続的に居住する必要があり、長期間不在にすると市民権の取得ができない場合があります。
 
詳しく説明しますと、(1)6カ月未満の不在であれば、米国に継続的に居住しているとみなされます。
 
(2)6カ月以上1年未満の不在の場合は、継続的な居住を放棄したとみなされ、市民権の取得に影響を及ぼす可能性があります。この場合、申請者が米国における継続的な居住を放棄していないという客観的な証拠を提出することにより、申請が認められる余地があります。しかし、この立証責任は申請者の方にあります。特に最近、審査が非常に厳しくなり、このカテゴリーに該当するケースの場合、申請書に説明や証拠書類が添付されていない場合は、申請書自体が審査に入る前に送り返される傾向にあります。
 
(3)1年以上不在の場合は、居住条件を満たさないとみなされます。ただし、出国前に、N-470という申請書を移民局に提出しておくことにより、海外に居住している期間も米国に滞在しているのと同じように換算されます。これは、「Preserve Residence」と呼ばれる申請方法で、米軍に属していたり、米国政府機関、米国の会社からの派遣、宗教目的による場合などがこれに当たります。このN-470を提出するには、提出前の1年間は継続して米国に滞在している必要があります。
 

DV・道徳に反する犯罪歴は申請却下の対象に

これらの条件を満たしている場合、N-400という申請書類に写真(2枚)、パスポート、グリーンカードのコピー(表裏)に申請料675ドルを添え、申請を行うことができます。
 
申請後、約1~2カ月でフィンガープリント(指紋押捺)の通知が来ます。ここで犯罪歴が確認されます。過去の犯罪歴で問題となるのは、軽犯罪以上で、スピード違反などの軽犯罪に達していないものは、問題になりません。また、仮に軽犯罪であったとしても、申請却下の対象(その可能性がある)とされるのは、Domestic Violence(DV)と道徳に反する犯罪の2つです。道徳に反する犯罪には、麻薬に関する犯罪、詐欺、窃盗、および、暴力に関する犯罪等が含まれます。
 
なお、飲酒運転等の犯罪歴があっても、裁判所から下された条件を満たしていれば、それを証明することによって、ほとんどの場合は市民権を取得できます。この証明には、裁判所から発行されるDocket Reports等が有効です。ただし、執行猶予期間内(通常3年)ですと、その期間が終わるまで、認可を延期される可能性があります。仮にDVや道徳に反する犯罪があったとしても、認可される可能性はありますので、専門の弁護士に相談することをおすすめします。
 
フィンガープリントの後、約5~10カ月でインタビューになります。ここでは、前述のアメリカ滞在期間の確認と共に、アメリカ政治・歴史に関するテストを受けます。このテストは、口頭と筆記のどちらかで行われ、通常7割以上正解すると合格です。
 
出題される問題はほとんど決まっていますので、事前に勉強しておくことをおすすめします。移民局のサイトにある例題100問に加え、アメリカ大統領、副大統領、カリフォルニア州知事、カリフォルニア州選出の連邦上院議員2人の名前がよく聞かれます。また、「日本とアメリカが戦争した場合、どちらを守るか?」といった興味深い問題が出題されることもあります。
 
このインタビューでは、50歳以上でグリーンカードを取得して20年以上になる場合、あるいは55歳以上でグリーンカードを取得して15年以上になる場合は、通訳を連れて行くこともできます。インタビュー後、約2~5カ月で宣誓式となります。ここではアメリカ国家に関するビデオを見た後、宣誓式を行い、帰りに帰化証明書を受け取ることになります。
 
(2008年7月16日号掲載)

米国市民権を取得するための、必要条件と取得プロセス

KEVIN LEVINE 弁護士

Q:アメリカでの市民権を取得するためには、さまざまな条件があると聞きました。具体的にはどのような条件が課せられるのですか?

A:市民権を取得するにあたり、次の条件を満たす必要があります。
 
1)英語を読み書きし、話し、理解する能力があること
2)合衆国の歴史と政府について正しい知識があることを証明できること
3)永住権保持者として過ごした期間で、1年のうち最低半年は実質的にアメリカ国内に滞在していたこと
4)永住権保持者として過ごした期間、善良な居住者であったと証明できること
5)帰化の申請に先立つ5年間、合法的な永住権保持者としてアメリカ国内に居住していたこと(米国市民と結婚して永住権を取った場合は3年間)
6)18歳以上であること
 
また、市民権を取得する外国人は、以下の条件も満たす必要があります。
1)居住者として所得税を申告し、期日までに払っていること
2)過去の結婚で生まれた子供と別居している場合は、養育費支払いの証明を提出すること。
 取り消しの小切手、所得税払い戻し、元の配偶者からの証明も必要
3)過去5年内に逮捕歴がある場合、もしくは、過去に重罪で逮捕されたことがある場合、
 その最終処分の供述書を裁判所から取り寄せること。さらに、更正しているという供述書も添えること
4)18歳から31歳までの男性の場合は、18歳から26歳までの間に義務兵役に登録していたか。
 面接時に証明が必要となることもある

Q:市民権申請の取得プロセスについて教えてください。

A:まず、申請書類N-400を記入して移民局に提出し、移民局からの通知で指紋採取を行い、書類提出から数カ月後にインタビューと筆記テストを受けます。インタビューでは会話能力が測られ、自分のビザ関連の資料について質問され、筆記テストでは英語の読み、書きの能力が測られます。
また、アメリカの歴史、政治に関する基礎知識を試すテストも行われます。難しさはアメリカの小学校4年生程度というところです。
 
合否の結果はその場で知らされ、合格者は宣誓式の通知を郵送で受け取ります。そして、指定された日に指定会場に出席し、帰化証明書が発行されてアメリカ市民となります。申請料は指紋押印の70ドルを含めて現在400ドルですが、7月30日をもって675ドルに値上がりする予定です。市民権の取得には現在6カ月から1年を要しています。

Q:市民権を申請中です。すでに試験には合格しており、あとは宣誓式の日を待つのみですが、まだ、宣誓式の指定日の通知が来ていません。この夏に旅行に行く予定があるので、宣誓式がいつあるのか教えてください。

A:7月末までの宣誓式のスケジュールは、連邦裁判所のウェブサイト(http://www.cacd.uscourts.gov)にて入手できます。「General Information」をクリックし、さらに「Naturalization」の項目をクリックして、最新の情報を入手してください。なお、日付は変わることがあるため注意が必要です。
 
(2007年6月16日号掲載)

H-1BビザについてのQ&A


Q:H-1Bビザとはどういうビザですか?

A:H-1Bビザは外国人の非移民ビザで、特殊技能を持ち、期限付きで雇われる人のためのビザです。

Q:特殊技能を要する職業というのは、どういう職業のことですか?

A:特殊技能を要する職業というのは理論的に、また実地の応用が必要な職業で、特別な知識が必要で、最低でも学士の資格、あるいはそれに相当する資格が必要な職業です。例えば、建築、工学、数学、物理学、社会科学、医療、教育、会計、法律、宗教学、美術などが、特殊技能を要する職業と言えます。

Q:どれくらいH-1Bビザのステータスで滞在できますか?

A:現在の法律では最長で6年間滞在できます。その後、またH-1Bビザを申請する場合、1年間はアメリカ国外に出なければいけません。またグリーンカードを申請中の人は、6年延長ができる可能性があります。詳しくは弁護士とご相談ください。

Q:H-1Bビザ保持者はどういう企業で働くのでしょうか?

A:H-1Bビザ保持者は決められたアメリカの雇用主の下でしか働くことしかできず、またH-1B申請の際に記載されている職業でしか働けません。また2つ以上のアメリカの雇用主の下で働くことはできますが、それぞれの雇用主からI-129を申請してもらわなければなりません。

Q:H-1Bビザ保持者はフルタイムで、働かなくてはいけませんか?

A:雇用する側、される側の関係がある限り、H-1Bビザのステータスでいられます。フルタイムでもパートタイムでもステータスは変わりません。また旅行、病欠、産休、ストライキでもステータスに変わりはありません。

Q:H-1Bビザ保持者が米国に永住することはできますか?

A:H-1Bビザ保持者はステータスの調整をするか別の方法で、グリーンカード取得の申請を、H-1Bビザのステータスに影響なくすることができます。これは「Dual Intent」と呼ばれています。永住権のステータスを申請中の人は、アメリカに再入国するために再入国許可証を取得しなくても、持っているH-1Bビザで再入国することができます。

その他のH-1B情報

1. 就労はフルタイムでもパートタイムでも可能です。
2. H-1Bビザは通常、学士号を取得し、それに関連した職業である必要があります。
 しかし、学士号を取得するのに匹敵する同種の職務経験(大学教育1年につき3年の同種の職務経験)
  があれば、それを代わりにすることもできます。
3. アメリカで学士号を取得する必要はありません。外国の学士号資格でも認められます。

H-1B発給枠が申請する前に締め切られた場合

1. 学校に戻りF-1ビザのステータスを維持する。
2. OPTが終了してから60日以内にアメリカを出国し、来年(09年10月1日)から働き始められるように
  来年のH-1Bビザ申請の受付日(09年4月1日)まで日本で待つ。
3. 弁護士と他のビザなどのオプションがあるか相談する。
 
(2008年3月16日号掲載)

Q:私は、H-1Bステータスでアメリカに滞在しています。大病を患い、ここ8カ月間、会社を休んでいました。その間、会社からは給料をもらっておらず、福利厚生のベネフィットも受けていません。会社の経営は思わしくなく、もし私が会社に復帰しようとしても、解雇されてしまうような気がします。現在、別の会社から雇いたいというオファーももらっているのですが、私のステータスはどうなっているのか心配です。

A:あなたはH-1Bを保持していられます。雇用関係が存在する限り、H-1Bのステータスでいることができます。たとえそれが、フルタイムであってもパートタイムであっても変わりません。また、H-1Bビザ保持者が、長期休暇を取っていても、病欠や産休、育児休暇を取っていてもステータスは変わりませんし、ストライキなどで仕事をしていなくても、H-1Bのステータスは守られます。
 
ただし、病気による長期欠勤は、労働省の法律FMLA(Family and Medical Leave Act)もしくは州法の定める「病気」の条件を満たしている必要があります。雇用主は、ビジネスが不調である、仕事がないという理由で、病気でない人を病欠扱いにして一時解雇することはできません。あなたの場合、長期欠勤が病気によるものと証明できる証拠書類を提出するべきでしょう。

Q:現在、私はアメリカにH-1Bステータスで、ずっと同じ雇用主のもとで働いており、この先1年はビザもステータスの有効期限も切れません。実は、今と同じような仕事をする別の会社に移りたいと考えていますが、その場合、改めてH-1Bビザの申請をしなければなりませんか? そうだとしたら、新しい会社でいつから働くことができますか?

A:H-1Bステータスの人が新しい雇用主のもとで働くには、「雇用主の変更」ということで改めてH-1Bを申請するか、H-1Bの移行をする必要があります。もし前の会社をただ退社して、H-1Bステータスの延長などを申請することなく次の会社に移る場合、ステータスはなくなり、未認可の会社で働くことになります。
 
H-1Bを申請しなおした場合、移民局からもらう申請受理書を受け取ったら、新しい会社で働き始めることができます。H-1Bステータスが有効で、移民局に新しい申請をしている最中だという証明になるものがある限り、前の会社がスポンサーしてくれたH-1Bビザスタンプで海外に出ることも可能です。特に、海外旅行の前など、移民法弁護士に相談するとよいでしょう。

Q:私はH-1B、子供たちはH-4ステータスですが、子供たちは公立の学校に入ることは可能でしょうか?

A:はい、可能です。事実、その子供たちが不法滞在者であっても、米国最高裁判所の定めによれば、公立学校に通うことができます。

Q:私のステータスはH-1Bですが、学校に通うことはできますか?

A:もちろんです。働きながら、きちんとH-1Bステータスを維持していれば、勉強することも可能です。

Q:H-1B保持者は、ビザのスポンサーとなってくれている会社と金銭上の利害関係を持つことはできますか?

A:はい、できます。ご自身が“sole proprietor”(個人事務所の経営者) である場合は、自分自身に対してH-1Bステータスのスポンサーにはなれませんが、“corporation”(有限会社・株式会社)は、たとえそのオーナーがあなた1人であっても、H-1Bのスポンサーになることができます。

不法滞在中でもスポンサーが見つかれば、永住権は取得できる?

不法滞在中でもスポンサーが見つかれば、永住権は取得できる?

吉原 今日子 弁護士

Q:13年前の1998年に学生としてF-1ビザでアメリカに入国しました。8年前にビザが切れ、5年前から学校には通っていません。現在、レストランでアルバイトをしていますが、オーナーが永住権のスポンサーになってもいいと言ってくれています。私は、永住権を取得することが可能でしょうか?

A:まず最初に、「ビザ」と「ステータス」について、説明しましょう。ビザに記載されている有効期限は、その日付までアメリカに自由に入国できることを意味します。ですからビザは、その有効期限内であれば、アメリカへの入国審査を通過できるというためだけの「入国許可書」に過ぎません。ビザの発行は、アメリカ国外の大使館、あるいは領事館で申請する必要があります。
 
一方、ステータスとは、アメリカに滞在できる期間を意味します。滞在できる期間は、「I-94」というアメリカ入国の際に必要な書類に記載されています。I-94は、通常、飛行機の中で配布され、記入後、入国管理官が審査し、パスポートにその一部が添付されます。そこに記入されている期限が、アメリカ滞在の許可期限になります(これは、ビザの有効期限と、必ずしも同じではありません)。
 
学生ビザの場合、「D/S」と記入される場合がほとんどです。これは、就学終了まで滞在してもいいという意味です。よって、学校からの「I-20」を保持し、就学していれば、ビザが切れていても、アメリカでの滞在は合法です。
 
ですから、あなたの場合、アメリカでの不法滞在は、5年前に学校を辞めた時点から始まっています。
 
アメリカ国内に不法滞在し、移民局がそれを察知すれば、国外退去処分が下される可能性があります。そうなると、再度アメリカに入国する際に、入国拒否を受ける可能性があります。
 
1997年から、アメリカに180日以上、1年未満の期間、不法滞在した場合、アメリカを出国してから3年間は、再度アメリカに入国することができなくなりました。不法滞在期間が1年以上になる人は、出国から10年間、アメリカに再入国できません。また、これらの再入国ができない期間が過ぎても、その後アメリカへ問題なく入国できるという保障はありません。

不法滞在の救済手段とその条件

原則として、アメリカ国内でステータスを回復するための方法はありません。アメリカ市民との結婚、またはアメリカ市民の21歳以上のお子さんを通じての永住権申請は、現在、不法滞在か否かを問わず、合法的にアメリカへ入国していれば、取得できます。
 
しかし、その条件が揃っていない人は、恩赦を待つ以外に方法はありません。移民法245条(i)項は、アメリカ国内でステータスを回復させる窓口を開きました。この条項の適用を受ければ、不法就労も不問となります。適用を受けるには、以下の条件を満たさなければなりません。
 
①2001年4月30日までに、「I-130」(家族を通しての永住権申請)、あるいは、「I-140」(就労を通しての永住権申請)、または「労働証明書申請(Labor Certification Application)」が受理されている
②2000年12月21日以降、アメリカに滞在し、出国していない
③1000ドルの罰金を払う
 
以上の条件を満たせば、移民法245条(i)項の適用を受けられます。
 
なお、適用を受けるには、①で行った申請が認可される必要は、必ずしもありません。2001年4月30日までに永住権の申請さえ行っていれば、その申請が却下されたとしても、その後の永住権の申請において、同法の適用を受けることができます。
 
あなたの場合、1998年に学生としてアメリカに入国し、2000年にアルバイトしていたレストランを通して永住権申請を始め、労働証明書申請の認可を得、移民局へI-140の申請を行ったとします(ちなみにI-140は、スポンサーであるレストランが、労働局で定められた給料を払うことができるかどうかという審査です)。この間に、経営不振でレストランが潰れ、2000年に始めた永住権申請が却下されたとしましょう。この場合でも、新たに別のレストランで永住権の申請を開始できれば、2000年度の申請が却下されていたとしても、あらたな永住権申請に同法が適用されます。ですので、あなたが永住権を取得する道は、残されているというわけです。
 
しかしながら、もし2001年4月30日までに、永住権の申請をしていない場合は、次の恩赦が下りるのを待つしかないでしょう。
 
(2011年11月16日号掲載)

アメリカにオーバーステイ中でも、永住権申請ができるようになる?

瀧 恵之 弁護士

Q:私は最初、大学生としてアメリカに来て、卒業後はある日系の会社でOPTにて働いていました。OPT終了後もその会社からのサポートでE-2ビザへのステータスの変更を申請しましたが、却下されてしまいました。不運にも、その際却下されたことを知らされず、却下の通知を知った時には、すでに3カ月以上オーバーステイの状態になっていました。非常に悩みましたが、いったんアメリカを出ると戻れないことを恐れ、そのまま現在に至っています。2021年になって、私のような状態でもグリーンカードを申請できるようになるかもしれないという話を聞いたのですが、本当ですか?

A:最初に、今回のコラムの内容は、2021年の現段階ではあくまで法案であり、まだ具体化(施行)されていない、また今後も具体化されない可能性も十分にあることをご承知ください。アメリカ議会は、一定の条件の下、不法滞在者が合法的なステータスを確保できるようにするため、1100億ドルを超える予算を組むことを準備しています。これにより、不法滞在者を含む数百万人の移民が救済される道が開かれる可能性が出てきたとされていて、あなたもその対象になる可能性があります。この法案は今後、具体化まで検討が繰り返されることになります。現在のところ、考慮されている案がいくつかありますが、以下、代表的な二つについて解説します。

主に親に連れられてきた子を対象とする「Dream Act」

一つ目は、最近耳にされたことがある方もいると思いますが、「Dream Act」と呼ばれる法案です。この「Dream Act」は、11度にもわたり、法案がアメリカ議会に提出されてきたもので、子どもの頃に(ほとんどの場合は、親に連れられて)アメリカに来た不法滞在者が、アメリカ市民権(グリーンカード)を取得できる道を開くことを目的としています。

これに当てはまるのはまず、DACA(Deferred Action for Childhood Arrivals)の対象者(この場合は、現時点で既に就労許可を得ていることになります)、あるいはアメリカに入国した時点で、17歳または18歳以下であり(現行法案が二つあり、それにより異なります)、高校を卒業あるいはGED(日本の大検に相当)を取得している、あるいは高校またはGED取得のプログラムに在学中であることです。加えて、①大学、または短大を卒業あるいは2年以上在学している、②米軍に2年以上従事している、③3年間以上就労していて、そのうち75%以上は就労許可を持っていた(短大、専門学校に在籍した場合は免除)、という3つのいずれかを満たす場合に、条件付きグリーンカードが取得できるとされています。

20年ぶりの適用が期待される「INA 245(i)」

次に、「Immigration and Nationality Act 245(i)」(以下「INA 245(i)」)の適用です。「INA 245(i)」は、アメリカに長く居住されている方は過去に耳にしたことがあるかも知れませんが、定められた期日までに永住権(グリーンカード)の申請を行い、一定の料金(罰金に相当します)を支払うことにより、過去に不法滞在、不法就労があったとしても永住権を取得できるとする規定です。

ここで言う、定められた期日および一定の料金ですが、直近では、かなりの歳月を遡りますが、2001年4月30日までに永住権の申請を開始した場合は、1000ドルを従来の申請料に加えて余分に移民局に支払うことにより、過去に不法滞在および不法就労があったとしても、永住権を取得できるとされました。この後、2001年10月に再度この期日の指定が予定されていましたが、2001年の9月11日のテロ事件のため延期になり、その後も法案は何度となく提案されるものの、「INA 245(i)」に基づく新たな期日の指定はなされないまま2021年に至っています。従って、今回、この「INA 245(i)」の適用がなされれば、20年以上ぶりということになります。

「INA 245(i)」における「不法滞在者」に関して特記すべき点は、オーバーステイ(アメリカに合法的に入国した後、与えられた有効期限内を超えて滞在し続ける場合)のみならず、不法入国者をもその対象としていることです。例えば、アメリカ市民権を保持する配偶者を通して永住権(グリーンカード)を申請する場合、オーバーステイの状態でもグリーンカードの申請・取得が可能ですが不法入国の場合は、Waiver(免除)申請などの手続きを行わない限り申請は認められないとされています。

しかし「INA 245(i)」の下では、不法入国の場合もその対象の範疇にあるとされています。なお、ここでの「永住権の申請を開始する」とは、移民局にグリーンカードの申請書を提出、あるいは労働局に「Labor Certification(労働認可証)」の申請書を提出した時期を指します。 冒頭に述べたように、今回の内容はあくまで法案であり、これのみを頼りにはせず、また今後の法案の行方をよく確認されることをお勧めします。

(2021年11月1日号掲載)

永住権申請が滞り不法滞在に、永住権保持者の妻として再申請可能?

吉原 今日子 弁護士

Q:日本人の母とアメリカ人の父を持ち、日本で育ちました。幼い頃に両親は離婚し、父はアメリカに帰国。1997年に父を頼ってB ビザでアメリカに入国し、1998年に家族ベースの永住権の申請を始めました。しかし、申請中に父が他界したため申請を中断。1998年から不法滞在になっています。今お付き合いしている彼は永住権保持者です。彼がアメリカ市民になり私と結婚すれば、私の不法滞在歴は許され、永住権を取得できると聞きました。彼のステータスが永住権保持者である限り、私は永住権を取れないのでしょうか?

A:家族ベースの永住権申請は、その優先度がいくつかのカテゴリーに分かれています。21歳以下のアメリカ市民の子供、配偶者、両親は最優先の位置付けで、永住権保持者との結婚の場合は、第2優先Bのカテゴリーに当てはまります。
 
アメリカ市民が配偶者の永住権を申請する場合、「I-130」(家族を通しての永住権申請)と「I-485」(アメリカの滞在資格申請)を同時に申請できます。「I-485」を申請すれば、永住権を取得するまでアメリカ国内で待つことができます。ところが、永住権保持者が配偶者の永住権を申請する場合、これまではその2つを同時に申請できませんでした。ですので、「I-130」の認可後、移民局から「I-485」を提出して良いという許可(優先日)が回ってくるまで、数年待たなければなりませんでした。

永住権保持者の配偶者の永住権申請は今がチャンス

2013年7月に発表されたVisa Bulletin によると、現在、永住権保持者との結婚により永住権を申請している人に優先日が回ってきています(2013年8月時点)。そのため、8月1日から8月末までであれば、永住権保持者が配偶者の「I-130」と「I-485」の申請を同時に行えます。
 
9月以降も引き続き同じ状況であれば、彼のステータスが永住権保持者のままでも、アメリカ市民が配偶者の永住権を申請するケースと同じくらいのスピードで配偶者の永住権取得が可能になります。
 
ただし、この状況はいつまで続くのかはわかりません。永住権保持者で、結婚により配偶者の永住権申請をしたいが市民になるのを迷っていたり、市民になるのに数年待たなければならない方の配偶者にとっては、今がチャンスと言えます。

 

移民法245条(i)項による不法滞在ステータスへの救済

アメリカ市民との結婚により永住権を申請する場合、それまでの不法滞在歴は許されます。ところが、永住権保持者との結婚により永住権を申請する場合、それまでの不法滞在は許されません。しかし、あなたの場合は下記の恩赦が適用され、永住権保持者との結婚でも不法滞在を許され、永住権を取得できる可能性があります。
 
通常、非合法でアメリカに滞在している事実を移民局が知った場合、国外退去処分が言い渡される可能性があります。不法滞在者は、1度アメリカを離れると再入国する際に入国拒否を受ける可能性があります。1997年より、アメリカに非合法な状態で断続的に180日以上1年未満滞在した場合、出国から3年間はアメリカに入国できなくなりました。非合法滞在が1年以上になる人は、出国から10年間はアメリカに入国できません。あなたの場合、アメリカを出国すると10年間再入国できなくなるので、アメリカ国内でステータスを回復させなければなりません。
 
移民法245条(i)項は、アメリカ国内でステータスを回復させる窓口を開きました。この条項の適用を受ければ、不法就労に関しても許されることになります。適用を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
 
①2001年4月30日までに、永住権申請、「I-130」あるいは、「I-140」(就労を通しての永住権申請)、または、Labor Certification Application (労働証明書申請)が労働局で受理されていること。
②2000年12月21日以降アメリカに滞在し、同国から出国していないこと。
③1000ドルの罰金を支払うこと。
 
以上の条件を満たしていれば、移民法245条(i)項の適用を受けることが可能です。①に関しては、2001年4月30日までに行った申請が、必ずしも認可されている必要はありません。2001年4月30日までに何らかの永住権の申請を行っていれば、仮にその申請が却下されていたとしても、その後(仮に2001年4月30日以降であっても)の永住権の申請においても、移民法245条(i)項の適用を受けることができます。
 
ですから、1998年にアメリカに入国し、市民であるお父様を通して、同年に永住権申請を始め、移民局へ「I-130」の申請をしていたとします。1998年度の申請は却下されていても、現在の別の方法での永住権申請に移民法245条(i)が適用され、永住権の取得が可能になるということです。
 
(2013年8月16日号掲載)

家族を通した永住権申請、不法滞在中でも取得できる?

瀧 恵之 弁護士

Q:私は2000年末に、米国市民である姉を通して永住権の申請を行いましたが、未だ待っている状態です。5年前から学校に通えなくなったことからビザを失い、現在は不法滞在の状態です。私はこのまま待っていれば、永住権を取得することができるのでしょうか?また、取得できるとすれば、いつ頃でしょうか?

A:家族を通しての永住権(グリーンカード)の申請は、4つのカテゴリーに分かれています。
 
Immediate Relative(直近の親族)
米国市民の配偶者
米国市民の21歳未満の子供
米国市民の両親(この場合、スポンサーとなる米国市民は21歳以上であること)
亡くなった米国市民の配偶者で、その配偶者が亡くなった時点で、2年以上結婚していた場合
 
これらに該当する人は、発給の最優先となり、それ以外に人は、以下のような順位付けとなります(ただし、中国本土で生まれた人、インド、メキシコ、フィリピン国籍の人は除く)。
 
第1優先(First Preference)
米国市民の21 歳以上の未婚の子供
第2優先a(Second Preference A)
永住権保持者の配偶者、または21 歳 未満の子供
第2優先B(Second Preference B)
永住権保持者の21 歳以上の未婚の子供
第3優先(Third Preference)
米国市民の既婚の子供
第4優先(Fourth Preference)
米国市民の兄弟姉妹(この場合、スポンサーとなる米国市民は21 歳以上であること)
 
米国では、移民法201 条(INA §201(C))により、年間どれだけの人数に永住権を発給できるかが定められています。そのため前記の Immediate Relative のカテゴリーを除き、移民局に永住権申請をしてから取得まで、一定期間待たされているのが現状です。具体的には、現在(2011年6月時点)、第1優先カテゴリーでは、2004年5月1日に申請を開始した人の順番が回って来ているところです。これが第2優先Aでは、2007年8月22 日、第2優先Bでは、2003年4月15 日、第3優先では、2001年6月1日、第4優先では、2000年3月8日となっています。ただし、この順番が回って来た時点で永住権が取得できるわけではなく、ここから手続きの第2段階(実際の永住権取得のための手続き)に入ることになります。

優先日を待ち罰金を支払えば取得可能

あなたの場合は、姉が米国市民権を保持しているということですので、第4優先カテゴリーにあてはまります。このカテゴリーにおいては、前述のように、2000年3月8日の優先日を待っている人たちが、現在実際に永住権取得への手続きを始めています。従って、優先日が国務省から発表されれば、永住権にステータスを変更する手続きが取れます。
 
現在、米国に居住しているのであれば、米国内で永住権にステータス変更ができます。2011年現在、申請書(Adjustment of Status)を申請してから永住権取得まで、約6カ月を要しています。手続きとしては、申請後約6週間で指紋を取り、犯罪歴のチェックがされます。また、申請より2、3カ月で移民局より就労許可が下り、働きながら待つことができるようになります。最後は面接になりますが、姉妹関係にあることを戸籍等で証明するだけなので、結婚を通して申請する場合のように、その結婚が虚偽でないことを立証する書類を準備する必要はなく、簡単な面接で終わる可能性が非常に高いと言えます。面接後は約3週間で永住権が送られてきます。その後はもちろん、合法的に出入国が可能になります。
 
また、現在のステータスが不法滞在になっていたとしても、2000年12月以降、米国から出国していなければ、移民局に1000ドルの罰金を支払うことで、永住権の申請が可能です。これは、INA245 条(i)項に規定されており、不法滞在だけでなく、不法就労も許されることになっています。申請書を提出する際に、過去5年間の職歴を記載することになりますが、万一、不法就労していたとしても、そのまま記載するようおすすめします。現在まで、どのような経済的サポート下で生活してきたかを聞かれる場合が多いからです。
 
(2011年7月1日掲載)

特定犯罪被害者を救済するためのUビザ

瀧 恵之 弁護士

Q:私はアメリカ市民の彼と結婚しましたが、度重なる暴力に悩まされています。先日、警察に出頭した際に、このことによって彼からグリーンカードのサポートが受けられなくなり、米国に入国できなくなる心配があると告げました。すると、最近“Uビザ”というものができて、私の場合それに該当するかもしれないので、弁護士に相談してみるよう言われました。Uビザとは、どのようなビザですか?

A:移民局は、2007年9月5日にUビザの中間最終決定(interim final rule)を発表しました。この中間最終決定とは、法律自体は確定しているものの、再度、変更が加えられるかもしれない状態を指します。
 
まず、Uビザは、以下の4つの条件を充足することが要求されます。
 
(1)申請者が指定された犯罪の被害者であり、その結果として、身体的、あるいは精神的損害を受けたこと
(2)申請者が当該犯罪行為に関する情報を持っていること
(3)当該犯罪の調査、起訴を行うにあたり、申請者が今まで手助けになってきたこと。あるいは、今後手助けになること、あるいは手助けになるであろう可能性が高いこと
(4)当該犯罪行為が米国の法律に反していること。あるいは、米国内において起きた行為であること
 
ここで指定された犯罪とは、レイプを始めとする性的犯罪、特にドメスティックバイオレンスに関連した犯罪がそれに当たります(厳密にはリストがあり、27個の犯罪が指定されています)。

必要と判断されれば永住権の申請も可能

Uビザの申請は、I-918という申請書によって行います。申請は、犯罪の被害者であれば誰でも申請できるというものではなく、連邦・州・郡・市などにおいて犯罪行為を調査、あるいは起訴する権限を与えられている政府機関(例えば警察、検察官、裁判官等)から、「I-918 Supplement B」という書類において認可を受けなければなりません。
 
また、このUビザは、米国内に滞在している人に限らず、日本からでもアメリカ大使館を通して申請することができます。扶養家族に関しては、申請者の配偶者、18歳未満の子供も同じく取得することができ、申請者が21歳未満の場合は、両親も同時に申請することができます。
 
Uビザは、移民局の会計年度で1年間に1万件(扶養家族の分のUビザは、この数に含まれません)しか発行されないことになっています。しかし、これに漏れた場合であってもWaiting Listの中に入ることができ、順番が回ってくるまでの間、就労許可や再入国許可の申請が可能です。
 
Uビザは一般的に4年以上の許可は下りないとされていますが、犯罪行為の調査を必要としている政府機関が、それ以上の期間が必要であると判断した場合には、それ以降の延長も可能です。Uビザの申請料は、政府の政策目的から無料とされており、指紋登録(Finger Print)の費用80ドルのみが必要とされます。
 
Uビザにて3年以上滞在し、犯罪行為の調査を行う機関が必要と判断すれば、その後、グリーンカードを申請することも可能とされています。また、あなたの場合はドメスティックバイオレンスによる被害者であるため、このUビザを申請できるだけでなく、I-360という書類を移民局に提出することによって、3年間待つことなく、グリーンカードの申請を行うこともできます。この場合は、警察からのレポートだけでなく、事情を知っている人からの宣誓書、カウンセラーからのレポート等も有力な証拠になります。
 
(2008年5月1日掲載)

J-1(交流訪問者)ビザとは?

J-1(交流訪問者)ビザとは?その詳細と取得の注意事項

吉原 今日子 弁護士

Q:日本で大学を卒業し、語学の勉強のため、アメリカに来ています。アメリカで働きたいので、現在就職活動をしていますが、卒業した日本の大学の専攻が英文学なので、移民局の審査が厳しい昨今の状況では、H-1BやEビザなどの就労ビザ取得は難しいと色々な会社から言われました。そこで、J-1ビザの取得について詳しく教えてください。

A:教育機関やその他非営利機関公認のプログラムに参加する目的で渡米する場合、アメリカの交流訪問者(J-1)ビザを取得することができます。これらのプログラムには、大学院生、 レジデントまたはインターンとして企業で働く研修生の一部が含まれます。さらに、実習プログラムや大学生のためのインターンシッププログラム、あるいはオペアプログラムなど、青少年のための交流訪問者プログラムもあります。
 
交流訪問者ビザの申請には、以下の要件を証明する必要があります。
 
①「DS-2019」を発給できるアメリカ政府認可プログラム機関から交流訪問者として受け入れられていること
SEVIS(Student and Exchange Visitor Information System:学生・交流訪問者情報システム)仕様の「DS-2019」には、プログラム番号、およびバーコードが付与されています。交流訪問者ビザの申請には、受け入れ機関の責任者が署名したこの「DS-2019」が必要です。ただし、「DS-2019」は、J-1ビザの発給を保障するものではありません。申請する在日米国大使館・領事館では、個々の申請を慎重に審査した上で、適格かどうかを判断します。
また、「DS-2019」はビザではありません。交流訪問者ビザを持たずに「DS- 2019」のみでアメリカに到着した場合、入国は認められませんのでご注意ください。また、SEVIS費を支払わなければなりません。SEVIS費は、ビザ申請料金と共にビザ申請前に支払います。
 
②諸費用を支払うための十分な資金を所持していること
アメリカ、または日本のスポンサー機関が費用を負担してくれる場合は、その機関からの推薦状。
 
③適切な英語力があること
 
④ビザ申請国との強い結び付きと、プログラム終了後には、アメリカを出国するという意思があること
これらの要件は、審査する領事を納得させるのに十分な内容でなければなりません。個々により状況が大きく異なるため、提出すべき書類の具体的なリストはありません。

トレーニングインターンプログラム

J-1研修プログラムは、通常、正規従業員が携わる生産的仕事のごく一部を含むこともありますが、研修や技術の向上が主目的でなければなりません。本来正規従業員が就くはずの業務を、研修生が代行することはできません。審査の参考にされますので、詳細な研修プランを提出してください。

重要事項(2年間居住規定)

以下の条件の1つ、あるいは複数の条件が当てはまる場合、交流訪問者プログラム終了後、自国または渡米前に居住していた国に、少なくとも2年間居住しなければ、移民ビザ、婚約者(Kビザ)、短期就労(Hビザ)、または企業内転勤者(Lビザ)が発給されないことがあります。
 
①アメリカ政府、国籍保有国の政府、または渡米前に居住していた国の政府の出資によるプログラムの場合
②申請者が交流訪問者プログラム参加中に携わった専門知識・技能が必要とされる分野において、人的サービスが必要であると国務長官が指定している国民、または指定国の居住者の場合(日本国籍の方は該当しません)。
③医学や研修を受けるためにアメリカに入国した医師の場合(専門の教育研究機関または医師の協議会が関係するプログラムを除く)。

アメリカへの入国、および滞在期間

Jビザを所持する人は、「DS-2019」に記載されたプログラム開始日の30日前からアメリカに入国できます。この30日制限は、すでにプログラムに参加している人がいったんアメリカを離れ、プログラムを続けるために再度アメリカに戻る際には適用されません。またJビザ保持者は、「DS-2019」に記載されたプログラム終了後30日間は、アメリカに滞在を続けることができます。
 
(2010年12月16日号掲載)

J-1・H-3ビザ取得のための諸条件と制限

吉原 今日子 弁護士

Q:私は、昨年12月にアメリカの大学を卒業し、現在、プラクティカルトレーニングである会社で働いています。今年のH-1B申請で、抽選漏れしてしまい、来年、再度申請する予定ですが、プラクティカルトレーニングは、今年いっぱいで切れてしまいます。来年度のH-1Bビザが有効になる来年10月まで、どうすればいいのか悩んでいます。J-1ビザなどを取ることはできますか? また、これらのビザ取得は難しいのでしょうか。

A:J-1ビザは、学生、研究者、研究生、教師、大学教授などの交換プログラムのために用いられるビザです。交換プログラムは、アメリカ政府に認可されたプログラムでなくてはなりません。この様なトレーニングプログラムを探すには、認可されたプログラムを持つ機関に問い合わせるか、トレーニングプログラムを探してくれる機関に問い合わせることができます。代表的な機関は、「American Council International Personnel」(☎202-371-6789)と「Association for International Practical Training, Inc.」(☎410-997-2200)です。
 
J-1ビザを取得するにはDOS(Department of State)により認可された政府機関、団体から発行されたフォームDS-2019、およびその他の必要書類を揃え、申請者の国のアメリカ大使館か領事館に申請します。学生の場合は最高24カ月間、その後プラクティカルトレーニングが18カ月間与えられます。また、期間終了後は30日間のGrace Period(アメリカを発つまでに許されている滞在期間)が与えられます。
 
あなたの場合、プラクティカルトレーニングで既にトレーニングを受けており、これ以上トレーニングの必要性がないということで、J-1ビザ申請が却下される可能性があります。したがって、あなたのトレーニングが1年以上必要であることを証明する必要があります。トレーニングの綿密なプランを提出することをおすすめします。
 
もう1つ気を付けていただきたいのは、あなたの将来のアメリカでのプランです。2年後にアメリカに居たいのか、日本に帰りたいかです。ご存知のようにH-1Bビザは毎年応募数が増え、来年も抽選が行われるかもしれません。また抽選に漏れて、再来年になる可能性もあります。運良く今年、J-1ビザが取れたとしても、来年H-1Bビザが取れなければ、2年間しかアメリカにいられません。J-1ビザを他のプログラムで取るには、18カ月間アメリカ国外に出なければなりません。ですから、これらの可能性をよく考えて、J-1ビザ申請に踏み切ってください。

審査が厳しく取得が困難なH-3ビザ

H-3ビザは、アメリカの会社または団体が、アメリカでしか得られない知識や技術を外国人に教える機会を与えるためのプログラムです。プログラムは、クラスでの授業や実際に知識や技術を仕事に活かしたものです。プログラム内の仕事に関しては、合法的に給料をもらうことができます。
 
しかし、H-3ビザの第1の目的は、プログラム内容が自国にはない知識・技術のトレーニングをアメリカで受け、自国にそれを持ち帰るということですから、H-3ビザを取得することが労働目的であってはいけません。ですから、その目的を達成できるしっかりとした内容のプログラムかどうか審査がなされます。
 
H-3ビザのプログラムには、最高24カ月の期間が与えられます。H-3ビザでのアメリカ滞在が24カ月以下の場合、さらに24カ月のH-3ビザ延長が可能です。しかし、いったん24カ月間を使い切ってしまうと、H-1Bへのステータス変更が、自国に6カ月以上帰らない限り不可能になります。また、とても厳しい審査のために、H-3ビザは毎年3000人ほどしか認可されていません。しっかりとしたプログラムを持っている会社・団体を通して申請されることをおすすめします。
 
また、J-1ビザのようにプラクティカルトレーニングを申請していて、これ以上トレーニングの必要性がないということで、H-3ビザ申請を却下される可能性があります。さらに、あなたが2年後に日本へ戻る予定でないのでしたら、H-3ビザ取得はおすすめできません。あなたにほかの可能性があるかどうか、移民法専門の弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか。
 
(2008年10月16日号掲載)
 
こちらも合わせて!「アメリカ版ワーホリ?!J-1ビザインターンシップ」

不法滞在者に就労許可が出る新しい法律が施行

瀧 恵之 弁護士

Q:10歳の時に両親に連れられてアメリカに来ました。その後、両親は離婚し、滞在ステータスのないまま、高校を卒業するまで母親に育てられました。現在、大学に通いながらアルバイトをし、何とか生活をしていますが、ソーシャルセキュリティー番号もなく、運転免許証を取ることもできません。しかし、私のような立場でも就労許可が取れる法律ができたと聞きました。それは、どのように申請すれば良いですか?

A:オバマ政権は2012年6月15日、幼少期にアメリカに入国した若い人たちに対して、一定の条件を満たせば、アメリカにおける合法的な就労資格、ソーシャルセキュリティーナンバー、運転免許証(州により認可されない所もあり。カリフォルニア州は可)が取得できる内容の法律を発表しました。この法律は、2012年8月15日に施行されました。これは、幼少期に、アメリカに不法入国、あるいは合法的に入国したものの、その後、不法滞在になってしまったアメリカ育ちの若者が、国外退去の恐怖から解放され、各々の才能をより良い形で用い、アメリカに貢献することを目的としています。
 
ただしこの法律では、就労許可、ソーシャルセキュリティーナンバー、運転免許証を取得することはできますが、その後、グリーンカードを取得することには、つながらないとされています。従って、この点においては、今後の新たな法律の制定が期待されます。

申請における条件と審査基準

この法律の適用を受け、就労許可の申請を行うには、以下の条件を満たしている必要があります。
 
2012年6月30日の時点で31歳未満であること
 
満16歳になる前にアメリカに入国していること
これを証明するものとしては、以下のものが挙げられます。
●パスポートに押された入国スタンプ
●I-94カード
●移民局が発行した書類で、入国日の記録のあるもの
●航空券
●アメリカの学校が発行する成績表、出欠票など学校名と在籍期間のわかる書類
●病院が発行する書類で、病院、あるいは医師の名前と治療日の記載のある書類
●教会などの宗教法人の発行する書類で、日付のあるもの(例:洗礼式、結婚式など)
 
2007年6月15日から現在まで、継続してアメリカに居住していること
*ここで言う「継続」に関しては、2012年8月15日以前であり、また、短期間であれば国外へ出国したことがあっても良いとされています。
 
2012年6月15日の時点、および本申請を移民局に行う時点でアメリカ国内にいること
これを証明する書類としては、以下のものが挙げられます。
 
●領収証
●光熱費等の請求書
●雇用を証明する書類( 例:W-2、Pay stub、Tax Return など、申請者、および雇用主の名前、および日付の記載のあるもの)
●アメリカ軍に属したことがあれば、その書類
●②で述べたアメリカの学校、病院、あるいは宗教法人の発行する書類で日付のあるもの
 
2012年6月15日以前にアメリカに不法入国しているか、その時点で不法滞在となっていること
 
現時点で在学中であるか、高校卒業(修了)済み。または、大学入学検定試験をパスしているか、沿岸警備隊、あるいは軍隊での勤務経験があり、規定の任務を終了していること
*これは、学校の成績証明書、出席票、卒業証明書などによって証明します。
 
重犯罪、過度な軽犯罪、あるいは軽犯罪を3つ以上犯していないこと
 
申請は、I-821 D、I-765、およびI-765 WS(Worksheet)の3つの書式により行います。申請料は、就労許可申請に必要な385 ドルに指紋採取の85ドルを加えた、合計465ドルです。
 
この申請において、移民局がどの程度の規制を行い、認可、あるいは却下の基準を設定するかは、現段階では不明な点があります。しかしながら、一般的に言えることは、移民局はこれから審査を行うなかで、その世論の反応を考慮しながら、規制、および判断基準を決めていきます。従って、申請の最初の段階は認可されやすいと考えられます。あなたがもし申請を考えているのならば、早目に行うことをおすすめします。
 
(2012年9月1日号掲載)

アメリカ人との結婚によるビザ・永住権の取得

結婚による永住権取得、アメリカ国内と日本での申請の違いは?

吉原 今日子 弁護士

Q:現在日本に住んでおり、来年早々にアメリカ人と結婚することになっています。アメリカ市民との結婚を通して永住権を申請する際、日本国内で申請するのと、アメリカ国内にて申請するのとでは、手順に違いがあると聞きました。その違いなどについて教えてください。

A:まず、アメリカ市民との結婚を通しての永住権(グリーンカード)取得の条件についてご説明します。
 
アメリカ市民がスポンサーとなって永住権の家族申請をする場合、経済的にサポートするだけの収入が十分にあることを証明することが、重要な条件となります。移民局のガイドラインによると、生活保護が必要になる収入の125%以上の収入が必要とあります。スポンサーをする市民に結婚する相手以外の扶養家族がいない場合は、最低1万8212ドルの年収が必要です(2010年8月現在)。
 
このアメリカ市民に経済サポート能力がない場合、親、友人などを「ジョイントスポンサー」にすることができます。ただし、このジョイントスポンサーもアメリカ市民、または永住権保持者に限ります。
 
スポンサーは、後に永住権取得者が生活保護などの援助を受けた場合、その金額を返済する義務が出てきます。この義務は、永住権取得者が、①アメリカ市民になる、②永住権を破棄し、アメリカを離れる、③死亡する、④永住者が10年間(40クオーター)納税する、などの状況になるまで続きます。

アメリカでの永住権(グリーンカード)申請とK-1ビザ申請

アメリカで永住権(グリーンカード)を申請する場合、まず、アメリカに合法的に入国する必要があります。あなたの場合、K-1ビザの取得が可能です。K-1ビザは、アメリカ市民の婚約者としてアメリカに入国し、結婚するためのビザです。
 
まず、K-1ビザ申請書類と申請料を移民局に提出し、移民局の認可後4カ月以内に在日アメリカ大使館にてビザの申請手続きを行います。取得には、通常半年から1年ほどかかります。そして、ビザ発給後、アメリカに入国してから3カ月以内に結婚する必要があります。
 
アメリカ入国後、永住権は申請から通常半年から1年で取得可能です。申請には、申請書、申請料のほかに、出生証明、健康診断書などを移民局に提出します。約1カ月で指紋採取通知が届き、申請後約2~3カ月で労働許可(Employment Authorization)と再入国許可(Advance Parole)が取得できます。
 
その後、問題がなければ、数カ月後に面接通知が送られてきます。面接日には夫婦で出頭し、その際に夫婦関係を証明する書類などを持参します。これは、婚姻が偽装でないことを証明するためです。面接が無事終了すれば、グリーンカードは数週間後に自宅に郵送されます。

日本でのアメリカ永住権(グリーンカード)申請

日本でアメリカの永住権(グリーンカード)申請の場合も、通常半年から1年ほどで取得できます。必要書類もアメリカでの永住権申請と同様で、まずI-130という書類を移民局に提出します。申請が認可されると、ナショナルビザセンターでの審査後、在日アメリカ大使館に送られます。その後、面接日と健康診断の説明書が届きます。
 
面接後、問題がなければ、6カ月間有効な移民ビザがその日に発行されます。その移民ビザの期限が切れる前に、アメリカへ渡航しなければなりません。

アメリカ永住権(グリーンカード)の面接における注意点

永住権(グリーンカード)面接での注意点は、結婚が偽装でないことを証明する書類を事前に準備しておくことです。例えば、お付き合いしている間の2人の写真、電話の通話記録、手紙やE-mail、共有財産、または、2人の関係をよく知っている友人に書いてもらった手紙、などを持参することです。これによって、偽装でないという証明がしやすくなりますので、できるだけ多くの書類を準備して面接に臨むことをオススメします。

アメリカ永住権(グリーンカード)申請期間と申請費用の違い

K-1ビザの取得には、前記の通り半年から1年かかり、さらにアメリカ入国後3カ月以内に結婚、永住権の申請を行わなければなりません。面接までの待ち時間を考慮する必要もありますので、ここでさらに半年から1年必要です。一方、日本でグリーンカード申請を行った場合、半年から1年で取得できます。
 
申請にかかる費用は、アメリカ国内での場合は、「日本でのK-1ビザ申請料(+弁護士費用)」「アメリカ入国後のグリーンカード申請料(+弁護士費用)」です。これに対し日本での申請の場合、「グリーンカード申請料(+弁護士費用)」のみになります。
 
ですからK-1ビザ取得を考えているのであれば、日本国内で申請に踏み切った方が、時間、費用的にも経済的であると言えます。
 
(2010年9月16日掲載)

アメリカ人の配偶者がグリーンカード申請に協力してくれない場合の対処法

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、アメリカ国籍を持つ今の夫と2021年に結婚をし、グリーンカードの申請を行いました。長男の出産後、夫からの暴力がひどくつらい思いをしていましたが、子どものことを考え我慢していました。グリーンカードの手続きは、最初は順調に進んでいたのですが、最後の面接の際に夫の協力が得られず面接に行くことができなかったため、申請が却下されてしまいました。離婚をして日本に帰るにも、夫の許可なく子どもを日本に連れ帰ることはできないようなので、困っています。何かよい方法はないのでしょうか。

A:あなたの場合、アメリカ人配偶者の協力を得られないとしても、グリーンカードを申請・取得して、アメリカに残る手段はあります。あなたのように、アメリカ人配偶者からの暴力を加えられているにもかかわらず、アメリカに滞在したいがためにそれを我慢しようとする外国人を救済するための方法として、1994年に「Violence Against WomenAct(VAWA)」に基づき規定された「Battered Spouse」のカテゴリーによる申請があり、これにより、あなたのような状況でもグリーンカードが取得できる可能性があります。

証拠を集めることで、自分一人でのグリーンカード申請が可能に

手続きとしては、「I-360」と「I-485」 という申請書を移民局に提出します。 この「Battered Spouse」の手続きは一般的に長期間かかることも多々ありますが、申請書を提出した後は(パンデミック以降、大幅に遅れが生じていますが)、就労許可を得ることができます。この就労許可を取得した時点から、合法的にアメリカに滞在し、就労を行うことも可能になります。

この申請で必要なことはまず、あなたの配偶者がアメリカ市民であることを証明することです。これにはあなたの配偶者の出生証明、あるいはパスポートのコピーが必要になります。次に、あなた、あるいはあなたの子どもに対して暴力が行われた事実を証明する必要があります。暴力は一部の例外を除いて、口頭によるものではなく物理的な暴力があったことを証明する必要があります。この場合は、あなた自身の宣誓供述書に加えて、警察、医師、カウンセラー、あるいはシェルターからのレポートなどが有力な証拠になります。

例えば、裁判所から接近禁止命令(Restraining Order)が出ている場合は、これも有力な証拠として扱われます。また、目撃者あるいは事情を知っている人から宣誓供述書をもらうのも有力な証拠になります。けがの写真も同様です。次に、当該婚姻がそもそもグリーンカード取得の目的ではなく、正当な理由に基づいて行われたものであり、あなたとアメリカ人の配偶者が同居していたことも証明する必要があります。これには、結婚あるいは交際していた時の写真、銀行の共同名義の口座、健康保険、自動車保険、生命保険、同居していた時に送られてきた2人の名前の入った郵便物、結婚前後のラブレター、カード、結婚前に頻繁に連絡を取っていたことを示す電話の請求書などを提出するのがよいでしょう。

また、事情を知っている人からの宣誓書、カウンセラーからのレポートなども有力な証拠になります。さらに、申請がアメリカを離れることが、当該申請者にとって過度に困難な状況を引き起こすことを立証する必要があります。あなたの場合、子どもがいることはこの理由に当てはまると考えられます。もしあなたが、たとえ今回の結婚以前であっても、アメリカに長期間生活していたのであれば、そのことも理由の一つになります。

グリーンカード申請時、死別している場合や男性でも「Battered Spouse」は適用可

グリーンカード申請後は、離婚の手続きを行ってもこの「Battered Spouse」の申請手続きに影響することはありません。また、一定の条件を満たせば、この「Battered Spouse」は、暴力を行ったアメリカ人の配偶者と仮に死別、あるいは離婚していても、離婚成立・死別後2年以内であれば、申請を行うこともできます。また、前述のように、この手続き方法は、「Violence Against Women Act(VAWA)」によって規定されているものですが、同じ状況下にある男性でも、同様に「Battered Spouse」の申請を行うことが可能とされています。

さらに、配偶者がアメリカ市民でなく、グリーンカード保持者の場合であっても、この規定が適用されます。この申請では、申請時にあなたが合法的なステータスでアメリカに滞在している必要もありません。あなたの場合、最初の申請が却下されてしまっているため、それが理由で強制送還の手続きに入ってしまう可能性もありますが、ここで示した手続きを行うことにより、強制送還の手続きを停止できる可能性は十分にあります。まずは、本コラムで示した証拠書類の中で、どれだけのものを集められるかを確認し、グリーンカード申請を検討されることをお勧めします。

 

(2022年3月1日号掲載)

暴力的な夫から永住権取得の協力が得られない場合

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、2012年に結婚したアメリカ人である今の主人を通して、永住権の取得を考えていましたが、夫がなかなか協力してくれません。さらに、結婚直後から夫の暴力がひどく、耐えかねています。しかし、離婚すればアメリカには残ることができないようで、また、その場合に主人の許可無く子どもを日本に連れ帰ることは禁止されているようなので、どうしてよいのか困っています。何か良い方法はありますか。

A:被虐待配偶者(Battered Spouse)のカテゴリーで永住権の申請を行う手段が考えられます。これは、暴力を加えられているにもかかわらず、アメリカに滞在したいがためにそれを我慢しようとする外国人の配偶者を救済する目的で1994年に制定された女性に対する暴力防止法、「Violence Against Women Act(VAWA)」により規定されたものです。

「I-485」提出後は約3カ月で合法的に滞在、就労が可能

この手続きには、まず「I-360(Petition for Amerasian, Widow(er), or Special Immigrant)」という申請書を移民局に提出し、その申請が認可された後、「I-485(Application to Register Permanent Residence or Adjust Status)」を移民局に提出することになります。
 
この手続きは、一般的に長期間かかることも多々ありますが、「I-485」を提出した後は、約3カ月で就労許可を得られますので、合法的にアメリカに滞在し、その間就労を行うことも可能になります。
 
この申請では、まず配偶者がアメリカ市民であると証明する必要があります。これには、ご主人の出生証明、あるいはパスポートのコピーが必要になります。
 
次に、当然のことですが、ご自身に対して、あるいは子どもに対して暴力が行われた事実を立証する必要がありまず。ここで言う暴力は(一部の例外を除いて)、口頭によるものではなく、物理的な暴力があったと証明する必要があります。この場合、ご自身の宣誓供述書に加えて、警察、医師、カウンセラー、シェルターからのレポートなどがその有力な証拠になります。
 
例えば、裁判所から接近禁止命令(Restraining Order)が出ている場合も、有力な証拠として扱われます。また、目撃者や事情を知っている人からの宣誓供述書を貰うのも、有力な証拠になります。また、ケガの写真などがあれば、同様です。
 
さらに、当該婚姻が正当な理由(永住権取得目的でないこと)に基づいて行われたものであり、ご主人と同居していたことも証明する必要があります。 これには、結婚、または交際していたときの写真、銀行の共同名義の口座や健康・自動車・生命保険、同居時に送られてきた2人の名前の入った郵便物、結婚前後のラブレターやカード、結婚前に頻繁に連絡を取っていたことを示す電話の請求書などを提出するのがよいでしょう。また、事情を知っている人からの宣誓書、カウンセラーからのレポートなども有力な証拠になります。

永住権申請後なら離婚をしても手続きに支障はない

さらに、申請者がアメリカを離れることが、当該申請者にとって過度に困難な状況を引き起こすことになることも立証する必要があります。あなたの場合、子どもがいることもこの理由に当てはまると考えられます。例え今回の結婚以前であっても、アメリカに長期間生活していたのであれば、これも理由の1つとなります。申請後は、離婚の手続きを行っても、申請手続きに影響することはありません。また、特別な条件を満たせば、この申請は、暴力を行った配偶者と仮に死別、あるいは離婚していたとしても、離婚成立後2年以内であれば申請ができます。
 
前述しましたように、今回解説した手続き方法は、「Violence Against Women Act(VAWA)」によって規定されているものですが、同じ状況下であれば、男性でも同様に申請を行うことが可能です。さらに、配偶者が米国市民でなく、永住権保持者の場合であっても、この規定が適用されます。
 
この申請では、申請時において合法的なステータスでアメリカに滞在している必要もありません。さらに、仮に強制送還の手続きに入っていたとしても、この手続きを行うことにより、当該強制送還の手続きを停止させることができる可能性も十分にあります。この手続きの最後には、(ほとんどの場合)面接を受けることになりますので、面接でご自身が暴力を受けた内容、また今回の結婚に関して出会ったときから結婚に至り、別居に至った経緯を時間を追って、説明できるよう準備して臨まれることをお勧めします。
 
(2014年11月1日号掲載)

学生ビザで滞在中の彼女、 結婚すれば永住権は取得可能?

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、現在、ある日系の会社にスポンサーになってもらい、永住権を申請中です。今年中に、今付き合っている彼女と結婚することになりましたが、彼女は現在「 F-1」ビザでアメリカ滞在中です。結婚後、彼女と一緒にアメリカで暮らし、できれば、彼女も一緒に永住権を取ることができればと考えていますが、それは可能でしょうか?

A:結論から言うと、永住権を取得するまでに彼女との入籍は済ませておけば、彼女も永住権を取得できます。
 
万が一、あなたが先に永住権を取得した後に彼女と結婚した場合には、彼女が永住権を取得するのに2年以上を要するでしょう。また、その間あなたと結婚しているからという理由で彼女がアメリカに滞在することはできません。例えば、現在の「F-1(Academic Student)」ビザを継続しなければならないなど非常に不便な状況を作ってしまうことになります。

入籍後、2人同時に永住権の申請を始める

永住権を取得する以前に入籍を済ませた場合、彼女を永住権取得の手続きに加える方法は、あなたの永住権の申請がどの段階にあるかによって変わります。
 
雇用を通して申請する場合は、第1に規定の給料の設定、第2に人材募集広告、第3に「労働認可書(Labor Certification)」の取得、第4に「I-140(Immigrant Petition for Alien Worker)」の審査、そして、最後に第5段階として「I-485(Application to Register Permanent Residence or Ad just Status)」、または日本で手続きを行う(Consular Processing を通して)に分けられます。申請者が修士号を取得していたり、学士号に加えて5年以上の職務経験があるような場合など、場合によっては第4段階と第5段階が並行して進む場合もあります。ただし、第4段階の「 I-140」の申請が認可を受けない限り、第5段階の「I-485」による申請が認可されることはありません。もし、「I-485」による申請を開始していない場合は、彼女との入籍の後、一緒に「I-485」 の申請を行うのが得策であると考えます。
 
また、彼女の「I-485」の申請が開始された時点で、彼女の米国での滞在資格は確保されますので、「F-1」のステータスが切れても構わないことになり、学校に通う必要がなくなります。
 
さらに、「I-485」に加えて2人ともが就労許可の「I-765(Application for Employment Authorization)」と一時渡航許可の「I-131(Application for Travel Document)」の申請を行えば、彼女も申請から約3カ月程度で就労許可、および一時渡航許可を取得することができますので、米国での就労(この場合彼女はどこで働いても構わない)もでき、一時的に米国を離れ、「F-1」ビザが切れた後であっても再度戻って来ることが可能になります。
 
この際、気を付けなければいけないのは、彼女が「I-485」 の申請を行うまで「F-1」のステータスを維持しないといけないことです。「F-1」のステータスを維持するには、仮に「F-1」ビザが切れた場合であっても、有効な「I-20」を保持することによって、確保することができます。ただし、「F- 1」ビザが切れた後は、一時渡航許可を取得するまで、米国外への渡航はできません。

日本へ帰国の必要があっても永住権の取得は可能

もし第5段階の「I-485」 による申請を既に開始してしまっている場合は、あなたが永住権を取得するまで待ち、その後に彼女の申請を行うことになります。この場合、彼女の申請を開始して約6カ月から9カ月で永住権を取得できます。
 
彼女の申請を開始した後は、彼女が永住権を取得するまでの間、就労許可、および再入国許可を先に取得して就労と渡航を行うことができます。
 
例えば学生のステータスを維持できないなどの理由によって、彼女があなたの永住権を取得できるまで米国内で待てず、日本に帰る必要がある場合は、あなたが永住権を取得した後に在日米国大使館での永住権の手続き(Consular Processing) を行うことも可能です。ただし、この場合もあなたが永住権を取得する前に彼女との入籍を済ませておくことは重要です。
 
在日米国大使館での彼女の面接が行われ、そこで最終的に認可を受けると、半年間有効で米国に一回限り入国可能なビザ(Immigrant Visa) が発行されます。そして、米国に入国の際、パスポートに証印が押された時点で法的に永住権を取得したことになります。その後、3週間程度で永住権が郵送されます。いずれにしても、入籍があなたの永住権取得直前である場合は、偽装結婚が疑われる危険性もあるので、結婚を証明する書類(手紙や共有財産の証明など)を十分に準備されることをお勧めします。
 
(2014年9月1日号掲載)

不法滞在中に米国市民と結婚、今後アメリカへの入国に問題は?

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、2011年9月にビザウェイバーで入国をし、同年12月にアメリカ市民と結婚しました。グリーンカード(永住権)の申請の準備をしていたところ、弁護士より「ジョイントスポンサー」が必要と言われ、スポンサーになってくれる人を探しましたが、結果まだ見つかっていません。13年中に、夫と2人で日本へ完全帰国を考えています。グリーンカードの申請をせずに日本へ帰国した場合、今後、短期でアメリカに来る時に、観光ビザの許可は下りるでしょうか?帰国後、10年経ったら再度入国できるようになるのでしょうか?

A:2011年9月から現在に至るまでの間、不法にアメリカに滞在していたことになるので、日本に帰国した後、観光ビザ等を取得する際に問題となります。10年経過した後であれば、取得できる可能性は高くなりますが、保証されているわけではありません。
 
そこで、前記の問題を解決するため、アメリカでグリーンカードを取得した後に、日本に帰国することが得策です。いったんグリーンカードを取得してしまえば、その後、今までの不法滞在が問われることはありません。そのための解決策を提案します。

ジョイントスポンサー代わりに配偶者の資産を証明

まずは、ジョイントスポンサーが見つからないとのことですが、仮に、ジョイントスポンサーがいない場合であっても、ご自身、あるいは配偶者が資産を持っていれば、それで代用することができます。
 
年間の収入条件についてですが、スポンサーになる人の収入は国が定めている貧困レベルの125%以上でなければなりません(アメリカ軍人として働いている人は100%)。ただ、この規定の収入に達していない場合でも、不足額の5倍の資産があれば良いとされています。
 
現在カリフォルニア州の貧困レベルの125%の額は、スポンサーが同居していて子供もいない場合は、年間1万8912ドル、子供等の扶養家族が1人増えるにつき、4350ドルずつ増えていきます。
 
例えば、スポンサーが夫婦で、同居している子供が1人いたとすると、その金額は3万162ドルとなります。もし子供がおらず、ご主人の収入が年間1万ドルであったとします。そうすると、8912ドル不足していることになりますので、その5倍の4万4560ドルの資産があることを証明すれば、足ります。この資産は現金に限らず、動産や不動産(例えば家ならば、物件の評価価格からローン額を引いた額)、株、その他現金化することが可能で、その価格が客観的に評価できる物を含みます。

米国内でグリーンカードを申請する場合

米国にてグリーンカードを申請した場合には、グリーンカードを取得するまでのすべての手続きには、約4カ月を要します。また、米国にてグリーンカードの手続きを行う場合には、申請後、約2カ月から3カ月程度で就労許可、及び再入国許可を取得することができ、これによって、インタビューまでの間、就労、及び、海外への出入国が可能になります。
 
最後の面接時には、2人が一緒に暮らしていることの証明が必要になりますので、結婚後、早い時期に、共同名義の銀行口座、自動車保険、健康保険、賃貸契約書、会員権等を準備されておくことをおすすめします。

グリーンカードを取得せずに日本に帰国した場合

グリーンカードを取得せずに、日本に帰った場合、アメリカでの不法滞在歴があること、さらに、配偶者がアメリカ市民であるため、グリーンカードの申請をすすめられ、観光ビザの申請を却下される可能性が高いと言えます。
 
グリーンカードの申請を日本のアメリカ大使館にて行う場合、米国の移民局に「 I-130」 という書類を申請し、その認可を待って日本のアメリカ大使館で申請を行うことになります。この「I-130」の認可には、現在、約6カ月を要しており、この後、日本の大使館にてインタビューが受けられるまで、さらに約6カ月を要することになります。
 
また、いったんアメリカを出国してしまうと、アメリカでの不法滞在が問題となり、大使館での面接の後、Waiverの申請をしなければならない可能性があります。この場合は手続きに半年から約1年以上を要します。従って、グリーンカードを取得せず日本に戻れば、再度、アメリカに戻るには、あまりにも時間と手間が掛かりすぎ、適切であるとは言えません。
 
(2013年2月1日号掲載)

観光で滞在中にアメリカ人の子を妊娠、このまま永住権は申請できる?

吉原 今日子 弁護士

Q:現在、観光で米国に滞在中です。アメリカ人のボーイフレンドとの結婚を考えており、日本に帰ったら婚約者ビザを取得しようと考えていました。しかし、先日妊娠していることがわかりました。残りの滞在期間は、あと1カ月しかありません。観光ビザで入国し、永住権を申請することはできないと聞きました。このまま、アメリカに滞在することは、不可能でしょうか?

A:ビザウェイバープログラム(ビザなし渡航)での米国への入国では、原則的には指定された期限内に米国から出国すること、また、米国入国後、米国での永住の意志がないことが前提になっています。従って、ビザウェイバープログラムで米国に入国し、米国人との結婚により永住権申請を行うことは、手続きの最終段階でのインタビューの際に問題が発生する可能性があります。
 
ただし今回の米国入国の際、滞在期間中に米国人と結婚して永住権の申請を行う意図はありませんでした。それが入国後に妊娠という、入国の際には予期できなかった事実により予定を変更して滞在を続け、永住権申請を行うことには問題ありません。
 
米国市民との結婚により永住権を取得する際には、日本にて手続きを行う方法、および米国内にて手続きを行う方法があります。
 
まず、日本において手続きを行う場合には、以前までは、最初にアメリカ市民である配偶者が日本人である永住権申請者と一緒に、在日米国大使館に直接出向くことが一般的でした。しかしながら、在日米国大使館は、この方法による申請を受け付けなくなりました。そのため、米国の移民局に「I-130」という書類を提出し、その認可を待って、在日米国大使館で申請を行うことになります。
 
このI-130 の認可には、現在約3、4カ月を要しています。そしてその後、日本の大使館にてインタビューが受けられるまで、さらに約3カ月から4カ月を要することになります。従って日本に戻り米国大使館で永住権の申請を行うには、あまりにも時間がかかり過ぎ、適当であるとは言えません。また、仮に婚約者ビザを申請したとしても、ほとんどこれと同じだけの時間を要します。

アメリカ国内でグリーンカードを申請し就労・再入国許可を取得

アメリカ国内でのグリーンカードの申請の場合、グリーンカード取得までのすべての手続きに、約6カ月から9カ月を要します。しかし、申請開始後約2、3カ月程度で、就労許可、および再入国許可を取得することができます。これによってインタビューまでの間、就労、および米国国外への出国、海外からの再入国が可能になります。
 
ただし注意しないといけないことは、グリーンカード申請時に提出する健康診断において、妊娠している事実を担当医に告げ、すべての予防接種を受けることを避けてもらうようにすることです。出産後にそれらの予防接種を受け、その証明書を移民局に提出することになります。あるいは、インタビューまでに出産が終われば、その際に持参することもできます。さらに、子供の出生証明書をインタビュー時に持参すれば、結婚が事実に基づくものであることを容易に証明できます。
 
インタビュー後に取得するグリーンカードには、2年間という条件が付いています。従って、条件付き永住権が失効する90 日前から有効期限日までの間に、条件解除の申請を行います。これは、「I-751」という申請書を移民局に申請することにより行います。条件を解除するには、婚姻が継続していることを証明しなければなりません。
 
なお、この申請時期が近付くと、移民局からもうすぐグリーンカードの有効期限が切れるという通知が来ます。万が一、条件解除の申請を忘れた場合、移民局から強制送還の手続きに入る旨を示す手紙を受け取る場合があります。そうなると、移民局裁判所へ出頭しなければなりません。
 
婚姻が継続していることを示す証拠としては、夫婦合算のタックスリターン、共同名義の銀行口座、クレジットカード、賃貸借契約書、不動産、自動車保険・健康保険・生命保険証書などが挙げられます。現在、この申請が大変厳しくなっています。この2年間、夫婦合算のタックスリターンがファイルされているか、共同名義の銀行口座やカードが定期的に使われているかなど、書類の提出を求められることもあります。永住権取得の審査が厳しくなっていることは現在ないのですが、2年後の条件解除の際に、偽装結婚を暴こうという移民局の意図が見られます。これはなかなかいい取り組みだと思います。
 
条件解除後は、10 年ごとの更新になります。なお、最初の条件付き永住権の発行日から合計2年9カ月を経過した時点で、米国市民権の申請を行う資格があります。
 
(2012年4月16日号掲載)

アメリカ市民との結婚と死別による永住権申請への影響

瀧 恵之 弁護士

Q:私はアメリカ市民権を保持する男性と結婚し、グリーンカード(永住権)の申請を行い、条件付きの2年間有効なグリーンカードを取得しました。しかし、先日、夫が他界してしまいました。私のグリーンカードの有効期限は、まだ2年のままです。私はこのまま合法的にアメリカに滞在し、働き続けることはできるのでしょうか?私には、前の結婚による子供もいます。

A:結婚されてからご主人が亡くなられるまでの期間が、2年以上経過しているか否かによって手続き方法が変わります。いずれの場合においても、一定の条件を満たせば、条件解除されたグリーンカード(10 年間有効で10年ごとに更新可能)を取得することができます。
 
一般的に、アメリカ市民との結婚を通してグリーンカードを取得する場合、最初にI-130という書類(婚姻関係があることを移民局に認めてもらうための申請)とI-485という書類(永住権自体の申請)を同時に提出します。この後、約6週間程度で指紋採取(犯罪歴のチェック)が行われます。申請後2~3カ月で就労許可、一時渡航許可が発行され、グリーンカード取得までの期間、就労や米国外への出入国が可能となります。インタビューまでは、申請後約6~9カ月程度です。 
 
この後、この2つの申請が認可されれば、2年間の条件付きグリーンカードを取得することができます。ここで2年間の条件が付されているのは、アメリカ市民との結婚を通してグリーンカードを取得するには、最低2年間は婚姻関係を継続することが条件とされているからです。
 
この2年の期間が終わる90日前より、条件解除の申請を行うことができます。この条件解除の申請が認可されれば、10年間有効なグリーンカードを取得することができ、取得後は、離婚、あるいはアメリカ市民である配偶者が死亡したような場合であっても、これに影響されることなく、10年ごとに更新が可能です。従って、結婚後条件付きグリーンカードを取得するまでの期間(約9カ月)、および条件解除の手続きのために必要とされる期間(約6カ月)を考慮すれば、結婚から条件解除されたグリーンカードを取得するまでには、最低でも3年はかかることになります。
 
そこで、まず、結婚されてからご主人が亡くなるまでの期間が2年以上ある場合、現在保持している条件付きグリーンカードの切れる90日前より有効期限満了時までに、I-751という書類を用いて条件解除の申請を行います。
 
ここでは申請時において当該婚姻がグリーンカード取得目的で行われたものではなく、婚姻そのものを目的とするものであったこと、結婚後2年以上同居していたことを証明する書類を添えて申請を行います。この同居関係を示す書類としては、夫婦共同の納税申告書、共同名義の銀行口座、共同名義のクレジットカード、保険などが挙げられます。

結婚2年未満ではI-360による申請が必要

結婚してからご主人が亡くなるまでの期間が2年未満の場合は、前記とは違い、I-360という書類を移民局に提出する必要があります。
 
2009年9月9日に、移民局は、このI-360による申請が、残されたアメリカ市民配偶者のグリーンカード申請に適用されるとの発表を行いました。I-360を提出するには、ご主人が死亡した時点でご主人と別居していなかったこと、また、申請時から条件解除されたグリーンカードを取得するまでの間、再婚していないこと、申請時にアメリカに滞在していることが要求されます。
 
I-360の認可後は、経済的に就労することが必要であることを理由として、移民局に就労許可の申請を行うこともできます。
 
この場合も前記と同じように、申請時において当該婚姻がグリーンカード取得目的で行われたものではなく、婚姻そのものを目的とするものであったこと、また、結婚後からアメリカ市民の配偶者の死亡時まで、同居していたことを証明する書類を添えて申請を行うことになります。
 
なお、この申請方法では、仮に2年間の条件付きグリーンカードを取得していなくとも、さらに、仮にこの条件付きグリーンカードの申請自体(前述のI-130とI-485の申請)を行っていなかったとしても、I-360申請が可能であるとされています。
 
さらに、お子さんも、既に申請済みのI-130 申請時において、あるいは(I-130の申請を行っていない場合は)、I-360申請時に21歳未満で未婚であれば、同時に申請(あなたのI-360に名前を明記しなければなりません)することができます。
 
(2009年10月01日号掲載)

アメリカ人との結婚によるグリーンカード申請

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、現在学生ビザで語学学校に通っています。来年の春、付き合っているアメリカ人の彼と結婚し、グリーンカードを申請しようと考えています。しかし、私の彼は、US Navyに所属しており、結婚後もしばらくは別居になります。友人から結婚後は同居していないとグリーンカードが取れないと聞きました。私は結婚後もアメリカで仕事をしたいと思っていますので、アメリカで生活することを希望しています。このような状況でも、グリーンカードを申請することは、可能でしょうか。また、彼には過去に犯罪歴があります。これは私の申請に影響しますか。

A:今の彼と結婚してグリーンカードを申請した後、必ずしも同居していないと申請が認可されないということはありません。アメリカ人の配偶者が軍に属している等、正当な理由がある場合には、同居していなくとも申請が可能です。ただし、同居していないケースでは、その結婚が虚偽でないことを証明するのに、他の一般のケースよりも厳しい基準で審査される可能性があります。 
 
アメリカでグリーンカードの申請を行い、取得するまでのすべての手続きには、約6カ月から9カ月を要します(ロサンゼルス・カウンティーよりも、サンディエゴ・カウンティーの方が、サンディエゴ・カウンティーよりもオレンジ・カウンティーの方が、若干手続きが早い傾向にあります)。
 
グリーンカード申請書を提出後、約4週間から6週間程度で、フィンガープリントを取る必要があります。ここで、過去の犯罪歴の調査がされます。グリーンカード取得に際して問題となる犯罪は、すべての重犯罪(Felony)、および、一部の軽犯罪(Misdemeanor)がそれに当たります。軽犯罪の中で問題となるものは、Domestic Violenceと道徳に反する犯罪(Crime Involving Moral Turpitude)の2つです。
 
Domestic Violenceとは、夫婦(離婚後の前夫・前妻を含む)間、あるいは恋人間の暴力行為を言います。また、道徳に反する犯罪には、麻薬に関する犯罪(Controlled Substances)、詐欺(Fraud)、窃盗(Theft)、および、暴力に関する犯罪(Crime of Violence)等が含まれます。
 
ただし、フィンガープリントの採取を通して、犯罪歴があるかどうかを調査されるのは、申請者である外国人のみで、米国市民の犯罪歴は調査対象となりません。従って、前記に当てはまる犯罪を過去に犯していない限り、アメリカ人の配偶者に犯罪歴があったとしても、あなたのグリーンカード申請に影響を及ぼすことはありません。

別居の場合は厳しい婚姻の正当性の審査

次に、申請から約2カ月から3カ月程度で就労許可(Employment Authorization)、および、再入国許可(Advance Parole)を取得することができます。これによって、後のインタビューまでの間、就労と海外への出入国が可能になります。従って申請後、2カ月から3カ月程度で仕事を見つけ、働き始めることができます。
 
最後に、申請から6カ月から9カ月後にインタビューを受ける必要があります。この際には、あなただけでなく、アメリカ人の配偶者も同席する必要があります(フィンガープリント等、これ以外の手続きにおいては、米国市民が同席する必要はありません)。ここで、あなたとアメリカ人の配偶者の結婚が虚偽のものであるか否かの判断がなされます。
 
前述したように、アメリカ市民の配偶者と同居できないので、当該婚姻が真実正当なものであることを強く立証する必要があります。これには結婚前に交際していたことを示すラブレター、E-mail(プリントアウト)、国際電話等を掛けたことがわかる電話の請求書、結婚前後の写真、結婚後の共同名義の銀行口座、クレジットカード、健康保険、自動車保険、生命保険、もし、あれば、納税申告書等を持参することをおすすめします。また、結婚前からあなたとアメリカ人の配偶者が交際していたことをよく知る友人・知人などに、手紙を書いてもらうのも得策です。
 
(2008年12月1日号掲載)

アメリカでの研修を目的としたビザ「H-3ビザ」とは?

「J-1ビザ」を使った後、「H-3ビザ」を使うことはできる?

瀧 恵之 弁護士

Q:私は現在、ある日本の会社でグラフィックデザインの仕事をしており、今回、アメリカで2~3年ほど仕事をしたいと思っています。大学を卒業しておらず「H-1Bビザ」を申請する資格はなく、「J-1ビザ」の1年半では少し短過ぎます。そこで、「H-3ビザ」というものがあると聞きましたが、この申請は可能でしょうか。また、「J-1ビザ」を使った後、さらに、「H-3ビザ」を使うこともできますか。

A:「H-3ビザ」は、米国においての研修を目的としたビザです。申請は、米国にある雇用主によって移民局を通して行われます。このH-3ビザは、「H-1Bビザ」(専門職ビザ)のように、学士号あるいはそれと同等の経験を保持していることを証明する必要はありません。ただし、雇用主は次のことを証明しなければなりません。
 
①その研修が、母国では得られないということ(言い換えると日本にない技術の修得であること)
②米国内で受けた研修が、米国以外においてその職種を遂行するのに役立つものであること
③研修生を雇うことが、米国人労働者に取って代わるものではないこと
④その研修は、あくまでも研修生をトレーニングするものであり、生産性を伴うものではないということ
 
また、その研修プログラムは、すでに確立されたものであることを示す必要があり、研修の構成、詳細、研修期間、報酬、なぜその研修は母国ではなく米国にて行われなければならないかということを、明確にする必要があります。例えば、建築に関してハンディキャップの人のためのスロープやエレベーターのデザインなど、日本における建築物に見られず、日本では学ぶことのできない内容を学ぶプログラムが典型的な例として挙げられます。
 
移民局によって、研修を受ける者がすでにその研修分野における知識を十分に有していると判断された場合や、研修で身に付けたことが米国外においては不必要であると判断された場合、また雇用主が研修後、その研修生を米国内にて雇う目的で研修を行うと判断された場合、そしてその研修が単に米国での滞在期間を延長する目的であると判断された場合等は、「H-3ビザ」の申請は却下されます。

「H-3ビザ」申請で事細かにチェックされること

具体的には、以下の内容を事細かに問われることがしばしばあります。
①トレーニングの種類、およびどのような形で監督が行われるのか。また、トレーニング・プログラムの構成
②上記のトレーニング・プログラムの時間配分、および生産性のある就労に従事する時間
③クラスルームにおいてトレーニングを受ける具体的な時間数、および実際の職場においてトレーニングを受ける具体的な時間数
④当該トレーニングを受けるに当たって、母国において準備してきた内容
⑤トレーニングが母国で受けられない理由、および当該トレーニングを米国で受けなければならない理由
⑥トレーニングを受ける者が受ける報酬、および会社がトレーニングを行うことによって受ける利益の説明
 
また、トレーニング内容が次のような場合は、申請却下の対象となります。
①スケジュールが一般的で、目的や評価の手段が備えられていない場合
②トレーニングを行う会社と関連性が薄い場合
③内容がトレーニングを受ける者がすでに修得しているであろう技術についてである場合
④将来的にその会社における雇用を考えているであろうと考えられるような内容の場合
⑤トレーニングを行うのに十分な施設や監督者などがないような場合
⑥プラクティカルトレーニングの期間を延ばすために行われているであろうと考えられる場合

「H-3ビザ」申請で注意したいこと

「H-3ビザ」は、最長で2年間まで取得することができ、また、「H-3ビザ」保持者の配偶者と21歳未満の子供は、「H-4ビザ」を取得して米国に滞在できます。
 
「H-3ビザ」の申請は、以前に比べて極めて厳しくなっていますので、申請するか否かを決める際に、その条件をよく吟味する必要があります。あなたの場合、最も重要なことは、スポンサーとなる会社でのトレーニングの内容が、日本では学ぶことができないものであるということを証明することです。
 
また、OPT終了後や「J-1ビザ」終了後に「H-3ビザ」を申請しようとした場合、明確な理由を要求され、厳しい審査の対象となる可能性があります。従って、いずれの場合であっても、トレーニングの内容を前記の条件と照らし合わせて、よく吟味して申請することをおすすめします。
 
(2013年6月1日号掲載)

米国で研修するための H-3ビザとは?

瀧 恵之 弁護士

Q:日本でグラフィックデザインの仕事をしており、米国にて2~3年仕事をしたいと思います。私は、4年制大学を卒業していないので、「H-1B」ビザを申請する資格はないのですが、「J-1」ビザでの1年半の滞在では短過ぎます。「H-3」ビザというものがあると聞きましたが、私は申請することができるのでしょうか?

A:H-3ビザは米国においての研修を目的としたビザです。H-3 ビザ取得は、以前に比べて極めて厳しくなっています。ですので、申請するか否かを決める際、取得のための条件をよく吟味する必要があります。
 
申請は、米国にある雇用主によって移民局を通して行われます。H-3ビザは、H-1B(専門職)ビザのように、学士号、あるいはそれと同等の経験を保持していることを証明する必要はありません。
 
ただし、このH-3ビザの申請において、雇用主は次のことを証明しなければなりません。
① 米国での研修が、母国では得られないということ(言い換えると、日本にはない技術の修得であること )
② 研修を受けた者にとって、米国内で受けた研修が、研修後に米国外において、その職種を遂行するのに役立つものであること
③ 研修生を雇うことが、米国人労働者にとって代わるものではないこと
④ 研修は、あくまでも研修生をトレー ニングするものであり、生産性を伴うものではないということ
 
また、研修プログラムが、既に確立されたものであることを示す必要があります。また、研修の構成、 詳細、 期間、報酬、そして、なぜその研修が母国ではなく、米国内で行わなければならないかということも、明確にする必要が あります。これは、建築分野で、ハン ディキャップの人のためのスロープや エレベーターのデザインなど、日本の建築では見られず、従って日本では学べない内容を修得するプログラムなどが、典型的な例として挙げられます。
 
そして、①研修を受ける者が、既にその研修分野において十分な知識を有 していると、移民局が判断した場合、 ②研修で身に付けた知識や技術が、米国外において不必要であると判断された場合、③研修後に雇用主が、研修生を米国内にて雇う目的で研修を行うと判断された場合、④その研修が、単に米国での滞在期間を延長する目的であると判断された場合には、H-3ビザの申請は却下されます。
 
H-3ビザは、最高で2年まで取得することができ、ビザ保持者の配偶者、 および21歳未満の子供は、H-4ビザを取得し、米国に滞在することができ ます。
 
あなたの場合最も重要なことは、スポンサー企業でのトレーニング内容が、日本では学ぶことができないものであることを証明することです。ト レーニングの内容を前記の条件と照らし合わせ、よく吟味してから申請することをおすすめします。
 
(2010年12月1日号掲載)

永住権の更新は離婚をしても可能?

コロナ禍でアメリカ人配偶者と離婚しても、グリーンカードを更新できる?

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、2020年の始めにアメリカ人の夫との結婚を通して2年間の条件付きグリーンカードを取得しました。しかし、パンデミックによる失業もあってか、夫婦仲がうまくいっていません。もし、我慢できずに離婚することになれば、私は2年のグリーンカードが切れた時点で、アメリカを離れなければならないのでしょうか? 私一人でも、10年間のグリーンカードに更新できるという話を聞いたことがあります。もし、そのような方法があれば、教えてください。

A:アメリカ市民の配偶者を通してグリーンカードを取得した場合は、取得時点で結婚期間が2年を経過していない場合は、2年間のみ有効な条件付きグリーンカードが与えられることになります。この場合は、条件付きグリーンカードが切れる90日前から、有効期限までの90日間の間に条件の解除(Removal of Conditions)の申請を行う必要があります。

一般的な申請では、「I-751」という申請書上に、申請者とその配偶者の両方のサインを行うことになりますが、特殊な事情がある場合には、申請者のみのサインで行う(「Self Petition」)こともできます。 この「Self Petition」による方法では、条件付きグリーンカードが切れる90日前から、条件付きグリーンカードの有効期限までの90日間の申請期間を超えても、米国を出国していない限り、申請を行うことができるとされています。仮に、強制送還の手続きが開始されていても、その強制送還の最終判断が行われるまでの間は、この条件解除の申請手続きを継続することができます。また、この場合、移民裁判官の判断により、強制送還の手続きの延期を行うこともできます。

自分だけで更新申請ができる3つのケース

「Self Petition」には以下の3通りの方法があります。以下、カテゴリー別に説明します。

① Extreme Hardship Ground
これは、条件解除の申請者がアメリカを離れることが、当該申請者にとって過度に困難な状況を引き起こすことになる場合で、このことを立証することにより「Self Petition」が認められます。この場合は、経済的理由、家族との離別等のみでは、十分な理由として認められないのが一般的です(もちろん、理由の1つとしては認められますが、それのみでは十分な理由にならないということです)。例えば、申請者が事業を行っており、申請者が国外に退去されられることにより多くの解雇者が出ることになる場合などは、条件解除が認められるよい理由となります。また、申請者にアメリカで生まれた子どもがいることは、その事実のみで認められるわけではありませんが、有効な理由の1つになります。

② Good Faith Ground
これは、米国市民との結婚に至るには正当な理由があり(グリーンカード取得目的では一切なかったこと)、結婚後、別居しなければいけない事由が生じたケースです。移民局は、当該婚姻がいかに強いものであったか否かを問うことになります。また、この場合には、条件解除申請時において、離婚あるいは婚姻の無効(Annulment)が成立している必要はありませんが、条件解除が認められるには一般的に、離婚あるいは婚姻の無効(Annulment)が成立している必要があります。

③ Battered Spouse or Child Ground
これは、米国市民が申請者あるいは申請者の子どもに対して暴力が行われた事実がある場合です。この場合は、警察やカウンセラーからのレポートなどがその重要な証拠になります。

できる限りの証拠を集めて条件解除の審査を受ける

あなたの場合、状況にもよりますが、このうち②の場合が当てはまると考えられます。従って、あなたの結婚が正当な理由で行われ、結婚後に別居しなければいけない事由が生じたことを証明する必要があります。これには、結婚あるいは交際していた時の写真、銀行の共同名義の口座、健康保険、自動車保険、生命保険、同居していた時に送られてきた2人の名前の入った郵便物、結婚前後のラブレター、結婚前に頻繁に連絡を取っていたことを示す電話の請求書などを提出するのがよいでしょう。また、事情を知っている人からの宣誓書、カウンセラーからのレポートなども有力な証拠になります。

この方法により条件解除を行うには、移民局の厳しい審査基準を通過しなければならないので、できる限り多くの有力な証拠を集められることをお勧めします。また、前述のように、この手続きが完了するまでに離婚が成立していない場合は、却下されてしまうリスクがあります。例えばカリフォルニア州では、離婚の手続きを行うのには最低6カ月を必要としますので、もし手続きを進められる場合は、手続き期間を考慮した上で行うことが重要になります。(2021年12月1日号掲載)

条件付永住権の更新は離婚をしても可能?

吉原 今日子 弁護士

Q:アメリカ市民との結婚を通して、2年間の条件付永住権(Conditional Green Card)を取得しました。しかし、夫の浮気が原因で、離婚を考えています。条件付永住権の有効期限は、あと半年ほどですが、離婚をしてしまうと永住権は更新できなくなるのでしょうか? アメリカでの生活にも、仕事にも慣れてきたところなので、できれば日本へ帰国はしたくありません。何かいい方法はありますか?

A:2年間有効の条件付永住権を持っている場合は、その永住権の有効期限が切れる90 日前から期限の間に条件の解除(Removal of Condition)の申請を行わなければなりません。これには「I-751(Petition to Remove Conditions on Residence)」という申請書を使用し、一般的には申請者とその配偶者の両方のサインが必要であるとされています。
 
しかし、何らかの理由でアメリカ市民の配偶者の協力(サイン)を得ることができない場合、あるいはアメリカ市民の配偶者が死亡しているような場合には、「自己請願(Self-Petition)」という形で、申請者自身の署名だけで申請できます。

結婚の動機が純粋であった有力な証拠が必要

自己請願を行う場合、アメリカ市民との結婚が永住権の取得を目的としたものではなく、配偶者と共にアメリカで生活を営むために申請したこと、そして、結婚生活に入った後、結婚当初に予期できなかった事態が発生し、離婚せざるを得ない状況になったことを立証する必要があります。入籍後の同居期間が2年以上あれば有利であると言えますが、あくまでも永住権を取得してから2年ではなく、入籍または同居後2年です。この自己請願によって移民局の認可を得るには、厳しい審査基準をパスしなければなりません。ですから「有力な証拠」を、できるだけ多く集めることをお薦めします。
 
ここで言う「有力な証拠」とは、結婚あるいは交際していた時の写真、共同名義の銀行口座・健康保険・自動車保険・生命保険、同居していた時に連名で送られてきた手紙などです。ほかにも、結婚前のラブレターやE メール、頻繁に連絡を取っていたことを示す電話の請求書などを提出するのも良いでしょう。
 
また、2人の事情をよく知っている人からの宣誓書、マリッジ・カウンセラーからの診断書なども有力な証拠になります。従って、別居状態に入った頃から、マリッジ・カウンセリングに通い始めるのも得策であると言えます。この診断書には、結婚に至る経過のみではなく、当該婚姻が永住権の取得が目的ではなく、恋愛に基づいたものであること、婚姻を継続しがたい理由があること、また、それが結婚当初には予測できなかったという説明がある方が望ましいでしょう。

経済的理由や家庭内暴力なら認可の可能性は高い

アメリカを離れることが「過度に困難な状況」を引き起こすことになる場合、それを立証できれば、自己嘆願を有利に進めることができます。
 
「過度に困難な状況」とは、経済的な理由、家族との別離などが一般的です。しかし、例えば申請者が米国内で事業を行っており、申請者が米国外へ退去を迫られることにより、多くの解雇者が出る場合などは、条件解除が認められる大きな理由となります。もし、配偶者からの家庭内暴力が原因で離婚に至ったのなら、永住権はなくなりません。「I-360(Petition for Amerasian, Widow(er), or Special Immigrant)」を申請することで、永住権の2年間限定という条件を解除し、更新を行うことができます(配偶者と死別した場合もこの方法で更新が可能です)。
 
「I-360」を提出するには、配偶者があなたや子どもに暴力を振るった事実を立証する必要があります。それには、警察やカウンセラーからのレポートなどが重要な証拠になります。ただし、ここでは「物理的な暴力」が証拠となり、「言葉による暴力」だけで申請をすることは困難です。この申請方法を用いる場合には、仮に離婚が条件付きの永住権の更新前(さらには、最初の永住権申請前)であっても、永住権を取得することができます。この際に取得できる永住権には、2年間という条件は付きません。
 
従って、浮気だけが離婚理由なら「I-360」は適用できませんが、暴力によりあなたの身に危険を感じている場合には、永住権が取得できるまで我慢する必要はありません。暴力を振るわれた際には、すぐに警察に通報し、ご自身を守ることが先決です。なぜなら「I-360」による申請は、永住権を失うことを恐れる外国人の配偶者が、危険な状態を我慢し続けなくてもよいように考えられたものだからです。
 
(2014年9月16日号掲載)

アメリカ市民と離婚を考えているがグリーンカード更新前でも大丈夫?

吉原 今日子 弁護士

Q:私はアメリカ市民との結婚を通して永住権を取得しました。グリーンカードの更新をしなければなりませんが、現在、夫婦仲がうまくいっておらず、離婚をしたいと考えています。しかし、更新前に離婚してしまうと、永住権を失うと聞きました。今の夫との間に子供がいます。アメリカを離れるのは困難な状況です。どうにかなりますか?

A:永住権の有効期限2年の条件を解除するためには、「I-751」の申請が必要です。一般的には永住権取得後2年間、結婚生活が継続していることを確認するために用いられるもので、申請者とその配偶者の両方のサインが必要です。申請の際、アメリカ市民の配偶者の協力が得られない場合、あるいはアメリカ市民が死亡している場合には、“Self-Petition” という形で申請者自身だけで申請できます。
 
Self-Petitionの場合、結婚が永住権を目的としたものでなく、夫と一緒にアメリカでの生活を行うために申請したということ、そして、結婚生活に入った後、結婚当初には予期できなかった事情が発覚し、離婚せざるを得なくなったことを立証する必要があります。入籍後、同居期間が2年以上(永住権取得後ではなく、入籍してからの期間)であれば有利であると言えます。
 
Self-Petitionが認可されるには、かなり厳しい審査基準をパスしなければならないので、できる限り有力な証拠を数多く集められることをおすすめします。ここで言う有力な証拠とは、結婚あるいは交際していた時の写真、共同名義の銀行口座、健康保険、自動車保険、生命保険、同居していた時に送られてきた手紙などです。また、結婚前のラブレターやラブレターに相当する E メール、結婚前に頻繁に連絡を取っていたことを示す電話の請求書なども集めて提出した方がいいでしょう。さらに、事情を知っている人からの宣誓書、結婚カウンセラーからの診断書なども有力な証拠になります。診断書には、結婚に至る経過のみではなく、婚姻を継続しがたい理由があること、また、それが結婚当初には予測できなかったという説明があるほうが望ましいです。
 
ちなみに Self Petitionには、以下の3種類があります。証明方法と共に説明しましょう。
 
1. Extreme Hardship Ground
条件解除の申請者がアメリカを離れることで、過度に困難な状況を引き起こすことになってしまう場合です。経済的理由、家族との別離のみでは十分な理由として認められないのが一般的です(もちろん、理由の1つとしては認められますが)。この申請が適用される典型的な例としては、例えば申請者がアメリカで事業を行っていて、国外退去を迫られることにより、多くの解雇者が出てしまうというような場合が挙げられます。
 
2. Good Faith Ground
これは、アメリカ市民との結婚には正当な理由(永住権取得が目的では一切なかったということ)があったが、結婚後、別居しなければならない事由が生じた場合です。移民局は、2人の婚姻関係がいかに強いものであったか否かを問うことになります。なお、この場合、条件解除の申請時に離婚、あるいは婚姻の無効(Annulment)が成立している必要はありません。しかし、少なくともその手続きが、家庭裁判所において開始されている必要があります。また、永住権の条件解除が認められるためには、一般的には離婚、あるいは婚姻の無効が成立している必要があります。
 
3. Battered Spouse or Child Ground
これは、アメリカ市民の配偶者が、申請者、あるいは申請者の子供に対して暴力を振るった事実がある場合です。「I-360」という申請書により、永住権の2年間限定という条件を解除し、永住権の更新を行うことができます。当然、ご主人があなたや子供に暴力を振るったということを立証する必要がありますが、それには、警察やカウンセラーからのレポートなどが重要な証拠になります。ただしここでは、物理的な暴力を意味し、言葉による暴力だけで、この申請をすることは困難です。
 
「I-360」の申請が認可されると、次に「I-485」という申請書により、永住権の更新申請を行い、認可されるとグリーンカードを取得することができます。この時に取得できる永住権には、「入籍後、同居期間2年以上」という条件は付いていません。なぜなら、この救済法は、永住権を失うことを恐れ、危険な状態を我慢し続ける状況を解消するために存在するものだからです。従って、暴力により身体の危険性がある場合には、永住権が取得できるまで我慢するのではなく、暴力を振るわれた際に警察に届け、ご自身の身を守ることです。
 
(2013年2月16日号掲載)

婚姻を通してのグリーンカード、離婚後も保持するには?

瀧 恵之 弁護士

Q:2年前にアメリカ人の夫と結婚し、グリーンカード(永住権)を取得しました。その有効期限が、今月までとなっています。10年有効のグリーンカードに書き換えたいのですが、結婚直後より夫の暴力がひどく、離婚を考えています。しかし、離婚するとアメリカにいられないと聞きました。また、子供を日本に連れ帰ることもできないようなので、どうしたら良いのか困っています。何か良い方法はありますか?

A:アメリカ市民との婚姻を通して永住権を申請した場合、まず2年間有効のグリーンカードが発給されます。その期限が切れる90日前から「条件の解除(Removal of Condition)」の申請を行うことになります。これには、Form I-751という申請書を使用し、一般的に申請者とその配偶者の両方のサインが必要です。しかし、アメリカ市民の配偶者の協力が得られないような場合、あるいはアメリカ市民が死亡しているような場合には、「Self Petition」という申請者のみのサインで申請する方法があります。この Self Petitionでは、2年間の条件付きグリーンカードが失効する90日前から有効期限までの90日間を超えても、理由がある場合には、アメリカを出国していない限り、申請を行えます。
 
仮に、何らかの理由で強制送還の手続きが開始されていても、その最終判断が下されるまでの間は、グリーンカードの条件解除の申請手続きは、継続することができます。また、このような場合、移民裁判官の判断により、条件解除の申請手続きの結果が出るまで、強制送還の手続きの延期を行うこともできます。
 

家庭内暴力がない場合は婚姻・離婚の正当性を証明

Self Petitionには、以下の3通りの方法があります。
 
Extreme Hardship Ground
これは、条件解除の申請者がアメリカを離れることが、当該申請者にとって過度に困難な状況を引き起こすことになる場合です。これを立証できればSelf Petitionが認められることになります。「過度に困難な状況」の証明には、経済的理由、家族との離別等のみでは、十分な理由として認められないのが一般的です(もちろん、理由の一つとしては認められますが、それのみでは十分ではないということです)。
 
例えば、申請者が事業を行っており、申請者が国外に退去されられることにより、多くの解雇者が出ることになる場合等は、条件解除が認められる良い理由となります。
 
Good Faith Ground
これは、アメリカ市民との結婚に至ったのには正当な理由があった(グリーンカード取得が目的の婚姻では一切ないこと)ものの、結婚後、別居しなければならない事由が生じた場合です。移民局は、当該婚姻がいかに強いものであったか否かを問うことになります。
 
この場合、条件解除申請時に、離婚、あるいは婚姻の無効(Annulment)が成立している必要はありませんが、その手続きが家庭裁判所において開始されている必要があります。移民局は多くの場合、離婚、あるいは婚姻の無効が成立するまで、条件解除を認めるのを延期する傾向にあります。
 
Battered Spouse or Child Ground
これはアメリカ市民が、条件解除の申請者、あるいは当該申請者の子供に暴力を振るった事実がある場合です。この場合、警察やカウンセラーからのレポート等が、その重要な証拠になります。
 
アメリカ市民である配偶者からの暴力がなければ、前記の②が一般的に当てはまります。従って、結婚が正当な理由で行われたものの、結婚後に別居しなければならない事由が生じたことを証明する必要があります。
 
これには、結婚、あるいは交際していた時の写真、2人の共同名義の銀行口座/健康保険/自動車保険/生命保険、同居していた時に送られてきた2人の名前の入った郵便物、結婚前後のラブレターやカード、(結婚前に頻繁に連絡を取っていたことを示す)電話の請求書等を提出するのが良いでしょう。また、事情を知っている人からの宣誓書、カウンセラーからのレポート等も有力な証拠になります。いずれにせよ、この方法により条件解除が認められるには、移民局による厳しい審査をパスしなければならないので、申請者は、できる限り有力な証拠を数多く集めることをおすすめします。
 
なお、あなたの場合、アメリカ人のご主人から暴力を振るわれているということですから、前記の③の方法を使うようおすすめします。この申請を行うには、前記の証拠に加えてポリスレポート、第3者の宣誓供述書等、配偶者があなたに暴力を振るったことを示す、公式な証拠が必要となります。
 
(2012年4月1日号掲載)

条件付き永住権を失わずに米国人夫の暴力から逃れるには?

吉原 今日子 弁護士

Q:米国市民の男性と2年前に結婚しましたが、度重なる暴力に悩まされています。現在、条件付き永住権を保持していますが、離婚すると、米国に滞在できなくなることを心配しています。それが心配で警察に通報できず、カウンセリングに通っています。国外退去にならず、この状況を脱出するためには、どのような方法がありますか?

A:ある種の犯罪行為の捜査や起訴について、政府に協力する外国人被害者に対して有効な「Uビザ」が、2000年10月に立法化されました。Uビザの目的は、外国人犯罪被害者に保護を提供する一方、家庭内暴力、性犯罪、人身売買などのような犯罪を捜査し、告発する法執行機関の能力を強化することにあります。
 
Uビザ取得には、以下の4つの条件を充足することが要求されます。
①申請者が指定犯罪の犠牲者で、その犯罪の結果、身体的あるいは精神的損害を受けている
②申請者が、当該犯罪行為に関する情報を持っている
③当該犯罪の調査、起訴を行うにあたり、申請者が今まで手助けになってきた。あるいは今後手助けになるか、その可能性が高い
④当該犯罪行為が米国の法律に反している、あるいは米国内において起きた行為である
 
Uビザの対象となる犯罪行為とは、連邦、州、地方の法に違反する、殺人、婦女暴行、拷問、恐喝、公務執行妨害、家庭内暴力などがあります。
 
対象とされている犯罪は、「Abduction」「Abusive Sexual Content」「Blackmail」「Domestic Violence」「Extortion」「False Imprisonment」「Female Genital Mutilation」「Felonious Assault」「Hostage」「Incest」「Involuntary Servitude」「Kidnapping」「Manslaughter」「Murder」「Obstruction of Justice」「Peonage」「Perjury」「Prostitution」「Rape」「Sexual Assault」「Sexual Exploitation」「Slave Trade」「Torture」「Trafficking」「Witness Tempering」「Unlawful Criminal Restraint」、その他関連犯罪です。
 
あなたの場合、ここに指定されている「家庭内暴力」に該当します。犯罪がUビザ取得に値するかは、裁判記録、警察証明、犯罪に関する記事、陳述書などを基に判断されます。

必要と判断されれば永住権の申請も可能

Uビザの申請方法は、「I-918」という申請書によって行います。犯罪の犠牲者であれば誰でも申請できるというわけではなく、連邦、州、郡、市などにおいて犯罪行為を調査、あるいは起訴する権限を与えられている政府機関(例えば、警察、検察官、裁判官等)から、「I-918 Supplement B」という書類の認可を受けなければなりません。また、Uビザは、米国内に滞在している人に限らず、日本からでも米国大使館を通して申請することができます。扶養家族に関しては、申請者の配偶者、18歳未満の子供も同じく取得することができ、申請者が21歳未満の場合は、両親も同時に申請することができます。
 
Uビザは、移民局の会計年度で1年間に1万件(扶養家族の分のU ビザは、この数に含まれません)しか発行されないことになっています。しかし、これに漏れても、Waiting List に入ることができ、順番が回ってくるまでの間、就労許可や再入国許可の申請が可能です。Uビザは、一般的に4年以上の許可は下りないとされていますが、犯罪行為の調査を必要としている政府機関が、それ以上の期間が必要であると判断した場合には、延長が可能です。Uビザにて3年以上滞在し、犯罪行為の調査を行う機関が必要と判断すれば、その後、永住権を申請することも可能とされています。申請料は、政府の政策目的から無料とされており、指紋登録(Finger Print)の費用も、申請者が負担する必要はありません。
 
あなたの場合、家庭内暴力の被害者であるため、このUビザを申請できるだけでなく、「I-360」という書類を移民局に提出することによって、3年間待つことなく、永住権の申請を行うこともできます。この場合、警察からのレポートだけでなく、事情を知っている人からの宣誓書、カウンセラーからのレポート等も、有力な証拠になります。
 
家族については、もし21歳未満の場合、Uビザ、永住権申請資格のある家族は、配偶者、21歳未満の子供、18歳以下の未婚の兄弟と両親です。21歳以上の場合、資格のある家族は、配偶者と21歳未満の子供となります。
 
Uビザ取得の可能性については、専門の弁護士とご相談ください。
 
(2012年1月16日号掲載)

条件付きグリーンカード、更新前に離婚すると喪失する?

吉原 今日子 弁護士

Q:私はアメリカ市民との結婚を通してグリーンカードを取得しました。私のグリーンカードは「コンディショナル(条件付き)」なので、残りの有効期限は半年ほどです。更新をしなければなりませんが、現在、夫との仲がうまくいっておらず、離婚を考えています。しかし、更新前に離婚が成立すると、グリーンカードを失うと聞きました。本当でしょうか?私は、今の主人との間に子供がおり、日本へ帰国するのは困難な状況です。何か良い方法はありますか?

A:グリーンカードの「コンディション」は、アメリカ市民との結婚によるグリーンカード取得後2年間、結婚生活が継続していることを確認するために用いられるものです。
 
コンディションを解除するためには、I-751を申請する必要があります。この申請には、あなたと配偶者の両方の署名が必要です。しかし、アメリカ市民の配偶者の協力(署名)を得ることができない場合、あるいはアメリカ市民の配偶者が死亡しているような場合には、「Self-Petition」という形で、申請者自身の署名だけで申請できます。
 
Self-Petitionを行う場合、アメリカ市民との結婚がグリーンカードの取得を目的としたものではなく、配偶者と共にアメリカで生活を営むために申請したこと、そして、結婚生活に入った後、結婚当初に予期できなかった事態が発生し、離婚せざるを得ない状況になったことを、立証する必要があります。
 
これには入籍後、同居期間が2年以上あれば有利であると言えます。これは、あくまでもグリーンカードを取得してから2年ではなく、入籍または同居後2年です。
 
しかし、この方法によって移民局の認可を得るには、厳しい審査基準をパスしなければなりません。ですから有力な証拠を、できるだけ多く集めることをおすすめします。
 
ここで言う「有力な証拠」とは、結婚あるいは交際していた時の写真、共同名義の銀行口座、健康保険、自動車保険、生命保険、同居していた時に送られてきた手紙などです。また、結婚前のラブレター、Eメール、頻繁に連絡を取っていたことを示す電話の請求書等も集めて、提出されるのが良いでしょう。
 
また、2人の事情を良く知っている人から宣誓書、マリッジ・カウンセラーからの診断書なども有力な証拠になります。従って、別居状態に入った頃から、マリッジ・カウンセリングに通い始めるのも得策であると言えます。この診断書には、結婚に至る経過のみではなく、当該婚姻がグリーンカードの取得が目的ではなく、恋愛に基づいたものであること、婚姻を継続しがたい理由があること、また、それが結婚当初には予測できなかったという説明がある方が望ましいです。
 
アメリカを離れることが過度に困難な状況を引き起こすことになる場合、このことを立証することによって、Self-Petitionを有利に進めることができます。
 
「過度に困難な状況」とは、経済的な理由、家族との別離等が一般的です。しかし、例えば申請者がアメリカ国内で事業を行っており、申請者がアメリカ国外へ退去を迫られることにより、多くの解雇者が出る場合などでは、条件解除が認められるさらに強い理由となります。家庭内暴力による離婚ではグリーンカードを喪失しない
 
もし離婚の原因が、配偶者からの暴力による場合、それに対する救済法もあります。
 
I-360を申請することで、グリーンカードの2年間限定という条件を解除し、更新を行うことができます。この場合には、配偶者があなたや子供に暴力を振るった事実を立証する必要があります。それには、警察やカウンセラーからのレポート等が重要な証拠になります。ただし、ここでは「物理的な暴力」が証拠となり、「言葉による暴力」だけで、I-360申請をすることは困難です。
 
この申請方法を用いる場合には、仮に離婚が条件付きのグリーンカードの更新前(さらには、最初のグリーンカードの申請前)であっても、グリーンカードを取得することができます。この際に取得できるグリーンカードには、2年間というコンディションは付きません。
 
従って、暴力により身体の危険性がある場合には、グリーンカードが取得できるまで我慢する必要はありません。暴力を振るわれた際には、すぐに警察に通報し、ご自身の身を守ることが先決です。なぜならI-360による申請は、グリーンカードを失うことを恐れる外国人の配偶者が、危険な状態を我慢し続けなくても良いように存在するからです。
 
(2010年6月16日掲載)

婚姻による永住権は離婚で喪失する?

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、アメリカ市民の夫を通してグリーンカードを取得しました。今、持っているグリーンカードは2年間有効で、2009年9月まで有効期限があります。グリーンカードの有効期限の90日前になると、更新の手続きが必要であることは知っているのですが、夫との仲が良くなく、離婚の可能性が高いと思います。友人の話によると、更新が完了するまでに離婚してしまうと、グリーンカードを失ってしまうとのことです。夫との生活には耐え難いものがありますが、子供のことを考えると、今、日本に戻るのは無理があると思います。グリーンカードの更新が完了するまで、今の夫との生活を我慢した方が良いのでしょうか。

A:あなたの場合、ご主人との生活が耐え難い訳、言い換えると、離婚をしなければならない理由が何であるかということが、まず問題となります。
 
例えば、ご主人が暴力を振るうような場合には、それに対する救済法がありますし、それ以外、例えば、結婚前に到底分からなかった問題が、結婚後に判明したのであれば、それに対する救済法もあります。いずれにせよ、特に前者のように身体に危険が及ぶような場合には、今の生活を我慢することはおすすめできません。
 
ご主人が暴力を振るうという場合(これは、あなたの子供に対してであっても同じことです)に関してですが、I-360という申請書により、グリーンカードの2年間限定という条件を解除し、更新を行うことができます。
 
この場合には、ご主人があなたや子供に暴力を振るったということを立証する必要があります。それには、警察やカウンセラーからのレポート等が重要な証拠になります。ただし、ここでは物理的な暴力を意味し、言葉による暴力だけで、このカテゴリーにおける申請を行うことは困難です。
 
I-360の申請が認可されると、次にI-485という申請書により、グリーンカードの申請を行い、認可されるとグリーンカードを取得することができます。
 
この時に取得できるグリーンカードには、例えば2年間限定というような条件は付いていません。従って、暴力により身体の危険性がある場合には、グリーンカードが取得できるまで今の生活を我慢するのではなく、暴力を振るわれた際に警察の保護を受け、ご自身の身を守ることです。なぜなら、この救済法は、グリーンカードを失うことを恐れ、危険な状態を我慢し続けなくてもいいように存在するものだからです。

離婚が不可避である立証が必要

次に、前記のように暴力を振るわれているのではなく、それ以外の理由で離婚を考えている場合には、I-751という申請書により、同じくグリーンカードの条件解除を行い、更新を行う方法があります。
 
I-765の申請書は、一般的にはグリーンカード取得後2年間、婚姻生活が継続していることを確認するために用いられるもので、申請者とその配偶者の両方のサインが必要です。しかし、米国市民の配偶者の協力が得られないような場合、あるいは米国市民の配偶者が死亡しているような場合には、「Self Petition」という形で、申請者のサインのみで申請することができます。
 
この方法を用いる場合、結婚がグリーンカード取得を目的としていたのではなく、ご主人と一緒にアメリカで生活を行うために申請したということ、そして、結婚生活に入った後、結婚当初には予期できなかった事情が発覚し、離婚せざるを得ないということを立証する必要があります。これは入籍後、同居期間が2年以上あれば有利であると言えます(あくまでもグリーンカード取得後2年ではなく、入籍後2年です)。
 
この方法によって条件解除が認可されるには、厳しい審査基準をパスしなければならないので、できる限り有力な証拠を数多く集められることをおすすめします。
 
ここで言う有力な証拠とは、結婚あるいは交際していた時の写真、銀行の共同名義の口座、健康保険、自動車保険、生命保険、同居していた時に送られて来た2人の名前が入った郵便物、結婚前後のラブレターやカード、結婚前に頻繁に連絡を取っていたことを示す電話の請求書等で、これらを提出するのが良いでしょう。
 
また、事情を知っている人からの宣誓書、カウンセラーからのレポート等も有力な証拠になります。レポートには、結婚に至る経過のみではなく、婚姻を継続し難い理由があること、また、それが結婚当初には予想できなかったという説明がある方が、望ましいと言えます。
 
(2009年1月1日号掲載)

学生ビザ(Fビザ)で留学中、合法的に働くには?

アメリカの大学在学中に資金が不足したらどう対応したらいい?

瀧 恵之 弁護士

Q:私は2021年現在日本にいて、アメリカ留学を考えています。大学入学前に実家の残高証明、日本国内での最終学歴、TOEFL のスコアなどの入学先の基準を満たし、I-20と学生ビザ(F-1ビザ)も取得できたとして、在学中に学費の支払いが滞るような事態が実家に起こった場合、在学を諦め一度帰国したほうが良いのでしょうか。この場合、学費が払えないことを理由に、休学していったん帰国し、学費、滞在費を工面してから再度学校に戻るといったことは可能でしょうか。それとも、学費の未払いなどの不慮の事態が起きた場合、退学を余儀なくされることもあり得るのでしょうか。

A:F-1ビザを取得し、アメリカの大学等で勉強を始め、途中で学費が払えなくなった場合は、いったんプログラムを中断し、正式な休学届を学校に提出しておけば、一時的に日本に戻り、再度アメリカに留学することは可能です。ただし、プログラムを途中で中断する場合、その学期(セメスターやクォーター)の終わりまでは終了してから、休学届を提出されることをお勧めします。

定められた期間内であれば同じビザで学校復帰が可能

学費は、その学期の最初に支払うのが一般的なので、途中で不測の事態が起きたとしても、学費を払えないということで退学を余儀なくされる可能性は低いと考えます。再度アメリカに戻る際は、在籍していた学校から新たにI-20の発行を受けることにより、アメリカへの入国が可能です。

その時に、あなたのF-1ビザ(通常5年)がまだ有効であれば、新たにF-1ビザを取得する必要はありません。また、休学可能な期間は学校により定められている場合がほとんどなので、その期間内にアメリカに戻る必要があります。一般的には、プログラムを開始して10年以内に終了しないといけない規定になっている場合が多いです。

在学中に収入を得ることで学費を賄う方法も

また、あなたの場合は、実家に不測の事態が起きた場合には、アメリカでの就労許可を申請できる可能性があります。これは、「UnforeseenEconomic Necessity(Severe EconomicHardship)」と呼ばれ、米国入国時には学校を卒業できるだけの資金源があったにもかかわらず、学生のコントロールの及ばない範囲で事情が変わったことを説明することにより申請を行います。このケースに当てはまる例として、両親の失業または入院による膨大な医療費の出費で継続して就学を続けることが困難な場合などが挙げられます。

また、この申請方法以外にも、あなたの場合、学校に通いながら就労する「On-Campus Employment」「Curricular Practical Training」および「Optional Practical Training(Pre-Completion)」という方法も考えられます。「On-Campus Employment」はキャンパス内に限られますが、学校の許可を得るのみで就労できます。「Curricular Practical Training」は、フルタイムの学生として9カ月以上学校に通い続けた後、学校(Designated School Official)の許可を得るのみで、学期中は週20時間まで、休暇中はその後の学期の授業に参加することを前提としてフルタイムで就労することができます。職種の選択にあたっては、学生の専攻する学術領域に限られます。

次に、「Optional Practical Training」ですが、これには「Pre-Completion」と「Post-Completion」があり、「Pre-Completuon」はコースワーク終了前、「Post-Competion」はコースワーク終了後のものを指します。ですから、あなたのように卒業する前であっても、「Optional Practical Training」の中の「Pre-Completion」によって就労できる可能性があります。「Optional Practical Training(Pre-Completion)」は、「Curricular Practical Training」と同じようにフルタイムの学生として9カ月以上学校に通い続けた後、学期中は週20時間まで、休暇中の間はその後の学期の授業に参加をすることを前提としてフルタイムで就労することができます。職種の選択にあたっても、同様に学生の専攻する学術領域に限られます。

ただしこの申請は、学校の許可のみならず、移民局の許可も必要とされます。そのため申請に時間がかかり、またあなたが卒業した後、「Optional Practical Training(Post-Completion)」を申請する際は、「Pre-Completion」を行った期間を差し引かれることになるので、「Optional Practical Training(Pre-Completion)」は最後の選択肢と考えたほうが良いかも知れません。これらの選択肢を鑑み、万が一、実家に不測の事態が生じた場合には、その時点であなたがプログラムをどこまで終えているかなどを考慮し、アメリカで就労することによりプログラムを終了できるのか、あるいはいったん日本に戻った方が良いのかを判断することになります。

(2021年11月16日号掲載)

大学就学中にF-1ビザで合法的に働く方法は?

瀧 恵之 弁護士

Q:大学でコンピューターサイエンスを勉強しています。経済的な問題もあり、さらに、知り合いの会社からの誘いもあるので、アルバイトをしたいと思っています。大学を卒業した後ならば、プラクティカルトレーニングを使い働くことができるのは知っていますが、卒業前に働く手段があれば教えてください。

A:F-1ビザのステータスで卒業前に就労するには、4つの方法が考えられます。
 
1)On-Campus Employment
キャンパス内ならば、学期中は週20時間まで、休暇や休日の間はその後の学期の授業に参加することを前提として、フルタイムで就労することができます。リサーチ・アシスタントなどが代表的な例として挙げられますが、キャンパス内ならば、書店やカフェテリアなど雇用主が学校自体でなくても構いません。ただし、学校のビルディングを借りているのみで、学校とは関係のない(顧客が学生ではない)オフィスなどでは、この手段によって働くことはできません。
 
また、キャンパス外であっても学校と密に提携している場合には、この制度の適用を受けられる場合があります(例:医学部の学生で、その付属病院で働くような場合)。On-Campus Employmentの場合は、移民局の許可を直接得る必要はありませんが、学校自体が許可制にしている場合があるので、就労前にInternational Student Officeで相談することをおすすめします。
 
2)Unforeseen Economic Necessity( Severe Economic Hardship)
米国入国時には学校を卒業できるだけの資金源があったにもかかわらず、本人の意志の及ばない範囲で事情が変わった場合、学校と移民局の許可を得ることで、キャンパス外でも就労することができます。これには両親の失業、または入院による膨大な医療費の出費で、継続して就学を続けることが困難な場合などが例として挙げられます。米国入国時には予期していなかった事情の発生が、学生側の原因で起こったのではないとの証明に加えて、On-Campus Employmentなどほかの労働手段がないことを証明することも条件とされています。2011年の震災の後、日本の学生に多くの就労許可が発行されましたが、これはこのカテゴリーに属します。
 
卒業後にOPT申請予定の場合在学中の就労期間に注意
これら以外に、あなたの場合「Practical Training」の利用が考えられます。「Practical Training」には「Curricular Practical Training」と「Optional Practical Training」の2つがあります。さらに、「Optional Practical Training」には、「Pre-Completion」と「Post-Completion」があり、「Pre-Completion」はコースワーク終了前、「Post-Competion」はコースワーク終了後のものを指します。ですから、卒業前であっても、「Curricular Practical Training」、あるいは、「Optional Practical Training」の中の「Pre-Completion」によって就労できる可能性があります。
 
3)Curricular Practical Training
フルタイムの学生として9カ月以上学校に通い続けた後、学校の許可を得ることで、学期中は週20時間まで、休暇や休日の間はその後の学期の授業に参加することを前提として、フルタイムで就労することができます。職種の選択にあたっては、学生の専攻する学術領域に限られます。
 
4)Optional Practical Training(Pre-Completion)
Curricular Practical Training と同じように、フルタイムの学生として9カ月以上学校に通い続けた後、学期中は週20時間まで、休暇や休日の間は、その後の学期の授業に参加することを前提として、フルタイムで就労できます。職種の選択にあたっては、学生の専攻する学術領域に限られます。
 
Curricular Practical Training との違いは、Pre-Completionは学校、および移民局の許可を必要とすることです。 また、就労期間がフルタイムで1年(週20時間ならば2年に換算)までに限られています。さらに、後にPost-Completion を申請しようとする場合、その期間(1年)から、Pre-Completion で就労した期間が差し引かれます。
 
これに対して、Curricular Practical Training で就労した期間は、Optional Practical Training の就労可能な期間(Pre-Completion とPost-Completionを合わせて1年)より差し引かれることはありませんが、フルタイムで1年間就労した場合は、Optional Practical Training を申請することができなくなります。したがって、Curricular Practical Training でフルタイムの就労した後に、Optional Practical Trainingを申請する予定があれば、1年より1日でも短い期間の就労にしておくことをおすすめします。

日本の大震災で経済的困難に。就労しながら在学する方法は?

瀧 恵之 弁護士

Q:現在、私はアメリカの大学3年生ですが、今回の日本の震災によって父が職を失いました。仕送りはこれ以上できないため、実家に戻るよう言われました。ですが、卒業後、アメリカで働くことを夢見て3年間努力してきたことを考えると、どうしても諦められません。最近、移民局は、在米の日本人に対して救済法を発表したと聞きました。私はこの恩恵を受け、大学を卒業することはできないものでしょうか?

A:2011年3月17日、移民局は、日本人に対する救済法を発表しました。この救済法の中には、仮に在米ステータスが切れて不法滞在になってしまった場合でも、他のステータスに変更できるなど、本来の移民法において許される枠を大きく越えた規定も含まれています。この救済法の中で、あなたの状況に適用される項目について説明します。
 
通常、F-1 ビザ(学生ビザ)ステータスで、在学中に就労するには、以下の4通りの方法があります。
 
① On-Campus Employment
休暇や休日の間は、その後の学期の授業に参加することを前提として、校内で、学期中は週20時間まで就労できます。キャンパス内にあれば、書店やカフェテリアなど、雇用主が学校でなくても構いません。
 
② Unforeseen Economic Necessity (Severe Economic Hardship)
米国入国時には、卒業までの資金源があったにも関わらず、学生のコントロールの及ばないところで事情が変わった場合、学校と移民局の許可を得れば、キャンパス外でも就労できます。職種の制限もありません。
 
これには、両親の失業や入院による膨大な医療費の出費などで、就学継続が困難な場合などが例として挙げられます。予期していなかった事情の発生が、学生側の原因で起こったのではないということの証明に加え、「On-Campus Employment」など、他の労働手段がないことも条件とされています。
 
③ Optional Practical Training(OPT)- Pre-Completion
これは、卒業後に取得するOPT(Post-Completion)を卒業前に取得するものです。フルタイムの学生として1年(セメスター制の場合、2セメスター)以上学校に通い続けた後、学期中は週20時間まで、休暇や休日の間は、その後の学期の授業に参加をすることを前提として、フルタイムで就労できます。しかし、職種は、学生の専攻する学術領域に限られます。また、学校の許可を得た後、移民局の許可を必要とします。
 
④ Curricular Practical Training
③とほぼ同じですが、学校の許可のみで良く、移民局の許可を必要としません。

日本人には困難だった申請が救済法により適用

以前まで、前述②の「Unforeseen Economic Necessity」は、経済的な事情が変わったことを証明するのが(特に経済大国である日本国籍を持つ人にとっては)非常に困難でした。しかし、今回の救済法では、日本国籍を持つ者に対して適用されると規定されています。今回の震災で、どれだけの被害を受ければ、その証明になるのかという規定までは発表されていません。ですから、今後新たなガイドラインが発表されない限り、各々の審査官の裁量に任されることになると考えます。
 
あなたの場合、お父様が仕事を失われたわけですから、この救済法の適用を受けることが可能だと考えます。また、この救済法では、就労許可の申請で日本国籍を保持していれば、通常よりも早く認可を受けられるとも規定されています。
 
従って前述した①、あるいは、④の方法を用いれば、最も早く就労資格を得ることができます。そうでない場合でも、②の方法を用いて、早期に就労許可の申請をされることをおすすめします。
 
(2011年4月1日掲載)

在学中に有給のインターンとして働くには?

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、現在、大学院でMBAを取得しようとしています。今度、あるアメリカ企業でインターンシップができるようになりました。そこでは給料を出してくれるのですが、学生ビザで就学している私は、これを受け取って良いのでしょうか?また、「卒業前にプラクティカルトレーニングで働ける」という話を聞いたのですが、卒業後の就職活動のために取っておきたいと思っています。

A:あなたの場合、「Curricular Practical Training」を利用するのが最適であると思います。F-1 ビザ(学生ビザ)のステータスで、在学中に就労するには、以下の4通りの方法がありますので、順序立ててご説明します。
 
① On-Campus Employment
キャンパス内ならば、セメスター中は週20時間まで、休暇や休日の間はその後の学期の授業に参加することを前提として、フルタイムで就労することができます。キャンパス内ならば本屋やカフェテリアなど、雇用主が学校でなくても構いません。また、キャンパス外であっても、職場が学校と密に提携している場合には、この制度の適用を受ける場合があります(例えば、メディカルスクールの学生が、大学の付属病院で働くような場合)。
 
就労に移民局の許可を直接得る必要はありませんが、学校が許可制にしている場合があります。その場合、就労前にInternational Student Officeに行き、その許可を得る必要があります。
 
② Unforeseen Economic Necessity(Severe Economic Hardship)
米国入国時には学校を卒業できるだけの資金があったにもかかわらず、学生のコントロールの及ばない範囲で事情が変わった場合、学校と移民局の許可を得ることで、キャンパス外でも就労ができます。職種の制限もありません。これは、両親の失業、または入院による膨大な医療費の出費で、継続して就学を続けることが困難な場合などが例として挙げられます。
 
③ Optional Practical Training(OPT)- Pre-Completion
一般的には卒業後に取得するOPT(Post-Completion)を、卒業前に取得するものです。フルタイムの学生として1年(セメスター制の場合、1セメスター)以上学校に通い続けた後、学期中は週20時間まで、休暇や休日の間は、その後の学期の授業に参加をすることを前提としてフルタイムで就労することができます。職種の選択にあたっては、学生の専攻する学術領域に限られます。
 
学校の許可を得た後、移民局の許可を必要とします。ただし、就労期間がフルタイムで1年(週20 時間ならば2年に換算)までに限られており、卒業後、OPTのPost Completionを申請した場合、Pre-Completionで就労した期間が差し引かれます。
 
④ Curricular Practical Training(CPT)
③のOPT(Pre-Completion)と同じように、フルタイムの学生として1年以上学校に通い続けた後、学校の許可を得ることで、学期中は週20時間まで、休暇や休日の間は、その後の学期の授業に参加することを前提としてフルタイムで就労することができます。職種の選択にあたっては、学生の専攻する学術領域に限られます。CPTは、学校の許可のみで良く、移民局の許可を必要としません。
 
卒業後のOPT 期間に影響を及ぼさないCPT
あなたの場合、インターンシップ先がキャンパス外であるため、①のOncampus Employmentを使うことはできません。また、②のUnforeseen Economic Necessityも、経済的な事情が変わったことを証明するのは、困難でしょう。
 
卒業後にOPTを使うことを予定しているのなら、④のCPTをおすすめします。CPTは、フルタイムで1年間就労しない限り、卒業後のOPTの期間から差し引かれることはありません。
 
例えば、CPTで1年より1日だけ短い、364日間働いたとしても、卒業後のOPT は、1年間すべて使うことができます。さらに、パートタイムなら、CPTで何年間働いても、OPT の期間に影響を及ぼすことはありません。
 
あなたの場合、ビジネス専攻ですので、ほとんどの会社でその適用を受けることができます。また、前述したようにCPTは、移民局の許可を得る必要がないので、インターンシップを開始するまでの準備期間も非常に短くて済み、最適の就労資格と言えるでしょう。
 
(2009年12月01日号掲載)

F-1ビザでの就労の条件

瀧 恵之 弁護士

Q:F-1ビザでアルバイトすることは可能ですか?制限や条件があれば教えてください。また、ソーシャル・セキュリティー・ナンバー(SSN)を取るにはどうしたら良いですか?

A:F-1ビザステータスにて、在学中に合法的に働くには、「On-Campus Employment」「Unforeseen Economic Necessity」「Curricular Practical Training」、および「Optional Practical Training のPre-Completion」の4通りがあり、それぞれの場合においてSSNを取得することができます。
 
まず、On-Campus Employmentに関してですが、キャンパス内ならば、セメスター中は週20時間まで、休暇や休日の間はその後の学期の授業に参加することを前提として、フルタイムで就労することができます。
 
キャンパス内ならば、Book Storeやカフェテリアなど、雇用主が学校自体でなくても構いません。また、キャンパス外であっても学校と密に提携している場合には、この制度の適用を受ける場合があります(例えば、メディカルスクールの学生が、大学の付属病院で働くような場合)。
 
On-Campus Employmentの場合は、移民局の許可を直接得る必要はありませんが、学校自体が許可制にしている場合があります。ですので、就労前にInternational Student Officeで、許可を得ることをおすすめします。許可が得られれば、その後、International Student Officeからの手紙をSocial Security Administration Office(以下、SS Office)に持って行けば、SSNを取得することができます。
 
次に、Unforeseen Economic Necessityに関してですが、これは、「Severe Economic Hardship」とも呼ばれ、米国入国時には学校を卒業するまでの資金源があったにも関わらず、学生のコントロールの及ばない範囲で事情が変わった場合、学校と移民局の許可を得ることで、キャンパス外で就労することができます。この場合、職種の制限もありません。これには両親の失業または入院による膨大な医療費の出費で、継続して就学を続けることが困難な場合などが例として挙げられます。
 
Unforeseen Economic Necessityは、米国入国時には予期していなかった事情の発生が、学生側の原因で起こったのではないことの証明に加えて、このほかには、On-Campus Employment等、他の労働手段がないことも条件とされています。移民局からEmployment Authorizationのカードが届いたら、それをSS Officeに持って行けば、SSNを取得することができます。

OPT申請予定ならばまずCPTの使用を推奨

Curricular Practical Training(以下、CPT)に関してですが、フルタイムの学生として1年(セメスター制の場合は、2セメスター)以上学校に通い続けた後、学校の許可を得ることで、学期中は週20時間まで、休暇や休日の間は、その後の学期の授業に参加することを前提としてフルタイムで就労することができます。職種の選択にあたっては、専攻する学術領域に限られます。
 
CPTは、学校の許可のみで良く、移民局の許可を必要としません。従って、I-20にCPTの記載があれば、それをSS Officeに持って行くことでSSNを取得できます。
 
最後にOptional Practical Training(以下、OPT)のPre-Completion(卒業前に取得するもの)に関してですが、CPTと同じようにフルタイムの学生として1年以上学校に通い続けた後、学期中は週20時間まで、休暇や休日の間は、その後の学期の授業に参加することを前提としてフルタイムで就労することができます。職種の選択にあたっては、同様に学生の専攻する学術領域に限られます。
 
CPTと違ってOPTは移民局の許可を必要とします。したがって、移民局からEmployment Authorizationカードが届けば、SSNを申請することができます。
 
就労期間はフルタイム勤務の場合、1年(週20時間ならば2年に換算)までに限られています。さらに、後にOPTの「Post-Completion(卒業後に取得するもの)」を申請した場合、その期間(1年)からPre-Completionで就労した期間が差し引かれます。したがって、前記のCPTを申請することが可能ならば、その方が得であると言えます。
 
ただし、CPTでフルタイムで1年間就労した場合は、OPTを申請することができなくなります。したがって、CPTでフルタイムの就労した後に、OPTを申請する予定があれば、1年より1日でも短い期間(364日以下)の就労に留めておくことをおすすめします。例えCPTを364日間使っていても、OPTは1年間使うことができるからです。
 
(2008年10月1日号掲載)

F-1ビザの学生の就労条件について

KEVIN LEVINE 弁護士

Q:F-1ビザの学生の就労について教えてください

A:F-1ビザ所持者(留学中の学生)の就労には制限があります。もしこれらの規定を遵守しないで就労すれば、違法になります。F-1ビザ所持者の就労で最も多いケースは、「学内での雇用」と「プラクティカル・トレーニング」です。F-1ビザ所持者の配偶者や子供であるF-2所持者は、いかなる場合も就労は認められていません。英語修得プログラムに参加している学生は、いかなる種類の労働も認められていません。

Q:「学内での雇用」とは何ですか?

A:F-1ステータスを得たら、F-1ビザ所持者は卒業までの間(新学期が始まる30日前からとバケーション期間中を含む)、最長週20時間まで学内で働くことができます。学内での雇用では、学業休暇期間、セメスターの間、同一学校で次の学位レベルに移るまでの間は、フルタイムで就労することができます。SEVISの記録の管理権限を持つ学校でのみ、労働に従事でき、編入してきた場合は、その手続きが完了するまでは、新しい学校で働くことはできません。

Q:学内ではどのような仕事が許可されていますか?

A:教務やリサーチアシスタント、図書館やアドミニオフィスでの就労が可能です。また、キャンパス内で学生向けにサービスを提供する本屋やフードサービスなどの一般企業でも就労が可能です。F-1の大学院生は、学校のカリキュラムに関連する仕事や、教育プログラムの一部であるリサーチプロジェクトに関係する仕事であれば、学外であっても就労できます。多くの学校は、学生に就労を開始する前に留学生事務局で就労許可を得るよう求めています。

Q:「カリキュラー・プラクティカル・トレーニング」(CPT)と「オプショナル・プラクティカル・トレーニング」(OPT)とは何ですか?

A:CPTとOPTは、最低1年間クラスに参加した学生が利用できます。CPT参加が必要とされているプログラムに登録した大学院生は、この規定の例外とされています。
CPTは学業修了前にカリキュラムの一環として働くことが、学校のプログラムで必要とされている学生が利用できます。ジョブオファーと学校や留学生事務局が認める特別プログラムであることが必要です。同一プログラムにおいて1年間以上フルタイムのCPTで就労すると、OPTを利用できなくなります。
OPTは累積で12カ月間、専攻に関連した分野において与えられます。上位の学位を取得するごとに、新たに12カ月間のプラクティカル・トレーニングが利用でき、ジョブオファーは必要ありません。
学業を終える前にOPTのすべて、または一部を利用することができ、週20時間までのパートタイムでの就労は、累積期間から差し引かれます。就学中にOPTのすべて、または一部を利用する場合は、学期中は週20時間、学業休暇期間中はフルタイムで働けます。
学業修了後に発行されたOPTはフルタイムのみで、卒業日から14カ月以内で完了しなければなりません。申請料とパスポートサイズの写真2枚、Form I-20とForm I-94のコピーをForm I-765に添えて、ワークカードを申請します。プラクティカル・トレーニングは、学業修了日前にUSCIS(移民局)に提出しなければなりません。

OPT期間中の出国と再入国について

学業修了以前にOPTを利用したF-1ビザの学生も、他のF-1ビザの学生と同じ手続きを取ります。OPTは、アメリカへの再入国には影響しません。
学業終了後、OPT中の学生がアメリカ国外へ出国する場合、OPT申請が未決で求職中ならば、再入国が認められます。
OPT承認後で、職が見つかる前に出国してしまった場合、OPTは終了し、書面でのジョブオファーがない限り、再入国はできません。
入国には、留学生事務局によって6カ月以内に裏書きされたFormⅠ-20と有効なF-1ビザ、ワークカードを提示し、米国に戻って就労を再開する意思があることを証明しなければなりません。
 
F-1の学生の出入国に関する情報は、ウェブサイト:www.ice.gov/sevis/travel/faq_f.htmを参照してください。
 
(2007年9月1日号掲載)

アメリカ留学時の学生ビザ(Fビザ)の申請・取得方法と注意事項

アメリカ学生・留学ビザ(Fビザ)とは

アメリカでの留学を目的に、フルタイムの外国人留学生に与えられる学生ビザ。

  • 有効期間:4年制大学で通常5年(ただし、留学先学校のプログラムによる)
  • 更新の可否:一度入国してD/S(Duration of Status)というスタンプをもらえば、「I-20」が有効な限りアメリカ国内での更新は不要。一度出国してビザスタンプが失効している場合、再度アメリカ大使館で申請する必要あり。
  • 取得にかかる時間:アメリカ大使館での面接の予約からビザ取得までで最低2週程度
  • 費用概算:360ドル
  • 配偶者の扱い:F-2ビザ
  • 配偶者の労働可否:不可

 

「F-1ビザ」の申請方法

高いレベルの教育を求めて、世界中からアメリカに留学する学生は後を絶ちません。その際に必要となるのが学生・留学ビザなどと呼ばれる「F-1ビザ」。「F-1ビザ」の取得には、1セメスターで12単位以上履修するフルタイムの学生であることが条件で、アメリカの学生・留学ビザの申請は次のように進みます。
 
①留学を希望する学校(語学学校、高校、大学、大学院など)が、アメリカ移民局からの承認校(学生・留学ビザのスポンサーをできる学校)かどうかを確認。
②入学に必要な学力、英語力、学歴などの証明や各種必要書類、願書を学校に提出。合格すれば、合格通知と入学許可証(「I-20」)が発行される。
アメリカ大使館で面接を行い、学生ビザを申請。この時、留学中の滞在費や学費を賄う財力を証明するために、銀行の残高証明なども提出。また、留学後・学校卒業後は帰国する意思の表示を求められることがある。
 
アメリカの学生・留学(F-1)ビザは、基本的に学校から「I-20」が下りれば取得できます。特に弁護士を雇わなくても、学生個人あるいは留学斡旋会社の仲介で取得することが可能です。

学生でも期間限定で働けるOPT

原則、留学期間中の就労(アルバイト等)を禁止している学生(F-1)ビザですが、学業修了後に期間限定で働ける「OPT」(Optional Practical Training)というプログラムがあります。これは専攻分野と関連のある職種で実地研修するためのアメリカの労働許可で、その取得には最低1年間「F-1」で学位(准学士号、学士号、修士号)取得のために就学していることと、仕事は専攻分野に関係するものであることが条件となっています。OPTで働ける期間は1年ですが、学歴を上げるたびに取得できます。つまり、2年制大学卒業(準学士号取得)後にOPTを取得し、その後4年制大学に編入・卒業(学士号取得)してからさらにOPTを取得。そして大学院に進学・卒業(修士号取得)して3回目のOPT取得、ということができるのです。ちなみに、「Science」「Technology」「Engineering」「Math」の理系学部を修了すると、通常1年期限のところ、追加で2年間のOPTがもらえます。

知っておきたいアメリカ学生・留学ビザ(F-1ビザ)申請・取得の注意点

・「F-1」は留学のための学生ビザのため、特に語学学校や大学の学部は年齢が高すぎると取得が困難。明確な決まりはないものの、40歳を超えると学生ビザの取得は難しくなる可能性があります。
・単位だけを与えるような運営の実態がない学校や不法就労は摘発対象。摘発されれば、留学生は強制帰国となります。
・「F-1」保持者は、アメリカ国外に出る際には出国許可の取得を忘れずに。
・留学中に他校に編入する場合、編入先から新しい入学許可証「I-20」の取得が必要です。
・「F-1」ビザ滞在中は、学歴を上げていくのが好ましいです。語学学校の通学歴が長いのは好ましくありません。
・授業に出席していながら成績が悪いのは問題ありませんが、出席日数が少ない上に成績が悪いと問題視され、「I-20」の取り消し対象になることがあります。
・アメリカの各学校には、学生ビザの関連業務を行う「DSO」(Designated School Official)が勤務しており、「I-20」の取得から卒業後のOPTまで、DSOを通じて手続きを進めます。
・学校によっては在学中の学生の健康保険保持を義務化しています。
・「L」や「H-1B」などの就労ビザと違い、アメリカに永住する意思がない(=修学後、留学終了後は速やかに日本に帰国する意思がある)ことが取得条件です。
 
(取材協力・監修:関谷直樹弁護士/ライトハウス・ロサンゼルス版2017年9月16日号掲載)


 

※以下、過去にライトハウス・ロサンゼルス版のコラム「移民法Q&A」に掲載された学生・留学ビザ関連記事をご紹介します。

学生ビザ保持者の再入国とOPTに関する注意事項

KEVIN LEVINE 弁護士

Q:アメリカの留学先の学校からI-20が下り、すでにそれを受け取っています。いつ学生(F-1)ビザを発行してもらえますか? またビザがもらえたら、すぐにアメリカに渡りたいのですが、どれくらい待つ必要がありますか?

A:学生・留学(F-1)ビザはI-20発効日よりさかのぼって120日前から発行することができます。ただし、F-1ビザでアメリカに入国できるのは、留学先の学校が始まる30日前からです。

Q:渡米後、すぐに学校に届け出をしなければなりませんか?

A:アメリカに入国してから30日以内に、学校のインターナショナル・スチューデントオフィスに、住所と電話番号を知らせる必要があります。またその後、住所や電話番号を変えた場合も10日以内に届け出をしなければなりません。

Q:留学中、休みを利用して、しばらく日本に帰ろうと思います。どれくらいの期間帰ることができますか?

A:休暇が5ヶ月以上になる場合、たとえ現在持っている学生(F-1)ビザの有効期限が切れていなくても、アメリカに戻る前に新しい学生ビザを取得する必要があります。
 
また、アメリカにいる間に、留学生としてのステータスにおいて違法な行為をした場合、再入国の際にはそのビザは無効になってしまいます。
F-1ビザに関する最新情報は、米国国務省のウェブサイトで知ることができます。

Q:移民局からまだオプショナル・プラクティカルトレーニング(OPT)の許可が下りるのを待っている状態です。その間に日本に帰り、アメリカに再入国することはできますか?

A:はい。就職先を探しに行くという理由で一時帰国し、アメリカに再入国することができます。

Q:移民局からOPTが認められた場合、いったん日本に帰り、再びアメリカに入国することはできますか?

A:以前は、大学卒業者であれば雇用主が決まっていなくてもOPTに準じた有効な雇用認可書(EAD)があれば、ほぼ問題なくアメリカ国外に出られ再入国もできました。しかし、移民・関税執行局(ICE)がアメリカ入国の管轄になり、この規則は変更されました。
 
ICEでは、学生が就職先を確保する前にアメリカから出国した場合、OPTを終了したとみなし再入国できないとしています。就職先が決まった後にアメリカを出国する場合は、学生(F-1)ビザのステータスでアメリカに再入国できるとしています。ジョブオファーがあった雇用主のもとで働くためにアメリカに戻ることになっていれば、出国前に実際に働き始める必要はありません。
 
したがって、OPT期間中の学生がアメリカを出国する場合、雇用主があることを証明できる書類のコピーを携帯することが重要です。また最近の給与明細のコピー(もしあれば)や、アメリカでの雇用主がその個人の雇用を承認している手紙などのコピーを携帯するのも賢明です。

Q:OPTは学校を卒業するたびにもらえますか?

A:より高いレベルの教育機関に入る際は、そのたびにOPT期間が1年間もらえます。つまり、1度就職した後に学校に戻って学士号(BA)を取る場合、1年間のOPTの資格が得られます。
 
OPTに関するその他の注意事項としては、まず移民局からOPTカードを受け取るまで働き始めることができません。次に、OPTが下りてもあなたはまだ学生(F-1)ビザステータスです。したがって住所変更した場合は必ず、学校への届出が必要です。またアメリカ国外に出て旅行する場合は、必ず裏書されたI-20と有効な学生(F-1)ビザの他、雇用を証明する書類のコピーを携帯するようにしてください。
 
なお、F-1ビザやOPTに関する情報はICEのウェブサイトで知ることができます。
 
(2008年2月1日号掲載)

学生ビザ保持者が留学期間中に日本へ長期帰国する際の注意事項

ケビン・レビン 弁護士

Q:F-1ビザ保持者です。留学期間中、日本で1学期間休暇を取る予定ですが、何か問題はありますか?

A:留学生は、日本に帰って就職活動に励んだり故郷の家で過ごすために、1学期間、あるいはそれ以上の休暇を取ることがあるかと思います。しかし、休みを5ヶ月以上取る場合、保持している学生ビザの有効期限がまだ残っていても、アメリカに戻る際に新しい学生用ビザを取得しなければなりません。
 
またアメリカでF-1ビザを使用している間に学生ステータスとして違法な行為を行った場合、それ以降に再入国する際、ビザの有効期限が過ぎていなくてもその学生ビザは無効となってしまいます。
 
(2006年2月16日号掲載)

学生ビザ保持者のアメリカでの納税

ケビン・レビン 弁護士

Q:学生ビザ(FまたはMビザ)や訓練生ビザ(Jビザ)のもとでもらった収入について、アメリカの社会保障税やメディケア税を払う必要がありますか?

A:学生ビザ(F-1やM-1)、J-1ビザ保持者として、アメリカに一時的に滞在している非居住の外国人(Nonresident Alien)は、そのビザのもとで認められた仕事をすることができますが、これにより受け取った報酬について、社会保障税とメディケア税を支払う義務はありません。社会保障税とメディケア税は源泉徴収されたり、収入をもとに納税する義務はありません。
 
この免税は、F-1ビザ、M-1ビザおよびJ-1ビザ保持者が、カリキュラ・プラクティカルトレーニング(CPT)およびオプショナル・プラクティカルトレーニングのもと、移民局に認められているキャンパス内での雇用により得る収入についても同様のことが言えます。
 
詳細については、IRS(歳入庁)のウェブサイトにある、「社会保障税とメディケア税に対する外国人の義務(Alien Liability for Social Security and Medicare Taxes)」をご覧になるとよいでしょう。
 
この規則が自分にも該当するかもしれないと思われる場合、この税制上の優遇措置を雇用主か今後雇用される予定の会社に知らせてください。これにより、雇用者と従業員の双方にとって、一定額の金銭を節約することができます。
 
もし既に、収入から源泉徴収されている、もしくは雇用主かご自身がこの金額を納めているなら、IRS はこの金額を払い戻すか、税額控除を与えるでしょう。

OPT(オプショナル・プラクティカル・トレーニング)とは

OPT(Optional Practical Training)とは、フルタイムの学生として1年以上学校に通い続けた後にフルタイムで就労することができる制度で、在学中から利用できるPre-Completionと、卒業後に利用するPost-Completionの2種類があります。就労には学校および移民局の許可が必要で、また就労可能な職種も専攻領域と関連するものに限られます。

OPTカードが届きません。就労期間は短くなってしまうの?

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、2020年の夏にアメリカの大学を卒業し、2020年10月にOPTの申請を行ったのですが、いまだにOPTのカードが届かず、勤務先は決まっているのですがまだ就労を開始できない状態です。また、仮にOPTのカードがすぐに来たとしても、1年間の有効期限があるため、半年程度しか就労することができなくなります。またこれ以上遅れれば、就労期間はさらに短くなり、今までOPTを待って、コロナパンデミックの中アメリカに滞在していた意味がほとんどなくなってしまいます。何か良い解決策はないですか?

A:プラクティカルトレーニング(PT)には、厳密には3つの種類があります。
①「Curricular Practical Training」
②「Optional Practical Training(Pre-Completion)」
③「Optional Practical Training(Post-Completion)」です。

このうち最もよく使われているのは、「Optional Practical Training(Post-Completion)」で、これは、フルタイムの学生として1年以上学校に通い続けたことを前提として、卒業、またはプログラム終了後、フルタイムで1年間就労することができる制度です。職種の選択にあたっては、学生の専攻する学術領域に限られ、学校(Designated School Official)および移民局の許可を必要とします。「Curricular Practical Training」と「Optional Practical Training(Pre-Completion)」は学校卒業前、もしくはプログラム終了前に用いられるものです。従って、あなたのOPTは厳密には「Optional Practical Training(Post-Completion)」に該当します。今回のコラムでは、この「Optional Practical Training (Post-Completion)」を以下、単に「OPT」と呼び解説します。

コロナの特例として、1年間の就労を認めることに

あなたの言う通り、OPTは学校を卒業、あるいはプログラムが終了した時点から14カ月目以降は、原則的には就労できないことになっています。また、OPTは卒業した時点から就労開始日は遅くとも60日目にしなければならず、この60日目の時点で就労を開始した場合に、ちょうど1年で前述の規定の14カ月になります。この時点で就労を終わらなければいけない計算になるのです。従って、移民局のOPTの審査・発行の処理に時間がかかればかかるほど、OPTで就労できる期間が1年間よりも短くなってしまう可能性が十分にあります。

最近では、コロナパンデミックのため、あなたのようにOPTカードが遅れて発行されている、あるいはいまだに発行されていないというケースが多発していました。そこで移民局は、コロナパンデミックによりこのOPTの処理に大幅な遅滞が生じていることを理由として、2021年2月26日、以下の特別処置を発表しました。2020年10月1日〜21年5月1日に受付を行った申請者に限り、規定の14カ月間の期間を超えた場合でも、OPTでの就労期間が1年間になるように移民局が対応するというものです。

本発表のあった2021年2月26日以降、移民局は、申請書上の就労開始時期に関係なく、認可した日から1年間有効のOPTを発行し、また既に規定によって1年未満のOPTを受け取った申請者には、その期間を訂正(延長)の申請を行う機会が与えられることになりました(ただし、最初の申請書において、1年間の就労期間を申請していることが条件になります。1年未満の就労を申請している場合は、最初にリクエストした期間までの延長が認められます)。この期間の訂正(延長)の申請を行う際には、新たに「I-20」を取得する必要はなく、現在持っている「I-20」の訂正(延長)の申請ができます。この場合、移民局から期間が訂正(延長)されたOPTのカードが移民局から送られてくることになります。

再申請やSTEM OPTにも特別措置が適用されることに

さらに、いったん申請を行ったものの申請が却下になり、再申請を行うにも申請期間(プログラム終了から60日間)が過ぎてしまった、という場合においても、移民局が却下の判断をするにもコロナパンデミックのため、通常よりも長い期間をかけて却下している事実に鑑み、60日の期間を過ぎている場合でも、2021年5月30日までは再申請を受け付けるとしました。ただし、最初の申請においてDesignated School Official(学校の中で移民局から「I-20」にサインをする権限が与えられている担当者)が推薦書にサインしてから30日以内に申請を行っていることが条件とされています。

従ってあなたの場合、OPTの就労期間が1年間のものが送られてくる可能性が高く、また、仮に1年未満であっても、期間訂正(延長)の申請ができるということです。また、この特別処置はSTEM OPT(定められた専攻で大学等を卒業している場合、就労期間が1年以降もできる制度)の場合にも適用されるとしています。

(2021年4月1日号掲載)

プラクティカル・トレーニングが1年未満しかもらえない理由は?

瀧 恵之 弁護士

Q:アメリカの大学を昨年卒業し、プラクティカル・トレーニング(OPT)を申請しましたが、期間が1年間ではなく6カ月しかもらえませんでした。理由は、在学中に1年間、パートタイムでプラクティカル・トレーニングを行ったためと言われました。しかし、他大学に通っていた友人は、私と同じような状況で1年間もらっています。どうしてでしょうか?何とか私も1年間もらうことはできませんか?

A:この理由としては、あなたが在学中に「Optional Practical Training」(OPT)を使っていたのに対して、あなたの友人は、「Curricular Practical Training」(CPT)を使っていたからだと考えられます。
 
プラクティカル・トレーニングは、厳密には3つの種類があります。
 
まず、大きく(A)「Curricular Practical Training」(CPT)と(B)「Optional Practical Training」(OPT)の2つに分かれ、このうち(B)は、さらに(B-1)「Pre-Completion」と(B-2)「Post-Completion」の2つに分かれます。そのそれぞれに関して説明します。
 
(A)Curricular Practical Training(CPT)
フルタイムの学生として1年以上学校に通い続けた後、学校(Designated School Official)の許可を得ることで、学期中は週20時間まで、休暇や休日の間は、その後の学期の授業に参加することを前提として、フルタイムで就労できます。職種は、専攻する学術領域に限られます。このCurricular Practical Trainingは、学校が許可したサインがあれば良く移民局の許可を必要としません。
 
(B-1)Optional Practical Training(OPT):Pre-Completion
フルタイムの学生として1年以上学校に通い続けると、学期中は週20時間まで、休暇や休日の間はその後の学期の授業に参加することを前提として、フルタイムで就労できます。職種は、学生の専攻する学術領域に限られます。(A)のCurricular Practical Trainingとの違いは、学校と移民局、両方の許可が必要なことです。また、就労期間がフルタイムで1年間(週20時間就労なら2年に換算)までに限られています。さらに、後述する(B-2)Optional Practical Training のPost-Completion を申請した場合、1年間から(B-1)での就労期間が差し引かれます。
 
(B-2)Optional Practical Training(OPT):Post-Completion
(B-1)とほとんど同じですが、フルタイムの学生として1年以上学校に通い続けると、フルタイムで就労することができます。職種も同様に、専攻領域に限られ、学校と移民局の許可が必要です。就労期間も1年までに限られています。

在学中はCurricular P. T.を使用し卒業後の期間を最大利用

前述したように、(B-1)Pre-Completion を申請した場合、1年間から、(B-1)就労期間が差し引かれます。すなわち、(B-1)と(B-2)は、合わせて1年間使用できるということです。ただし、(A)で就労した期間は、差し引かれることはありません。
 
おそらく、あなたが在学中に(B-1)Optional Practical Training(Pre-Completion) を使ったのに対し、あなたの友人は、(A)Curricular Practical Training を使っていたと考えられます。
 
卒業後にPractical Training を使う予定があるのならば、在学中は、(B-1)Optional Practical Training(Pre-Completion) を使うよりも、(A)Curricular Practical Training を使った方が、トレーニング期間を最大限に利用できます。
 
さらに先述したように、(B)のOptional Practical Training が、学校の許可だけでなく移民局の許可も必要とするのに対し、(A)Curricular Practical Training は、学校の許可のみで良いので取得も短期で容易にできます。
 
しかし、注意しなければならないことは、CPT(Curricular Practical Training)であってもフルタイムで1年間就労した場合は、OPT(Optional Practical Training)を申請できなくなります。従って、CPTでフルタイム就労後、OPTを申請する予定があれば、1年間より1日でも短い期間の就労に留めておくことをおすすめします。たとえ1 日であっても、1年間に満たなければ、卒業後、OPTを1年間フルに使うことができます。
 
また、4年制大学卒業後、仮にOPTを1年間使ったとしても、その後、修士課程などさらに上のレベルのプログラムに進んで修了した場合には、再度OPTを1年間使うことができます。
 
(2012年3月1日号掲載)

未雇用期間が90日間あるとOPTは無効になる?

吉原 今日子 弁護士

Q:私はアメリカの大学を卒業し、OPT(オプショナル・プラクティカル・トレーニング)の申請をしています。90 日間雇用されていないと、OPTが無効になると聞きましたが、本当でしょうか。また、OPTが始まる前か後に、日本に帰省したいと思っています。可能でしょうか?

A:卒業後のOPT は、ご存知のように大学、短大等、SEVP(Student and Exchange Visitor Program)によって認可された学校に1年以上フルタイムで通い、卒業またはコースを修了した学生に与えられるトレーニング期間です。
 
OPTの期間中、学生は自分の専攻に関連した仕事に就かなければなりません。OPTは、卒業の60日前から卒業後60日以内に移民局へ申請を行わなければなりません。認可されると1年間のトレーニングが認められ、終了後は60日間の帰国準備期間が与えられます。
 
申請は、I-765 というフォーム、DSO(Designated School Official)からのOPT認可が記された新しいI-20、学校からの手紙を移民局に提出します。そして、申請が認可されるとEAD(Employment Authorization Document)という労働許可証が発行され、1年間の労働が許可されます。
 
2008年4月8日から発効した法令によると、未雇用の日数がトレーニング開始から合計して90日になると、その時点でOPT は終了となります(”STEM” Degree と呼ばれる「Designated Degree Program List」に載っている、Science、Technology、Engineering、Mathematics 分野で大学、または大学院を卒業した学生は120日)。
 
これは、アメリカ国内にいてもいなくても同じように適用されます。ただし、転職する場合には、そのたびに10日間の猶予が与えられ、その期間は90日に数えられません。
 
例えば、A社で仕事が決まるまでに30日、その後、B社に転職するまでに10日間かかったとします。また、その後さらにC社へ転職するのに10日間かかったとします。それからC社を解雇された場合、その時点で猶予日数の残りは、60日間となります。
 
「雇用されている」という状態には、大きく分けて、「無賃金での雇用」と「賃金をもらっての雇用」の2通りあります。 無賃金での雇用とは、ボランティアやインターンで賃金をもらえないというような場合です。無賃金であっても、賃金をもらっての雇用であっても、少なくとも週20時間以上働いていなくてはなりません。なお、雇用主から週20時間以上働いていたという証明がもらえるようにしておく必要があります。
 
もし、未雇用期間が90日に達してしまうと、60日間以内にアメリカを出国するか、SEVPに認可されているほかの学校に入学するか、ほかの滞在資格を確保しなければ、不法滞在となってしまいます。
 
なお、90日以上雇用されていない期間があるかないかを判断するのは、DSOではありません。DSOは、生徒もしくは生徒の雇用先からの雇用についての情報をSEVISに登録するだけです。その登録に応じてDHS(Department of Homeland Security)は、OPT期間中90日間、未雇用でいたかどうかを判断します。ですから、あと何日間、未雇用の猶予日数が残っているか管理するのは、自己責任となります。新しいシステムを理解し、DSOへの報告を怠らないようにすることをおすすめします。

OPT認可後は就職先が決まっていないと再入国不可

有効なF-1ビザがある場合、OPTの申請中にアメリカ国外に出て、再入国することは可能です。これは、就職先を探しにアメリカに戻って来るために許可されています。ですが、いったんOPTが認可されてしまうと、就職先が決まっていることが必要になります。以前は雇用主が決まっていなくても、OPTが認可されていれば、アメリカ国外に出ても、問題なく再入国することができました。
 
しかし、ICE(U.S. Immigration and Custom Enforcement)がアメリカ入国の管轄になってから、規則が変更されました。ICEでは、OPTでの就職先を確保する前にアメリカを出国した場合、OPTを終了したとみなし、再入国できないとしています。
 
就職先が決まった後にアメリカを出国する場合は、F-1ビザでの入国を許可しています。出入国の際、実際に働いている必要はありませんが、就職先が決まっている必要があります。OPT認可後にアメリカを出国する場合は、再入国時に雇用が決まっていることを証明するため、Job Offerなどを用意することをおすすめします。実際に働き始めている場合、給与明細を持参することをおすすめします。
 
(2010年1月16日号掲載)

OPT(オプショナル・プラクティカルトレーニング)に新規則が適用

吉原 今日子 弁護士

Q:私は大学生で、来年卒業予定なのですが、卒業後のOPT(オプショナル・プラクティカル・トレーニング)期間中に90日間雇用されていないと、OPTが無効になると聞きましたが、本当ですか?どういうことなのかよくわからないので、詳しく教えてください。

A:卒業後のOPTは、ご存知のように大学、短大等、SEVP(Student and Exchange Visitor Program)によって認可された学校に1年以上フルタイムで通い、卒業またはコースを修了した学生に与えられるトレーニング期間です。OPTの期間中、学生は自分の専攻に関連した仕事に就かなければなりません。
 
従来までは、卒業の60日前から卒業までに申請することが必要で、卒業後60日以内にトレーニングを開始し、その日から1年間のトレーニングが認められ、終了後は60日間の帰国準備期間が与えられていました。
 
しかし、今回の改正により、卒業後も60日以内であればOPT申請が可能になりました。なお、トレーニング開始日から雇われていない日数が合計して90日が経つと、そこでOPTは終了してしまいます。これは、アメリカ国内にいてもいなくても同じように適用されます。
 
この改正は2008年4月8日に執行されましたが、それ以前にOPTの申請をした人、4月8日の時点でOPTが始まっている人にも適用されます。この場合、4月8日以降に雇用されていない日数が90日に達した時点でOPTは終了します。4月8日以前に雇用されていない日数はカウントされません。そのほかで、この90日に含まれないのは転職をする時です。A社からB社に転職する場合、10日間の猶予が与えられ、その期間は90日に入りません。
 
もし90日間、雇用されていないと、その間にアメリカを出国するか、SEVPに認可されているほかの学校に入学するか、他の滞在資格を確保しなければ、不法滞在となってしまいます。

雇用の証明ができることが必要

「雇用されている」という状態には、大きく分けて、「無賃金での雇用」「賃金を貰っての雇用」の2通りあります。
 
無賃金での雇用、例えばボランティアでインターン賃金をもらえないというような場合、少なくとも週20時間以上働いていなくてはいけません。この場合、雇用主から週20時間以上働いていたという証明ができるようにしておかなければなりません。賃金ありの雇用の場合も同様に、週20時間以上働いていなくてはなりません。この場合も、雇用主から週20時間以上働いていたという証明ができるようにしておかなければなりません。複数の会社から雇われる場合は、仕事が専攻に関連している限り可能です。短期間の仕事の場合は、短期の仕事の間に雇用されていない期間が90日を超えない限り雇用と認められます。独立業務請負人、いわゆるインディペンデント・コントラクターとして働いている場合も雇用として認められています。エージェントを通しての仕事の場合には、平均で週20時間以上仕事をしていという証明ができるようにしておかなければなりません。
 
さらに、自分の会社をOPT期間中に立ち上げることもできます。ただし、この場合、フルタイムで働かなくてはなりません。また、自分の会社での仕事は学校の専攻に関連していなければなりません。ビジネスライセンスなどの取得も証明しなくてはいけません。「雇用されている」という証明が、アメリカでのステータスを確保する上でとても重要です。雇用先が決まり次第、雇用主の名前、仕事の開始日、仕事場の住所をDSO(Designated School Official:インターナショナルオフィスの担当者)に10日以内に報告しなければなりません。
 
90日以上雇用されていない期間があるかないかを判断するのはDSOではありません。DSOは、生徒もしくは生徒の雇用先からの雇用についての情報をSEVISに登録するだけです。その登録に応じてDHS(Department of Homeland Security)は、OPT期間中90日間、雇用なしでいたかどうかを判断します。
 
ですから、自分に何日間OPTが残っているか管理するのは、本人の責任です。新しいシステムを理解し、DSOへの報告を怠らないようにしてください。
 
(2008年11月16日号掲載)

OPT終了後も継続して働く方法

OPT終了後、日本から働く予定です。またアメリカで仕事ができる?

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、アメリカのUniversityをビジネス専攻で卒業した後、OPTを取得し、ある日系企業で働いています。パンデミックの影響もあり、ほぼ自宅でリモートで仕事をしており、会社へは週に一度程度出勤するだけです。あと、3カ月ほどでOPTが切れてしまうのですが、会社の上司からは評価されているようで、OPTが終了し、日本に戻った後も、リモートで仕事を続け、週に一度のミーティングにはオンラインで参加するという条件で誘いを受けています。会社も仕事も気に入っているのですが、そもそもアメリカで生活することを夢見て留学したので、アメリカでの生活を望んでおり、パンデミックが終息した後は、リモートではなく人との直接の関わりを持てる環境で仕事がしたいと思っています。何か良い方法はないでしょうか?

A:あなたの場合、日本に戻った後も仕事を続けることができる環境にあるので、今から会社の許可を得てグリーンカードの申請を行い、グリーンカードの取得後にアメリカに戻ってくる、という方法が考えられます。以下、ステップごとに説明します。

A:あなたの場合、日本に戻った後も仕事を続けることができる環境にあるので、今から会社の許可を得てグリーンカードの申請を行い、グリーンカードの取得後にアメリカに戻ってくる、という方法が考えられます。以下、ステップごとに説明します。

雇用ベースのグリーンカード取得の一般的な条件と手順

まず、グリーンカードを申請する条件としては、4年制大学を卒業している、あるいは2年の職歴があることです。あなたの場合は、Universityを卒業しているので、この条件を満たしています。次に、雇用を通してグリーンカードを申請する場合は、一般的に第1段階として、労働局(Department of Labor)に、労働局が妥当と見なす給与額の設定のリクエストを行います。これは、当該会社の業種、申請者の役職、職務内容、その職務を行うのに必要な条件、および会社の地理的な位置などを考慮して算出されます。これを「Prevailing Wage」と呼びます。次にこの「Prevailing Wage」をもとにしてアメリカ居住者(アメリカ市民と永住権保持者がその対象)に対して募集広告を行い、アメリカ居住者の中に該当者がいないかの市場調査を行います。

該当者がいない場合は、第2段階として、労働局に「Labor Certification」の申請を行います。「Labor Certification」は、しばしば「労働許可」と勘違いされがちですが、これにより就労が可能になるということではありません。アメリカ居住者に対する市場調査を行ったにもかかわらず、アメリカ国内では該当する労働力が得られないことにより、労働局が、当該会社が指定する候補者に対して移民局に永住権の申請を行うことを許可する許可証を意味します。

手続き開始後1年半〜2年でグリーンカード(永住権)が取得できる見込み

この「Labor Certification」が発行された後は、第3段階として「I-140」の申請を行います。これは主に、第1段階で労働局が出した「Prevailing Wage」の金額を払えるだけの余剰資金が、会社にあるかどうかがその審査対象とされます。この審査は、会社の納税申告対象利益(前年度の繰り越し赤字を含みません)、あるいは純流動資産(流動資産から流動負債を引いた額)のどちらかが、「Prevailing Wage」を超えていれば良いことになります。

最後に、第4段階として申請者個人の審査が行われます。ここでは、アメリカにESTA以外の何らかのビザにてアメリカに入国・滞在している場合は、アメリカ国内にて「I-485」と呼ばれる申請書を提出することにより申請を行うことになります。一方、あなたのように、この時点でアメリカ国外に滞在している場合は、「Consular Process」と呼ばれる手続き方法を用いて申請を行います。「I-140」の審査が認可された後、「DS-260」という申請書をDepartment of State に提出し、手続きの最後には、日本のアメリカ大使館において面接を受けます。面接をパスした後は、大使館にパスポート預け、その後1週間程度でビザの貼られたパスポートが指定した日本の住所に返送されます。

このビザは、「Immigrant Visa」(通常のビザが非移民ビザと呼ばれるのに対し、このビザは移民ビザ)と呼ばれ、有効期間は半年間です。このビザを用いてアメリカに入国する際、最初にアメリカに入国する空港で写真撮影および指紋採取が行われ、パスポートにスタンプが押されます。このスタンプは1年間有効で、永住権と同じ効力があり、これにより就労および出入国も可能です。グリーンカードは、入国の際に指定した住所に、入国後およそ1〜2カ月で郵送されます。あなたの場合は、OPT終了後に日本に戻ったとしても、前述の手続き中アメリカに滞在している必要はなく、さらに日本以外の国での滞在も可能です。また日本帰国後ではなくそれ以前であっても、手続き開始から1年半~2年半程度(変動する可能性あり)で、永住権を取得し、アメリカに戻ることができます。

(2022年1月1日号掲載)

OPT中、H-1Bの抽選に漏れました。継続して働く方法はありますか

瀧 恵之 弁護士

Q:アメリカの大学を Science Major で卒業し、現在OPTで日系の会社で働いています。この4月にH-1Bビザを申請しましたが、抽選に漏れてしまいました。私のプラクティカルトレーニングは11月いっぱいで切れてしまうので、来年のH-1Bビザの申請まで継続して今の雇用主の下で働くことができません。何か良い対策はないのでしょうか。

A:今年のH-1Bビザの申請状況としては、景気の回復に伴い、定員数を上回る申請があったため、抽選となりました。特にIT関連の会社からの申請が目立ったようです。そのため、抽選に漏れてしまった方も珍しくありません。
 
来年のH-1Bビザの申請を行うことはできますが、受付は来年の4月1日からとなります。また、仮にそのH-1Bビザが認可されたとしても、それが有効となるのは来年の10月1日からということになります。
 
もちろん、現在のプラクティカルトレーニング(以下、OPT)の有効期限が切れた後、来年の10月まで日本で待つということは理論的には可能ですが、現実的にはそこまで寛大な雇用主は数少ないと言えるでしょう。そこで、来年の10月までどのようにして今の会社で継続して働くことができるかが問題になります。

技術系の学位を持つ場合は「STEM Extension」を取得

あなたの場合、技術系の専攻でアメリカの大学を卒業しているため、「STEM Extension」の可能性が考えられます。これは、技術系の専攻課目を卒業した人に適用されるものですが、一定の決められた技術系の専攻にて、学士号、修士号、あるいは博士号を取得した後1年のOPTを取得し、さらに17カ月間(従って、合計29カ月)の延長が認められるます。これが利用できる技術系の専攻としては、以下のものが挙げられます。
 
① Computer Science
② Engineering
③ Engineering Technologies
④ Biological and Medical sciences
⑤ Mathematics and Statistics
⑥ Military Technologies
⑦ Physical Sciences
⑧ Science Technologies
⑨ Health Professions and Related Clinical Sciences など。
 
このリストは随時追加が行なわれており、現在のところ、細かく分類すると422種の専攻が「STEM Extension」の対象となります。
 
専攻が厳密にこのSTEM Extension の対象となるかどうかは、www.ice.gov/doclib/sevis/pdf/stem-list.pdf にて確認することができるので、ウェブサイトを一度閲覧すると良いでしょう。
 
この延長申請の条件としては、該当の専攻にてアメリカの大学を卒業、OPTを取得した後、延長申請時に就業先が決まっていることが要求されるので、その点も注意が必要です。

延長申請のためには雇用主も手続きが必要

さらに、この延長申請には、雇用主が「E-Verify Program」に登録している必要があります。もし、雇用主がまだこの登録を行っていない場合は、ウェブサイト(www.uscis.gov/E-Verify)上で行うことができるので、「E-Verify Program」の登録が完了しているか、雇用主に問い合わせてみてください。
 
上記を踏まえ、この「STEM Extension」にて延長申請を行えば、現在の雇用主の下で継続して就労し続け、なおかつ来年のH-1Bビザの申請を行うことができることになります。
 
さらに、この「STEM Extension」は17カ月間の延長になりますので、OPTは再来年の4月いっぱいまで延長されることになります。再来年の4月1日の時点でOPTが有効で、その状態でH-1Bビザを申請した場合は、抽選の結果が出るまでOPTは延長されます。

OPT中のH-1Bビザ申請で滞在期間が延長可能

抽選から漏れた場合は、そこでOPTは終わり就労できなくなりますが、抽選枠に入った場合、その審査の結果が出るまで OPTは延長されます。審査により却下された場合は、その時点でOPTは終わりますが、認可された場合にはその年の10月1日までOPTが延長されます。この延長は、特別な申請手続きを行う必要はなく、自動的に延長されるものとされています。
 
従って、仮に来年のH-1Bビザの申請において再度抽選に漏れたとしても、さらに再来年のH-1Bビザの申請を、現在の雇用主の下で継続して就労しながら申請を行うことができることになります。言い換えると、これからまだ2度、申請のチャンスがあることになります。
 
(2013年8月1日号掲載)

OPT取得後に 「J-1」ビザへ切り替える方法

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、アメリカの短大でアソシエイトの学位を取得し、現在Optional Practical Training(OPT)で働いています。この後、「H-1」ビザは取得できそうにないので、「J-1」ビザを取得しようと考えています。しかし、知人から OPT取得後の「J-1」ビザ取得は難しいと聞きました。将来的には、永住権を取得し、アメリカに残りたいと希望しています。「J-1」ビザへの切り替えは可能でしょうか?

A:J-1(Exchange Visitors)」ビザは、学生、研究者、研究生、教師、大学教授などの交換プログラムのために用いられるビザです。学生の場合は、プログラム終了のために最高24 カ月が与えられ、その期間中、もしくは後に開始する職務研修の OPTは、「F-1(Non-immigrant Student)」ビザが最高 12 カ月であるのに対して、「J-1」ビザは 18 カ月間(博士号取得の場合は 36 カ月間)が認められます。期間終了後、「F-1」ビザの学生には60日間のGrace Period(米国を発つまでに許されている滞在期間)が与えられるのに対して、「J-1」ビザには30日間しか与えられていません。
 
また、短期研究者の滞在可能期間は6カ月までで、研修生は18カ月まで(飛行研修は24カ月)、教師は3年まで、大学教授と研究者は3年(米国政府援助によるプログラムでは6年)まで、大学教授と研究者は、さらに6カ月の延長が可能です。上記の期間終了後のGrace Periodは、いずれの場合も30日間です。
 
「J-1」ビザを取得するには、United Information Agency(USIA)が認可した政府機関、団体から発行されたフォーム「DS-2019」、およびその他の必要書類を添え、申請者の居住する国の米国大使館か領事館に申請します。
 
また、「J-1」ビザにおける規定の滞在期間を過ぎた後、専門職用の「H」ビザや、駐在員用の「L」ビザなど他のビザを申請するには、申請者が国籍を持つ国に2年以上滞在する必要があるという条件が付けられていることがあります。それは以下のような場合です。
①プログラム全部、または一部が米国政府から援助を受けている場合
②プログラムが米国政府、または「J-1」ビザの申請者の国籍がある国、または最終居住国の政府関係機関から援助を受けている場合
③「J-1」ビザに申請者の技能が、USIAが定めるExchange Visitor Skills Listに記載されている場合
④大学院レベルの医療教育、またはトレーニングを受ける場合
です。
 
上記の2年間滞在義務が存在する場合、それを免除されるのは以下の5つの場合に限られます。①「J-1」ビザ保持者の出身国大使館から、保持者が帰国しないことに異議がないという旨の供述書、「No Objection Statement」が発行されている場合、②免除が得られないと過大な困難が生じる場合(例:医療上の問題)、③「J-1」ビザ保持者が自国に戻ると、人種、宗教、政治的思想などによって迫害を受ける場合、④「J-1」ビザ保持者が継続して米国に滞在することが政府関係機関にとって利益になる場合、⑤州の公衆衛生局、あるいはそれに準ずる機関が要請を出した場合です。
 
あなたの場合は、上記の研修生(18カ月間有効)のカテゴリーに当たりますが、OPTですでにトレーニングを受けており、これ以上のトレーニングは必要性ないとして、「J-1」ビザを却下される可能性があります。従って、トレーニングが1年間以上必要であることを証明(説明)しなければなりませんので、トレーニングの綿密なプランを提出されることお勧めします。
 
「J-1」ビザの扶養家族は、「J-2(Spouses and children of J-1)」ビザを取得できます。「J-2」ビザは、他の扶養家族のためのビザと違い、移民局から許可を得ることで就労することができます。
 
もし「J-1」ビザが取得できたとして、この18カ月の期間終了後、日本に戻るならば、「J-1」ビザ取得は有効な手段であると言えます。しかしながら、将来的にアメリカに残ることを考えているのならば、「J-1」ビザは、現在保持されている「F-1」ビザに比べて柔軟性に欠く種類のビザであると言えます。なぜなら、18カ月の後、他の種類のビザに変更することが困難だからです。

スポンサーの会社があれば、学生でも永住権申請は可能

将来的に永住権の申請を考えているのならば、スポンサーとなる会社があれば、「F-1」からでも申請は可能です。もし、そのようなスポンサーがいない場合は、4年制大学への進学も考えたた方が良いかもしれません。4年生大学を卒業すれば、再度OPTを申請可能ですし、その後、「H-1B(Specialty Occupations)」を申請し、そこから永住権の申請を行うことも考えられます。将来の計画を長期的に見据えた上で、賢明な判断をされることをお勧めします。
 
(2014年12月1日号掲載)

OPT終了前に永住権を申請し労働許可を取得することは可能?

吉原 今日子 弁護士

Q:日本の大学の経営学部を卒業後、7年間経理の仕事をしていました。その後、米国で大学のエクステンションコースを修了し、OPTで7月から会計事務所で働いています。今年のH-1Bビザの枠には申請が間に合いませんでした。OPT期間中に永住権を申請し、期間が終わる前に労働許可証を取得できた人がいるという話を聞きました。私も可能でしょうか?

A:学士号を取得し、その分野を活かした職業に5年以上従事しているか、修士号を取得している場合、「EB-2(第2優先枠)」で永住権の申請ができます。
 
雇用を通した永住権申請の場合、大きく分けて3つのステップがあります。
 
まず第1ステップは、「Labor Certification(労働局の審査/ PERM)」です。ここでは、希望する職務を務められる米国人が米国内にいないことを証明する審査です。第2ステップ「I-140」では、主にスポンサーである会社が、労働局で定められた給料を払うことができるかどうかの審査です。そして最後に、第3ステップ「I-485」として、申請者自身が条件を満たしているかどうかの審査が行われます。
 
第1ステップの労働局への申請では、会社が十分に人材募集活動を行い、米国人労働者に対して雇用の機会を与えたかが重要な審査基準となり、新聞、インターネット等で募集広告を行う必要があります。今のところ、人材募集期間に最低2カ月(広告掲載、レジュメを待つ期間)かかります。その後、オファーされている職務、募集のために行った広告活動、雇用予定者の情報等をスポンサー会社が詳しく労働局に報告し、それらの情報を基に労働局が審査をします。年々、労働局での審査は厳しくなる傾向にあります。近年では、Audit(実際の求人広告等の提出)やSupervised Recruitment(労働局の指示による広告、人材募集活動のやり直し)が頻繁に行われています。
 
このような労働局の審査の強化は、米国の雇用率が回復していないことが1つの大きな要因と考えられます。現在、米国人の雇用率が低いため、労働局は、スポンサー会社がどのような人材募集活動を行い、どのような米国人の応募があり、その米国人の雇用が本当に不可能だったのか厳しく審査します。広告、人材募集が不十分である、米国人でもその役職を担えたのに、雇わなかった場合などは、Supervised Recruitmentに入ります。その場合は、労働局が指定する広告媒体で人材募集をし、応募者の履歴書はスポンサー会社ではなく、直接労働局へ送られますので、人材募集活動がすべて、労働局により監視される形になります。
 
これらのケースがかなり増えたので、最近は審査には約4カ月から1年ほどかかっています。

Priority Date を確認しH-1Bビザの申請も視野に

前記のプロセスを完了し、労働局で認可が取れれば、第2ステップの申請を行うことができます。最後の第3ステップの申請と同時に、労働許可、出入国許可の申請ができるので、現在持つビザを保持する必要はなくなります。逆を言えば、I-485の申請をするまでは、有効なビザなしに米国に滞在、就労はできません。
 
第3ステップの申請は、「Priority Date(優先日)」が回ってきて始めて行うことができます。EB-2での申請の場合、今年の6月まではPriority Dateが「Current( 待ち時間なしの状態)」だったため、広告、労働局の審査が終わった時点で、第2、第3ステップの申請に同時に入ることができました。しかし、EB-2のPriority Dateは09年1月となっています(2012年8月現在)。これは、2009年1月以前に労働局の審査に入った人のみが、第3ステップの申請ができるということです。
 
このPriority Dateは毎月変わり、US Department of Stateのホームページ(www.travel.state.gov/visa/bulletin/bulletin_1360.html) で調べることができます。この優先日は月に1度アップデートされており、翌月、優先日がCurrentに戻ることもあり得ます。
 
あなたの場合、現段階では、OPTが終了するまでに第3ステップまで進み、労働許可を取ることは難しいかもしれません。もしCurrentにならない場合は、H-1Bビザを来年の枠で申請することも可能です。H-1Bビザの申請がOPT終了前に移民局に認可されれば、終了後も9月30日まで、滞在と就労許可が自動的に延期されます(Cap-Gap)。
 
今年は、H-1Bビザの枠が6月中に埋まってしまったため、来年の申請は、以前のように抽選になる可能性もあります。EB-2での永住権申請の様子を見ながら、H-1Bビザの申請をする必要があれば、来年早々には申請準備に取り掛かることをおすすめします。
 
(2012年9月16日号掲載)

OPTからH-1Bビザを申請予定今年の申請枠に間に合う?

瀧 恵之 弁護士

Q:現在、OPTにて日系の会社で働いています。3カ月の試用期間も終わり、会社より、H-1Bビザの申請をしても良いと許可をもらったところです。今年の申請枠に今からでもまだ間に合うのでしょうか。

A:H-1Bビザは、専門職ビザと言われるものです。H-1Bの申請を行うには、申請者が、4年制大学を卒業しているか、それに相当する職務経験があること。また、当該職務の内容が、4年制大学を卒業、あるいは、それに相当する職務経験がないとできないほど複雑かつ専門的であること。さらに、4年制大学、あるいはそれに相当する職務経験を活かすことができる職務である必要があります。
 
移民法上の解釈における「専門職」とは、高度で特別な知識の理論的、そして実質的な適用、応用が要求される職種で、例えば、建築、エンジニアリング、数学、物理学、社会学、医療関係、ビジネス関係、会計、法律、技術などの分野です。またその職種に就くには、通常アメリカにおいて学士号、あるいはそれ以上の学歴、またはそれに値する経験が必要とされる職種とされています。
 
具体的な職種としては、会計士、経営コンサルタント、教師、コンピューター・エンジニア、建築家、翻訳家などが上げられます。これらの職種を遂行するにあたって必要とされる学歴、あるいは職歴(例えば、コンピューター・エンジニアであればコンピューター・サイエンス)を保持し、スポンサーとなる会社でその職種が必要とされているのであれば、H-1Bビザの取得が可能です。H-1Bビザは、延長だけでなく、雇用主の変更も認められていますが、最高6年までに期限が限られます。

増えているH-1Bビザ申請者今年の枠での申請が得策

移民局は、5月4日にH-1Bビザの申請数の状況を発表しました。H-1Bビザは、移民局の会計年度(毎年10月に始まり、9月に終わる)1年間の発行数が6万5000に限られており、アメリカで修士号を取得している場合は、これ以外に2万の枠が設定されています。この時点で6万5000の枠に対して、申請数が3万2500、修士号の2万の枠に対し、1万3700の申請が行われています。これは、すでに認可を受けた数、および審査中の申請数の合計になります。
 
しかし、6万5000の枠に対し、3万2500の申請ということは、単純に3万2500の枠が残っているというわけではなく、自由貿易条約を結ぶチリ、およびシンガポールのため6800の枠が設置されているため、実際には、残りの数は半数をはるかに下回っていると考えた方が良いでしょう。
 
ただし、H-1Bビザの延長、雇用主の変更の申請、および過去にH-1Bビザを取得したことがあり、最高延長期間の6年の残りの期間を使って申請する場合は、この枠の対象とはなりません。
 
2008年度(2007年10月~08年9月)、および2009年度(2008年10月~2009年9月)は、申請者がこの規定の枠をはるかに超えてしまったため、抽選が行われました。しかし、2010年度(2009年10月~2010年9月)以来、不況、抽選状況への懸念感、サイトインスペクション(移民局が予告なしで会社に視察に来ること)への懸念から、企業側がH-1Bビザ対象者の雇用を控えた経緯もあり、申請者数が減少しました。
 
しかしながら、H-1Bビザの申請者は昨年より確実に増え始めています。H-1Bビザの残りの数が5月初旬で半数を大幅に割っているという事実を鑑みれば、遅くとも6月いっぱいまでにはH-1Bビザの申請が締め切られ、次回の申請は2013年4月1日以降(ただし、このH-1Bビザが有効になるのは、2013年10月から)ということになると考えられます。
 
例年締め切り近くに申請したケースは、発給数の調整のため、審査がさらに厳しくなる傾向にあります。従ってあなたの場合、今すぐ申請を行うことをおすすめします。また、審査が後回しにされないように、「Premium Processing」を使うのも有効な手段の一つだと考えられます。
 
仮にOPTが2013年4月以降も有効であり、来年度の申請が可能な状況であっても、来年度にはさらなる申請者の増加が予想されます。場合によっては、抽選となる可能性も否定できません。ですから、今年の枠が利用できる間に申請されることをおすすめします。
 
H-1Bビザ取得後は、先述したようにサイトインスペクションが行われる可能性が高いため、その対応も想定しておくことをおすすめします。サイトインスペクションは、一般的に当該従業員だけでなく、雇用主側にも質問が行われますので、雇用主側では誰が質問の応答を行うのか(万一その人が不在の場合は、誰が応答するのか)を決めておき、その担当者は申請内容を把握しておく必要があります。
 
(2012年6月1日号掲載)

OPT終了後、H-1Bビザで就労滞在、就労許可は延長できる?

吉原 今日子 弁護士

Q:昨年5月にアメリカの大学の経営学部を卒業し、OPT(Optional Practical Training)を同年7月に取得しました。現在、日系の貿易会社で働いていますが、この会社でH-1Bビザの申請をしようと思います。私のOPTは今年6月まで有効ですが、H-1Bビザ取得まで、期間が延長されるというのは本当でしょうか?

A:2013年度枠(2012年10月1日~13年9月30日)のH-1Bビザ申請は、今年4月1日から開始されます。移民局がこの1年間に発給できるH-1Bビザの数は、一般枠が6万5000 です。修士号枠(アメリカで修士号、あるいはそれ以上の学位を取得した人に与えられている枠)は、2万です。
 
2009年度までは、申請受付が始まったばかりの4月初旬には、申請数が年間発給数を大幅に上回り、抽選で審査が行われていました。しかし、2010年度以降は、申請数が年間発給数に到達するまでに6カ月以上かかっています(2010年度は2009年12月、2011年度は2011年1月、2012年度は11年11月に、年間発給数に達しました)。ですから、今年も発給枠が4月にいっぱいになってしまうとは、考えにくいです。
 
ただし、昨年度(12年度)の枠に関して言うと、申請開始の4月に申請した人たちは、1~2カ月程で結果が返ってきたケースが多かった一方、5月以降に申請した人の中には、未だに結果が出ていない人もいます。今回も同様のことが起こる可能性がありますので、なるべく早めの申請をおすすめします。弁護士事務所への依頼は、申請の2カ月前から開始した方がいいでしょう。H-1Bビザ申請にはまず、必要な書類や情報を準備しなければなりません。また、労働局から雇用条件の認定(Labor Condition Application というもの)を受け、認可されなければ申請できません。この認可を受けるのに、現在約2週間ほどかかります。
 
また、ビザのスポンサーとなる企業が今まで、または過去数年間、雇用条件の認可を受けたことがない場合、会社のTax ID ナンバー確認のための追加書類の提出を要請されます。それらの書類提出後、1~2週間程でTax ID ナンバーの確認が終わります。
 
その後、再度労働局に雇用条件の認可のための申請を行わなければなりません。それから移民局への申請準備に取りかかるということになります。ですから、余裕を持って、申請2カ月前からの準備をおすすめします。

H-1Bビザを申請後は卒業校へ申請事実を連絡

H-1Bビザの申請は、4月1日から開始されますが、申請が認可されても、そのH-1Bビザで就業できるのは、同年10月1日からです。このため、OPTがその60日以上前に終了してしまう場合、H-1Bビザへの切り替えが終わるまでに、期間的なギャップが生じてしまいます。それを解消するために、ギャップ解消法(キャップ・ギャップルール)が設定されています。これは、H-1Bビザの申請がOPT終了前に移民局に提出され、申請が認可されれば、OPT終了後も9月30日まで、滞在と就労許可が自動的に延期されるというものです。
 
H-1Bビザ申請が認可された場合、H-1Bビザの発効開始日前日である9月30日まで、OPT期間が延長されます。しかし、申請が審査で却下され、OPTの有効期限をその時点で迎えてしまっていた場合、OPTは失効します。
 
なお、OPTが延長されている期間中にアメリカを出国すると、キャップ・ギャップルールは無効となります。そして、H-1Bビザがアメリカ大使館で発行されてからでなければ、アメリカに入国できなくなります。ちなみにH-1Bビザの場合、発効日の10日前から入国が許されていますので、10月1日から発効の場合、9月20日以降であれば入国できます。また、H-1Bビザ申請が、OPT終了後の60日間のグレースピリオド中に提出された場合、滞在資格は延長されますが、労働許可は延長されず、自宅待機の状態となります。
 
あなたの場合、7月までにビザ申請を行えば、9月末までOPTが延長されます。H-1Bビザ申請後、卒業校(OPTとI-20 の発行元) のInternational Student Office に行き、H-1Bビザの申請を行った事実を伝え、OPTの期間を延長してもらうよう要請してください。
 
H-1Bビザの申請を行えば、学校の「SEVIS」システムにその事実が自動的に明示される仕組みになっていますが、記録のアップデートには時間差が生じます。そのため学校側は、あなたがH-1Bビザ申請をしたことを知らず、誤ってOPTを終了させてしまうことがあります。ですからH-1Bビザを申請し、レシートが届いたら、必ず卒業校にコンタクトを取ることをおすすめします。
 
(2012年3月16日号掲載)

H-1Bビザ申請中にOPTが終了。働き続けることはできる?

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、現在OPTにて仕事をしています。H-1Bビザ申請の準備を進めていましたが、直前で発給上限に達し、受け付けが締め切られてしまいました。今年10月から発効のH-1Bビザ申請書は、4月から受け付けが開始されることは知っているのですが、OPTの期限は今年の6月です。OPT終了後も仕事を続けるために、何か良い方法はありませんか?

A:移民局は、1月26日に2011 会計年度のH-1Bビザ申請受け付けを締め切りました。次回、2012 会計年度分のH-1Bビザは、4月1日から受け付けが開始されますが、仮に認可されたとしても、発効は今年10月1日以降になります。
 
H-1Bビザは、「専門職ビザ」と呼ばれます。移民法上の解釈における「専門職」とは、高度で特別な知識の理論的、実質的な適用、または応用を要求される職種です。それは、建築、エンジニアリング、数学、物理学、社会学、医療関係、ビジネス関係、会計、法律、技術などの分野です。また、それらの職種に就くのに学士号、あるいはそれ以上の学位、またはそれに値する経験が必要とされる職種を指します。具体的な職種としては、会計士、経営コンサルタント、教師、コンピューター・エンジニア、建築家、翻訳家などがあります。
 
これらの職種において業務を遂行するにあたり必要とされる学歴(コンピューター・エンジニアであればコンピューター・サイエンス)、あるいは職歴を保持し、スポンサーとなる企業が当該職種で人材を必要としていれば、H-1Bビザ申請の条件を満たします。
 
H-1Bビザは、雇用主の変更が認められており、期間の延長もできますが、最長有効期間は6年です。ただし、グリーンカードの申請を始めて1年以上が経過している場合には、6年を過ぎても1年ごと、また、グリーンカードの申請が一定段階(I-140 の認可を受ける)に達していれば、3年ごとの延長が可能になります。

OPTの終了時期により継続的な就労・滞在が可能

OPTが6月で終わってしまうということですが、4月1日以降、OPTの有効期限前にH-1Bビザの申請を行えば、継続して働くことができます。H-1Bビザ申請後は、仮にOPTの有効期限が過ぎても、H-1Bビザ申請の結果が移民局から出るまで、OPT期間が延長されることになります。
 
H-1Bビザ申請が審査で却下されてしまった場合、OPTの有効期限がその時点で過ぎていれば、OPTは失効しますが、認可を受けた場合には、H-1Bビザの発効開始日前日である9月30日まで延長されます。
 
ここで重要なのは、H-1Bビザの申請後、卒業校(OPTの発行元)のInternational Student Office に行き、H-1Bビザの申請を行った事実を伝え、OPTの期間を延長してもらうよう要請することです。H-1Bビザの申請を行えば、学校のSEVIS のシステムに、その事実は自動的に表示される仕組みになっています。しかし、記録がアップデートされるまでに時間差が生じるため、学校側があなたのH-1Bビザ申請の事実を知らず、誤ってOPTを終了(Terminate)させてしまうことを防ぐためです。
 
また、4月1日時点(あるいは、その後のH-1Bビザ申請時点)でOPTが失効していても、その猶予期間内(Grace Period:期間終了後も、米国内に60日間滞在できる)であれば、継続して就労はできないとしても、米国に滞在し続けることは可能です。
 
例えば、2月10日にOPTが失効しても、(そこから60日以内の)4月1日にH-1Bビザ申請を行えば、2月10日以降の就労はできませんが、H-1Bビザの審査結果が出るまで、米国内に滞在できるのです。そして、H-1Bビザが認可された場合は、さらに9月30日まで滞在が可能となり、10月1日よりH-1Bビザのステータスで、再び就労を開始することができます。従って、在日アメリカ大使館・領事館において面接を受ける必要がなく、10月1日からすぐに就労ができるようになるのです。
 
今回締め切られたH-1Bビザ申請において、ギリギリで申請書を提出した方は、却下される可能性が極めて高い傾向にあります。移民局は、受け付けた申請をH-1Bビザの残りの発給数と合わせて調整するため、必然的に却下数が多くなるというわけです。
 
従って、前記のルール(OPT期間、またはGrace Period が4月1日以降まである)の適用を受けられる状態にある方や、日本で審査結果を待つことが可能な方は、今回、H-1Bビザ申請が却下されたからといって諦めず、再申請にチャレンジすることを検討してみてはいかがでしょうか。

(2011年3月1日掲載)

E-1ビザへの切り替えその条件とリスク

瀧 恵之 弁護士

Q:大学卒業後、日系企業に勤めています。昨年末、OPTが終了しましたが、H-1Bビザの申請ができなかったため、アメリカ国内でE-1ステータスに切り替えました。今年の夏に、日本に一時帰国したいので、日本のアメリカ大使館で面接を受け、E-1ビザスタンプの取得をしようと考えています。しかし、E-1ビザは、取得が非常に厳しくなっていて、面接で落とされる人も多いと聞いています。私は日本に戻らない方が良いのでしょうか?

A:日本のアメリカ大使館・領事館でのEビザ(E-1:駐在員ビザ、E-2:投資家ビザ)審査は、他のビザ(H-1B、L-1)と違い、その認可・却下の判断は、すべて大使館・領事館の判断に任されています。H-1Bビザ、L-1ビザなどでは、一旦、移民局の認可を得た後、在日アメリカ大使館・領事館にて面接を行います。しかし、大使館・領事館は、移民局での認可を尊重し、ほとんどのケースが認可を受けることになります。もちろん、最終的な判断権は大使館・領事館にあり、特に最近、すべてのビザに対する審査が厳しくなっています。ですから、H-1BやL-1ビザであっても、大使館・領事館の判断で却下されるケースが、少数ですが、過去に比べて多くなっています。
 
先に述べたように、E-1、E-2ビザ(あるいはB-1:短期商用、B-2:観光ビザも)は、移民局の認可を得ることなく、在日アメリカ大使館・領事館にて申請を行うことができます。さらに、これらのビザ申請においては、仮に移民局の認可を受けている場合であっても、その判断とは関係なく(まったく関係ないわけではありませんが、異なる判断がなされることは、ほとんど皆無に近いと言えます)、再度、審査が行われます。ですから、現在、E-1ステータスという移民局からの認可を受けていても、それ自体が日本のアメリカ大使館にて認可を受ける可能性につながらないということです。

H-1Bへの切り替え一時渡航許可証の取得を

E-1ビザ申請に際してのスポンサー側の条件は、スポンサー企業の株式の50%以上を日本人あるいは日本の会社が所有していること、および、その会社が日本との間で貿易業務を行っていることです。また、申請者はスポンサー会社の管理職、あるいは特殊技能保持者であることが要求されます。
 
この管理職では、単に申請者の下に部下がいるだけでなく、その部下の下にさらに部下がいることが要求されます。言い換えると、申請者が部下を持つ部下を持っていること、申請者を頂点としてその部署の組織を示すピラミッドを描いた時に、申請者の下に最低2段の組織構造が存在していないといけないということです。これは面接の際、会社の組織表を提示して証明することになります。最近、在日アメリカ大使館・領事館では、特にこの条件が強く要求され、これが却下の判断が下される主な理由となっています。
 
また、管理職であることに関して、在日アメリカ大使館・領事館は、申請者の学歴・職歴を考慮し、申請者が管理職としてふさわしいバックグラウンドを保持しているかどうかも重要な判断材料にします。例えば、短大を卒業したのみで職歴も短い場合は、却下の可能性が高いと言えます。また、職歴に関しても、スポンサーの業種と類似した分野においての経験であるか否かも考慮の対象となる時があります。
 
従って、OPTを取得する前に取得した学位がAssociateなのか、Bachelor、Masterなのか、あるいはDoctorなのかによって、大きな違いが出ることになります。特にあなたの場合(Master以上を取得していれば別ですが)は、OPT終了後、1年も経過していないため、職歴が短過ぎると判断される危険性があります。ですから、申請には十分注意されることをおすすめします。申請を急いだ結果、ビザ申請そのものが却下されてしまうだけでなく、せっかく努力を積み上げて確保した今の仕事、アメリカでの生活を失ってしまう危険性もあります。
 
あなたの場合、もし前記の条件を十分に満たしておらず、なおかつ今夏に一時帰国することにさほどの重要性がないのであれば、H-1Bビザへの切り替え(もちろん、この場合、抽選漏れのリスクがあります)、あるいは今の会社を通してグリーンカードの申請を開始し、一時渡航許可証(Advance Parole)が取得できてから一時帰国する方が、前記の危険性を回避でき、安全だと言えます。
 
この一時渡航許可証は、グリーンカードを取得できるまでの長い期間を待つことなく、それ以前の手続過程において発行されます。また、一時渡航許可証にて出入国する場合は、在日アメリカ大使館・領事館にてビザ申請を行い、面接を受ける必要はありません。

技術系専攻で得られるPTの延長期間

瀧 恵之 弁護士

Q:私は日系の会社で、現在プラクティカルトレーニング(PT)中です。この4月にH-1Bビザを申請しましたが、抽選に入っているかどうかわかりません。私のプラクティカルトレーニングは、6月末で終了してしまいます。最近、プラクティカルトレーニングが延長できるようになったという話を聞いたのですが、私にも適用されるでしょうか?

A:今回のプラクティカルトレーニングの延長は、大きく2通りに分けられます。
 
1つは、プラクティカルトレーニングを持っていて、H-1Bビザの申請を行った人に適用されるもの、もう1つは、H-1Bビザの申請を行ったかどうかに関わらず、技術系の専攻で大学を卒業した人に適用されるものです。
 
まず、前者のプラクティカルトレーニングを持っていて、H-1Bビザの申請を行った人に適用される場合の説明から始めましょう。
 
プラクティカルトレーニングには、厳密に言うと3つの種類があります。
 
(1)Curricular Practical Training
(2)Optional Practical Training: OPT(Pre-Completion)
(3)Optional Practical Training: OPT(Post-Completion) 
 
このうち、最もよく使われているのは(3)で、これはフルタイムの学生として1年以上学校に通い続けたことを前提として、コース修了後、フルタイムで1年間就労することができるものです。職種の選択にあたっては、専攻する学術領域に限られ、学校(Designated School Official)および移民局からの許可を必要とします。 
 
今回の法改正は、このOptional Practical Training(Post-Completion)の1年以降の延長に関するものです。

技術系学部卒で最長29カ月間

この4月のH-1Bビザの申請は、最初の5営業日(4月1日~7日)の間に受け付けられ、この間に約16万3000件の申請がなされました。最初に修士号保持者のために2万の枠に対して抽選が行われ、それに外れた申請者と残りの申請者を合わせて、6万5000の枠に対して抽選が行われます。
 
今回の改正では、プラクティカルトレーニングを持っていて、H-1Bビザを申請した場合、抽選の結果が出るまで、プラクティカルトレーニングが延長されます。抽選から外れた場合は、そこでプラクティカルトレーニングは終了しますが、抽選に入った場合、H-1Bビザ審査の結果が出るまで、プラクティカルトレーニングは延長されます。
 
さらに、審査によりビザ申請が却下された場合、その時点でプラクティカルトレーニングは終了しますが、認可された場合には、2008年10月1日まで、プラクティカルトレーニングが延長されます。この延長には特別な申請手続きの必要はなく、自動的に延長されるものとされています。
 
また、前述後者のH-1Bビザ申請を行ったかどうかに関わらず、技術系の専攻で大学を卒業した人に適用されるものに関してですが、これは定められた技術系専攻で、学士号、修士号、あるいは博士号を取得し、1年間のプラクティカルトレーニングを取得すると、さらに17カ月間(従って合計29カ月間)の期間延長が認められるものです。この定められた技術系の専攻としては、以下が挙げられます。
 
(1)Computer Science
(2)Engineering
(3)Engineering Technologies
(4)Biological and Medical Sciences
(5)Mathematics and Statistics
(6)Military Technologies
(7)Physical Sciences
(8)Science Technologies
(9)Health Professions and Related Clinical Sciences
  (このリストはさらに追加がなされる可能性もあります) 
 
この延長申請には、これらの専攻で大学を卒業し、プラクティカルトレーニングを取得して、延長申請時において勤務先が決まっていることが要求されます。また、この延長申請には、雇用主が「E-Verify Program」に登録している必要があります。なお、雇用主はこの登録をインターネット上(www.uscis.gov/E-Verify)で行うことができます。
 
あなたの場合は、まず、H-1Bの抽選に入ったかどうか、また、抽選に入った後に申請が認可されるかどうかで、プラクティカルトレーニングの延長期間が決まります。万一、抽選に漏れた場合、また、抽選には入ったがビザ申請で却下された場合でも、前記リストの専攻に入っていれば、延長申請ができる可能性があります。
 
(2008年5月16日号掲載)

就労ビザ(H-1Bビザ)を取得するには?

「H-1B」ビザの抽選を通過しました。現状と今すべきことを教えてください

吉原 今日子 弁護士

Q:アメリカの大学をビジネス専攻で卒業し、OPTで現在働いています。その会社で今年4月1日に「H-1Bビザ」を申請してもらいました。抽選は通過したと聞きました。「H-1Bビザ」の状況と、私が今しなければいけないことを教えてください。

A:移民局は、今年4月8日に2014年度の「H-1Bビザ」の申請数の状況を発表しました。「H-1Bビザ」は、1会計年度(10月1日~9月30日)内の発行数が6万5000に限られており、米国で修士号を取得した申請者向けに、これ以外に2万の大学院枠が設定されています。通常、「H-1Bビザ」は会計年度枠が埋まり次第、打ち切られます。しかし、4月1日に定員に達したとしても、その日に受付を締め切るわけではありません。何日の猶予があるかは、年によって多少違います。

2014年度の「H-1Bビザ」の競争率が高かった理由

今年の「H-1Bビザ」は、4月1日から4月5日まで受け付けられました。4月8日の発表では、4月5日までに8万5000の枠に、12万4000の応募があり、4月7日に申請者間の抽選がコンピュータープログラムによって行われました。抽選を通ったか否かは、レシート受け取りの有無でわかります。レシートが届けば、抽選に通ったことを意味します。レシートが届かず、申請書類(申請費用のチェックを含む)が通常弁護士事務所に返送された時点で、抽選に漏れたことが確定します。この号が出版される頃には、書類が戻ってきた方もいると思います。
 
ちなみに過去、08年、および09会計年度は、申請者がこの規定枠の数を遥かに超えたため、抽選が行われました。このため、学生のOPT(Optional Practical Training)期間中に企業が予算をかけてトレーニングを行ったにもかかわらず、「H-1Bビザ」の申請が抽選で却下されたために雇用継続を中断せざるを得ないという事態が起こっていました。しかし、10年度以降は、経済不況に加えて抽選になることを恐れた企業側が「H-1Bビザ」対象者の雇用を控えたという経緯もあり、申請者の数は減少していました。
 
ただ、今年は景気回復の兆しと、IT系の企業の好景気に拍車がかかったことも影響し、早い段階で枠が締まったと考えられます。

「H-1Bビザ」変更までにビザがない状態になったら?

申請が認可されても「H-1Bビザ」での就業は、10月1日からです。このため、OPTがその60日以上前に終了してしまう場合は、「H-1Bビザ」への変更日(10月1日)までビザがない状態が生じてしまいます。このビザがない状態=ギャップを失くすために、ギャップ解消法案(キャップギャップ)が設定されています。「H-1Bビザ」申請がOPT終了前に移民局に受理され、その後申請が認可されるか、または、申請中であれば、OPT終了後も10月1日まで滞在と就労許可が自動的に延期されます。その後、「H-1Bビザ」申請が審査で却下されてしまい、OPTの有効期限が過ぎていれば、その時点でOPTは失効します。逆に認可を受けた場合には、「H-1Bビザ」の発効開始日前日である9月30日まで延長されます。OPT終了後60日間のグレースピリオド中の方は、「H-1Bビザ」の認可が取れれば、10月1日以降から労働が可能です。
 
このキャップギャップ期間中にアメリカを出国してしまうと、キャップギャップが無効になり、「H-1Bビザ」が大使館で発行されてからでなければ、アメリカに入国できなくなってしまいます(「H-1Bビザ」の場合、認可日の10日前からのアメリカ入国が許されていますので、10月1日からの「H-1Bビザ」認可が取れていれば、9月20日以降に入国が可能ということになります)。
 
また、「H-1Bビザ」申請がグレースピリオド中に提出された場合は、滞在資格は延長されるものの労働許可はすでに終了している状態ですので、OPTとして働くことはできず、自宅待機の状態となります。 
 
「H-1Bビザ」の申請後、卒業校(OPT・「I-20」の発行元)のInternational Student Officeに行き、「H-1Bビザ」の申請を行った事実を伝え、OPT期間延長してもらうよう要請してください。「H-1Bビザ」の申請を行えば、学校のSEVIS(Student and Exchange Visitor Program)のシステムに自動的にその事実が表示される仕組みになっています。しかし、記録のアップデートまでに時間差が生じるため、学校側があなたの「H-1Bビザ」申請の事実を知らず、誤って「I-20」を終了(Complete)させてしまうこともあります。ですから「H-1Bビザ」を申請してレシートが届いたら、必ず卒業校にコンタクトを取ることをおすすめします。OPTが今年の9月30日まで、または、それ以降有効な方は、キャップギャップの必要がありませんので、学校に報告する必要はありません。
 
(2013年5月16日号掲載)

グラフィックデザインで修士を取得。 H-1Bビザの取得は可能?

吉原 今日子 弁護士

Q:2012年5月にアメリカの大学でグラフィックデザインで修士号を取得しました。現在、OPT(Optional Practical Training)を取得し、出版社で働いています。これからH-1Bビザの申請について会社と話し合いますが、H-1Bビザ取得は可能でしょうか?また、取得までOPTは延長できるのでしょうか?

A:H-1Bビザ を取得するには、いくつかの条件を満たす必要があります。
 
①その業種において通常、学士号(あるいはそれに匹敵する経験)以上が要求されること
②その職務が、学士号(あるいはそれに匹敵する経験)以上がないと遂行できない特殊なものであること
③雇用主が、その役職に従事する者に対し、一般的に学士号(あるいはそれに匹敵する経験)以上を必要としていること
④職務内容が専門的かつ複雑であり、その職務を行うには、通常その学士号(あるいはそれに匹敵する経験)以上の知識が必要であること
 
あなたの場合、雑誌や書籍、ウェブ制作などのレイアウトデザインや写真、イラストの加工など、グラフィックデザイナーとして修士号、またはそれに匹敵する経験が必要と思われます。H-1Bビザの申請自体は問題ないです。

年間発行数上限に達する前に早めの取得準備を

今年度はH-1Bビザの申請が受理されるかどうかが問題になると思います。14年度枠(13年10月1日から14 年9月30日)のH-1B申請が、13年4月1日から開始されます。移民局がその1年間(13年10月1日~14年9月30日)に発給できるH-1Bビザの数は、一般枠が6万5000です。また、修士号枠 (アメリカで修士号、あるいはそれ以上の学位を取得した人に与えられている枠)は2万です。
 
09年度までは、4月中に申請数が年間発給数を大幅に上回って、抽選で審査が行われていました。しかし10年度以降は、申請数が年間発行数に到達するまでに6カ月以上かかっていました(11年度は11年1月、12年度は11年11月に到達)。しかし、13年度は12年6月に年間発行数に到達しました。これは例年に比べて6カ月も早く枠がなくなってしまったということです。そんな流れから、今年は4月のしかも早い時点で、年間発行数に到達する可能性が非常に高いと考えられるため、早めの申請準備をおすすめします。

弁護士への依頼も早めに開始するように

弁護士事務所への依頼は、申請の2カ月以上前から開始した方がいいと思います。申請のために必要な書類、情報を準備しなければなりません。
 
H-1Bビザ申請には、労働局から雇用条件の認定(Labor Condition Application)を受け、認可されなければできません。この認可を受けるには、現在約2週間ほどかかります。
 
また、H-1Bビザのスポンサー会社が今まで、または数年間認可を受けたことがない場合は、会社のTax ID番号の確認のための追加書類を要請されます。それらの書類の提出後、1~2週間ほどでTax ID番号の確認が終わり、それから再度労働局へ雇用条件認可のための申請をしなければなりません。さらにその後、移民局申請の準備となります。ですから、余裕を持って申請2カ月前からの準備をおすすめします。

就業スタートまでにOPTが終了してしまう場合

H-1Bビザの申請は4月1日から開始されますが、申請が認可されても就業をスタートできるのは、10月1日からです。このため、OPTがその60日以上前に終了してしまう場合は、H-1Bビザへの変更日までにギャップが生じてしまいます。そのギャップを埋めるために、「ギャップ解消法案」(キャップ・ギャップと呼ばれる)が設定されています。
 
H-1Bビザ申請をOPT終了前に移民局に提出し、申請が認可されれば、OPT終了後も10月1日までの滞在と就労許可が自動的に延期されます。しかしその後、H-1Bビザ申請が審査で却下されてしまった場合、OPTの有効期限がその時点で過ぎていれば、OPTは失効してしまいます。逆にH-1Bビザを獲得できた場合は、H-1Bビザの発効開始日前日である9月30日までOPT期間は延長されます。H-1Bビザの申請後にレシートが届いたら、まず自分の卒業校(OPT・I-20の発行元)のInternational Student Officeに行き、H-1Bビザの申請を行った事実を伝え、OPTの期間を延長してもらうよう要請しましょう。
 
ちなみに、H-1Bビザ申請をOPT終了後60日間のグレースピリオド(猶予期間)中に行うと、滞在資格は延長されるものの労働許可はすでに終了しているため、結果が出るまで待機となります。
 
(2013年1月16日号掲載)

飲酒運転逮捕の経歴があってもH-1Bビザは取得できますか?

瀧 恵之 弁護士

Q:現在、ある日系の会社でH-1Bビザで働いています。今回、日本のアメリカ大使館でH-1Bのビザを延長しに行こうと思うのですが、昨年飲酒運転で捕まってしまいました。裁判所から提示された条件は、すべて消化したのですが、このような経歴があっても無事、更新できるのでしょうか?

A:飲酒運転自体は、強制送還の対象になる犯罪には含まれませんが、あなたの場合は、まず、飲酒運転で逮捕・有罪となったことが過去に何度あるのか、また、どのような状況下で捕まったのかが問題となります。例えば、飲酒運転であっても4回行うと重犯罪(Felony) となります。飲酒運転は、捕まってから10年以内(以前は、7年間でしたが、2005年1月1日より10年に変更)に再犯すると、犯歴がどんどん加算されていきます。
 
ここで注意すべきなのは、2回目、3回目に飲酒運転で捕まった場合、その時点から再度、10年の無犯期間がゼロから始まるということです。例えば、1回目に飲酒運転で捕まった後、9年後にまた捕まると、半歴は2回目となりますが、それから9年後に捕まった場合、1回目と3回目の間は、18年間ありますが、3回目として計算されるのです。すなわち、1度も捕まらない期間が10年間続かない限り、半歴が加算され続けるのです。そして、この計算方法により、合計4回の飲酒運転になると、強制送還の対象となるのです。ですから、1度でも飲酒運転で有罪になった場合は、注意が必要です。
 
さらに注意したいのは、3回目であっても物損事故を起こしていたり、2回目であっても人身事故を起こしているような場合は、強制送還の対象となる可能性があるということです。

強制送還の対象となる犯罪の種類

犯罪には、強制送還の対象となる犯罪(Crime Subject to Deportation)と、強制送還の対象とならない犯罪があります。強制送還の対象となる犯罪は、すべての「重犯罪」および、一部の「軽犯罪(Misdemeanor)」がそれに当たります。軽犯罪の中で、強制送還の対象となるものは、「家庭内暴力(Domestic Violence)」と、「道徳に反する犯罪(Crime Involving Moral Turpitude)」の2つです。
 
家庭内暴力とは、夫婦間(離婚後の前夫・妻を含む)、あるいは、恋人間における暴力行為のことを言います。 次に、道徳に反する犯罪には、「麻薬に関する犯罪(Controlled Substances)」、「詐欺(Fraud)」、「窃盗(Theft)」および、「暴力に関する犯罪(Crime of Violence)」などが含まれます。また、最近では、10年1月14日の移民局裁判所の判決により、不当に入手したソーシャル・セキュリティー番号を用いて就労した場合も、強制送還の対象となると定められました。
 
ですから、飲酒運転が1回で、それが強制送還の対象となる犯罪に含まれないからと言って、まったく問題にならないというわけではないのです。

ビザ申請時に犯罪歴があると追加で書類の用意が必要

日本のアメリカ大使館にビザ取得のインタビューに行った際、前記のような過去の犯罪記録は、まず間違いなく明らかになります。また、申請書類にも、今まで犯罪を犯したり、逮捕されたことがあるか否かの質問が記されています。この際、いかなる軽犯罪の記録が出てきた場合であっても、問題視される場合がほとんどであり、その犯罪がどの種のものであったかを証明するのは、申請者側の責任となっています。従って、犯罪記録があくまでも飲酒運転であり、その他の犯罪ではないことを証明しなければいけないのです。
 
これには、飲酒運転を処理した裁判所からの書類、Police Report、Complaint、Minutes (Probation) Order、Docket Reportsなどを入手しておくことを強くおすすめします。特に、Docket Reports は、最終判決の条件として与えられた内容(アルコールスクール、罰金の支払いなど)をすべて遂行したことの証明となるので、非常に大切です。飲酒運転の判決を受けた裁判所に行けば入手できますので、そこで、Docket ReportsのCertified Copyの発行を依頼してください。そして、これらの書類はアメリカ大使館でのインタビューの際に持参してください。
 
飲酒運転の場合、以上のことを行った上で、大使館が指定する医師の所に行きます。そして、カウンセリング(診断)を受け、その証明をアメリカ大使館に提出することにより、ビザが発行される場合がほとんどです。従って通常の場合よりも手続きに時間がかかることが容易に予想されますので、日本での滞在期間を通常よりも長く(3週間から1カ月程度)予定しておいた方が良いでしょう。
 
(2012年12月1日号掲載)

ビザ取得の際の飲酒運転逮捕歴

KEVIN LEVINE 弁護士

Q:ビザ取得の際、飲酒運転での逮捕歴が影響を与えるというのは本当ですか?

A:A最近国務省は、在外公館に対し、「飲酒運転で逮捕歴があるビザ申請者に対する案内」という公電を発信しました。その内容とは、領事館員は、飲酒運転で逮捕歴がある非移住ビザの申請者を、移民局指定医師へ連絡することを義務づけ、以下の状況に際して、健康診断を受けなければならないとしました。
①過去3年間で、申請者に飲酒運転での前科・逮捕歴があった場合
②期間を問わず、申請者が2回以上の飲酒運転での前科・逮捕歴があった場合
さらに今後、領事館員に対して、ビザ申請者にアルコール依存症の恐れがあると見なされる場合には、移民局指定医師へ連絡することを義務づけています。
 
この指示は任意のものではありません。例えば、いかなる時でも、公共の場所で飲酒によって逮捕された場合には、この指示が実施される要因となる可能性が高いです。また、この新しいルールで最も注目すべき点は、有罪判決を受けていなくても、逮捕されたことがあるだけでも、適用されるということです。非移民ビザ(H-1B・L-1A・E-2・F-1等)や、永住権の申請の際に行われる領事館でのインタビューに間に合うように、弁護士に相談してください。さらに、申請書にある質問の1つに「逮捕歴」について聞かれますので、署名する際には注意してください。もしも誤って記入された書類に署名した場合、虚偽陳述(不実記載)により裁かれる可能性があり、その場合、生涯米国への入国ができなくなります。これらの問題点を特定できるよう、国務省は今年度末までに、10指すべての指紋採取と、ビザ申請者の犯罪歴を確認する方法の導入に向かって動いています。
 
(2007年11月1日号掲載)

就労ビザ(H-1Bビザ)からグリーンカードを取得するには?

従業員の就労ビザ(H-1Bビザ)→永住権(グリーンカード)申請の手順や注意点を教えてください

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、LAで会社を経営しています。先日、就労ビザ(H-1Bビザ)にて働いている従業員から、永住権(グリーンカード)の申請のスポンサーになってほしいとのリクエストがありました。パンデミックの苦しい間も献身的に働いてくれていて、また私が昔にグリーンカードを取得するために苦労したことも思い出し、何とか取らせてあげたいと思っています。私はこれからどのような手続きを踏めばよいのでしょうか?

A:一般的に、会社が従業員のための永住権(グリーンカード)の申請を行うには、4つの過程を踏みます。①給与の設定、人材募集の広告掲載、②労働局での審査、③移民局での会社の審査、④個人の審査の4つです。申請者(従業員)側の条件としては、4年制大学を卒業しているか、2年以上の職務経験がある必要がありますが、本件では、申請者の方はH-1Bビザを取得しているので、この条件はまず満たしていると考えられます。そこでこのコラムでは、主に会社がすべきこと、会社側の条件について説明します。

雇用を通した永住権(グリーンカード)申請の第3段階までは、雇用主の審査が主となる

まず、第1段階の給与設定では、労働局に対して給与設定のリクエストを出します。これは、会社の業種および所在地(会社の所在地により、平均給与が異なるため)、役職、必要とされる条件(4年制大学卒など)により、労働局が妥当であると考える給与額を決めるものです。この給与設定が終われば、労働局が決めた給与に基づき、人材募集の広告を行うことになります。これは労働局が、雇用の機会を外国人に与える前にアメリカ人に与えることを求めているためです。会社側は、この募集広告を行うことにより、当該役職においてアメリカ人から十分な労働を得られないことを証明する必要があります。

次に第2段階において、労働局に「Labor Certification」の申請を行います。この「Labor Ceritification」は、しばしば労働許可と勘違いされやすいですが、労働許可ではなく、次の第3段階に進むための許可書のことを指します。この申請はインターネット上で行われ、審査には、現在5~7カ月を要しています。結果は認可される場合、あるいは「Audit」になる場合があります。「Audit」になった場合、会社はどのような手段(新聞、インターネットなど)を用いて募集広告を行ったのか、またどのような過程を通して当該申請者しか妥当な人材がいないと判断したのかに関する労働局からの質問に答えます。例えば、募集の条件に「日本語が話せて、読み書きができること」という条件を付けていれば、日本語があなたの会社の業務において必須であることを証明する書類を提出する必要があります。

労働局から「Labor Certification」が発行された後は、第3段階の移民局での申請に移ります。ここでは、第1段階で労働局が設定した給与を会社が支払えるだけの経済的能力があるか否かが主な審査対象になります。この審査をクリアするには、次の3つの審査基準のどれか一つを満たしていればよいとされています。
①労働局が設定した給与額以上を実際に支払っていること
②会社の納税申告対象利益(前年度からの繰り越し赤字を含まない)が、労働局が設定した給与以上あること
③会社の純流動資産が、労働局が設定した給与額以上あること
のいずれかです。

会社の純流動資産とは、決算書(Tax Return)の貸借対照表における流動資産の総額から流動負債の総額を差し引いた額になります。この審査過程には現在、8~10カ月を要していますが、通常の申請料金(700ドル)に加えて2500ドルを追加で移民局に支払う(「Premium Processing」)ことにより、15日間に短縮することもできます。

会社が行う従業員の永住権(グリーンカード)申請の最後の個人審査では、日米いずれかで面接を受ける

会社が行う従業員の永住権(グリーンカード)申請の最後の第4段階では、主に申請者個人の審査になります。審査の最後には多くの場合、申請者は移民局あるいは日本のアメリカ大使館にて面接を受けることになります。アメリカで面接を受ける場合は、第3段階と第4段階は同時に申請し、並行して進めることができるケースがほとんどであるのに対し、日本のアメリカ大使館で面接を受ける場合は、第3段階が終了した後に、第4段階の手続きを行うことになります。

あなたはこの面接において、申請者を継続して雇用する意思があることを示す手紙(移民局の場合は、「I-485 SupplementJ」という書類)が必要です。特に日本のアメリカ大使館での面接の場合は、この手紙は面接の日からさかのぼって30日以内に書かれたものである必要があります。あなたの会社の大切な従業員の方がH-1Bビザ終了後も継続して働けるようにするため、ここに述べた条件をよく吟味し、申請を行われることをお勧めします。

 

(2022年4月16日号掲載)

就労ビザ(H-1Bビザ)の期限が近いです。コロナ禍でも永住権(グリーンカード)に切り替え可能?

瀧 恵之 弁護士

Q:私は現在、日本に本社のある流通関連のアメリカの子会社で就労ビザ(H-1Bビザ)にて働いています。当初は、H-1Bビザの最長期間の6年が終われば日本に帰る予定だったのですが、コロナパンデミックのため、日本から次の駐在員の人が来られないこともあり、会社から今後も残ってほしいと言われ、私もそれに応えて残ることができればと考えています。ただ、H-1Bビザも更新し、残りの期間が1年2カ月しかありません。会社からは、永住権(グリーンカード)の申請をするように勧められているのですが、友人の話では、残りの期間があまりにも短いのでもう間に合わないのではないかと言われています。私には、残る方法はないのでしょうか。

A:まず、グリーンカードの申請には現在、約2~3年を要しています。従って、あなたの場合、H-1Bビザの残りの期間が1年2カ月しかないため、一見間に合わないように見えるかもしれません。しかしこの場合でも、H-1Bビザの6年以降の延長を行い、これと並行してグリーンカードの申請を行える可能性は、十分にあります。

就労ビザ(H-1Bビザ)は永住権(グリーンカード)申請から1年後からはさらに延長可能

雇用を通してグリーンカードを取得するプロセスは細かく分けて、
①規定の給料の設定
②人材募集広告
③「Labor Certification」の申請
④「I-140」の審査
⑤「I-485」(あるいは「Consular Processing」を通して)の審査の5つに分けられます。

現在では、①の規定給与の設定に約4~5カ月、②の人材募集広告に2カ月(人材募集広告を約1カ月行った後、さらにその募集に対する応募者の反応を見るため1カ月待ちます)、③の「Labor Certification」の申請に約4~5カ月、またこの段階で半数以上の申請書が「Audit」にかかり、この場合さらに約6カ月を要します。④の「I-140」の審査に6〜10カ月(通常の申請料に2500ドルを追加で支払い「Premium Processing」を使えば15日間)、⑤の「I-485」の審査に約9~18カ月を要しています。ここで、あなたのケースに適用される法律ですが、グリーンカードの申請を開始して1年以上経過した場合は、H-1Bビザの延長が6年以降も1年ごとにできるとされています。

また、「I-140」が認可された場合は、6年以降であっても、3年の延長が可能になります。ただ、ここであなたの場合に問題なのは、グリーンカードの申請を開始したことになるのは、③の「Labor Certification」の申請を開始した時点からということです。従ってあなたの場合、H-1Bビザの有効期限の期間が残り1年2カ月で、規定給料の設定に要するのが約4~5カ月、人材募集広告に要するのが2カ月なので、恐らく約4カ月が足りないことになります。この問題点に関してあなたの場合、以下の解決策が考えられます。

「永住権(グリーンカード)申請後1年」ルールに間に合わない場合の対処法

まず、就労ビザ(H-1Bビザ)を取得してからの過去約5年間の間に、アメリカ国外に出ていた期間があれば、この間はH-1Bビザの6年間から除外できます。従って、例えばあなたがこの約5年間の間に4カ月、アメリカ国外に出ていたことがあれば、この4カ月分、H-1Bビザを6年以降も延長できます。つまり、今すぐにグリーンカードの申請を行い、その後、今のH-1Bビザの有効期限の半年前以降に、国外に出ていた期間(この例では4カ月)分の延長を行えば、この延長した期限が切れる頃には、あなたはグリーンカードを申請して1年以上が経過していることになり、さらにそこから1年間のH-1Bビザの延長が可能になります。

次に、あなたが過去5年間に、アメリカ国外に出ていた日数が4カ月に満たない場合ですが、あなたは日本に本社のある会社に勤めているため、H-1Bビザの6年が切れる前に、「E」ステータスに切り替えて滞在できる可能性があります。また、仮に「E」ステータスの条件を満たさない場合は、これからの1年2カ月の間に、足りない期間分(約4カ月)あえて国外に出ることで、その期間分、H-1Bビザの延長を行うことができるようになります。例えば、過去5年間にアメリカ国外に出ていた期間が3カ月という場合、足りない1カ月の期間をこれからの1年の間に、アメリカ国外に出れば、前述の例と同様に、H-1Bビザの6年以降の延長を4カ月できるようになります。

その後は、「Labor Certification」を申請してから1年以上経過していることになるので、1年ごとの延長が可能になります。その後、⑤の段階の「I-485」の申請を行った時点で、H-1Bビザの延長の必要はなくなります「I-485」申請後、約3〜6カ月で、就労許可および一時渡航許可が下ります。あなたの場合、いずれにしても時間がないので、できる限り早期にグリーンカードの申請を開始されることをお勧めします。

 

(2020年12月1日号掲載)

就労ビザ(H-1Bビザ)→永住権(グリーンカード)に切替。コロナの影響について教えて!

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、現在、就労ビザ(H-1Bビザ)を持ち、ある日系の会社で働いていますが、永住権(グリーンカード)の申請も行っています。コロナの影響でトランプ大統領がビザやグリーンカードの発行を止めたとの噂を聞きました。いろいろな話を聞くので、私の場合今後どうなるのか、正確な情報があればお願いします。

A:永住権(グリーンカード)の手続きがどの段階まで進んでいるかにより、トランプ大統領の発表を含めたコロナパンデミックの影響の受け方が異なります。

雇用を通した永住権(グリーンカード)申請の5段階のプロセスのうち 最初の4段階は影響少ない

まず、雇用を通してグリーンカードを取得するプロセスは、細かく分けて
①規定の給料の設定
②人材募集広告
③「Labor Certification」の取得
④「I-140」の審査
⑤「I-485」あるいは「Consular Process」(日本のアメリカ大使館での面接)の審査

の5つに分けられます。①の規定の給料の設定とは、Department of Labor(労働局)が、その役職および就労を行う地域において妥当だと判断する給与を決めるプロセスです。このプロセスには現在、約4~5カ月を要しています。ここで問題となるのが、スポンサーとなる会社がここで設定される給料を支払えるだけの経済的能力があることを、④のプロセスである 「I-140」の申請の際に立証しないといけないことです。これに関しては、コロナパンデミックにより経営に大きな影響を受けている会社も多いので、後述します。給料の設定が終わった後は、人材募集広告を約1カ月行い、その募集に対する応募者の反応を見るため、さらに1カ月待ちます。

③の「Labor Certification」のプロセスですが、2020年現在、約4~6カ月を要しています。また、「Audit」(質問状) を受けたケースでは、ここでさらに約半年を要します。④の「I-140」の審査では、スポンサーである会社が、労働局が定める規定の給料を払うだけの経済的能力があるかどうかがその審査の主な対象となりますが、それは、以下の3つのステップで判断されます。

第一に、申請者が現在その会社で(あなたのように就労ビザ(H-1Bビザ)等を持っていて)働いている場合は、すでにその給料が支払われているかどうかということです。もし、規定の給料がすでに支払われている場合は、仮にその会社が赤字であったとしても、認可される可能性は大きいです。

第二に、もし申請者の給料が規定の給料に満たない、あるいは現在その申請者がスポンサーとなる会社で働いていないような場合は規定の給与額に満たない差額分以上、申請者が現在就労していなければ規定の給料額以上に、会社の純利益があるかどうかが判断の対象となります。この金額に達していれば認可される可能性は大きいです。逆に、規定の給与額に達していない場合(例えば、コロナパンデミックの影響で会社が赤字のような場合)は、この判断基準をパスできません。しかし第三に、現在の給料も会社の利益も規定の給料額に達していなかったとしても、会社の純流動資産(流動資産-総負債)が規定の給与を支払えるだけあれば、パスすることも可能です。この場合、会社の資産表(貸借対照表)から判断されます。ここで重要なことは、コロナパンデミックにより利益が出ていない場合であっても、純流動資産が規定額に達していれば、この審査をパスできるということです。

雇用を通した永住権(グリーンカード)申請の最後のプロセスで遅れが! ただし滞在延長の方法はある

最後のプロセスは、「I-485」あるいは「Consular Process」を通しての審査です。この段階では、コロナパンデミックの影響を受けることになります。すなわち、ここまでの4つのプロセスでは、経済的問題を除けば、手続きとしてコロナパンデミックの影響を受けることはほとんどなく、この段階にきて初めて問題になるということです。例えば、「I-485」の申請後、コロナパンデミックの前であれば、申請後、約2カ月で指紋採取、その後1〜4カ月で就労許可および一時渡航許可が下り、その後3〜9カ月で面接を受け、グリーンカードが発行される流れでした。ところが現在、指紋採取は(停止されていたのが)再開されたものの、大幅な遅れが出ており、就労許可、一時渡航許可の発行も遅れます。また、このプロセスで「Consular Process」を選んだ場合、日本のアメリカ大使館が面接を行っていないので、手続きの最後の最後で待たされることになります。

ただし、あなたの場合、ここでの待ち時間が長引いたとしても、H-1Bビザにて滞在・就労、またその延長も可能です。仮にこの間に、H-1Bビザの最大延長期間の6年間が過ぎてしまうような場合であっても、③のプロセスに入った(Labor Certificationの申請が受け付けられた)時点から1年以上が経過していれば、H-1Bビザの更新が1年ごとに可能、④のプロセスの「I-140」が認可されていれば、3年ごとの延長が可能になります。

 

(2020年8月1日号掲載)

アメリカ就労ビザ「H-1B」保持者が永住権を取得するまでの期間

瀧 恵之 弁護士

Q:私は現在「H-1B」ビザで、日系のIT 関連の会社で就労しています。最近、永住権の取得が非常に早くなったと聞きましたが、今から申請を行うとどれくらいで取得が可能になるのでしょうか。

A:確かに2014年5月までは、約1年半とかなりの速さで取得が可能でしたが、今では少し遅くなり2年4カ月ほどを要しています。雇用を通して永住権を取得する過程は、
①規定の給料設定
②人材募集広告
③労働認可証(EAD)の取得
④「I-140(Immigrant Petition for Alien Worker)」 審査
⑤「I-485(Application to Register Permanent Residence or Adjust Status)」審査、または日本で手続きを行うConsular Processing に分けられます。
 
①の規定の給料設定とは、その役職、および就労を行う地域において妥当だと労働局(EDD)が判断する給与を決める過程のことを指します。現実的には、平均給与よりもやや高めの給与額が提示されるのが一般的です。この過程には、現在1カ月半から2カ月程度がかかります。ここで問題となるのが、スポンサーとなる会社が設定される給料を支払えるだけの経済的能力があると「I-140」の申請の際に立証しないといけないということです。これに関しては、後述します。
 
この給料の設定が終わった後は、人材募集広告を約1カ月行い、その募集に対する応募者の反応を見るためさらに1カ月待ちます。
 
次の過程については、最近では以前に比べてかなり遅れ気味になっており、監査(Audit)の通知が来なかった場合でも、約9~11 カ月を要しています。通知を受けた場合には、監査の過程だけで約6カ月以上を要しています。
 
「I-140」の審査では、前述したように、スポンサーである会社が労働局が定める規定の給料を払うだけの経済的能力があるか否かが審査基準となります。
 
まず、申請者が何らかの労働ビザを持ち、現在スポンサーの会社で働いている場合、すでに規定額の給与が支払われているかが問われます。もし規定額がすでに支払われている場合は、仮にその会社が赤字であっても認可される可能性は大きくあります。
 
申請者の給与が規定額未満の場合には、会社の純利益が規定の給与額と実際にもらっている給与額との差額分以上あるかどうか、また、申請者が現在働いていない場合は、会社の純利益が規定の給与額以上あるか否かが判断の対象となります。もし、規定額に達していれば認可される可能性は大きくありますが、例えば会社が赤字などで達していない場合は、この判断基準をパスすることができません。しかし、現在の給与が会社の純利益も規定額に達していなかったとしても、会社の流動資産が規定の給与を支払えるだけあれば、パスすることも可能です。これは会社の資産表(貸借対照表)から判断されます。

要となるのは毎月更新される優先日

最後の過程⑤は「I-485」の審査ですが、ここでは移民局が労働許可証申請を受け付けた日付、つまり優先日(Priority Date)がカギとなります。就労ビザである「H-1B」からの永住権取得には、「EB-2」と「EB-3」の2つの部類があり、前者は修士号を持っている、または学士号を保持し、かつ5年の職務経験のある人が当てはまります。「EB-3」は、学士号を持っている、または2年の職務経験のある人が対象です。
 
「EB-2」に該当する人は現在、前述の監査にかからなければ、この優先日に左右されることなく、永住権を約1年半から2年半で取得できます。しかしながら、「EB-3」の場合は、自身の優先日が回ってくるまで、「I-485」の申請を待つ必要があります。
 
現在(2014年8月時点)の優先日は2011年4月1日ですので、約3年4カ月の待ち時間ということになります。例えば今から3カ月前の2014年5月の優先日だと、2012年10月1日なので約2年の待ち時間、また今から約1年半前の2013年2月の優先日だと2007年3月15日になっていて、約7年の待ち時間となっています。この「I-485」申請の待ち時間の違いが、最近(2014年5月あたり)、永住権の取得が早くなったと言われていた理由です。ただし、この優先日は毎月変更されるため、現在申請を開始すれば3年4カ月の待ち時間になるわけではありません。あくまで3年4カ月前に申請した人たちの順番が回ってきているのであって、今後、日付が後戻りすることもあり、正確な期間は未定です。
 
いずれにせよ、早く申請を行えば行うほど永住権が早く取得できることに変わりません。アメリカに永住、もしくは長期滞在を既に決められているのであれば、早めの永住権申請をお勧めします。
 
(2014年8月1日号掲載)

永住権取得前に就労(H-1B)ビザが失効する場合の対処法は?

吉原 今日子 弁護士

Q:就労ビザ(H-1Bビザ)を持つ主人の妻(H-4ビザ保持者)です。日本でシェフの経験があり、アメリカで知り合ったレストラン経営者から「ぜひ雇いたい」と言われました。現在、このレストランをスポンサーにして、「カテゴリー3」でグリーンカードの申請を行っています。I-485の審査の順番待ちですが、Priority Date(優先日)が来る前に、主人のH-1Bビザが切れてしまいます。その場合、どうなるのでしょうか?

A:Priority Date が来る前に、ご主人の就労ビザ(H-1Bビザ)が失効してしまうと、H-4 ビザも必然的に失効し、米国滞在ができなくなります。従って、その後、何のアクションも取らない場合、一旦日本に戻り、あなたのグリーンカードの申請を「Consular Process」(最後の段階の手続きを日本で行う方法)に切り替えます。そして、Priority Date が来た時点で、在日米国大使館で面接を受けます。そこで半年間有効で1回限り使用可能のImmigrant Visa の発行を受け、米国に入国すれば、その後約3週間程度で、入国の際に届け出た住所にグリーンカードが送られてきます。
 
しかし、ご主人がH-1Bビザで仕事をされていること、ご夫婦とも米国での生活が長く、生活の基盤が米国にあることを考えると、一旦日本に帰ってPriority Date が来るのを待つことは、容易なことではないでしょう。そこで、米国に滞在し、ご主人も就労を続けながらPriority Dateを待てるオプションの1つをご説明しましょう。

グリーンカードの別申請で米国に滞在し、就労の続行可

ご主人のH-1Bビザが失効するまで1年3カ月以上ある場合、ご主人もグリーンカードの申請を開始することをおすすめします。ご主人がH-1Bビザを取得しているということは、グリーンカード申請の条件を満たしているはずです。この手続きは、ご主人の現在の雇用主に限る必要はなく、グリーンカード申請の条件を満たしている会社ならば、他の会社でもスポンサーとなることが可能です。
 
グリーンカード申請のための会社側の主な条件としては、ご主人の学歴、あるいは職歴を活かす役職が存在していること、会社の決算が、労働局によって定められているご主人の給与(Prevailing Wage)以上の黒字である、あるいは、仮に赤字であったとしても、会社の現在の資産価値が、Prevailing Wage 以上ある(例えば、債務超過していない)ことなどです。
 
グリーンカードの申請を始めて1年以上経過していれば、H-1Bビザの最長期間の6年を過ぎても、1年ごとに延長申請することができます。ただし、グリーンカードの申請が開始されたとみなされるのは、「Labor Certification」の申請を労働局に行った時点ですので、その前に、「Prevailing Wage Request」に約1カ月、募集広告に2カ月必要です。ですから、ご主人のH-1Bビザが失効するまでに1年3カ月以上の猶予が必要となるわけです。
 
もし失効まで1年3カ月を切っている場合、ご主人のグリーンカード申請を「カテゴリー2」で行う方法が考えられます。カテゴリー2での申請を行うためには、修士号を取得しているか、学士号に加え、5年以上の職歴が要求されます。ただし、H-1Bビザを職歴による換算ではなく、学士号で取得したことが前提です。もし、H-1Bビザが切れるまでに1年3カ月ないのであれば、おそらく現時点において、5年以上の職歴があるはずですから、問題はないでしょう。
 
Labor Certification の申請に約1カ月、さらにその後のI-140 の申請も約15 日(通常約5カ月を要しますが、「Premium Processing」を用いれば15 日以下に短縮できます)、合計4.5 カ月で、I-140 の認可を得ることができます。I-140 が認可されていれば、H-1Bビザの最長期間の6年を超えても、3年ごとの延長が可能です。従って、ご主人のH-1Bビザが失効するまで4カ月と15 日あれば、この手続きを行える可能性があるわけです。
 
ただし、ここで注意していただきたいことは、5年間の職務経験を積んだ会社で、H-1Bビザと同じ役職でのグリーンカード申請は行えないことです。また、Labor Certification の審査において「Audit(監査)」を受けると、約10カ月間余計に、手続きに時間を要してしまうことです。
 
Auditの間に、ご主人のH-1Bビザが切れてしまう事態に備えようとするなら、複数の会社をスポンサーにしてグリーンカードの申請を行うことも、手段の一つとして考えられます。

H-1Bビザ有効期限間際のグリーンカード申請の方法

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、現在ある日系企業でH-1Bビザにて就労していますが、H-1Bの最長有効期間の6年間まであと半年しかありません。会社からはグリーンカードの申請を始めるようすすめられているのですが、周りの人の話では、もう間に合わないと言われています。今からでも申請は間に合いますか?

A:残された期間(6カ月)でグリーンカードの申請を行い、なおかつ継続してアメリカにおいて就労を続ける方法としては、2通り考えられます。
 
まず、修士号か学士号を持っており、なおかつ5年以上の実務経験がある場合、雇用によるグリーンカード申請の第2優先カテゴリー(EB2)において、申請することをおすすめします。雇用を通してグリーンカード申請を行う場合、まず、募集広告を行い、次に労働局にて「Labor Certification」の申請を行います。その後、I-140と呼ばれるスポンサー企業の審査、およびI-485と呼ばれる申請者個人の審査が行われます。
 
H-1Bの6年間の有効期間が切れてしまう前に、I-485の申請を行うことができれば、継続してアメリカに滞在でき、その後、就労許可を取得することができます。募集広告を行うには2カ月、Labor Certificationを取得するのに、現在、約2~3カ月要していますが、EB2カテゴリーにおいては「Priority Date(優先日)」が現在のところ「Current」であるため、その後のI-140の申請とI-485の申請を同時に行うことができます。
 
次に、前記カテゴリーに当てはまらない場合、第3優先(EB3)のカテゴリーにおいてグリーンカード申請をすぐに行い、その後にH-1Bの延長申請を行うことで、継続してアメリカに滞在する方法が考えられます。従来ならば、「American Competitiveness in the Twenty-first Century Act」という法律の106条a項によって、H-1Bの6年目以降の延長は、グリーンカードの申請を開始して1年以上待っている場合のみ可能でした。従って、H-1Bの残りの期間が1年に満たないケースの場合は、米国滞在を諦めざるを得ないという場合がほとんどでした。

H-1B期限内のI-140認可で3年間の延長が可能に

しかし、移民局は今年6月16日に、H-1Bの6年間の有効期間終了前60日間に限り、I-140の申請に「Premium Processing」の適用を認めると発表しました。これにより、あなたやあなたと同様の立場にいる人が、グリーンカードの申請を行うことにより、継続してアメリカに滞在し、就労し続ける大きなチャンスが与えられたと言えます。
 
このPremium Processingとは、従来の申請料に加えて、1000ドルを移民局に支払うことにより、15日間以内に「認可」「却下」「追加資料の請求」「不正申請に対する調査の開始」のいずれかの結果を、移民局が出すという制度です。追加資料の請求の通知が来た場合には、要求されている資料を提出した後、再び15日以内に移民局が結果を出すことになっています。以前は、ほとんどすべてのI-140の申請にPremium Processingが適用されていましたが、その後、適用は停止されていました。
 
今回、一部のI-140申請のケースへの適用再開が決定されましたので、募集広告を行い、Labor Certificationを取得した後に、I-140申請をPremium Processingで行えば、H-1Bビザの有効期限が切れる前に、認可を取得することができる可能性が高いでしょう。そして、I-140の認可を取得できれば、今度は、American Competitiveness in the Twenty-first Century Actの104条c項の適用を受けることができます。これは、I-140の認可を受けていれば、H-1Bビザの最長有効期限の6年目以降であっても、さらに3年間の延長申請ができると規定しています。
 
従って、Premium Processingを使うことにより、I-140の認可をH-1Bの期限内に受けることができれば、H-1Bの3年間延長の申請ができ、継続してアメリカに滞在することができるわけです。その後は、Priority Dateが巡って来るのを待ってI-485申請を行うか、「Consular Processing」により、日本のアメリカ大使館にてインタビューを受けることにより、グリーンカードの取得が可能です。
 
あなたの場合、前記のいずれの方法を使うにせよ、時間が限られていますので、1日も早く専門の弁護士に相談され、今回のチャンスを大いに活かして申請を行うことをおすすめします。
 
(2008年8月1日号掲載)

ジャーナリストなど報道関係者に必要なビザ「Iビザ」とは?

ジャーナリストなど報道関係者に必要なビザ

吉原 今日子 弁護士

Q:私は日本で女優を目指しながら、雑誌に掲載するエッセーやコラムを書いています。今までに多くの映画に関するコラムを執筆してきました。最近、アメリカで映画関係の取材やアメリカの流行などの記事を書いてほしいとの依頼がきています。この場合、どのような条件で、どのビザが必要なのでしょうか?

A:アメリカに渡り、報道活動に関わるジャーナリストとして活動するためには、特別なビザを取得する必要があります。
 
ビザ免除プログラム(Visa Waiver)や、「B-1(Temporary Business Visitor)」いわゆる短期商用ビザを利用してのアメリカへの入国を考えるかもしれませんが、残念ながらジャーナリストには認可はされにくく適しません。ビザ免除プログラムや「B-1」ビザを利用しての入国は、商用または専門的な会議や大会への出席、取引先との商談、契約交渉、商品または材料の買い付け、裁判所での証言、独自に行う調査などの目的に限られています。
 
従って、それらを利用して入国した場合、給料の有無にかかわらず就労はできず、各メディアに記事や素材を提供するジャーナリストとして米国内で生産的な業務に就くことはできません。

 

「I」(報道関係者)ビザを取得するための条件と注意点

日本の雑誌社に雇われていて、米国内での取材活動を目的にアメリカに滞在するには、「I(Representatives of Foreign Media)」ビザを取得する必要があります。「I」ビザは、取材の必要性によって、最長5年間有効です。
 
報道関係者としてビザの発給を受けるには、その資格があることを証明しなければなりません。「I」ビザ受給者は、報道、ラジオ、映画、出版に携わる米国外報道機関の記者、撮影スタッフ、編集者、また同種の職業に就く人など、その報道機関の活動に重要な「外国報道機関の代表」に該当する必要があると、米国移民法では定められています。移民局の審査官は、申請者の活動が「I」ビザに適しているかを重要視します。ここでいう活動とは、その本質に報道性があり、最近の出来事の取材に関連したものを指します。報道活動の例としては、外国報道機関職員によるニュースソースの収集、ドキュメンタリーの撮影、独立した制作会社や映像の配給会社に所属し、情報配信やニュースに使用する映像を撮影するなどの内容が挙げられます。なおかつ、これらにかかる費用の出所、および配給が米国外である必要があります。また、非移民の証明として、アメリカでの滞在が短期間あるいは一定期間のみであること、米国滞在中の費用をまかなう資金を保持していること、米国滞在終了後に自国に戻る意志があり、また自国との社会的、経済的な強いつながりを持っていると証明できなければいけません。
 
加えて、「I」ビザの審査には、以下の条件を満たしていることも必要です。
 
①スポンサー企業の報道関係者である
報道関係者であると証明をするために、通常、報道機関から発行される身分証明書を提出します。「I」ビザスポンサー企業以外の依頼による取材活動はできず、スポンサーから依頼された取材活動に専念しなければなりません。
 
②スポンサー企業からの収入が保証されている
申請者の収入は、アメリカ企業からではなく、日本の会社から支払われていなければなりません。この保証として、雇用主からの手紙やアメリカでの取材活動の詳細説明、滞在費用負担を示す書類などが必要です。
 
③スポンサー企業が米国外に事務所を設立している
報道関係者は、社員として雇われる場合と、一定の期間、またはある事件の解決のめどに応じて契約を結び、取材や報道活動を行う場合があります。どちらも日本の会社からの派遣でなければいけません。

フリーランスで「I」ビザを取得する場合

特定の報道機関に所属していないフリーランスジャーナリストの場合は、専門的な報道組織が発行する身分証を所持している、報道機関と契約を結んでいる、商業、娯楽、あるいは宣伝広告が主目的ではない情報(例えばスポーツの試合)やニュースを米国外の視聴者に配信するという3つの条件を全て満たした場合に「I」ビザの申請が可能です。
 
いくつかの活動はその情報性により、明らかに「I」ビザを受ける資格がありますが、該当しない場合も多くあります。例えば、娯楽や宣伝、広告のための映像撮影を目的とした就労、校正者、図書館司書、映画撮影セットのデザイナーやその他報道関連の職業も該当しません。
 
(2014年7月16日号掲載)

アメリカで記者として働きたいのですがどのようなビザが考えられますか?

吉原 今日子 弁護士

Q:私は大学で文学部新聞学科を専攻し、日本の雑誌社で記者として働いています。アメリカでも記者として活動したいと考えていますが、どのようなビザが考えられるでしょうか。

A:アメリカで記者として働くには、2つのビザの取得方法が考えられます。日本の新聞社に雇われていて、アメリカにて報道活動をするなら、「Iビザ」の申請ができます。また、アメリカの新聞社で働くなら「H-1B」の取得をおすすめします。

「I ビザ」を取得するための条件と注意点

日本の新聞社の記者としてアメリカに来る場合、報道関係者としてビザの発給を受ける資格があることを証明しなければなりません。米国移民法では、「Iビザ」は、報道、ラジオ、映画、出版に携わる外国報道機関の記者、撮影クルー、編集者、同種の職業に就く人など、その報道機関の活動に重要な「外国報道機関の代表」に該当するとしています。領事は申請者の活動が「Iビザ」に適しているかを審査します。活動は本質的に報道性があり、概して最近の出来事の取材に関連したものでなければなりません。報道活動の例として次のようなものが挙げられます(これらに限られるわけではありません)。
 
●外国報道機関職員によるニュースやドキュメンタリーの撮影 、プロダクションや映像配給会社に所属する人で、撮影した映像が情報配信やニュースに使用され、なおかつその費用の出所、および配給が米国外である場合。
●報道機関と有効な雇用契約を結んでいるフリーランスジャーナリストで、商業的、あるいは宣伝広告が主目的ではない作品を、米国外の視聴者に見せるために活動する場合。
 
また、非移民の証明として米国での滞在が短期間あるいは一定期間のみであること 、米国滞在中の費用をまかなう資金があること 、米国滞在終了後、自国に戻るための社会的、経済的な強いつながりがあることの証明をしなければなりません。「Iビザ」のスポンサーに関する必要条件は以下の通りです。
 
①スポンサー企業の報道関係者であること
報道関係者の証明には、通常、報道機関からの身分証明を使います。「Iビザ」で他社の依頼による取材活動はできず、「Iビザ」のスポンサー会社の取材活動に専念しなければなりません。
 
②スポンサー企業(新聞社など)からの収入の保証があること
申請者の収入はアメリカ企業からではなく、派遣した日本から支払われていなければなりません。この保証として雇用主からの手紙、アメリカでの取材活動の詳細説明、滞在費用負担を示すものなどを準備します。
 
③スポンサー企業がアメリカ国外に事務所を設立していること
報道関係者は、社員として雇われる場合と、一定の期間、またはある事件の解決のメドに応じて契約を結び、取材・報道活動を行う場合があります。どちらも日本の会社からの派遣でなければ「Iビザ」は取得できません。
 
いくつかの活動はその情報性により明らかに「Iビザ」を受ける資格がありますが、該当しない場合も多くあります。「Iビザ」での報道活動に該当するかを判断する際、その活動が純粋に報道性があるか、あるいは概して取材活動に関連しているかという2つの要件を考慮します。例えば、「Iビザ」は娯楽や宣伝、広告のためのフィルム撮影の目的で就労する人には該当しません。校正者、図書館司書、映画撮影セットのデザイナーやその他報道関連の職業も「Iビザ」には該当しません。

「H-1B」を取得するための条件と注意点

もし前記の条件に合わず、アメリカの新聞社や出版社に記者として就職する場合、必要なビザは「Iビザ」ではなく、「H-1B」(就労ビザ)です。
「H-1B」取得のための大まかな条件は、
①申請者が学士号以上、またはそれに匹敵する職務経験を保持していること
②申請する業種は、学士号以上の学歴を必要とし、専門知識を要求するものであること
③①の学士号、あるいは経験が、職務において活かされるものであること 
 
あなたの場合、文学部新聞学科を専攻し、記者として職務を果たすために活かされる学位をお持ちですから、「H-1B」ビザを取得できる可能性があります。もちろん、新聞、雑誌などの内容も重要です。
 
取材活動がアメリカ国外の会社の依頼であれば、(たとえアメリカ国内に子会社があっても)「Iビザ」が必要ですし、アメリカ国内の新聞社に勤めるのであれば、「H-1B」の申請をしなければなりません。「H-1B」には6万5000の枠、10月開始などの規定があります。いずれにせよ、ビザ取得条件に見合うかどうか、まず取材目的、内容、会社の活動内容などを確認する必要があるので、専門の弁護士にご相談ください。
 
(2013年4月16日号掲載)

フリーのジャーナリストとして就労、Iビザ以外に方法はある?

吉原 今日子 弁護士

Q:大学でジャーナリズムを専攻し、卒業してから日本でフリーランスのジャーナリストとして働いています。日本の雑誌社からの依頼で、米国で取材をしたいと思っています。「Iビザ」を取ることは可能でしょうか?また、他の方法はありますか?

A:米国で記者として働くためには、「I」(報道関係者ビザ)か「H-1B」(就労ビザ)の2つのビザの取得が可能性として考えられます。

I(報道関係者)ビザ

メディアの記者として米国に来る場合、報道関係者としてビザの発給を受ける資格があることを証明しなければなりません。米国移民法でIビザは、報道、ラジオ、映画、出版に携わる外国報道機関の記者、撮影クルー、編集者、同種の職業に就く人など、その報道機関の活動に重要な「外国報道機関の代表」に該当するとしています。活動は本質的に報道性があり、概して最近の出来事の取材に関連したものでなければなりません。
 
報道活動の例としては、
●外国報道機関職員によるニュースやドキュメンタリーの撮影
●プロダクションや映像配給会社に所属し、撮影した映像が情報配信やニュースに使用され、なおかつその費用の出所、および配給が米国国外である場合
●報道機関と有効な雇用契約を結んでいるフリーランス・ジャーナリストで、商業的、あるいは宣伝広告が主目的ではない作品を米国外の視聴者に見せるために活動する場合などです。
 
なお、米国での滞在が短期間、または一定期間である(永住目的でない)こと、米国滞在中の費用を賄う資金があること、終了後自国に戻るための社会的、経済的なつながりがあることを証明しなければなりません。
 
Iビザでの報道活動に該当するか否かを判断する際、その活動が純粋に報道性があるか、あるいは概して取材活動に関連しているかという2つの要件が考慮されます。ですから、Iビザは娯楽や宣伝、広告など、商業的な目的で就労する方には該当しません。また、校正者、図書館司書、映画撮影セットのデザイナー、その他報道関連の職業に就く方も該当しません。

H-1B(専門職)ビザ

もし日本の雑誌社の米国子会社で働き、米国の会社の依頼で働くのであれば、必要なビザは、Iビザではなく、H-1Bビザになります。
 
H-1Bビザ取得のための大まかな条件は、
●申請者が学士号以上、またはそれに匹敵する職務経験を保持している(12年間の職務経験=4年間の大学での学業、と考えられています)
●申請する業種は、学士号以上の学歴を必要とし、専門知識を要求するものである
●学士号、あるいは職務経験が、当該業種において活かされるものであることです。
 
以上の条件を満たしていれば、H-1Bビザを申請できます。
 
あなたの場合、大学でジャーナリズムを専攻し、記者として職務を果たすために活かされる学位をお持ちですから、H-1Bビザを取得できる可能性があります。もちろん、新聞、雑誌等がどのような内容の記事を載せているかも重要です。取材活動が米国国外の会社からの依頼であれば、たとえ米国国内に子会社などがあってもIビザが必要ですし、米国国内の新聞社などに勤める予定であれば、H-1Bビザの申請をしなければなりません。
 
いずれにせよ、ビザ取得条件に見合うかどうか、まず取材目的、取材内容、会社の活動内容、就労期間などを確認する必要があります。移民法専門の弁護士にご相談ください。
 
(2012年2月16日号掲載)

アーティストなど特殊技能保持者に与えられるOビザ

アメリカのOビザとは

科学、芸術、教育、ビジネス、スポーツ、テレビ、映画などの分野で「卓越した能力を有する」「卓越した業績を残した」者(アーティストなど)に発給されるビザ。

  • 有効期間:不定だが、初回は最長で3年。
  • 更新の可否:可(1年ずつ)。延長認可は活動内容における滞在延長の必要性がある場合のみ。
  • 取得にかかる時間:準備も含めて準備も含めて60~90日(プレミア申請を含む)
  • 費用概算(弁護士費用含む):$5000前後~
  • 配偶者の扱い:「O-3」
  • 配偶者の労働可否:不可

 

秀でた才能に与えられるビザ

著名なアーティストやスポーツ選手などに与えられる「Oビザ」は、対象によって、「O-1A」と「O-1B」に分かれています(O-1ビザが取れないスポーツ選手やグループアーティストは「P1」ビザを利用します)。

「O-1A」

科学者、教育者、ビジネスパーソン、スポーツ選手などが対象です。ノーベル賞のような権威のある国際的な賞の受賞経験などがない限り、関連分野で次のうち少なくとも3つを満たす必要があります。
① 国内外で認知された賞の受賞経験がある。
② 優れた業績などが入会条件の団体の会員である。
③ 専門誌や知名度の高い出版物、メディアで取り上げられたことがある。
④ 当該分野で審査委員を務めたことがある。
⑤ 当該分野で大きな功績を残したことがある。
⑥ 専門誌や学術誌、知名度の高いメディアに出稿したことがある。
⑦ 極めて知名度が高い団体で重要な役職に就いている(また就いていた)。
⑧ 能力・業績に匹敵するような高い収入を得ている。

「O-1B」

芸術分野で「卓越した能力を有する者」、または映画・テレビの分野で「卓越した業績を残した者」が対象です。この取得には、アカデミー賞やグラミー賞、エミー賞などの権威のある賞の受賞かノミネートの経験がなり限りは、次のうち少なくとも3つを満たさなければなりません。
① 公に高評価を受けた作品で主役、準主役的な役割を果たした(果たす予定がある)。
② 新聞や専門雑誌などで大々的に取り上げられた。
③ 著名な団体で主要な役割を担った。
④ 大きな業績を上げた。
⑤ 著名な団体、評論家、政府機関、専門家から高評価を得た。
⑥ 能力・業績に匹敵するような高い収入を得ている。

「Oビザ」取得の注意点

「Oビザ」は個人申請ができないため、スポンサーとなる興行主の会社や団体が必要となります。「O-1」に付随するスタッフは「O-2」となりますが、「O-2」の認可にはその支援が「O-1」にとって不可欠であることが前提となります。
 
移民申請の前に、在米の関連職業組合などから勧告的意見をもらう必要があります(このプロセスに1~2週間かかります)。さらに証拠書類等の準備期間、請願書承認の待ち時間(プレミアム申請で15日間)、移民局の請願書承認後に米国大使館でビザを取得し渡米するまでの時間も考慮する必要があるため、早めに弁護士に相談してください。
 
「O-1」取得後、要件が似通っている「EB-1」カテゴリーでの永住権申請を考えてもいいでしょう。
 
(取材協力・監修:関谷直樹弁護士/ライトハウス・ロサンゼルス版2017年9月16日号掲載)


 

※以下、過去にライトハウス・ロサンゼルス版のコラム「移民法Q&A」に掲載された関連記事をご紹介します。

O-1(特殊技能)ビザの取得方法と労働条件

吉原 今日子 弁護士

Q:日本で音楽プロデューサーをしています。今、アメリカにある2つの会社から、仕事の依頼を請けています。私は、O-1(特殊技能)ビザを取得することはできますか。そして、この2つの会社の両方で働くことはできますか?

A:O-1ビザは、高度の特殊技能者に与えられるビザです。通常、3年間有効で、その後業務が続く限り、1年ごとの延長が可能です。
 
Oビザはいくつかのカテゴリーに分かれ、それぞれに審査基準が異なります。
 
1つ目のカテゴリーは、科学者、教育者、ビジネスパーソン、およびスポーツ選手です。これは、O-1ビザの中で最も厳格な審査が行われるカテゴリーと言われています。審査をパスするには、以下の8つの条件のうち、少なくとも3つを満たす必要があります。
 
① 国際的に認められている賞を受賞したことがある
② 入会するのに厳しい条件が課されている会の会員である
③ 知名度のある出版物、あるいはメディアにおいて、取り上げられたことがある
④ 当該分野において、競技などの審査を担当したことがある
⑤ 当該分野において、大きな功績を残したことがある
⑥ 専門雑誌、あるいは知名度のあるメディアにおいて、記事を出したことがある
⑦ 知名度の極めて高い団体で仕事を行っているか、行った経験がある
⑧ 収入が著しく高い
 
2つ目のカテゴリーは、芸術家、および、芸能人(ただし映画、テレビ関係は除く)のカテゴリーで、1つ目のカテゴリーよりも審査基準は低いとされています。このカテゴリーの審査をパスするには、以下の5つの条件のうち、少なくとも3つを満たす必要があります。
 
① 公の場において高い評価を受けた作品で、主となる役割を果たした。あるいは果たす予定である
② 新聞、専門雑誌等において、大々的に取り上げられた。あるいは、高い評価を得た
③ メディア等に取り上げられた著名な団体で、主となる役割を担った
④ 多大な業績を挙げた記録がある
⑤ 著名な団体、評論家、政府機関、エキスパートから高い評価を受けた
 
そして3つ目のカテゴリーは、映画、テレビ関係のタレント、および制作関係者のカテゴリーです。これには、前記の2つのカテゴリーのような具体的な条件の列挙がなく、「通常以上の、極めて高い評価を受けていること」と明記されているだけです。従って、このカテゴリーにおける審査は、ほかのカテゴリーに比べて広汎であると言えます。

知名度の証明がOビザ取得のポイント

あなたの場合は、前記の2つ目のカテゴリーに属します。これらの条件を満たすためには、ビザ申請者が申請にふさわしい能力を持っていることを証明するさまざまな証拠を提出しなければなりません。日本において(できればアメリカやその他の国でも)残した業績を示す物を、前記の2つ目のカテゴリーのリストに従って集めてください。具体的には、あなたが関わってリリースされたアーティストのCD、プロモーションビデオ、または週刊誌やニュース、テレビに出演したことがあれば、その切抜きやビデオクリップなどになります。あなたの業績を取り上げた新聞や専門雑誌の記事を集め、さらに著名人からの推薦状を取る必要があります。そのほかに、賞などを受けていれば、それを証明する書類を準備する必要があります。0-1ビザ申請では、移民局に提出する前に、Evaluation Company(あるいは移民局に認可された協会)で審査を受け、これにパスする必要があります。この時点で、スポンサーとなる会社(団体)との間で、仕事内容、期間を含めた契約書が必要になります。
 
この審査に通り、Evaluatorからの認可を受けていれば、移民局の審査では少なくとも著名度については認められる可能性が高いということになります。後はスポンサーとなる会社(団体)が適度な規模があり、その会社との間に妥当な雇用契約があれば、ほとんどの場合、O-1ビザは取れます。Oビザを取る上で一番重要なのは、どれだけ知名度を証明することができるかです。
 
なお、あなたのように2つの会社から別々の仕事の依頼を請けている場合、それぞれの会社からの仕事に対して、別々のOビザの認可を移民局から取らなければ、同時期に働くことはできません。

Oビザの取得について、2021年の現状と対策を教えてください!

瀧 恵之 弁護士

Q:私はテレビ番組制作のプロデューサーとして、日本の会社で仕事をしています。コロナパンデミックが終息に向かっている状況に伴い、アメリカでの仕事のオファーを受け、「O-1」ビザの申請を考えています。パンデミック以降、Oビザの審査が非常に厳しいと聞いたのですが、何か良い方法はありますか? できれば、一緒に仕事をしている私のアシスタントも一緒に連れていきたいと考えています。

A:「O-1」ビザは高度の特殊技能者に与えられるビザです。3つのカテゴリーに分けられ、それぞれのカテゴリーによって審査基準が異なります。

Oビザの3つのカテゴリーでの審査基準の違い

 

1つ目のカテゴリーは、科学者、教育者、ビジネスマンおよびスポーツ選手で、「O-1」ビザの中で最も審査が厳格とされています。審査をパスするには、以下の8つの条件のうち、少なくとも3つを満たしている必要があります。
①国際的に認められている賞を受賞したことがある。
②入会するにあたり、厳しい条件を課されている会の会員である。
③知名度のある出版物あるいはメディアで取り上げられたことがある。
④当該分野において、競技などの審査を担当したことがある。
⑤当該分野において大きな功績を残したことがある。
⑥専門雑誌、あるいは知名度のあるメディアで記事を出したことがある。
⑦知名度の極めて高い団体において仕事を行っている、あるいは行った経験がある。
⑧収入が著しく高い。

次に、2つ目のカテゴリーは、芸術家、および芸能人(ただし映画・テレビ関係は除く)のカテゴリーで、これは前者のカテゴリーよりも審査基準は低いとされており、審査をパスするには、以下の5つの条件のうち、少なくとも3つを満たしている必要があります。
①公の場で高い評価を受けた作品において、主な役割を果たした、あるいは果たす予定である。
②新聞、専門雑誌等において大々的に取り上げられた、あるいは高い評価を得た。
③メディア等で著名な団体において主な役割を担った。
④多大な業績を上げた記録がある。
⑤著名な団体、評論家、政府機関、エキスパートより高い評価を受けた。

3つ目は、映画、あるいはテレビ関係のタレントおよび製作関係者のカテゴリーです。このカテゴリーでは、上記の2つのカテゴリーのような具体的な条件の列挙はなく、通常以上の極めて高い評価を受けていることとされているのみです。従って、このカテゴリーにおける審査は第1・第2のカテゴリーに比べて、広汎なものと言えます。

 

活動内容とコロナ対策を示せることが重要となる

あなたのケースは、上記のうち3つ目のカテゴリーに属します。従って、他のカテゴリーのような厳格な基準があるわけではないので、あなたが今までに行ってきた業績、あなたの著名度を示す書類をできる限り多く集められることが重要です。特に、今まで雑誌や専門誌などで取材を受けたことがある、賞を受けたことがある、また給与が著しく高いなどの証拠書類を可能な限り準備するのが得策です。

「O-1」ビザの申請は、アメリカの移民局での認可を受けた後、日本のアメリカ大使館・領事館にて面接をパスすればビザが発行されます。パンデミック以降、移民局の認可を受けた後でも、日本のアメリカ大使館・領事館での面接がスムーズにいかないケースがあります。ここで重要なのは、あなたのアメリカでの活動内容、その活動に値するあなたのキャリア、および当該の活動を行うにあたって、コロナ禍における十分な対策を講じているかを明確に説明できること、可能であればその補足資料がそろっていることです。特に、あなたのアメリカ国内においての活動スケジュールがコロナ禍において実行可能であること、また、コロナ対策が必要な場合、その対策について示す資料を準備していくのも得策です。

次に、アシスタントを同行させるには、「O-2」ビザが適していると考えます。「O-2」ビザを取得するには、以下の条件を備えている必要があります。
①「O-1」ビザを取得する者のアシストを行うことのみを目的として米国に入国すること。
②上記の仕事内容は、「O-2」ビザ申請者と「O-1」ビザ保持者との長期にわたる仕事上の関係ゆえに、申請者が「O-1」ビザ保持者のアシストを行うことが不可欠であること。
③「O-2」ビザ申請者が当該の仕事に米国入国前の準備段階から携わっており、「O-2」ビザ申請者が継続してそれに従事することが重要であること。

あなたの場合は、あなたのアシスタントがあなたと長期にわたり、一緒に仕事を行ってきたことを証明する書類を提出することが重要になります。「O-2ビザは「O-1」ビザ保持者の滞在期間と同じ期間が与えられます。また、「O-1」ビザ、「O-2」ビザの保持者の配偶者と21歳未満の子どもには「O-3」ビザが与えられます。

(2021年8月16日号掲載)

ゴルフのインストラクターとして渡米するために必要なビザは?

瀧 恵之 弁護士

Q:日本でプロゴルファーをしています。今回、アメリカのトーナメントに出場したことがきっかけで、アメリカでゴルフを教えることになりました。どのようなビザを申請すれば良いですか?また、私のアシスタントも一緒にアメリカに行き、私の仕事を手伝ってもらいたいと考えています。彼に適したビザはあるのでしょうか?

A:特殊技能保持者に与えられる、「O-1」ビザ取得の可能性が考えられます。O-1ビザは、高度の特殊技能者に与えられるビザです。3つのカテゴリーに分かれ、ビザが認可されるか否かは、各カテゴリーごとに審査され、それぞれ基準が異なります。まず、1つ目のカテゴリーは、科学者、教育者、ビジネスパーソン、およびスポーツ選手です。このカテゴリーは、O-1ビザの申請の中で、最も厳格な審査が行われるとされています。審査をパスするには、以下の8つの条件のうち、少なくとも3つを満たす必要があります。
 
① 国際的に認められている賞を受賞した
② 入会するにあたり、厳しい条件を課されている会の会員
③ 知名度のある出版物、あるいはメディアにおいて、取り上げられた
④ 当該分野において、競技などの審査を担当した
⑤ 当該分野において、大きな功績を残した
⑥ 専門雑誌、あるいは知名度のあるメディアにおいて、記事を出した
⑦ 知名度の極めて高い団体で仕事を行っている、あるいは行った経験がある
⑧収入が著しく高い
 
2つ目は、芸術家、および芸能人(ただし、映画、テレビ関係は除く)のカテゴリーです。これは、前者よりも審査基準は低いとされています。このカテゴリーでの審査をパスするには、以下の5つの条件のうち、少なくとも3つを満たす必要があります。
 
① 公の場で高い評価を受けた作品において、主な役割を果たした、あるいは果たす予定
② 新聞、専門雑誌等において、大々的に取り上げられた、あるいは高い評価を得た
③ メディア等の著名な団体で、主な役割を担った
④ 多大な業績を上げた記録がある
⑤ 著名な団体、評論家、政府機関、エキスパートから高い評価を受けた
 
3つ目は、映画、テレビ関係のタレント、および製作関係者のカテゴリーです。このカテゴリーは、前記のような具体的な条件の列挙がなく、「通常以上の極めて高い評価を受けている」とされているだけです。従って、このカテゴリーにおける審査は、前記2つに比べ、広汎であると言えます。
 
あなたの場合は、前記の1つ目のカテゴリーに属します。O-1ビザを申請する際には、常にスポンサーが存在していることが必要ですので、あなたの場合、ゴルフを教える学校、ゴルフ場、あるいはあなたにエージェントがいれば、そのエージェントとの間の雇用契約書を提出することになります。
 

アシスタントも同期間の滞在が可能

また、アシスタントをアメリカに同行させるのには、「O-2」ビザが適していると考えられます。随行させるアシスタントが、例えば日本で長年にわたってあなたのアシスタントとして従事してきたのであれば、それを証明することが重要なポイントになります。なお、O-2ビザは、O-1ビザ保持者の滞在期間と同期間与えられます。また、O-1ビザ保持者の配偶者には、「O-3」ビザが与えられ、O-1ビザ保持者と同期間の滞在が許されます。
 
(2012年1月1日号掲載)

米国のテレビ局で働くにはどのようなビザを取得すべき?

吉原 今日子 弁護士

Q:日本の大学の放送学科を卒業し、10年以上、テレビプロデューサーとして働いています。米国の制作会社からテレビの仕事の依頼を受けました。私がこの制作会社で働くためには、どのようなビザを取得すればよいか教えてください。

A:まず「O-1」ビザの取得が考えられます。O-1は、高度の特殊機能者に与えられるビザです。有効期間は3年間で、その後も業務が続く限り延長可能です。O-1ビザが認可されるか否かは、3つのカテゴリーで審査され、それぞれ基準が異なります。
 
1つ目のカテゴリーは、科学者、教育者、ビジネスパーソン、およびスポーツ選手です。このカテゴリーは、最も審査が厳格と言われています。パスするには、以下の8条件のうち、少なくとも3つを満たす必要があります。
 
① 国際的に認められている賞を受賞した
② 入会するのに厳しい条件が課されている会の会員
③ 知名度のある出版物、あるいはメディアに取り上げられた
④ 当該分野において、競技などの審査を担当した
⑤ 当該分野において、大きな功績を残した
⑥ 専門雑誌、あるいは知名度のあるメディアに記事を出した
⑦ 知名度の極めて高い団体で仕事を行っている、行った経験がある
⑧ 収入が著しく高い
 
2つ目のカテゴリーは、芸術家や芸能人(映画、テレビ関係は除く)のカテゴリーで、これは1つ目のカテゴリーよりも審査基準は低いとされています。このカテゴリーをパスするには、以下の5条件のうち、少なくとも3つを満たす必要があります。
 
① 公の場で高い評価を受けた作品で、主となる役割を果たした。あるいは果たす予定
② 新聞、専門雑誌等において、大々的に取り上げられた。あるいは高い評価を得た
③ メディア等に取り上げられた著名な団体で、主となる役割を担った
④ 多大な業績を挙げた記録がある
⑤ 著名な団体、評論家、政府機関、専門家から高い評価を受けた
 
そして、3つ目のカテゴリーは、映画、テレビ関係のタレント、および制作関係者のカテゴリーです。このカテゴリーには、前記の2つのカテゴリーのような具体的な条件の列挙がなく、「通常以上の極めて高い評価を受けている」と明記されているだけです。従って同カテゴリーの審査は、広汎であると言えます。
 

知名度を証明できれば4大卒であればH-1Bを選択

あなたの場合は、前記の2つ目のカテゴリーに属します。日本において(できれば米国やその他の国でも)残した業績を示す証拠を、前記のリストに従って集めてください。そして、移民局に提出する前にEvaluation Company(あるいは移民局に認可された協会)に提出します。
 
具体的には、業績を取り上げた新聞や専門雑誌の記事を集め、著名人からの推薦状を取る必要があります。そのほかに、受賞歴があれば、それを証明する書類を準備する必要があります。
 
Oビザ取得の際、一番重要なのは、いかに知名度を証明することができるかです。申請では、移民局に申請書を提出する前に、当該分野の専門団体の審査を受け、パスする必要があります。これにパスすれば、移民局の審査で、著名度が認められる可能性が高いということになります。あとは、スポンサー企業との間に妥当な雇用契約が存在すれば、ほとんどの場合、取得できます。
 
もし知名度を証明できない場合でも、あなたは大学を卒業しているので、「H-1B」ビザ申請の可能性が考えられます。H-1Bを取得するには、以下の条件を満たしていることが必要です。
 
① 学士号(あるいは匹敵する経験)以上が当該業種の職務に要求される
② 学士号(あるいは匹敵する経験)以上を保持する者でないと、職務遂行できないほど特殊である
③ 雇用主が、その役職に従事する者に対して、一般的に学士号(あるいは匹敵する経験)以上を必要としている
④ 職務内容が、専門的かつ複雑で、その職務を行うにあたって、通常学士号(あるいはそれに匹敵する経験)以上の知識を必要とする
 
あなたが、新聞、雑誌、テレビなどで紹介されるほど有名でなければ、H-1Bビザを取得する方が安全と言えます。
 
(2011年9月16日号掲載)

Oビザの審査基準とグリーンカード取得の可能性は?

吉原 今日子 弁護士

Q:私は米国の大学院でFilm and Artsを専攻し、今年卒業予定です。日本で10年間、テレビの製作会社で働いていました。私の経歴だとOビザが取れる可能性があると聞きましたが、今後の就職において、どのようなビザが取得可能ですか?またグリーンカードの取得は可能かも教えてください。

A:O-1ビザは、高度の特殊技能者に与えられるビザです。有効期間は3年間で、その後も業務が続く限り、1年ごとの延長が可能です。ビザが認可されるか否かは、いくつかのカテゴリーに分けられ、それぞれ審査基準が異なります。芸術家、および芸能人(ただし映画、テレビ関係は除く)がO-1ビザ申請をする際、以下の5つの条件の中で、少なくとも3つを満たしている必要があります。
 
① 公の場で高い評価を受けた作品において、主な役割を果たした、あるいは果たす予定である
② 新聞、雑誌などで大々的に取り上げられた、あるいは高い評価を受けた
③ メディア関係の著名な団体において、主な役割を担った
④ 多大な功績をあげた記録がある
⑤ 著名な団体、評論家、政府機関、エキスパートから、高い評価を受けた
 
これらの条件を満たすためには、業績を取り上げた新聞や専門誌の記事を集め、次に著名人からの推薦状を取る必要があります。その他に、賞などを受けていれば、それを証明する書類を準備する必要があります。
 
O-1ビザ申請では、移民局に申請書を提出する前に、当該分野の専門団体からの審査を受け、これにパスする必要があります。この審査にパスすれば、移民局の審査で少なくともの著名度については、認められる可能性が高くなります。後は、スポンサーとなる会社との間に妥当な雇用契約が存在すれば、ほとんどの場合取得できます。取得の際に最も重要なのは、知名度をいかに証明するかということです。
 
もし、前記のように知名度を証明できなければ、あなたの場合、大学院を卒業するので、H-1Bビザ申請の可能性が考えられます。
 
H-1Bビザ取得には、以下の条件を満たしていることが必要です。
① 通常、業種に関連する学士号(またはそれに匹敵する職務経験)を持つ
② 当該業務は、学士号(または同上の経験)以上を保持する者でないと遂行できないほど特殊である
③ 雇用主が、その職務に従事する者に対し、一般的に学士号(または同上の経験)以上を必要としている
④ 職務内容が専門的かつ複雑で、職務を行うにあたり、学士号(または同上の経験)以上の知識を必要とする
 
あなたの場合、大学院を卒業するので、専攻と関連する業種であれば、H-1Bビザの取得が可能です。

知名度を証明することにより短期間でグリーンカード取得

通常、雇用を通してのグリーンカード申請の場合、大きく分けて3つのステップがあります。第1ステップは、「Labor Certification」(労働局の審査で「PERM」と呼ばれる)です。第2ステップではI-140を提出し、スポンサー企業が労働局で定められた給料を払うことができるかどうかが審査されます。第3ステップでは、I-485を提出し、申請者自身が取得条件を満たしているか審査されます。
 
そして、「EB-1」「EB-2」の2つのカテゴリーでの申請が、選択肢として考えられます。
 
EB-1での申請は、科学、芸術、教育、ビジネス、スポーツの分野で、類稀な能力を持つ人が可能です。これは、知名度を証明することによってグリーンカードを取得できる方法です。EB-1での申請の場合、前記の第1ステップを行う必要がなく、第2、第3ステップから始められます。ですから、審査時間が短くて済み、1~1年半という短期間での取得が可能です。しかし、EB-1での申請認可を受けるには、O-1ビザにおける審査基準よりも遥かに高いハードルをクリアすることが要求されます。その分野でトップ2%に位置する、かなりの著名・有名人でないと、この基準をパスすることは難しいと言えます。
 
一方、EB-2での申請は、大学を卒業し、スポンサー企業の業務に関連した職務経験が5年以上あるか、修士号を取得している場合に可能です。この場合、第1ステップは必要ですが、第1ステップ終了後、第2、第3ステップを同時申請できます。ですから、およそ2年間でグリーンカードを取得することができます。
 
あなたの場合、修士号を取得する予定とのことですから、映画、映像関連の会社に就職できれば、EB-2でのグリーンカード申請が可能です。EB-1のように知名度を証明する必要がないので、時間は多少かかりますが、EB-2での申請の方が確実かもしれません。
 
(2010年7月16日掲載)

O-1(特殊技能)ビザ取得条件とその後に必要な永住権申請

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、アメリカで語学学校に在籍しています。日本では、映画やテレビ番組のプロデューサーとして仕事をしてきました。アメリカで私の技能を活かした仕事を探していましたが、先日、気に入ったスポンサーも見付かり、この会社で少なくとも10年は働きたいと考えています。私は大学を卒業していないので、「O-1」ビザを取得するのが良いのではと、友人から聞きました。私は、このO-1ビザを申請できるのでしょうか?

A:O-1ビザを申請できる可能性はあるかもしれませんが、仮にO-1ビザを取得することができたとしても、O-1ビザは6年以上の延長が困難な場合がありますので、その後のグリーンカード取得も視野に入れて計画を立てられることをおすすめします。従って、以下にO-1ビザ申請および、その後のグリーンカード申請に関して説明しましょう。
 
まず、O-1ビザ申請に関してですが、O-1ビザは特殊技能保持者に与えられるビザで、以下の5つの条件のうち、少なくとも3つを満たす必要があります。
 
① 公の場において高い評価を受けた作品で、主な役割を果たした。あるいは果たす予定である
② 新聞、専門雑誌等において、大々的に取り上げられた、あるいは高い評価を得たことがある
③ メディア等において著名な団体で、主な役割を担ったことがある
④ 偉大な業績を挙げた記録がある
⑤ 著名な団体、評論家、政府機関、エキスパートから、高い評価を受けたことがある
 
これらの条件を満たすには、具体的には、まず、業績を取り上げた新聞や専門雑誌の記事を集め、次に著名人からの推薦状を得ることをおすすめします。そのほかに、賞などを受けていれば、それを証明する書類を準備することです。あとは、スポンサーとなる会社との間に妥当な雇用契約が存在すれば、ほとんどの場合、O-1ビザ申請は認可されます。
 
O-1ビザは、通常、最初は3年間、その後、2年あるいは3年間(新しいプロジェクトがある場合)の延長が可能です。

非常に厳しい第1優先枠での永住権申請

前述したように、O-1ビザは6年以上の延長が困難な場合がありますので、その後のグリーンカード申請を視野に入れる必要があります。
 
一般的に考えられるのが、第1優先カテゴリーにおける申請です。これは、著名度を証明することにより、最短期間でグリーンカードを取得できる方法で、一般的に就労を通して申請する場合に必要な、Labor Certificationを取得する必要がありません。
 
しかし、このカテゴリーにおいて認可を受けるには、O-1ビザにおける審査基準よりも遥かに高いハードルを越えることが要求されます。かなりの著名・有名人でないと、この審査基準をパスすることは不可能と言えます。O-1ビザを取得した後、6年以内にこの基準に達することができず、その後の滞在ができなくなるというケースが多々あります。
 
そこで、視点を変え、第3優先カテゴリーにおける申請を考えるのも、賢明な手段であると言えます。これは、通常の就労を通してグリーンカードを申請する方法で、4年制大学を卒業していなくても、2年以上の職務経験があれば、条件を満たすことができます。
 
ただし、この申請方法を用いた場合に注意しないといけないことは、米国での就労資格取得までに相当な時間(2年から3年、あるいはそれ以上)を要するということです。従って、O-1ビザの最長6年間の有効期限が切れる直前から準備していたのでは、手遅れになる可能性が大きいということです。
 
最初から少なくとも10年間就労することを予定しているのであれば、最初からO-1ビザの申請と併せ、第3優先カテゴリーにおけるグリーンカードの申請も開始されることをおすすめします。
 
(2009年6月3日号掲載)

国際結婚における子どもの国籍と永住権取得

国際結婚における子どもの国籍と永住権取得

吉原 今日子 弁護士

Q:私はアメリカ人の男性と国際結婚して、永住権を取得しました。現在妊娠中で、主人の仕事の関係上しばらく日本に滞在することになりました。その間に、日本で出産しようと思いますが、子どもには将来的に日本か米国籍を選ばせてあげたいと思っています。日本で生まれた子どもに米国籍を取らせることは可能でしょか?

A:まず、各国が定める国籍法には「血統主義」と「出生地主義」の2種類があります。血統主義とは、日本のように国籍取得においてどちらかの親の国籍が子どもの国籍となるものです。一方、出生地主義とは、親の国籍にかかわらず、自国で生まれた子は自国民とします。アメリカでは、後者の出生地主義を取り入れています。また、アメリカの法律には、重国籍を持つアメリカ人や、子どもの時に第2の国籍を取得したアメリカ人に対して、成人後にどちらかの国籍を選択しなければならないという事項は言及されていません。日本では、20歳未満で二重国籍になった場合は22歳に達するまでに、また20歳以上で二重国籍になった場合はその時点から2年以内に、いずれかの国籍を選択しなければなりません。この期限内に国籍を選択しなかった場合は、法務大臣から国籍選択の催告を受け、場合によっては日本国籍を失うこともあり得ます。

5年以上居住していれば子どもの米国籍申請が可能

アメリカ、アメリカンサモア、スウェイン諸島以外の場所で、アメリカ人とアメリカ人以外の親から、1986年11月14日以降に生まれた子どもが米国外国籍と米国籍を同時に所有するためには、米国籍を持つ親が子どもの出生前に最低5年間はアメリカに居住していたという条件を満たすことが必要です。その5年間のうち最低2年間は、その親が14歳以上の期間でなければいけません。5年以上米国内に居住をしていたと証明するには、アメリカの税金申告書、雇用証明書、アパートの賃貸契約書、米国籍保持者本人による宣誓供述書などを入手します。
 
上記の「居住」とは、住民としてアメリカに居ただけではなく、実際に米国内に留まった期間を意味します。つまり、旅行を含め、米国外に滞在した期間はアメリカに実際に居た期間とは認められません。証拠として古いパスポートの提示を求められる場合もありますが、提出が不可能の場合は他の証明書が必要になります。
 
ただし、米国外に居たとしても、米軍や米国政府関係の職務で海外に勤務していたことが書類によって証明できる場合には、子どもに国籍を与える目的において、その期間はアメリカに居住していた期間として計算されます。米軍、または米国政府職員の扶養家族も同様に、実際は米国外に居た期間も居住期間とみなされます。また、親子関係を示すためには、子どもの出生届け記載事項証明書、米国籍を保持する親の米国パスポート、両親の結婚証明書、過去の結婚の無効証明書(離婚証明書や死亡証明書など)を用意する必要があります。
 
以上の条件を満たしていれば、アメリカ人の夫が日本にいても、お子さんに市民権を取らせることはできます。御主人が5年以上アメリカに居住していた証明を移民局に提出できれば、子どもに米国籍を取らせることができます。

米国外出産した子どもの渡米と米国パスポート申請

米国永住権保持者の母親が一時的に日本へ帰国していて、その間に出産した場合でも、次の条件が満たされれば、子どもは日本のパスポートを使い無査証で渡米が可能です。
 
①子どものアメリカへの入国が生後2年以内
②出生後の入国が親同伴
③その親のアメリカへの再入国が永住権保持者として子どもの出生後、初めて。
 
日本で子どもに米国パスポートを取得させるには、まず在日アメリカ大使館でパスポート手続きのための予約を取ります。16歳未満の子どもの手続きには、両親が一緒に大使館に行く必要があります。片親が一緒に行けない場合は、その親による未成年者のパスポート申請同意書を提出しなければいけません。
 
提出書類の一つに米国籍の証明書がありますが、米国大使館または米国領事館が発行するアメリカの出生証明書、「Consular Report of Birth Abroad(領事による国外出生記録)」がそれに当たります。
 
アメリカのパスポートに記載される名前には、戸籍と異なる名前を入れることができます。例えば、戸籍上は母親の名字になっていて、アメリカ人の父親の名字もパスポートに加えたい場合は「Affidavit Of Child’s Name(子どもの名前に関する宣誓供述書)」を提出します。アメリカのパスポートを取得できるのは、 面接を受けてから約2〜3週間後です。
 
(2014年6月16日号掲載)

アメリカ市民と国際結婚して子どもの永住権も取得する方法

吉原 今日子 弁護士

Q:アメリカ市民の男性と国際結婚し、永住権の申請をしようと思っています。私には2人の息子がいますが、息子たちも私と一緒に永住権が取れるのでしょうか?長男は現在19歳で、次男は10歳です。適切な申請方法があれば教えてください。

A:アメリカ市民が永住権のスポンサーとなる家族申請の場合、そのアメリカ市民が経済的に十分サポート可能な収入があることを証明する必要があります。移民局のガイドライン(2014 年4月現在)によると、生活保護支給の基準値の125%以上の収入が必要とされています。スポンサーのアメリカ市民に配偶者以外の扶養家族がいない場合、最低1 万9662 ドルの年収が必要です。扶養家族が増えると、年収額に1人当たり5075 ドルが上乗せされます。あなたの場合、相手の男性があなたとお子さん2人を経済的に支えることができる収入2万9812 ドルを得ている必要があります。
 
もしそのアメリカ市民に前述の経済能力がない場合、アメリカ市民、または永住権を持つ親、友人などを「ジョイントスポンサー」に付けることも可能です。
 
ただし、スポンサーまたはジョイントスポンサーは、永住権取得者が生活保護などの援助を受けた場合、それを返済する義務が出てきます。この義務は、永住権取得者が次の状況になるまで続きます。
 
①米国市民になる
②永住権を破棄し米国を離れる
③死亡する
④10年間(40 Quarters)納税する。
 
申請の手順ですが、「I-130」(Petition for Alien Relative)と「I-485」(Application to Register Permanent Residence or Adjust Status)という書類を移民局に提出します。申請から通常半年で、永住権を取ることが可能です。申請の際には、申請書、申請料の他に、出生証明書、健康診断書などを提出しなければなりません。書類を移民局に提出して約1カ月後には指紋採取通知がきます。この通知に記載されている日時に、移民局で指紋を取ることになります。また、申請後約2、3カ月で労働許可(Employment Authorization)と再入国許可(Advance Parole)が取得できます。
 
同じくらいのタイミングで移民局での面接に呼ばれますので、面接日には夫婦で出頭し、夫婦関係を証明する書類などを持参しなければなりません。これは、夫婦関係が偽装でないことを証明するためです。面接では、夫婦の出会いから結婚までの経過、夫婦生活についての質問がされます。認可されれば、永住権は数週間中に届きます。

子どもの年齢により変わる永住権の優先順位

連れ子の永住権も同時に取得したい場合、ご自身と相手の男性は子どもが18歳になるまでに結婚する必要があります。従って13歳の次男の永住権は、あなたと同時期に取得できますが、長男は19歳なので、あなたと同時に取得することはできません。ご自身の永住権を取得した後、長男の永住権をご自身がスポンサーすることになります。
 
家族を通して申請する場合に付けられる優先順位において、長男は第2優先A(Second Preference A – 永住権保持者の配偶者、または21歳未満の子ども)のカテゴリーに含まれます。優先順位付きの申請では、移民局に「I-130」 を提出後、申請書類の手続きが開始される日、つまり優先日(Priority Date)が回ってくるまで、審査を待たなければなりません。現在(2014年5月時点)の第2優先Aの優先日は、2013年9月8日です。従って、待ち時間は半年ですが、半年待っても優先日がくるかはわかりません。家族を通して申請される永住権には、毎年発行数が決まっているからです。その優先日は、毎月Department of State によって発表され、ウェブサイト(www.travel.state.gov/content/visas/english/lawand-policy/bulletin.html)で調べられます。長男は、優先順位がくるまで自分自身でビザを保有しなければなりません。学生であれば、「F-1」(Academic Student)ビザの申請が可能でしょう。
 
「養子縁組をすればいいのではないか?」と思われるかもしれません。しかし、アメリカ市民の養子として永住権を取得するには、子どもが16歳以下で、養父母と最低2年間は同居しなくてはなりません。もし、結婚や申請に時間がかかり、長男が永住権申請時に21歳を超えてしまった場合、長男は第2優先B(Second Preference B – 永住権保持者の21歳以上の未婚の子ども)の優先順位になります。第2優先Bの優先日は現時点で2007年2月1日ですので、待ち時間は約7年となっています。
 
最短期間であなたの長男が永住権を取得するには、彼が21歳になる前に「I-130」 を申請し、第2優先Aカテゴリーで永住権を申請することです。第2優先AとBでは、待ち時間がかなり違います。息子さんのためにも、ご自身の永住権申請を急がれた方がいいと思います。
 
(2014年5月16日号掲載)

米国民との国際結婚による永住権申請、子どもも一緒に取得できる?

吉原 今日子 弁護士

Q:私は日本在住の2児の母です。現在お付き合いしている米国籍の男性と国際結婚し、米国に移住しようと考えています。永住権は短期で取れると聞いていますが、子どものことが心配です。長女は現在18歳で、次女は12歳です。申請方法を教えてください。

A:米国市民が永住権のスポンサーとなる家族申請の場合、その米国市民が、経済的に十分サポート可能な収入があることを証明する必要があります。ガイドライン(2011 年7月現在)によると、生活保護が必要になる収入の125%以上の収入が必要とされています。スポンサーの米国市民に配偶者以外に扶養家族がいない場合、最低1万8387 ドルの年収が必要です。扶養家族が増えると、1人あたり年収額に4775ドルが上乗せされます。なお、米国市民にその経済能力がない場合、米国市民、または永住権を持つ親、友人などを、「ジョイントスポンサー」に付けることも可能です。
 
婚姻による永住権申請を日本で行う場合、申請から通常9カ月から1年ほどで取得できます。
 
まず、I-130という書類を米国の移民局に提出します。申請が認可されると、書類はナショナルビザセンターに送られ、審査後、ケースは日本の米国大使館に送られます。その後、申請者に面接日と必要書類のリストが送られて来ます。面接後、問題がなければ移民ビザが即日発行されます。ビザは6カ月間のみ有効ですので、期間内に米国へ渡航しなければなりません。

子どもの年齢により変わる永住権の優先順位

12歳の次女の永住権は、あなたと同時期に取得できます。しかし、長女は18歳を迎えていますので同時に取得することはできません。あなたが永住権を取得した後、長女の永住権をご自身がスポンサーすることになります。
 
長女は、永住権申請で第2優先A(Second Preference A̶永住権保持者の配偶者、または21歳未満の子ども)のカテゴリーに含まれます。第2優先の申請では、移民局にI-130を提出後、優先日(Priority Date)が回ってくるまで、審査を待たなければなりません。現在(2011年7月25日時点)の第2優先Aの優先日は、2008年7月22日です。従って、待ち時間は3年以上です。優先日は、毎月Departmentof State によって発表され、ウェブサイト(www.travel.state.gov/visa/frvi/bulletin/bulletin_4454.html)で調べられます。
 
移民局から娘さんの優先日が発表された時点で、娘さんが何らかのビザを保持して米国に滞在している場合、ステータスの変更(Adjustment of Status)を申請できます。申請後、約2~3カ月で、労働許可(Employment Authorization)と再入国許可(Advance Parole)が取得できます。 ステータス変更後、約4~6カ月で永住権を取得できます。
 
「では、養子縁組をすればいいのではないか?」と思われるかもしれません。しかし、米国市民の養子として永住権を取得するには、子どもが16歳以下で、養父母と最低2年間同居しなくてはなりません。
 
一番早く、家族全員で米国に渡る方法は、婚姻を通してではなく、ご自身がビザを取得することです。あなたがビザ(H-1B・L・Eビザなど)を取得すれば、18歳の長女は未成年者なので、扶養家族としてビザが取れます。しかし、長女の場合、21歳になるまでの3年間しか、あなたの傘下のビザを保持できません。
 
その後、米国市民の配偶者を通して永住権を取得したご自身をスポンサーとする場合、娘さんは第2優先B(Second Preference B – 永住権保持者の21歳以上の未婚の子ども)の優先順位になります。第2優先Bの優先日は、現時点で2000 年7月3日で、待ち時間は約10年となっています。21歳になった後、娘さんがご自身でビザを取得しなければ、永住権が取れるまでの期間、日本で待つことになります。
 
最短期間であなたの長女が永住権を取得するには、長女が21歳になる前にI-130を申請し、第2優先Aカテゴリーで永住権を申請することです。第2優先AとBでは、待ち時間がかなり違います。家族全員、一緒にアメリカで生活したいのであれば、長女は永住権が取れるまでのいずれかのタイミングで、何らかのビザ(学生、または就労ビザなど)を取得して、米国に滞在することになります。
 
(2011年8月16日号掲載)

国際結婚に際して子どもの国籍と永住権の問題

吉原 今日子 弁護士

Q:私は、アメリカ人の夫と結婚して日本に住んでいますが、できれば子どもには日本とアメリカ国籍を選ばせてあげたいと思っています。日本で生まれた子どもに、アメリカ国籍を取らせることは可能でしょうか?

A:世界には大まかに分けて、「血統主義」の国籍法の国と、「出生地主義」の国籍法の国があります。血統主義とは、国籍取得において、親のどちらかの国の国籍が子どもの国籍となります。一方、出生地主義とは、親がどこの国の国民であろうと、その国で生まれた子を自国民とするということです。アメリカは、出生地主義を取り入れています。
 
1984 年に改定された日本の国籍法では、従来あった、「国籍留保」制度を強化すると共に、「国籍選択」制度を新設しました。外国で出生したために重国籍者となった子どもは子どもの出生した日から3カ月以内に国籍留保の届けを行わないと日本国籍を失います。
 
そして、1986年11月14日以降にアメリカ、アメリカ領サモア、スウェイン諸島以外の場所で、アメリカ人と外国人の親から生まれた子どもは、アメリカ国籍を持つ親が、子の出生前に最低5年間(そのうち最低2年は14歳以上の時)アメリカに居住していたという条件を満たせば、アメリカ国籍も取得できます。米軍、米国政府の職務で海外に勤務していた場合は、書類によって証明できれば、その期間はアメリカに居たものとして計算されます。米軍、米国政府職員の扶養家族として海外に居た場合も同様です。
 
以上の条件を満たしていれば、アメリカ人の夫が日本にいても、お子さんにアメリカ国籍を取らせることはできます。

非嫡出子や再婚による永住権、国籍の取得について

では、もしアメリカ人との間に、非嫡出子がいた場合はどうでしょう。母親がアメリカ人で、アメリカ国外で出生した非嫡出子は、母親が子どもの出生前に連続して1年以上アメリカに居住したことがあれば、アメリカ国籍を取得できます。一方、アメリカ人の父親とアメリカ人ではない母親からアメリカ国外で生まれた非嫡出子は、アメリカ人の父親が子どもの出生前に連続して1年以上アメリカに居住したことがあり、さらに以下の条件を満たす場合には、アメリカ国籍を取得することができます。
 
父親が、子どもが18歳になるまで養育費を支払うと、宣誓供述する。それに加え、父親が子を認知したことを示す証明書、または居住地の法律で嫡出子とみなされる証明、もしくは子どもが18 歳になる前に、裁判所が子どもの父親であると認知しているという証明が必要になります。
 
以上の供述をすべて父親が、「Affidavit of Paternity Form」を使用して行います。場合によっては、親子関係を確認するためにDNA鑑定をするよう要求される場合があります。
 
これらの条件を満たしている場合、米国大使館にて手続きを行うことができます。その際、領事による海外出生報告書という書類を発行してもらいます。この書類は、アメリカの役所で発行される出生証明書と同じ効果を持ち、アメリカ国籍を証明する法的書類です。また、同時にアメリカのパスポートを申し込むことができます。
 
また、アメリカ人の夫と再婚してグリーンカード(永住権)を申請しようという場合に、日本人の前夫との間に未成年の子どもがいるというケースも考えてみましょう。日本人の前夫の子どもを持つ日本人女性が、アメリカ人と再婚し、永住権を申請する場合、母親と同時に子どもも永住権を取得することができます。児童市民権法の適用で、子どもが市民権を自動的に取得できる場合もあります。
 
子どもが16歳未満のうちに父親が養子手続きを完了させた場合、その時点から子どもは米国市民の子として自動的に市民権を取得したことになります。その場合、市民権の証明書を移民局を通して申請できますが、場合によっては面接もあり、さらに発行までに6カ月から1年近くかかってしまいます。
 
前記の条件を満たしていれば、通常のパスポート申込書に子どもの永住権、父親の市民権、養子関係を証明する関連書類などを追加して、パスポートを直接申し込むことが可能です。
 
(2009年12月16日号掲載)

飲酒運転での逮捕とグリーンカード(永住権)申請への影響

飲酒運転で捕まりました。H-1Bビザの更新にどう影響しますか?

瀧 恵之 弁護士

Q:現在私は、H-1BビザにてあるIT関連の会社でOPTの頃から働いています。今回アメリカ大使館にH-1Bビザの更新に行こうと思っていた矢先、飲酒運転で捕まってしまいました。私は今後どのようにすれば良いでしょうか? 日本の隔離も緩和されたこともあり、日本に一時帰国し、日本から戻った後はグリーンカード(永住権)の申請も予定していたのですが、とても心配です。

A:移民法における飲酒運転に関する判断は、トランプ前大統領の時に非常に厳しく位置付けられることになりました。まず、飲酒運転の移民法における分類から説明します。

一定期間に4回の飲酒運転で強制送還の対象に

犯罪には、強制送還の対象となる犯罪(Crime Subject to Deportation)と、強制送還の対象とならない犯罪があります。強制送還の対象となる犯罪は、全ての重犯罪(Felony)および一部の軽犯罪(Misdemeanor)がそれにあたります。軽犯罪の中で強制送還の対象となるものは、「Domestic Violence」と道徳に反する犯罪「Crime Involving Moral Turpitude」の2つです。「Domestic Violence」とは、夫婦間(離婚した後の前の夫・妻を含む)、あるいは恋人間の暴力行為を言います。また、道徳に反する犯罪「Crime Involving Moral Turpitude」には、麻薬に関する犯罪(Controlled Substances)、詐欺(Fraud)、窃盗(Theft)、および暴力に関する犯罪(Crime of Violence)などが含まれます。従って、飲酒運転自体は、強制送還の対象になる犯罪には含まれません。

ただしあなたの場合、まず飲酒運転で逮捕・有罪となったことが何度あるか、また、どのような状況下で捕まったかが問題となります。例えば、飲酒運転であっても、4回行うと重犯罪(Felony)となります。飲酒運転は、捕まってから10年以内に行うと回数が加算されます。ここで注意しなければならないのは、加算された時から10年以内に捕まると、前回の分も追加されるということです。例えば、1回目に飲酒運で捕まってから9年後に捕まると、それは2回目となり、その時から数えて9年後に捕まった場合は、1回目と3回目の間は18年間ありますが、3回目として計算されるということです。この計算方法により、合計4回の飲酒運転になると、強制送還の対象となります。

ビザへの規制は厳罰化の傾向 更新時期や申請場所の熟慮を

2015年11月5日に飲酒運転に対するビザの規制が施行され、その後トランプ政権の時にさらに厳しくなり、逮捕された時点(厳密には逮捕された際に指紋詐取が行われた時点)で、その後の裁判の結果にかかわらず、ビザがキャンセルされることになりました。極端な例ですが、飲酒運転の裁判において無罪の判決が出されたとしても、ビザはキャンセルされたままになるということです。

ただし、あなたのビザがキャンセルされたからと言って、ステータスまでキャンセルされたということではありません。言い換えると、あなたはアメリカ国内に滞在している限り、継続して合法的に滞在および就労することができますが、いったんアメリカ国外に出ると、現在のビザが無効であるため、新たにビザを取得しないといけないということです。また、注意が必要なのは、逮捕された時点から1年以内は、まずビザが発行されることはないということです。従って、あなたの場合は、日本のアメリカ大使館・領事館において、H-1Bビザを申請するのであれば、逮捕から1年以上経過した後に行うのが得策であると言えます。日本のアメリカ大使館・領事館において面接を受けた際に、医師の診断を受けるように指示されます。この診断では、アルコール中毒・依存症であるか否かの判断がされます。医師が許可を出した後、アメリカ大使館・領事館はビザを発行することになります。従ってあなたの場合は、通常よりも日本での滞在期間が長くなることを予定して、日本への渡航プランを立てる必要があります。

また、あなたのように、後にグリーンカード(永住権)の申請を考えているのであれば、日本にビザの申請に行くのではなく、アメリカに滞在したままグリーンカードの申請を行う方法が考えられます。実際、日本に行かなければならない特別な事由がない限り、この方法をお勧めします。特にあなたの飲酒運転歴が2回目の場合は、日本での医師の審査は非常に厳格であるため、リスクを負って日本に行くことは、まずお勧めしません。3回目の場合は、アメリカでの生活を諦めるのでなければ、ほぼやめた方が良いと言えます。一方、グリーンカードの申請においては、飲酒運転がある場合でも比較的取得の可能性は高いので、グリーンカードを取得された後、日本へ渡航するのが好ましいと言えます。

(2022年4月1日号掲載)

飲酒運転での逮捕回数によるアメリカグリーンカード(永住権)申請への影響

吉原 今日子 弁護士

Q:現在、永住権(グリーンカード)申請中ですが、飲酒運転で逮捕されてしまいました。今回で2度目で、1度目の飲酒運転で逮捕された後の保護観察期間中の出来事です。これによって、永住権申請が却下されることはありますか?また、他に申請を却下される犯罪要因には何がありますか?

A:飲酒運転で逮捕されたこと自体が直接的に永住権の却下につながるわけではありません。犯罪には、強制送還の対象となる犯罪(Crime Subject to Deportation)と、対象とならない犯罪があります。強制送還されてしまうと、再びアメリカには戻れません。その対象となる犯罪は、全ての重犯罪(Felony)、および一部の軽犯罪(Misdemeanor)です。
 
軽犯罪の中で、強制送還の対象となるものは家庭内暴力(Domestic Violence)と「道徳に反する犯罪」(Crime Involving Moral Turpitude)の2つです。家庭内暴力とは、夫婦(離婚後の前の夫・妻を含む)間か恋人間の暴力行為を指します。
 
後者の「道徳に反する犯罪」が何であるか、法律上全てが明確に示されているわけではありません。条例でこれまでに犯罪と判断されたものの中には、麻薬に関する犯罪(Controlled Substances)、詐欺(Fraud)、窃盗(Theft)、および暴力に関する犯罪(Crime of Violence)などがあります。

飲酒運転の逮捕数が10年以内に4回だと重犯罪

飲酒運転は、強制送還の対象になる犯罪には含まれませんが、4回行うと重犯罪です。飲酒運転は10年以内の再犯がどんどん加算されます。
 例えば、1回目に飲酒運転で捕まった後、9年後に捕まると、それは2回目となり、そのときから数えて9年後に捕まった場合は、1回目と3回目の間に18年間あっても3回目として計算されるということです。すなわち、捕まらない期間が連続して10年間無い限り、回数が加算され続けられるのです。従って、この計算方法により合計4回の飲酒運転になると、強制送還の対象となります。
 
3回目の飲酒運転の後、10年以内に4回目の飲酒運転をしてしまうと強制送還の対象になってしまいますので、注意が必要です。

過去の犯罪は隠せない 罪を償ったことの証明が必須

飲酒運転が強制送還の対象となる犯罪に含まれないからといって、全く問題にならないというわけではありません。永住権の手続きの中で最後の「I-485(Application to Register Permanent Resident Status)」の申請をアメリカにて行った場合は指紋を取られますので、逮捕記録は出てきます。
 
また、Consular Processing と呼ばれる日本での面接を選んだ場合であっても、在日アメリカ大使館での面接の際に記録は出てきます。この際、いかなる軽犯罪でも、それを問題とする場合がほとんどで、その犯罪がどの種のものであったかを証明するのは申請者側の責任です。
 
従って、その犯罪記録が飲酒運転であり、その他の犯罪ではないことを証明しなければいけません。ご自身でこれを立証する義務がありますので、飲酒運転を処理した裁判所からの書類や警察調書、告訴状、保護観察命令、訴訟事件一覧表などを入手しておくことを強くお勧めします。
 
罰則に従ってすでに罪を償ったという証明が特に大切で、訴訟事件一覧表は、最終判決の条件として与えられた内容(DUI プログラム、罰金の支払いなど)を全て遂行したことの証明となります。判決を受けた裁判所に行けば入手できますので、そこで訴訟事件一覧表の認証コピーの発行を依頼してください。これらの書類は、アメリカにて最後の「I-485」の申請を行う場合に一緒に提出します。
 
また、アメリカの移民局に面接に呼ばれた場合も、この認証コピーを持参してください。日本で面接を行うことを選んだ場合は、これらの書類を在日アメリカ大使館での面接の際に持参します。また、仮に飲酒運転以外、例えば前述の強制送還の対象となる犯罪を犯した場合であっても、犯罪の程度によってはWaiver(犯罪の帳消し)を申請することにより永住権を取得できる可能性もあります。この場合における最終的な判断は移民局か在日アメリカ大使館において担当した審査官が行うことになります。
 
あなたの場合は飲酒運転による逮捕が2回目であるからというだけで、永住権を却下されることはありませんが、審査の中で問題視されることは避けられません。後に立証できるように、課せられた刑罰に従って罪を償ってください。犯罪を犯してしまった事実を隠すことはできませんので、移民弁護士や移民局への報告を怠らないようにし、必要とされている承認された訴訟事件一覧表を「I-485」 申請時と面接の際に必ず持参してください。
 
(2014年4月16日号掲載)

飲酒運転で2回目の逮捕、申請中のグリーンカード(永住権)はどうなる?

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、H-1Bビザを持っており、現在働いている会社を通して永住権を申請中です。弁護士から、あと3年ほど待つ必要があると言われています。先日、飲酒運転で逮捕されました。実は、これで2回目です。永住権取得に影響は出るでしょうか?

A:重犯罪(Felony)、および一部の軽犯罪(Misdemeanor)が強制送還の対象となります。軽犯罪で強制送還の対象となるのは、「Domestic Violence」と「道徳に反する犯罪(Crime Involving Moral Turpitude)」の2つです。
 
Domestic Violence とは、夫婦(離婚後の前夫・前妻を含む)間、あるいは恋人間の暴力行為を言います。道徳に反する犯罪には、「麻薬犯罪(Controlled Substances)」「詐欺(Fraud)」「窃盗(Theft)」、および「暴力犯罪(Crime of Violence)」などが含まれます。
 
飲酒運転は、強制送還の対象になる犯罪には含まれませんが、4回行うと重犯罪となります。飲酒運転は、初犯から10年以内(以前は7年間でしたが、2005年1月1日より10年に変更)に再犯すると、記録が加算されます。注意しなければならないのは、加算された時点から10年以内にさらに再犯すると、以前の記録も追加されるということです。
 
例えば、初めて飲酒運転で捕まってから9年後に再度捕まると、記録上2回目となります。2回目に捕まった時点から9年後に再度捕まった場合、1回目と3回目の間は、18年間ありますが、記録は加算され、3回目になるということです。
 
すなわち、飲酒運転で捕まらない期間が10年間ない限り、記録は加算され続けていくのです。従って、この計算方法により4回の飲酒運転を犯すと、強制送還の対象となります。

裁判所からの書類の提出により重犯罪でないことを証明

2回目の飲酒運転が強制送還の対象となる犯罪に含まれないからといって、永住権の申請上、まったく問題にならないというわけではありません。
 
永住権申請手続きの中で、米国内で最終申請(I-485)を行った場合、指紋を取られます。従って、その逮捕記録が出てきます。また、日本でインタビューを受けることを選んだ場合(Consular Processing)でも、在日米国大使館でのインタビューの際に、記録が出てきます。
 
この際、いかなる軽犯罪であっても記録が出てきた場合は、ほとんどの場合、問題となります。そして、その犯罪がどの種のものであったかを証明するのは、申請者側の責任となります。ですから、犯罪記録が飲酒運転であり、その他の犯罪ではないことを証明しなければなりません。
 
これには、飲酒運転を処理した裁判所からの書類、Police Report、Complaint、Minutes(Probation)Order、Docket Reports 等を入手しておかれることを強くおすすめします。特に、Docket Reports は、最終判決の条件として与えられた内容(アルコールスクール、罰金の支払い等)をすべて遂行したことの証明となるので、特に大切です。判決を受けた裁判所に行けば入手できますので、Docket Reports のCertified Copyの発行を依頼してください。
 
これらの書類は、米国内で最後の申請を行う場合、I-485提出時に一緒に提出してください。日本でインタビューを受ける場合は、これらの書類を米国大使館でのインタビューに持参してください。
 
また、例えば前記の強制送還の対象となる犯罪を犯した場合でも、犯罪の程度によってはWaiver を申請することにより、永住権を取得できる可能性もあります。この場合の最終判断は、移民局、あるいは米国大使館において、あなたのケースを担当した審査官が行うことになります。
 
また、他に気を付けなければならないことは、現在保持しているH-1Bビザを更新するために、日本にある米国大使館・領事館に行く場合、飲酒運転の記録が問題になるということです。多くの場合、米国大使館指定医師のカウンセリングを受けることを要求されます。これにより、ビザの更新に数週間を要する場合があります。従って、この間、米国での仕事を休まなければならない可能性があるということです。
 
もし可能ならば、永住権の申請は米国内にて最後の申請(I-485)を行ってください。そして、その後、「一時渡航許可(Advance Parole)」が下りるまで、もしくは、永住権申請手続きの最終段階まで待ち、日本の米国大使館にてインタビューを受けるまで、出入国を控えることをおすすめします。これにより、H-1Bビザ更新の際、日本で長期の足止めを受ける事態が避けられるからです。
 
(2011年8月1日号掲載)

H-1Bビザ取得後のサイトビジット(実地調査)とは?

サイトビジット(実地監査)の 準備と面接での対応方法

吉原 今日子 弁護士

Q:私は、大学をビジネス専攻で卒業し、今年の10月から保険会社でファイナンシャルスペシャリストとして働いています。同じH-1Bビザを持っている同僚に去年、サイトビジット(実地監査)があったと聞きました。私にも来る場合、どのような準備が必要か教えてください。

A:今年は、数年前と比べて件数は減っているようですが、専門職用の就労ビザ、H-1Bのサイトビジット(Administrative Site Visit and Verification Program)は現在でも行われており、ビザの申請、延長などが認可されてから数カ月後に職場に来るケースが一番多いです。サイトビジットは不審なケースを抽出して調べているのではなく、無作為に抽出して実施されていますので、あなたのところにも来る可能性が十分にあるでしょう。
 
サイトビジットの目的は、H-1Bビザ保持者のビザ申請内容と実際の仕事内容に違いがないかを調査すると同時に、申請上の最低賃金が払われているか否かの調査を行うものです。監査によって申請が適正でないと判断された場合は、すでに認可されているH-1Bビザも取り消されます。
 
前もってサイトビジットが行われるという通知がない場合と通知がある場合があります。ある場合は、移民局から雇用主に電話かメールで通知されます。その際にH-1Bビザ保持者が現在働いているか否かの確認と、次の内容の質問への回答、書類提出を要求されます。
 
①従業員数、またそのうちのビザを保有している従業員数、永住権保持者のおおよその数
②会社の事業内容
③営業時間
④H-1Bビザ保持者の勤務開始日、場所、役職、仕事内容、給与、連絡先(電話番号、メールアドレス)
⑤雇用主の責任者の身分証明提出、連絡先。これらの書類の提出期間は短いので、いつでも提出できるように準備をしておいた方がいいと思います。また、質問に答える、書類を提出する前に、弁護士に一度目を通してもらうことをお勧めします。 
 
移民局から連絡があった場合でも、いつサイトビジットに来るか教えてくれるわけではありません。書類の提出後、移民局からの通知が何もない場合もありますし、提出から1週間以内にサイトビジットに来ることもあります。いつサイトビジットが行われても対応できるよう、前もって準備しておくことが重要です。

サイトビジットでは上司にも面接が行われる

サイトビジットには移民局の審査官ではなく、移民局から委託された調査員が来ます。調査員が会社に来た場合、調査の意図を明確にするためにも、名刺をもらい、調査員がどこの調査員なのかを確認する必要があります。また、調査員の連絡先を聞くことによって、実際にその調査員が政府機関に派遣されて会社の調査に来たのか確認することができるからです。
 
面接を求められた際には落ち着いて調査員を個室に案内し、そこで5〜10分ほど待ってもらい、ビザの申請内容などの確認をすると良いでしょう。もちろん調査員の質問には、正直に答えてください。彼らは、決められた質問をし、その返答を用紙に記入して移民局にレポートします。そのレポートを基に、移民局が申請書の内容と異なる点がないかどうか審査します。
 
サイトビジットでは、ビザの申請者本人とビザ申請者の上司の2名が個別に質問されます。質問内容は、通常米国大使館でH-1Bビザ申請をするときと同様のものです。現在の役職名、在職期間 、年収と時給、勤務時間(週何時間ではなく、何時から何時まで)、スーパーバイザーは誰か、学歴について、仕事内容などについてです。また、本人が提出しなければならないものに過去4回分のPaystub、直近の「W-2」、運転免許証(番号を控えるかコピーを取る)が挙げられます。
 
上司には本人に対してと同様の質問とその会社でH-1Bビザおよび永住権を申請している人の数、その人たちが現在もまだ働いているかなどを聞かれることもあります。上司が不在の場合は、電話で回答しても構いません。その後、調査員はオフィス内の簡単な見学をします。
 
調査の結果、もしビザの申請書類の内容と実際の仕事、給与に違いがあると認められた場合、移民局から「Notice to Intent to Revoke(剥奪意思の通知)」が届きます。通知には、サイトビジットの結果、ビザの申請書類の内容と実際の仕事や給与に違いがあることが記載されており、それに対して妥当な説明、証拠があるのであれば提出するように言われます。申請者は30日以内に通知に対する回答を行わなければなりません。もし剥奪された場合は、その決定に対する申し立ても可能ですが、申し立て中、ビザは失効し、申し立てが認可されない場合、ビザの失効期間は不法滞在となりますので、申し立てをするかどうかは、よく弁護士と話し合ってください。

サイトビジットが会社に来たらどんなことに気を付けたらいい?

吉原 今日子 弁護士

Q:H-1Bビザの「サイトビジット」(Administrative Site Visit and Verification Program)が行われていると聞きました。会社として、従業員として気を付けなければならないことを教えてください。

A:国土安全保障省が、調査員をH-1Bビザ・スポンサー企業に派遣し、H-1Bビザ申請の内容と実際の仕事に違いがないかを調査するというプログラムを開始しました。
 
サイトビジットは不審なケースを抽出して調べているのではなく、無作為に実施されています。前もってサイトビジットが行われるという通知はありません。今年の傾向として、数年前と比べて、件数は減っているようですが、現在も行われています。
 
サイトビジットはビザの申請、延長などが認可されてから数カ月後に職場に来るケースが一番多いようです。サイトビジットに来る人は移民局の審査官ではなく、移民局より委託を受けた人たちです。彼らは、決められた質問をし、その返答を用紙に記入して移民局にレポートします。そのレポートを元に、移民局が申請書の内容と異なる点がないかどうか審査します。サイトビジットでは、ビザの申請者本人とHR、または担当の上司の2名が質問されます。

本人に対する質問事項

・現在の役職名
・どのくらいの期間この会社で働いているか
・年収(または時給)
・勤務時間(週何時間ではなく、何時から何時まで)
・スーパーバイザーは誰か
・学歴について
・仕事内容について
 
本人に対しこれらの質問がされた後、スーパーバイザーと話すことになっているようです。スーパーバイザーには本人に対してと同様の質問と、その会社でH-1Bビザ、グリーンカード(永住権)を申請している人の数、その人たちが現在もまだ働いているかなどを聞かれます。スーパーバイザーがその場にいない場合は、電話でも構いません。
 
本人が提出しなければならない物に、「過去4回分のPaystub」「直近のW-2」「Driver’s License」(番号を控えるかコピーを取る)が挙げられます。PaystubとW-2はその場にない場合、後日郵送するよう指示が入るようです。勤務時間に関しては、フルタイムかパートタイムかという質問ではなく、1日の勤務時間を聞かれるので、パートタイムでH-1Bビザの申請をしている人は、「何時から何時まで」と答える必要があります。その後、調査員はオフィス内の簡単な見学をします。その時に、「ビザ申請者の机を見せなさい」と言われる場合もあります。また、オフィス内の写真を撮られることもあります。
 
ほとんどのケースは、この流れに沿ったものになっています。また、調査員の態度は丁重ですので、脅威を感じることはありません。

サイトビジットを想定し書類と正しい返答の準備を

以上の質問に答えられるように、H-1Bビザの申請書類を会社に保管しておくことが望ましいでしょう。準備をしておけば、突然の訪問においても冷静に対応することができます。
 
個別の面接を求められた際には落ち着いて調査員を個室に案内し、そこで5~10分程待ってもらい、ビザの申請内容などの確認をすると良いでしょう。もちろん調査員の質問には、正直に答えてください。社員の数、会社の概要についての質問に関してですが、正確な数でなく、おおよその回答でも構わないことがほとんどです。また、正確な数字を要求された場合には、調査員に調べる必要があることを伝えてください。質問に答えられないような場合は、調査員に一旦待ってもらい、顧問の移民法弁護士に連絡を取ることも可能です。
 
調査員が会社に来た場合、調査員からビジネスカードをもらうようおすすめします。調査の意図を明確にするためにも、調査員がどこの調査員なのかを確認する必要があります。また、調査員の連絡先を聞くことによって、実際にその調査員が政府機関に派遣されて会社の調査に来たのか確認することができるからです。また、個別面接の時には、弁護士と相談できるように、何を聞かれたかをメモに取ってください。もし申請書類と実際の仕事に違いがあると認められた場合、H-1Bビザの認可を、移民局から取り消される可能性もあります。事前にそれに気付いた場合には、会社から申請変更の申請をするか、申請の取り下げをしなければなりません。
 
サイトビジットが行われた時のために、十分な準備をしておくことをおすすめします。

H-1Bビザ申請に実地監査が導入監査の際に気を付けることは?

吉原 今日子 弁護士

Q:H-1Bスポンサー企業へのサイトビジット(実地監査)が行われていると聞きました。どうしてでしょうか?また、会社として、従業員として、気を付けなければならないことを教えてください。

A:2009年8月より国土安全保障省は、調査員をH-1Bスポンサー企業に派遣し、H-1Bビザ申請の内容と実際に従事している職務に違いがないか調査するというプログラムを開始しました。監査は不審なケースを対象に行っているのではなく、無作為に実施されています。また、事前通告なしに行われます。この監査に対して特に心配する必要はありませんが、このようなプログラムが開始されたことを知っておくことは大切です。
 
今まで行われた監査の中で頻繁に聞かれている質問は、会社の概要についてです。つまり従業員の人数、就業時間、所在地、事業内容や現在H-1Bビザを保持する従業員の数などです。この質問は、通常H-1Bビザ申請書にサインをした人、または人事担当者にされます。
 
次に、調査員はH-1Bビザ保持者との個別の面接を求め、ポジション、給与、職務内容などについて基本的な説明をするよう求められます。通常、この個別の面接は10~15分程度です。同様に、会社の管理者にもH-1Bビザ申請者についての質問が、個別になされる場合もあります。
 
監査が入った場合に以上の質問に答えられるよう、H-1Bビザの申請書類を会社に保管しておくことが望ましいでしょう。そうすれば、調査員の突然の訪問においても、準備をすることができます。個別の面接を求められた際には、落ち着いて調査員を個室に案内し、そこで5~10分程待ってもらい、申請内容などの確認をすると良いでしょう。調査員の質問には、もちろん正直に答えてください。なお、従業員数、会社の概要についての質問に関しては、正確な数や具体的な内容でなく、おおよその回答でも構わないことがほとんどです。
 
質問に答えられないような場合は、調査員にいったん待ってもらい、顧問の移民法弁護士に連絡を取ることも可能です。弁護士を同席させることに対してペナルティーはありません。先に述べたように、調査員の訪問は突然ですので、顧問弁護士と連絡が付かない場合もあります。ですから、監査について、事前に話し合われておくことをおすすめします。また、個別面接の際には、調査員から何を聞かれたか弁護士と相談できるよう、メモを取ってください。
 
調査員の訪問を受けた場合、名刺をもらっておくと良いでしょう。このような調査を行う機関としては、USCIS(移民局)、ICE、USCIS U Department of Labor’s Wage、Hour Division などが考えられます。調査の意図を明確にするためにも、どの機関に所属する調査員が訪問しているのか確認する必要があります。また、調査員の連絡先を聞くことによって、実際にその調査員が、政府機関から派遣されて調査に来たのか確認することもできるからです。
 
もし、H-1Bビザ申請書類と実際の職務に違いがあると判断された場合、認可されたH-1Bビザが、移民局によって取り消される可能性もあります。また現在別のビザで就労し、H-1Bを申請中の場合は、スポンサー企業から申請内容変更の申請を行うか、ビザ申請自体を取り下げなければなりません。

労働局審査に「iCert」導入申請は早めに始めること

2011年度新規H-1Bビザ申請についてです。安全に進めるには、4月1日の受付開始と同時に申請すべきでしょう。受付開始と同時に申請書が殺到し、早々と受け付けが締め切られた上に抽選という結果になった2007/2008 年に比べ、2009 年は申請数も激減し、12月20日まで申請を受け付けていました。今年も昨年のようになるかは、わかりません。やはり3月31日に申請書を送付するのが安全だと思います。
 
2009 年7月以降、LCA(労働局の審査)に「iCert」というシステムが導入されました。LCA が労働局で認可されなければ、H-1Bビザの申請はできません。iCert が導入され、会社のFIN(Federal Identification Number)の確認などが行われています。認可を取るのに1~2週間、もしくはそれ以上かかる場合もあります。ですから、H-1Bビザ申請を行う予定であれば、できるだけ早く準備をするようおすすめします。
 
(2010年2月16日号掲載)

アメリカで会社を設立しビザ(L-1/E-1/E-2)を取得するには?

アメリカで会社を設立しビザを取得するには?

吉原 今日子 弁護士

Q:日本でアパレル会社を経営しています。アメリカから仕入れた洋服、装飾品の販売が増え、商用でアメリカへの出入国を繰り返すうちに、入国の際、「次回はビザを取って入国するように」と入国審査官から指示を受けました。アメリカで会社を設立して、店を構えることも考えています。どのようなビザが取得できるでしょうか?

A:あなたの場合、E-1、E-2ビザが適していると思われます。ビザ申請に関する必要条件は、以下の通りです。
 
まず第1に、設立会社がアメリカと通商条約を結んでいる国の国籍を保持していること。もちろん日本は、通商条約国です。E-1(貿易)ビザの場合の国籍は、その会社の所有権を保持している人、もしくは保持している会社の国籍によって決まります。会社を設立した場所は考慮されません。
 
E-2(投資家)ビザでは、投資家の国籍が問われます。当該会社が条約国の国籍を保持するには、その会社の所有権の50%以上を、その条約国の国民、もしくは条約国の国籍を持つ会社が保有する必要があります。日本人が、日本からの投資によりアメリカで会社を始める場合、E-2ビザ申請の資格があると言えます。この場合の「日本人」とは、日本国籍を有し、アメリカ市民権、あるいは永住権(グリーンカード)を保持していない人のことを指します。アメリカ市民権、あるいはグリーンカードを持つ人からの投資では、その会社での申請資格はありません。もし2人以上の投資家が同じ割合の所有権を保持し、それぞれ違う条約国の国籍の場合、各投資家の国籍がその会社の国籍になります。
 
第2に、Eビザ申請者は通商条約を結んでいる国の国民(日本人)でなければなりません。

投資・貿易の規模により適切なビザを選ぶ

E-1ビザ申請の場合、日米間において一定額の貿易が行われていることを立証する必要があり、貿易はビザ申請前に複数回行っていなければなりません。貿易額の目安としては、年間換算で約150万ドルです。E-1ビザ申請のメリットは、特に大きな投資を行う必要がないことにあります。
 
E-2ビザ申請の場合、投資家はアメリカの事業に対し「実質的な額」の資本を投資した、あるいは積極的な投資過程にあることが必要です。投資額に関しては、ビジネスそのものの価値、またはビジネスの規模、種類を考慮し、そのビジネスを設立するために必要な金額となります。
 
ちなみに「実質的な額」とは、①事業の総経費に関連して実質的であること、②投資家が事業に対し、経済的に実質参加している(経済的なリスクを負っている)ことが十分に考えられること、③事業の運営を成功させるのに十分であることが挙げられます。また、この資本の資金には、現金以外の投資も認められ、以下のように規定されています。
 
設備購入のため、あるいは手持ちの在庫取得のための費用は、投資総額に換算されます。アメリカに移転した品物や設備(例えば、アメリカ国内の工場設立や拡張のための機器)の価値は、申請者がその品物、設備を事業に用いることを前提として、投資と考えられます。
 
次に投資額は、ビジネスの収益が投資家とその家族を養う分以上を期待できる金額であることです。この条件を満たさない場合、そのビジネスが将来地域の経済発展に貢献する高い可能性を持っていることを証明することで、前記の条件が緩められる可能性があります。例えば、その会社によるアメリカ市民の雇用が5年後には何倍にも膨らむことなどです。この場合、もう一歩踏み込んだ綿密な経営、運営計画の提出を求められます。ですから詳しいビジネスプランを立てることをおすすめします。
 
なお、E-2ビザを取得するためには、前例から考えて約20万ドル以上の投資が必要です。
 
あなたの場合、投資・貿易の規模によりどちらのビザが適しているか判断する必要があります。もし20万ドル、あるいは20万ドル以上の在庫を購入する予定があるのであれば、E-2ビザの取得が可能でしょう。また、アメリカから日本への貿易額が年間150万ドルを超えるようでしたら、E-1ビザが適しているでしょう。いずれにせよ、経費が無駄にならない方のビザ申請を選んでください。
 
Eビザの申請は、移民局を通さず、直接日本のアメリカ大使館、領事館で行えます。審査は2段階に分かれ、最初に会社の審査が行われます。これには6~8週間を要します。その後、大使館からの通知で、大使館、領事館に出向き、個人の面接を行います。
 
なお、E-1、E-2のどちらのビザが適しているかは、専門の弁護士に相談しましょう。

アメリカで新規事業立ち上げに必要な就労ビザは?

瀧 恵之 弁護士

Q:新しく株式会社を立ち上げ、アメリカで新規事業を始めようと計画しています。この会社を運営するにあたり、どのようなビザを申請すればよいでしょうか。

A:株式会社の設立に伴って申請するビザには、主に3つの種類があります。どの申請方法を選ぶかは、事業の種類、形態、投資金などによって異なります。多くの場合、多額の投資金を必要としませんが、できる限り無駄な経費や時間を使うことのない方法から説明します。
 
日本に会社を持っている方が米国に新規事業を立ち上げる場合、1番適しているのは、「L-1」ビザでしょう。「L-1」ビザは、日本にある親会社から米国内の会社に派遣される人のためのビザです。このビザを取得するための主な条件には、
①米国にある子会社の原則50%以上を日本の親会社が直接的/間接的に所有していること
②申請者が申請前の3年間のうち、1年間以上は親会社かその関連会社で管理職(「L-1A(Intracompany Transferee Executive or Manager)」)または特殊技能者(「L-1B(Intracompany Transferee Specialized Knowledge)」)として勤務していることなどが挙げられます。
 
上記にある「直接的」とは、アメリカに設立する子会社の50% 以上の株式を、日本の親会社が直接的に所有している形態を指します。この場合は、税法上、連結決算の必要性が出てきます。対して「間接的」とは、日本にある親会社の50% 以上の株式を所有している経営者個人が、米国に設立する会社の50%以上の株式を所有する場合のことです。移民法上は親子関係が認められるため「L」ビザの対象になりますが、税法上は親子関係が成立せず、連絡決算の必要性がなくなりますので、日本の本社での連結決算を避けたい場合には、この方法が得策です。
 
この「L-1」ビザは、後述する「E」ビザなどに比べ、はるかに短い期間で取得でき、早期に事業開始に専念できる体制を整えられます。
 
まずアメリカで子会社を登記し、銀行口座開設後、会社の場所となる事務所の賃貸借契約を取得し、日本から約1万ドル以上を送金した時点で申請が可能(「E」ビザでは、この時点では不可能)です。申請においては、移民局で認可を得るのに通常3カ月を要しますが、規定の申請料に加えて、1225ドル余分に移民局に支払えば(Premium Processing)15 日程度で結果が得られます。その後、在日アメリカ大使館・領事館でビザを取得し、「L-1」ビザで入国が可能になります。

投資が必要な「E-2」ビザ貿易額が重要な「E-1」ビザ

日本に「L-1」ビザの条件に見合う会社がない場合に考えられるのが「E」ビザで、通商ビザ(「E-1(Treaty Traders)」)と投資家ビザ(「E-2(Treaty Investors)」)の2種類があります。
 
どちらも、アメリカにある会社の少なくとも50% 以上の株式を日本人(米国籍も米国永住権も保持していない人)、または日本の会社(上記の「L-1」ビザの条件を満たしていない会社でも可)が所有している必要があります。
 
ここでまず注意するべきことは、「E-1」、「E-2」ビザ共に、その利用期間や滞在・就労資格が同じであるにもかかわらず、「E-2」ビザが投資を必要とするのに対し、「E-1」ビザは投資を必ずしも必要としないということです。
 
ビザを取得するために多額の投資をされる方を多々見かけますが、「E-1」ビザの条件を満たしているにもかかわらず、ビザを取得するために当該ビジネスに必要以上の投資を行うことは、不必要なビジネス上のリスクを抱えることになります。
 
ただし、「E-1」ビザの条件を満たすには、前述の条件に加えて日米間で相当額の貿易を行っていることが要求されます。「E-1」ビザ申請には、実際の日米間の商取引を2、3カ月行い、実績を作った後、通常、在日アメリカ大使館・領事館にて申請を行います。
 
しかし、すでに学生ビザなど何らかのビザを持ってアメリカに滞在している場合は、移民局にて「E-1」の申請を行え、その場合は在日アメリカ大使館・領事館にて申請を行うよりも、各審査基準が低くなります。従って、従来の「E-1」ビザ申請の条件を満たしていなくとも(例えば貿易額が低い)、認可される可能性が高いと言えます。
 
一方、「E-2」ビザですが、これは米国にて新会社登記の後、日本から相当額(約20 万ドル程度)の送金を行い、それをアメリカでの新規事業のために使用し、その投資の証明を添えて「E-1」ビザと同様に在日アメリカ大使館・領事館にて申請を行います。
 
この申請に際しては、日本からの送金を行うだけでは十分ではなく、その投資金を実際に使い、新規事業の開始が可能な(またはすでに開始している)状態であることが要求されます。例えば、既存のレストランを購入する場合には、エスクロー(escrow)がすでにクローズされていることなどです。
 
(2014年10月1日号掲載)

アメリカでの会社設立に必要になる準備、手続きは?

瀧 恵之 弁護士

Q:私は日本で会社を経営しており、現在アメリカへの進出を計画しています。アメリカには、従業員を2、3人送りたいと考えていますが、どのような対策をしたら良いでしょうか。

A:日本の会社がアメリカに進出する手段の一つとして、米国内に子会社を設立した後に、従業員を日本から駐在員として呼び寄せる方法があります。その場合のビザは、「E-1」「E-2」「L-1」ビザが考えられます。
 
「E-1ビザ」「E-2ビザ」は、日米通商条約に基づいて規定されているビザで、日本の会社や個人がアメリカに対して貿易(「E-1ビザ」)や、投資(「E-2ビザ」)を行っていることを前提として申請するビザです。また、貿易や投資を行っている以外に、アメリカにある会社の50%以上の株式を通商相手国の会社(日米間で貿易や投資が行われている場合は日本)、あるいは、通商相手国の国籍保持者(日本人で米国籍やグリーンカードを保持している者は認められない)が所有していることが条件となっています。さらに、申請者自身も通商相手国の国籍(パスポート)を有している必要があります。

「Eビザ」「Lビザ」の申請に必要となる条件

「E-1ビザ」は、アメリカに会社を設立した後、日米間で複数(少なくとも2回以上)の貿易を行っている必要があります。「E-2ビザ」は、アメリカで会社設立後、日本からその会社の銀行口座に資本金を送金。その資金を米国内で使用した後に申請する流れになっています。従って、「E-1ビザ」「E-2ビザ」共に、米国に会社を設立した後に貿易を行うか、投資後そのお金を使うまで各ビザの申請はできません。またこの申請は(すでに何らかのビザを所持してアメリカに滞在している場合を除いては)、日本のアメリカ大使館、領事館にて行う必要があります。この手続きには、約2~4カ月を要します。従って、会社設立の手続き開始後、ビザが取得できるまで、少なくとも半年は見ておいた方が良いということになります。 
 
「L-1ビザ」は、日本にある会社(親会社)から米国内にある会社(子会社)に派遣される人のためのビザです。このビザの主な条件は、日本にある親会社かその株主が米国にある子会社の(原則的に)50%以上を直接的、または間接的に所有していること。それに加え、申請者が申請前の3年間のうち、少なくとも1年間以上は、親会社やその関連会社で管理職や特殊技能者として勤務経験があること等が条件です。

それぞれのビザの特性を掴み、早めの対策を

「L-1ビザ」申請のメリットは、申請条件として(特に初めての申請の場合)、申請時に貿易や投資を行っている必要がないことです。アメリカで会社設立後に会社用の銀行口座を開き、資本金を送金し、会社の所在(存在)を示すための賃貸借契約書を取得した時点で申請ができます。ビザの延長申請時には、会社の会計決算報告算書等を添付する必要がありますが、最初の申請においては、事業計画書で代用できます。 
 
申請は「Eビザ」とは違って、最初にアメリカの移民局の許可を得る必要があります。この申請には通常3カ月程度を要しますが、移民局に従来の申請料(325ドル+500ドル)に加えて1225ドルを支払えば15日に縮めることができます(Premium Processing)。
 
移民局の認可を受けた後、日本のアメリカ大使館、領事館にてビザの申請を行います。従って、会社設立の手続き開始後からビザ取得までの所要時間が(日本側での書類準備や会社の場所が迅速に見つかることを前提として)早ければ2カ月程度となります。もし早期に駐在員をアメリカに送りたいのであれば、「Lビザ」を申請するのが得策かもしれません。
 
ただし、「Eビザ」の有効期間が通常5年なのに対し、「Lビザ」は会社の登記から1年以内は有効期間が1年間しか与えられません(厳密には、ビザは通常5年間下りますが、1年ごとに移民局への延長申請が必要です)。相当額の貿易や投資をお考えなら、1年後に「Eビザ」への切り替えることも視野に入れた方が良いでしょう。
 
また駐在員を2~3名送るのであれば、「Lビザ」の延長や「Eビザ」への切り替えの際に、相当数の従業員を現地で雇っている必要があります。どちらのビザも申請者は管理職者(または専門職者)でなければいけません。管理職者であるというのは、申請者を頂点としてその部署の組織を示すピラミッドを描いた時、申請者の下に最低2段の組織構造が存在しているということです。「Lビザ」の最初の申請ではこの条件は緩和されますが、延長時や「Eビザ」に切り替える際にはこのことに留意してください。
 
アメリカ進出への備えとして、ビザの特徴を踏まえ、駐在員の数を減らすか現地雇用にするかなどの計画を早い段階から立てておくことをおすすめします。
 
(2013年9月1日号掲載)

アメリカ国内に子会社を設立、最適なビザと取得条件は?

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、日本でビジネスコンサルティング、リサーチ会社を経営しています。最近、アメリカ国内でのリサーチの依頼が増えたため、米国にも会社を設立しようと考えています。アメリカで興す新会社を通して、私はビザを取得したいと考えているのですが、そのためには多額の投資をしないといけないと聞きました。ですが、アメリカで会社を設立すること自体には、多額の資本金を必要としません。また、日本での仕事がありますので、アメリカ国内よりも日本にいる期間の方が長くなります。何か良い方法はありますか?

A:アメリカでの駐在には、「Lビザ」を取得するのが一般的です。しかし、このケースの場合、アメリカでの一定期間の滞在が要求されるLビザを取得して滞在するのは、妥当ではありません。また、会社設立で多額の投資が行われるわけでもないので、「E-2ビザ(投資家)」ではなく、「E-1ビザ」取得の可能性を考えた方が、良いかもしれません。
 
このE-1ビザとは、アメリカと通商条約が結ばれている国の国籍を持つ会社が、当該国とアメリカ間で貿易を行う際に発行されるビザです。取得には、スポンサーとなる会社の株式の51%以上を、日本人、あるいは日本の会社が所有していること、その会社が日本との間で貿易業務を行っていることが、主な条件となります。
 
なお、通常、貿易とは「商取引(Trade)」を意味しますが、ここで言う貿易には、商品だけでなく、サービスの交換・売買も含まれます。このサービスの交換・売買に該当する業種としては、観光業、経営コンサルティング、広告業、会計事務所、エンジニアリングなどが挙げられます。
 
従って、あなたの設立しようとする会社の業務は、「サービスの交換・売買」に該当すると考えられます。

サービスの交換・売買に該当?E-1ビザ取得の条件

サービスにおいての貿易を行う会社でE-1ビザを申請するにあたり、実際にその業務内容が、E-1ビザ取得条件の一つとなる「サービスの交換・売買」に該当するか否かに関しては、以下の内容が考慮されます。
 
①会社の形態
日米間でE-1ビザ申請の条件を満たす商取引が行われているか否かは、会社の形態により考慮されます。
日本の親会社が相当額、あるいは相当数の契約をアメリカ国内の顧客と結んでおり、これら顧客がサービスを受けるための子会社が、アメリカ国内に設置されていること。そして、その利益が日本の親会社に還元されている場合は、当該条件を満たす商取引が行われているとみなされます。
特に、事業の手段・手法(ノウハウ)が親会社より伝達され、その手段・手法によって利益の多くがもたらされており、その利益が親会社に還元されているような場合が、その典型例として挙げられます。
 
②取引の性質
当該商取引が申請条件を満たすか否かは、実質的取引方法にもよります。
例えば、アメリカ国内にある子会社の従業員のほとんどがアメリカ市民で、利益のほとんどがアメリカ国内において再投資され、日本の株主や親会社に分配されていないような場合は、申請条件を満たす商取引が行われていないと判断されるでしょう。
 
③日米間での営業活動
アメリカにある子会社の営業活動のほとんどが、アメリカと日本との間での取引に基づくか否かも、判断材料とされます。例えば、日本の親会社の従業員が、頻繁にアメリカにある子会社と行き来を繰り返していることなどは、この条件充足の証明として用いることができます。
 
④継続的なサービスの取引
日米間において、継続的に該当サービスの取引がなされているか否かも問題となります。取引が相当額に達している場合であっても、それが頻繁に行われていないような場合は、申請条件を満たす商取引が行われていないと判断されるでしょう。
 
***
 
あなたが設立しようとしている会社の会社形態、取引の性質・頻度等の要素が、前述した条件に合致するか否かを考慮した上で、E-1ビザの申請を行ってください。
 
Eビザの場合は、LビザやHビザなど他のビザと異なり、アメリカ国内での一定の滞在期間が要求されていません。また、LやHビザのように有効期限の延長に制限もありません。ですから、アメリカの子会社が健全な経営を行い続ける限り、いつまでも、何回でもビザを延長することが可能です。
 
(2011年11月1日号掲載)

更新回数に制限のない、貿易家ビザE-1と投資家ビザE-2

KEVIN LEVINE 弁護士

Q:Eビザは更新回数に制限がないと聞いていますが、このEビザについて教えてください。

A: Eビザは他の労働ビザであるHやLと違い、申請時のビジネスに従事していれば、更新回数に制限がありません。また、給料は労働局などからの調整がなく、毎年発行されるビザの数にも制限がないという特徴があります。さらに、直接アメリカ大使館へ申請書類を提出でき、スポンサーの会社と関連した職歴は一切問われません(Lの場合は必要条件)。Eビザの主な目的は、アメリカと通商条約を締結した国(日本を含む)との間の経済活動を円滑にし、助長することにあります。あなたの会社が株式市場に上場していないからといって、申請を諦めることはありません。小企業の従業員やオーナーなど、このビザの資格を持っている人はたくさんいます。

Eビザの必要条件を教えてください。

まず、E-1(貿易家ビザ)の必要条件は、1)米国と通商条約を締結した国の国民であること(日本など)、2)申請者が働くために米国に来ようとしている会社は、条約国と同じ国籍であること。また、その会社の所有権を最低50%以上はグリーンカードも米国市民権も保持していない条約国の市民が所有していること、3)条約国(日本)とアメリカとの間で、すでに頻繁な貿易が執り行われていること。国際貿易量はかなり多量で、かつ継続的であること、4)貿易は主として米国と条約国(日本)との間にあること、5)申請者は管理職または役員の資格で雇用されているか、あるいはその会社の運営効率化に必要不可欠な専門知識・技能の持ち主であること、です。
 
次に、E-2(投資家ビザ)の必要条件は、1)投資家は条約国の市民であること、2)投資家が働く会社の少なくとも50%以上の所有権が、グリーンカードも米国市民権も保持していない条約国の市民にあること、3)投資家は相当額を投資し、ビザ受領を条件としたエスクローの口座の利用が認められていること、4)投資は実際に運営されている企業へのものでなければならず、投機的または消極的な投資は不可、5)投資は相当額であること(ただし、金額よりもビジネスの種類が考慮される)、6)投資は、投資家の親族へではなく、米国市民または米国永住権保持者への仕事をもたらすこと、7)申請者は最低50%のビジネスの主導権を持っているか、50%以下のビジネス保持者かつ非雇用者である場合、申請者は管理職、または役員として、もしくは高度な専門知識・技能の持ち主であること、8)申請者はE-2のステータスが切れた時点で米国を去ること、となっています。

E-1、E-2の申請にはどのような書類が必要ですか?

米国大使館へビザ申請をする場合、以下の書類が必要です。
 
まず、非移民条約貿易・投資に関する証拠書類として、以下の書類が挙げられます。ただし、すべてが当てはまるとは限りません。
・資本財の所有権および支配権に関連する書類として、銀行からの明細書、決済報告書、公債・普通預金。また出資金の送金証明書類として、小切手・支払い命令書、為替・振替、外貨承認書、受領書など。
・米国内での事業設立の証明書類として、登記簿謄本、合弁事業契約書、組織図・従業員チャート、株式証書、財産所有権、契約書、受領書、ビジネスライセンス、事業物件の賃貸または購入の契約書など。
・投資家・貿易家の国籍証明書類として、申請者の有効なパスポート、親会社の会社プロフィール、株式市場リストなど。
・日米間の貿易の証明書類として、請求書、貨物引換証、税関許可証、着荷商品、運送受領証、発注証書、契約書など。
・米国内での投資の証明書類として、財産所有権、受領証、契約書、公債、銀行明細書。営業実績の証明として、決算報告書、会社監査書、米国法人納税証明書。
・事業の真実性の証明書類として、給料支払簿・従業員名簿、納税証明書、個人所得税の納税証明書、他からの収入・資金などが必要です。
・その他、営業報告書、カタログ、広告・商品の見出し、雑誌などからの広告の切り抜きなどがあるといいでしょう。
 
また、申請者の資格を証明する書類として、履歴書、大学の卒業証明書、成績証明書などの写し、会社との雇用関係を示す書類、納税証明書や従業員名簿などが必要です。さらに、申請者が主要な投資家であることの証明書類として、専門技術の免許など、過去3年間の納税証明書、会社の組織図で申請者のポジションの内容を書き記したもの、名刺の写し、ビザの写し、パスポートの写し、移民局のフォーム1-94(入国記録証)の写し(アメリカにいる場合)などが必要です。
 
(2007年7月1日号掲載)

 

アメリカ就労ビザ(H-1Bビザ)の申請方法

アメリカの特殊技能職ビザ(H-1Bビザ)とは

アメリカの特殊技能職ビザ(H-1Bビザ)の申請には、職務が求める特定分野での学位を4年制大学以上で取得しているか、短大卒業+最低6年間の専門職経験が必要。

  • 有効期間:3年(最長6年)
  • 更新の可否:可(3年毎で1回のみ)
  • 取得にかかる時間:約3カ月(現在は追加書類要請が多く4~5カ月)
  • 費用概算(弁護士費用含む):3700~5500ドル
  • 配偶者の扱い:「H-4ビザ」
  • 配偶者の労働可否:不可

 

アメリカ「H-1Bビザ」の最新状況

アメリカのH-1Bビザは高度な専門知識を要する職業に就くためのビザ(就労ビザ)で、学士以上の学位保持者が対象です。LビザやEビザとは異なり管理職以上という規制がないため、新卒者も取得可能。4年制大卒者6万5千人、大学院修了者2万人の申請者受け付け枠に対し、2022年は合計48万3927人の応募があり、例年通り無作為の抽選により申請者が選出されました。大学院卒者は、2万人枠で落選しても大卒枠で再抽選されるため、チャンスは2回。どちらにしても、落選した場合は翌年4月の新たな申請受け付けを待たなければなりません。
 
このH-1Bビザでの大きな変化と言えば、申請時に追加で1,225ドルを払えば申請受け付けから15日以内に第一次審査の結果が出る「プレミアム申請」が、2017年は実施されなかったことです。また近年では、通常5~6月に届く抽選結果が来なかったり、当選してもプロセスの進みが遅く、本来ビザが有効となる10月になって追加書類の請求が来たりする例も見受けられます。2021年の例で言えば、移民局の当選者数の調整のため、当選結果が3度にもわたって遅れて発表されました。
 
H-1Bビザは、移民局申請の前に労働局申請があります。これは、スポンサー企業の事業内容や運営地域、申請者の採用職務などを労働局に申告し、それに基づいて給与額を設定する過程で、その額を持って移民局申請に移ります。最近はこの設定額が上昇傾向にあり、アメリカの企業がスポンサーになることを躊躇したり、経済力のない企業は申請すらできなかったりするなどの懸念が出ています。吉原弁護士も、「トランプ大統領は給与設定額の引き上げを提案しており、もし額が上がればスポンサーに対する申請条件が難化するため、申請・取得が難しくなる可能性があります」と危惧しています。
 
通常、移民局に約2,000ドル、弁護士に約3,000ドルの申請料を払いますが、抽選に落ちたら移民局分は返金されますが、弁護士費用は事務所によって戻ってこない場合があります。こうした諸事情から、H-1Bビザは企業にとって負担とリスクが大きいビザと言えます。しかし、アメリカ市民あるいは永住権保持者が経営する会社はアメリカ企業とみなされてLビザ、Eビザの対象にならないため、H-1Bビザに頼らざるを得ません。

アメリカ「H-1Bビザ」年間発給枠の推移

H-1Bビザの年間発給数
1990~ 65,000(H1-Bカテゴリー開始)
1999~ 115,000
2000~ 115,000
2001~ 195,000
2003~ 195,000
2004~ 65,000+20,000(大学院枠開始)

 

アメリカのH-1Bビザ 締め切り日の推移

年度 受け付け締め切り 受付期間 抽選の有無 応募者数
2012 11/22/2011 235日
2013 6/11/2012 71日
2014 4/5/2013 5日 124,000
2015 4/7/2014 5日 172,500
2016 4/7/2015 5日 233,000
2017 4/7/2016 5日 236,000
2018 4/7/2017 5日 199,000
2019 4/6/2018 5日 199,098
2020 4/5/2019 5日 201,011
2021 3/20/2020 20日 275,000
2022 3/25/2021 15日 308,613
2023 3/18/2022 18日 483,927

 

アメリカの「H1-Bビザ」取得に必要な職務内容と大学専攻

大学で学んだ知識を会社で生かすことが前提のH-1Bビザ。吉原弁護士は、「以前は専攻と職務が何となく関連していればOKでしたが、最近は両者に明確な関係性がないと取得が困難です。また、各部門の違いが曖昧な中小企業よりも、部門が明確に分かれていて、関連付けが容易なある程度大きい企業の方が取得しやすいです」と最近の動向を語っています。
 
H-1Bビザは専攻によって取得難易度が異なるため、将来アメリカで働きたい人は、大学の専攻決定前に移民弁護士に相談するのが得策です。一般的に「General Education」「Anthropology」「Public Relations」「International Studies」などは関連する専門職が少なく、H1-Bビザ取得が難しい学部と言えます。
 

「H-1Bビザ」所有者が突然レイオフその時どうする?

H-1Bビザを持っている人が突然解雇された場合、解雇後10日以内にアメリカから出国しなければなりません。その10日以内に次のスポンサーが見つかったとしても、移民局に雇用主変更を申請している最中はアメリカ国外で結果を待たなければなりません。
 
(取材協力・監修:吉原今日子弁護士/ライトハウス・ロサンゼルス版2017年9月16日号掲載記事を元に2022年6月14日に加筆修正)


 

※以下、過去にライトハウス・ロサンゼルス版のコラム「移民法Q&A」に掲載された関連記事をご紹介します。

2023会計年度のH-1Bビザ申請の詳細について教えてください。

瀧 恵之 弁護士

Q:私はある日系の会社にて、OPTで働いています。2022年のH-1Bビザの申請をしたいのですが、H-1Bビザは毎年抽選が行われると聞きました。申請の詳細情報を教えてください。

A:まずH-1Bビザは、専門職ビザと言われるものです。申請を行うには、申請者が4年制大学を卒業しているか、それに相当する職務経験があること、当該の行われる職務内容が、4年制大学を卒業しているかそれに相当する職務経験がないとできないほど、複雑かつ専門的であること、および、4年制大学あるいはそれに相当する職務経験で学んだことを生かせる職務である必要があります。

移民法上の解釈における「専門職」とは、高度で特別な知識の理論的、そして実質的な適用・応用が要求される職種です。例えば、建築、エンジニアリング、数学、物理学、社会学、医療関係、ビジネス関係、会計、法律、技術などの分野であり、またその職種に就くにはアメリカにおいて通常、学士号あるいはそれ以上の学歴、またはそれに値する経験が必要とされる職種を指すとされています。

具体的な職種としては、会計士、経営コンサルタント、コンピューター・エンジニア、建築家、翻訳家などがあります。これらの職種を遂行するにあたって必要とされる学歴あるいは職歴(コンピューター・エンジニアであればコンピューター・サイエンス)を保持し、スポンサーとなる会社でその職種を必要とされていれば、H-1Bビザ申請の条件を満たすことになります。

2022年3月1日よりH-1Bビザの応募受付 結果発表は遅れる可能性も

抽選による選抜方法では、2022年3月1日(アメリカ東海岸時間の正午12時)〜3月18日(アメリカ東海岸時間の正午12時)の間に、インターネット上でH-1Bビザの抽選応募申請が受け付けられることになります。抽選応募費用は10ドルです。申請者は、同じスポンサー会社を通して複数の応募申請を行うことはできませんが、スポンサー会社が異なっていれば複数の応募申請も可能です。

抽選結果は、移民局は2022年3月31日までに発表する予定とされていますが、発表が遅れる可能性もあります。2021年の例で言えば、移民局の当選者数の調整のため、当選結果が3度にもわたって遅れて発表されました。抽選を通過した申請者は、2022年4月1日から本申請(申請書式「I-129」の提出)ができるようになり、当選発表から90日以内に本申請を行えば良いことになっています。

この申請は、移民局の2023年会計年度枠(2022年10月~2023年9月の枠)の申請に当たるため、抽選を通過し、その後の本申請で認可を受けた場合は、2022年10月1日から就労を開始することができます。ただし前述のように昨年は結果が出るのが遅れ、2021年10月1日を超えても結果が出ないケースも見られたため、この場合も想定して予定を立てるのが得策かもしれません。

H-1Bビザの有効期限は最大3年で、延長を含め最大6年間の滞在・就労が可能になります。いったんH-1Bビザを取得した後でビザを更新する場合、および雇用主を変更する場合は、抽選のプロセスを経る必要はありません。雇用主を変更する場合は、ビザ申請時の雇用主の下で1カ月以上就労すれば、雇用主の変更が可能であるとされています。アメリカ国外でH-1Bビザを申請・取得した場合は、就労期間開始日(2022年10月1日)の30日前、2022年9月1日よりアメリカに入国可能になります。

H-1Bビザの抽選を通過しなかったケースも想定して準備を 

2023年会計年度枠のH-1Bビザの発給上限枠数は、学士号(4年制大学卒業)あるいはそれに相当する経験者の枠が6万5000、アメリカの大学で修士号以上の学位を取得している、および当該職務にその学位を必要とする場合の枠が2万です。また、過去にH-1Bビザにて就労し、6年間の有効期限を使い切っていない場合は抽選の対象になりません。例えば、過去にH-1Bビザにて3年間アメリカで就労し、その後日本に帰った場合、残りの(6−3=)3年間の就労に対するH-1Bビザの申請を行う場合は、抽選の対象になりません。

あなたの場合、前述の申請方法、特に申請期限に注意してH-1Bビザの申請を行うとともに、万一、H-1Bビザの抽選を通過しなかった場合にも備え、他の方法(日系の会社であれば、Eステータスへの変更の可能性など)も考慮し、前もって準備を進めておくのが得策だと言えます。

(筆者からのコメント)このコラムは2022年1月28日時点での情報をもとに執筆したもので、今後内容が変わる可能性もあります。特にH-1Bビザの場合、大幅な変更もありえるので、正確な最新の情報に基づいて申請を行ってください。(2022年2月16日号掲載)

2022会計年度のH-1Bビザの申請について教えてください。

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、ある日系の会社にてOPTで働いています。2022会計年度のH-1Bビザの申請をしたいのですが、「今年から制度が変わる」「変わらない」という情報が錯綜していて困惑しています。私はどのようにしてH-1Bビザを申請すればよいか、正確な情報を教えてください。

A:トランプ前政権は、給与額によって優先順位を設ける選択方法を示していましたが、バイデン大統領はこれを打ち消す方針を打ち出しました。このことを受けて移民局は2021年2月8日、トランプ前政権が発案したH-1Bビザに給与額によって優先順位を設ける選択方法の施行期日を2021年3月9日から2021年12月31日に延期し、再検討することを発表しました。これは、トランプ前政権の発案した選択方法をほぼ無効にする方針であるとも解釈できます。従って、本コラムで前回(2021年2月16日号)にご紹介した選択方法は今年は採用されなくなり、従来通りの抽選による選択方法が取られることになりました。本コラムの連載では、執筆から発行されるまでのタイムラグがあることをお詫びするとともに、この旨ご了承くださると幸いです。以下、今年の抽選によるH-1Bビザの申請に関して説明します。

2021年のアメリカ・H-1Bビザの基本的な申請方法

抽選による選択方法では、2021年3月9日〜3月25日の間にインターネット上でのH-1Bビザの抽選応募申請が受け付けられることになります。抽選応募費用は10ドルです。申請者は、同じスポンサー会社を通して複数の応募申請を行うことはできませんが、スポンサー会社が変われば、複数の応募申請も可能です。抽選結果は、2021年3月31日から発表を始める予定になっています。昨年の例で言えば、移民局による当選者数の調整のため、当選結果が遅れて出るケースもありました。抽選を通過した申請者は、2021年4月1日から本申請(申請書式「I-129」の提出)をすることができ、当選発表から90日以内に本申請を開始すれば良いことになっています。

この申請は、移民局の2022年会計年度枠(2021年10月~2022年9月)の申請にあたるため、前述の抽選を通過し、その後の本申請で認可を受けた場合は、2021年10月1日から就労を開始することができます。昨年は、2020年10月1日を過ぎても結果が出ないケースも見られたため、その場合も想定して予定を立てるのが得策かもしれません。H-1Bビザの有効期限は最大3年で、延長を含め最大6年間の滞在・就労が可能になります。

いったんH-1Bビザを取得した後、更新および雇用主を変更する場合は、抽選のプロセスを経る必要はありません。雇用主を変更する場合は、申請時の雇用主の下で1カ月以上就労すれば雇用主の変更が可能であるとされています。雇用主の変更申請では、当該変更申請を行った(申請書を移民局が受理した)時点で、結果を待たずして新しい雇用主の者での就労が可能になります(ただし、申請却下のリスクを考慮すると、時間が許す限り認可されたことを確認した後に雇用主を変更するのが賢明です)。

雇用主の変更は条件を満たす限り何度でも可能ですが、最大延長期間の6年間は変わりません。アメリカ国外にてH-1Bビザを申請・取得した場合は、就労期間が開始される日(2021年10月1日)の30日前(2021年9月1日)よりアメリカへの入国が可能になります。

2022会計年度の発行枠の上限とH-1Bビザ申請の際の注意点

2022会計年度枠のH-1Bビザの制限受付数は、学士号(4年制大学卒業)あるいはそれに相当する経験者の枠が6万5000、アメリカの大学で修士号以上の学位を取得していて、かつ当該職務にその学位を必要とする場合の枠が2万です。大学あるいはそれに関連する非営利団体、非営利研究機関、政府関係の研究機関としての認可受けている団体・機関が雇用主の場合は、この制限を受けることがないため、前述の期日に縛られることなく雇用開始時期に応じて申請を行うことができます。

また、過去にH-1Bビザにて就労していて、6年間の有効期限を使い切っていない場合は、抽選の対象になりません。例えば、過去にH-1Bビザにて3年間アメリカで就労し、その後日本に帰った場合、残りの3年間(6年−3年)の就労に対するH-1Bビザの申請を行う場合は、抽選の過程を経ずに申請ができます。あなたの場合は、前述の申請方法、特に申請期限に注意してH-1Bビザの申請を行うとともに、万が一H-1Bビザの抽選を通過しなかった場合にも備え、他の方法(日系の会社であればEステータスへの変更等の可能性も考えられます)も考慮し、前もって準備を進めておくのが得策でしょう。(2021年3月1日号掲載)

2022会計年度のH-1Bビザ申請が大きく変わるというのは本当ですか?

瀧 恵之 弁護士

Q:現在、私は日系のIT関連の会社にて、OPTで働いています。2022会計年度のH-1Bビザの申請をしたいのですが、2022会計年度から制度が変わるかも知れないと聞きました。どのように申請方法が変わるか教えてください。

A:移民局は、アメリカ人労働者を守ることを目的として、2020年まで行われていた、抽選で申請者を選択する方法を変更し、給与額により優先順位を設ける選択方法を取り入れ、高度な技術を保持する申請者を選択対象とする方針を発表しました。これは、雇用主が人件費削減のためH-1Bビザを利用してエントリーレベルの従業員を雇うことを防ぐため、また、抽選による選択方法では雇用主側が将来の雇用に関する計画を立てづらく、これを避けるためであるとされています。この方針は、2020年11月2日にガイドラインの発表を行っていましたが、その後、各所からの意見を集めた後、最終決定を行うに至りました。

職種を給与レベルで4段階に分類、優先順位が付けられる

 H-1Bビザは専門職ビザと呼ばれ、申請を行うには、申請者が4年制大学を卒業しているか、それに相当する職務経験があること、当該の職務内容が、4年制大学を卒業しているかそれに相当する職務経験がないとできないほど複雑かつ専門的であること、および4年制大学あるいはそれに相当する職務経験で学んだことを生かせる職務である必要があります。移民法上の解釈における「専門職」とは、高度で特別な知識の理論的、そして実質的な適用・応用が要求される職種で、例えば建築、エンジニアリング、数学、物理学、社会学、医療関係、ビジネス関係、会計、法律、技術などの分野であり、またその職種に就くにはアメリカにおいて通常、学士号かそれ以上の学歴、あるいはそれに値する経験が必要とされる職種を指すとされています。

具体的には、会計士、経営コンサルタント、コンピューター・エンジニア、建築家、翻訳家などがあります。これらの職種を遂行するにあたって必要とされる学歴あるいは職歴(コンピューター・エンジニアであればコンピューター・サイエンス)を保持し、スポンサーとなる会社でその職種を必要とされていれば、H-1Bビザ申請の基本条件を満たすことになります。発行数は昨年同様、学士号の枠が6万5000、修士号の枠が2万です。

前述の、「給与額により優先される」とは、労働局が公表しているOES(Occupational Employment Statistics)上で、申請する役職の給与のレベル(4つのレベルに分類)の高い申請者が優遇されるということです。あなたの場合は、IT関係の会社に勤めているため、そもそも職種自体が比較的給与の高いカテゴリーに属していて、その中でレベルの高い給与だとするとさらに高くなります。例えば、コンピュータープログラマーで LA County ならば、レベル1で年間6万5499ドルですが、レベル2で8万662ドル、レベル3で9万5805ドル、レベル4だと年間11万968ドルになります。

従って、ここで注意しないといけないことは、労働局が規定している高いレベル(例えば上記のレベル4など)の給与(「Prevailing Wage」と呼ばれます)をあなたの雇用主が支払えるのかどうかを事前に確認しておく必要があるということです。もし、ビザ取得・雇用後に「Prevailing Wage」を支払っていなかった場合、「Site Inspection」のリスクが生じます。「Site Inspection」とは、移民局(あるいは移民局と契約している調査機関)の調査員が予告なしに職場を訪れ、申請書に記載された通りの職務内容を行っているかどうか、また既定の給与額の支払いが行われているかどうかの確認を行うことです。実際には、この時「Payroll Record」の提出が求められる場合が多いです。

トランプ前政権による決定のため、今後の動向に要注意

この変更は2021年3月9日に施行されるとされています。従って、この時までに詳細な申請方法が発表されることになると考えられますが、同時に大統領の政権交代により、(場合によっては大幅な)変更が加えられる可能性も十分にあります。この新しいH-1Bビザの選択方法は、トランプ政権によって発案されたものであり、トランプ政権は移民に対して規制的な態度を取っていたのはご存知の通りです。

一方、バイデン政権は、移民受け入れを緩和する方向性を打ち出しています。従って、あなたの場合、アップデートされた情報を入手するとともに、雇用主である会社と、給与額などの確認を行っておくことが重要です。また、読者の皆さんの中にはエントリーレベルでの申請を考えておられる方も多いかと思います。その場合でも今の時点で諦めるのではなく、アップデートされた情報を入手するよう努めるとともに、他のビザステータスの申請手段も考慮することが得策だと考えます。(2021年2月16日号掲載)

2018会計年度(2017年募集)のアメリカ就労ビザ(H-1Bビザ)申請状況は?

大橋 幸生 弁護士

Q:アメリカの大学でEngineeringの学士号を取得し、現在、OPTで働いています。今の会社で今年2017年に、H-1Bビザの申請をしました。抽選があると聞きましたが、その仕組みや今年の申請状況を教えてください。

A:H-1Bビザ(入国後に取得の場合はH-1Bステータス)とは通称、特殊技能職ビザのことを指し、他国籍の人がアメリカで働くのに最も一般的な方法(就労ビザ)です。申請者(Petitioner)であるアメリカの会社が、アメリカ人、もしくはグリーンカード保持者の従業員のみでは十分な特殊技能の労働力を得ることができないため、短期で特殊技能の資格を持つ他国籍の従業員の手を借りる必要性を、アメリカ労働省とアメリカ移民局に訴えることで申請が開始します。
あなたの場合ですと、ビザの受益者(Beneficiary)として求められる条件としては、
①該当職務が求める特定分野の学士、あるいはそれ以上の資格があること、
②その職務に適格であること、
です。ただ、これら2つの条件を満たしているだけでビザの申請が認可されるわけではありません

アメリカのH-1Bビザは今年も抽選が行われる

H-1Bビザは、アメリカ連邦政府の1会計年度(10月1日~翌年9月30日)内の発行数が6万5000に限られており、また、これ以外に、アメリカで修士号を取得した申請者向けに2万の大学院枠が設定されています。H-1Bビザ申請は会計年度枠が埋まり次第、受付終了となります。通常4月1日から申請可能ですが、2017年は4月1日と4月2日が休日だったため、申請は翌日の2017年4月3日(月)からでした。
その4日後、移民局は、4月7日に2018会計年度のH-1Bビザの申請数の状況を発表しました。その発表によると、4月7日までに合計8万5000以上の申請が移民局にされたとのことです。2017年の受付期間は4月3日から4月7日まででしたが、H-1Bビザ申請書類の受付は最低5日間と、移民局の規則によって定められています。もし、この5日間内に合計8万5000以上の申請書類が届いた場合は、全ての申請者の間で抽選が行われます。それは今年も例外ではありません。
H-1Bビザ申請受付の終了日時から1カ月ほどで、受理された申請書類の中から審査対象を選ぶ抽選がコンピューターによって行われます。抽選に当選したか否かは、レシートが届くかどうかで分かります。レシートが届けば、抽選に受かったことを意味します。レシートが届かず、申請書類(申請費用を含む)が返送(通常、法律事務所に送られてくる)された時点で、抽選に漏れたことが確定します。稀にレシートが届かなく、申請書類も返送されない場合があります。その場合は、抽選に当選した可能性がありますので、弁護士と相談しましょう。

今年はH-1Bビザ申請時に「Premium Processing」が実質的に使用できない

以前までは「Premium Processing」という形で申請をした場合、H-1Bビザ申請書類の受理から15日間ほどで認可の是非を知ることができました(あるいは追加書類要請)。しかし2017年の3月、移民局は、「2017年4月3日より6カ月間、『Premium Processing』を通しての申請を一切受け付けない」と発表しました(=実質上、使用不可)。理由としては、H-1Bビザの延長申請の審査が大幅に遅れていることにあります。これにより、新規H-1Bビザ審査の認可発表も通常より遅れることが予測されます。
ちなみに、申請受付開始後、1週間以内で申請受付が終了となるケースはここ数年続いています。2014会計年度、2015会計年度、2016会計年度、2017会計年度、そして今年の2018会計年度のH-1Bビザ申請はいずれも4月7日までに受付終了しました。比べて、2010会計年度は12月9日まで、2011会計年度は翌年1月26日まで、2012会計年度は翌年11月23日まで、2013会計年度は6月11日まで申請が受け付けられていました。現状、H-1Bビザ申請者は増える一方なのに対し、申請枠は変わらないままなので、ここ最近の抽選の当選確率は下がる一方です。
移民局がこの現状に対して、H-1Bビザ従業員に対しての仕事場での管理を厳しく査証する旨を2017年4月3日に発表しています。H-1Bビザの申請内容とそぐわない職務内容を会社に強制される場合、もしくは、申請した給与設定にそぐわない給与が支払われている場合は、移民局へその現状を通報することを勧めています。この査証方針に対して、結果的に2019会計年度のH-1Bビザ申請に影響を及ぼすかどうかは現状では断定できません。
アメリカでは一般的に難しいといわれるEngineeringの学士号ですが、H-1Bビザ取得に関しては他の申請者と同じく抽選に通らなければならず、落選のリスクは高いです。当選確率は20~25%と見て、今後の予定を立てていくことが懸命です。
 
(2017年5月16日号掲載)

2017年度・アメリカ就労(H-1B)ビザの募集枠数や申請方法が知りたい

吉原 今日子 弁護士

Q:2015年5月にアメリカの大学院でMBAを取得しました。その後OPTを取得し、会計士事務所で働いています。OPT期間が終了したら就労する会社も既に決まっており、その会社からの就労ビザ申請を考えています。ただ、2015年には多くのH-1Bビザ申請者が抽選漏れしたと聞きました。2016年もそうなりそうでしょうか?また、H-1Bビザ取得まで、OPTが延長されるというのは本当でしょうか?

A:アメリカの就労ビザ(H-1Bビザ)を取得するには、いくつかの条件を満たしている必要があります。
①ビザを申請する業種において、通常、学士号(あるいはそれに匹敵する経験)以上が要求されている
②その職務は、学士号(あるいはそれに匹敵する経験)以上を保持する者でないと遂行できないほど特殊である
③雇用主が、その役職に従事する者に対して、一般的に学士号(あるいはそれに匹敵する経験)以上を必要としている
④職務内容が専門的かつ複雑であり、その職務を行うにあたっては、通常その学士号(あるいはそれに匹敵する経験)以上の知識を必要とする
の4つです。これら条件を満たしていれば、H-1Bビザ取得の可能性は十分にあります。

2017年度のアメリカ就労ビザ(H-1Bビザ)への応募も早い時点で発行数上限に達しそう

2017年度の就労ビザ(H-1Bビザ)の募集開始日は、2016年4月1日。移民局が1年間(2016年10月1日~2017年9月30日)に発給できるH-1Bビザの数は、一般枠が6万5000です。また、修士号枠(アメリカで修士号、あるいはそれ以上の学位を取得した人に与えられる枠)は2万です。2016年度の募集では、募集開始から5日間で23万3000の応募がありました。
 
抽選は4~5月中に、コンピューターで無作為に行われます。抽選をパスした場合、移民局から受理書を受け取ります。抽選に漏れると、申請書類一式、申請費用が弁護士事務所に送り返され、それらを受け取った時点で抽選漏れが確定します。まれに移民局からの受理書が届かず、書類も送り返されてこないことがあります。その場合、申請書類が送り返されてこない限りは抽選をパスしている可能性が高いです。今年も早い時点で年間発行数上限に達成することが予想されるので、早目の申請準備をお勧めします。
 
弁護士への依頼は、就労ビザ申請の2カ月以上前から開始しましょう。なぜなら、申請のためにはさまざまな書類、情報の準備が必要だからです。また、就労ビザ申請には、アメリカの労働局から雇用条件の認定(Labor Condition Application)を受けなければいけません。認可には現在約2週間ほどかかります。さらに、申請する会社が今まで、または過去数年認可を受けたことがない場合は、会社のTax IDナンバーの確認のために追加書類を要請されます。書類の提出後1~2週間ほどでTax IDナンバーの確認が終わり、その後、再度労働局への雇用条件認可の申請をしなければなりません。それから、ようやく移民局申請の準備となるので、余裕を持って準備を始めた方が安全なのです。

OPTがH-1Bビザによる就労開始より先に終了してしまったら?

H-1Bビザの申請は2016年4月1日から開始されますが、申請が認可されてもH-1Bビザでの就労がスタートするのは、2016年10月1日からです。このため、OPT(Optional Practical Training)がその60日以上前に終了してしまう場合、H-1Bビザへの変更日までにギャップが生じてしまいます。そのギャップを失くすために、ギャップ解消法案「Cap Gap Extention」が設定されています。
 
H-1Bビザが抽選になる場合、H-1Bビザを申請したという証明(申請書類と移民局へ書類が郵送された証明)を学校に提出すれば、6月1日まで「I-20」を延長できます。それまでに抽選漏れが確定すれば、そこから60日のグレースピリオドが始まり、6月1日以降の「I-20」の延長などの手続きを行えます。抽選をパスした場合、OPT終了後も10月1日まで滞在と就労許可が自動的に延期されます。
 
就労ビザ(H-1Bビザ)が認可されれば、ビザの発効開始日前日である9月30日までOPTが延長されます。しかしH-1Bビザ申請が審査で却下されてしまった場合、OPTの有効期限がその時点で過ぎていれば、OPTは失効となります。また、H-1Bビザ申請がOPT終了後60日間のグレースピリオド中に提出された場合は、アメリカでの滞在資格は延長されるものの労働許可はすでに終了している状態ですので、OPTは延長されず、自宅待機となります。その場合、H-1Bビザの申請後、卒業校(OPT、「I-20」の発行元)のInternational Student Officeに行き、H-1Bビザの申請を行った事実を伝え、OPTの期間を延長してもらうよう要請してください。
 
いずれの場合でも、OPT中にH-1Bビザを申請する際は、レシートが届いたら必ず卒業校にコンタクトを取るようにしましょう。
 
(2016年1月16日号掲載)

就労ビザ(H-1Bビザ)を申請、どんなことに気を付けたらいい?

瀧 恵之 弁護士

Q:アメリカで就労ビザ(H-1Bビザ)の申請を考えています。今からでもまだ間に合うのでしょうか。また、仮に申請ができるとしたら、何か注意すべき点はありますか?

A:移民局は、2011月1日にアメリカ就労ビザ(H-1Bビザ)の申請状況を発表しました。H-1Bビザは、1会計年度(10月1日~9月30日)内の発行数が6万5000に限られており、アメリカで修士号を取得した申請者向けに、これ以外に2万の枠が設定されています。
 
6万5000の枠に対しては、申請数が4万9200、2万の枠は、既に上限に達しています(2011年11月7日時点)。なお、6万5000の枠に対して4万9200の申請があったからと言って、単純計算で1万5800 の枠が残っているというわけではありません。この中には、「チリおよびシンガポールの自由貿易条約」のための6800の枠が設置されているため、実際の残数枠は1万を切っていると考えた方が良いでしょう。ただし、H-1Bビザの延長、および雇用主の変更の申請、および過去にH-1Bビザを取得したことがあり、最長延長期間(6年)の残りの期間を使って申請する場合は、この枠の対象とはなりません。
 
ちなみに過去、2008会計年度、および2009会計年度は、就労ビザ申請者数がこの規定枠の数を遥かに超えてしまったため、抽選が行われました。しかし、2010会計年度以降は、経済不況や、また抽選になることを恐れた企業側が、H-1Bビザ対象者の雇用を控えた経緯もあり、申請数は減少しています。現在は、抽選によって審査を受けることなく申請が却下されるという事態はなくなりました。しかし、移民局の審査が厳しくなったため、相当数の申請が却下されています。
 
このため、学生のOPT(Optional Practical Training)期間中に企業が予算をかけてトレーニングを行ったにもかかわらず、就労(H-1B)ビザの申請が却下されたために雇用継続を中断せざるを得ないという事態が起こっています。また、移民局が予告なく申請者の職場に視察に来る、いわゆる「Site Visit」が頻繁に行われるようになり、企業のH-1Bビザ対象者離れに拍車を掛けました。

厳しい審査をパスするための注意点

しかし、前述したようにH-1Bビザの残数枠が1万を切っているという事実を鑑みると、遅くとも来年初旬あたりにはH-1Bビザの申請が締め切られ、次回の就労ビザ申請は2012年4月1日以降(この就労ビザが有効なのは2012年10月1日から)になると考えられます。
 
また、例年締め切り間際に申請したケースは、発給数を枠内に収めるために、審査がさらに厳しくなる傾向にあります。従って今すぐ申請を行うか、2012年4月以降まで待つことができるのなら、今年度枠の厳しい審査を避け、来年度枠まで申請を待つことを、考慮することをおすすめします。
 
もし今年度枠で申請する場合、厳しい審査による却下を回避するため、次のポイントに留意するようおすすめします。まず、アメリカでの就労(H-1B)ビザ取得には、大きく3つの条件があります。
①学士号以上、あるいはそれに匹敵する経験を保持している
②当該業種においては、通常、学士号以上の知識が要求され、その職務は学士号以上を保持する者でないと遂行できないほど、専門的、複雑かつ特殊である
③当該学士号、あるいは経験が、職務に活かされるものである
極めて単純に言えば、この条件のすべてを満たせば申請は認可され、1点でも欠けていれば、却下されるということになります。これは、H-1Bビザの申請に限ったことではないのですが、移民局が申請を却下する理由として用いられる内容には、時期により傾向があります。
 
今までのデータによると、移民局が申請を却下する主な理由は、前記の②の条件を満たしていないというのが極めて頻繁です(もちろん、すべてがそうだとは限りませんが)。仮に申請者が4年制大学を卒業していた(①)としても、従事する職務が一般的に4年制大学を出ていないとできない(②)ということの立証を、十分にできていないために却下されてしまっているということです。従って、前記の②の条件の充足に十分注意して申請を行ってください。なお、この条件充足のための立証方法は、ビザスポンサーとなる企業の業種、職務内容等によって大きく異なります。ですから、移民法専門の弁護士と、申請前に十分相談されるようおすすめします。
 
(2011年12月1日号掲載)

今年度の就労(H-1B)ビザ、これからでもまだ間に合う?

瀧 恵之 弁護士

Q:アメリカの大学を卒業後、OPT(Optional Practical Training)で就職活動を続けていました。この度、ようやくH-1Bビザのスポンサーをしてくれる就職先が決まりした。H-1Bビザ申請開始日の4月1日を過ぎてしまいましたが、まだ申請できるのでしょうか?

A:2010年4月8日付けで、移民局は今年度の就労(H-1B)ビザの受付状況について発表を行いました。この時点で6万5000 件の申請枠に対し、約1万3500 件の申請を受け付けています。また、アメリカの大学の修士号保持者向けの2万件の特別枠に対しては、5600 件の申請がなされました。
 
ちなみに2009年4月9日には、一般の申請枠に約4万2000 件、修士号の特別枠には約2万件の申請がありました。3年前の2007年は、4月1日に受け付けが始まり、2日間で締め切られ、約半数の申請者が抽選漏れするという事態が起きました。また、2年前の2008年も、最初の5営業日で受け付けが締め切られ、6割以上の申請者が抽選漏れしました。
 
ところが昨年は、最初の段階での抽選は行われず、さらに申請数が激減した今年は、申請枠の約22.5%に過ぎない数の申請しか行われていません。従って、移民局は引き続き申請を受け付けています。
 
ところで、H-1B とは「専門職ビザ」と呼ばれるビザです。移民法上の解釈における「専門職」とは、高度で特別な知識の理論的、そして実質的な適用・応用を要求される職種です。それは例えば、建築、エンジニアリング、数学、物理学、社会学、医療関係、ビジネス関係、会計、法律、技術などの分野です。また、それらの職種に就くのに、アメリカにおいて学士号、あるいはそれ以上の学歴、またはそれに値する経験が必要とされています。
 
具体的な職種としては、会計士、経営コンサルタント、教師、コンピューター・エンジニア、建築家、翻訳家などがあります。これらの職を遂行するにあたって必要とされる学歴、あるいは職歴を申請者が保持し、スポンサーとなる会社でその職種が必要とされていれば、H-1Bビザの申請条件を満たします。
 
H-1Bビザは、有効期間内の期限延長、雇用主の変更が認められていますが、最長有効期限は6年です。

移民局での認可が得られても大使館で却下のケースも

今年度の申請数の激減は、アメリカ経済の不況や、一昨年までの抽選漏れの影響を大きく反映しています。また、昨年就労ビザの審査が非常に厳しく、却下となったケースが多発したため、今年度、企業がH-1Bビザ申請対象者の採用を控える傾向にあることも影響していると言えます。企業としては、OPT の期間中に投資をして従業員トレーニングを行ったにもかかわらず、H-1Bビザを取得できなかったために、せっかく訓練した従業員を手放さなければならない事態を避けたいという考えだと思います。また、昨年秋頃から始まった「Site Inspection(実地監査)」も、企業側のH-1Bビザ申請対象者の採用を控える原因になっていると言えます。
 
H-1Bビザの申請は、今からでもまだ間に合うと言えますが、現時点でH-1Bビザが取得できると決まったわけではなく、今後の移民局の審査によります。
 
アメリカの経済不況が厳しくなるにつれ、アメリカ人労働者の保護といった観点からも、移民局での審査が非常に厳しくなる傾向にあります。現時点では確かではありませんが、今年度のH-1Bビザ申請においても抽選は行われない(定数に達した日に受け付けた申請に関しては、当日受付分の中で抽選は行われます)ものの、申請書類の審査は、昨年同様厳しくなされることが十分に予想されます。
 
審査の過程ですが、不認可のケースでも移民局から最初から却下の通知が来ることは珍しく、RFE(Request for Additional Evidence)と呼ばれる追加書類の提出が求められることが一般的です。このRFEで十分な回答がなされないと、却下につながる可能性があります。従って、RFEを受け取った場合、十分な追加証拠書類の提出を行うことが、就労ビザ取得の重要な鍵であると言えます。
 
また、昨年から移民局の審査で仮に認可を得ることができても、その後、在日アメリカ大使館/領事館での面接で却下されるケースが多発しています。ですから、移民局で認可を得ても、面接に際して十分な準備を行うことです。そして、出入国の必要性がさほどなければ、アメリカ国内でグリーンカードの申請を行い、その過程で出入国許可が下りるまで、日本へは行かないようにするというのも得策かもしれません。
 
(2010年5月1日号掲載)

2010年度の就労(H-1B)ビザ申請、申請者数と却下数の実情

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、この春、アメリカの大学を卒業しました。OPT の申請も行っていますが、その後のことも考え、H-1Bビザの申請も考えています。今年はビザ発給数枠に達しなかったので、抽選が行われなかったと聞きました。今から申請しても、まだ間に合うのでしょうか? また、仮に申請できるとすれば、注意すべきことはありますか。

A:就労(H-1B)ビザは、移民局の会計年度(10月に始まり9月に終わります)の間の発行数が6万5000に限られており、アメリカで修士号を取得している申請者には、これ以外に2万の枠が設定されています。
 
2008年度(2007年10月~08年9月)、および09年度(2008年10月~2009年9月)には、申請者が発給規定枠を遥かに超えてしまったため、抽選が行われました。しかし、今年、2010年度(2009年10月~2010年9月)は、不況と抽選を恐れた企業側がH-1B 対象者の雇用を控えた経緯もあり、申請者数が激減し、抽選が行われませんでした。結果、今でも受け付けが行われています(2009年7月20日現在)。
 
具体的には、移民局の発表によると、6万5000 の枠に対して、
2009年4月17日 約4万3000
4月20日 約4万4000
4月27日 約4万5000
5月18日 約4万5500
5月22日 約4万5700
5月29日 約4万5800
6月5日 約4万4400
6月19日 約4万4500
6月26日 約4万4800
7月3日 約4万5000
7月10日 約4万4900
の申請を受け付けたとされています。
 
ここで不思議に思われる方も多いと思います。5月22日時点で4万5700であったのが、後の7月10日時点で4万4900 という具合に、受け付けられた数が減っているということです。これは、移民局が正確な数を把握することが困難であるということもありますが、審査過程で相当数の申請が却下されているということを示していると言えます。修士号保持者に関しては、4月当初から常に2万件の受け付けを行っているものの、すべての申請者が認可されるわけではないので、今でも受け付けを継続しています(2009年7月20日現在)。
 
これを簡単に分析すると、6万5000の枠に関しては、審査の結果が出始めた5月後半から7月にかけて、新たに申請を行う申請者数よりも、却下される申請者数が上回っており、また、2万の修士号の枠に関しては、新たに申請を行う申請者数と却下される申請者数がほぼ均衡していると言えます。すなわち、今年のH-1Bビザの申請においては、抽選によって審査を受けることなく却下される事態はなかったものの、審査の後、相当数の申請が却下されているという、今までになかった傾向を示しています。

移民局の申請却下に対する傾向と対策

では、この却下を回避するには、どのような方法が考えられるか、簡単に述べさせていただきます。
 
H-1Bビザを取得するには、大きく3つの条件があります。
 
①学士号以上、あるいは、それに匹敵する経験を保持している
②申請する業種において、通常、学士号以上の取得が要求されており、その職務は、学士号以上を保持する者でないと遂行できない程、専門的、複雑かつ特殊である
③当該学士号、あるいは経験が、職務において活かされるものである
 
極めて単純に言えば、この条件のすべてを満たせば申請は認可され、1つでも欠けていれば、却下されるということになります。
 
これは、H-1Bビザの申請に限ったことではないのですが、移民局が申請を却下する理由として用いられる内容には、その時期によりクセ(傾向)があります。今までのデータによると、今年、移民局が却下を行う主な理由(もちろん、すべてがそうだというわけではありません)は、前記の②の条件を満たしていないというのが、極めて頻繁だと思われます。仮に4年制大学を卒業していたとしても、従事する職務が一般的に4年制大学を卒業していないとできない職務であるという立証が十分にできないと、却下されてしまっているということです。
 
まだH-1Bビザの申請を行うチャンスはあると思いますが、却下されてしまっては、申請した意味を成さなくなってしまいます。従って、前記の②の条件の充足に十分注意して申請を行うことをおすすめします。この条件充足のための立証方法は、スポンサーとなる会社の業種、職務内容等によって大きく異なるため、専門の弁護士とよく相談することをおすすめします。
 
(2009年8月1日号掲載)

2009年の就労(H-1B)ビザ申請近況報告

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、現在OPT(OptionalPractical Training)で仕事をしており、今年の4月1日にH-1Bビザの申請を行いました。今年は申請者が少なく、申請は抽選にならなかったと聞きました。ということは、私はH-1Bビザを取得できるということでしょうか?

A:2009年4月9日に移民局は、この時点で6万5000件の就労(H-1B)ビザ申請枠に対して、約4万2000 件の申請を受け付けたと発表しました。アメリカで修士号を持っている人に、2万の特別受付枠がありますが、これに対しては、同数の約2万件の申請受け付けが行われました。
 
従って、6万5000 の受付枠に対して、移民局は現在(4月14日現在)以降も申請を受理し続け、修士号の2万件の枠に対しても、過去の例から見て、すべての申請が認可されるわけではないので、申請の受理を移民局は続けることになります。また、「Premium Processing」(通常の申請料に加えて1000ドル余分に移民局に支払うことにより、審査結果を15日以内に受け取るシステム)にて申請した場合は、4月9日から数えて15日以内に結果が知らされることになります。
 
まず、H-1Bビザそのものの説明をします。
H-1Bビザは「専門職ビザ」と言われるものです。移民法上の解釈における「専門職」とは、高度で特別な知識の理論的、そして実質的な適用・応用を要求される職種です。それは例えば、建築、エンジニアリング、数学、物理学、社会学、医療関係、ビジネス関係、会計、法律、技術などの分野であり、またその職種に就くには、アメリカにおいて通常、学士号あるいはそれ以上の学歴、またはそれに値する経験が必要とされる職種を指します。
 
具体的な職種としては、会計士、経営コンサルタント、教師、コンピューター・エンジニア、建築家、翻訳家などがあります。これらの職の遂行にあたって必要とされる学歴、あるいは職歴(コンピューター・エンジニアであれば、コンピューター・サイエンス)を保持し、スポンサーとなる会社でその職種が必要とされていれば、H-1Bビザの申請条件を満たします。
 
H-1Bビザは、期間の延長だけでなく、雇用主の変更も認められていますが、有効期間は最高6年までに限られます。

アメリカ経済の不況の波がH-1Bビザ申請にも影響か?

2年前の2007年4月1日から受け付けが始まったH-1Bビザの申請では、最初の2日間で受け付けが締め切られ、約半数の申請者が抽選漏れするという事態が起こりました。昨年4月1日から受け付けが始まった申請でも、最初の5営業日で受け付けが締め切られ、約6割以上の申請者が抽選漏れしました。
 
ところが、2009年年の申請で、最初の5営業日を過ぎても定員に達していないのは、アメリカの不況が大きく反映していると言えます。興味深いのは、学士号(あるいはそれに相当する経験)保持者の枠で、約2万3000の余りが出たのに対し、修士号の2万の枠は(その後、申請を受け付けたものの)埋まってしまい、この枠に関しては、昨年とほぼ同様であるということです。つまり、会社において即戦力となりやすい修士号保持者の就職は、昨年同様であったにも関わらず、就職後も会社内においてトレーニングを必要としがちな学士号保持者の採用は、大きく狭まったと言えるのかも知れません。今年は幸いなことに、抽選漏れでH-1Bビザを取得できないということはありません。ただし、現時点でH-1Bビザが取得できると決まったわけではなく、今後の移民局の審査によります。昨年の後半から、アメリカ経済の不況が厳しくなるにつれ、アメリカ人労働者の保護といった観点もからみ、移民局での審査が厳しくなる傾向にあります。
 
今年のH-1Bビザの審査においても、もちろん現時点では確かでないかもしれませんが、抽選はない(定員に達した最終日に受け付けた申請に関しては、その日に受け付けた申請書の中での抽選は行われます)ものの、その後の審査において厳しく見られることも十分予想されます。
 
審査の手順として、認可されないケースに関しては、移民局から最初から却下の通知が来ることは珍しく、RFE(Request for Additional Evidence)と呼ばれる追加書類の提出が求められることが一般的です。このRFE で十分な回答がなされないと、却下につながる可能性があります。従って、RFEを受け取った場合には十分な証拠書類の提出を行うことが、H-1Bビザ取得の重要な鍵であると言えます。
 
(2009年5月1日号掲載)






グリーンカード(永住権)申請中に転職するには?

永住権の認可が下りる前に転職したい場合

吉原 今日子 弁護士

Q:大学でコンピュータサイエンスメジャーを専攻し、学位を取得後、現在はコンピューターソフトの会社で働いています。今の会社で永住権申請のスポンサーをしてもらっていますが、できれば早く退職したいと思っており、すでに転職活動中です。申請が下りる前に辞めた場合、永住権のスポンサーはどうなるのでしょうか?今すぐに辞めても影響はありませんか?

A:永住権の申請をする際、現在の雇用主とスポンサーが必ずしも一致する必要はありません。雇用を通して永住権を申請する場合には、大きく3つの段階があります。
 
第1段階は、「労働認可書(Employment Authorization Document )」の申請です。ここでは、米国内にあなたの希望する職務を勤められるアメリカ人がいないことを証明します。第2段階の「I-140(Immigrant Petition for Alien Worker)」の申請では、スポンサーの会社が、労働局で定められた給料を払うことができるか否かが審査されます。最後の第3段階、「I-485(Application to Register Permanent Residence or Adjust Status)」の申請では、申請者自身が条件を満たしているかの審査が行われます。
 
基本的に永住権のスポンサーの変更はどの段階でも可能ですが、申請の段階によっては、一からやり直す必要がある場合があります。
 
もし現在、第1か第2の申請段階におり、永住権取得後に採用される確約が無い場合や解雇される場合、最初から申請をやり直すことになります。しかし第2段階までの認可が取れていれば、第1段階からやり直しても、1度目の永住権申請の優先日(Priority Date)が適応されます。
 
また、次の3つの全条件がそろっていれば、一から申請をやり直すことなく、優先日も変わらず、永住権のスポンサーのみ変更できます。
 
①第2段階での「I-140」が認可済み
②第3段階の「I-485」を申請してから180日が経過している
③変更先の職種が申請中の永住権の職務内容と類似している
 
さらに、新しいスポンサーによる移民局宛の手紙も求められます。その手紙には、新しい会社での職務内容が、第1、第2段階で申請したときと類似していることを主張をしなければなりません。職務内容が類似しているという点で、労働局からすでに設定された給料と新しいスポンサーでの給料が大幅に違わないことも、審査上での重要な要素です。
 
繰り返しますが、「I-485」の申請から180日以上が経過しているということが重要です。180日未満で現在のスポンサーが移民局に申請の取り下げを行ってしまうと、永住権申請を初めからやり直さなければなりません。

永住権取得直後に退社すると取り下げられる可能性も

永住権を雇用ベースで申請する場合は、永住権取得後も永久的にそこで働く意思を持っている必要があります。ですから、永住権取得後にすぐ会社を辞めてしまうと、永住権を剥奪されてしまう可能性もあります。ほとんどの場合、スポンサーの会社が永住権取得後にすぐ辞めてしまった従業員に対して、移民局に永住権の取り下げを願い出ることによります。
 
あなたもどこかで、「最低1年間働く必要がある」と耳にしたことがあるかもしれません。これは以前判例で、永住権取得後1年で会社を辞めた社員の永住権の取り下げを移民局に申し出たところ、1 年以上会社に勤めていたということを考慮し、移民局が取り下げの申し出を却下したことからきています。しかし、永住権を取得して1年経っているからといって取り下げられないという可能性がないわけではありません。もちろん、解雇、病気、セクハラの被害など仕事を続けられなくなる状況はあります。また、現在の仕事より高額なオファーが別の会社からあった場合、常識的にそれを断ることはないと思います。
 
まれに会社と従業員の両者が永住権取得後の再雇用に合意した上で、申請の途中で退職する場合があります。この場合はどの段階でも、永住権の申請を初めからやり直したり、スポンサーを変更する必要はありません。
 
このように、さまざまな理由がありますので、一概にどのような状況でリスクがなくなるかを断定することはできません。しかし、スポンサーの会社を変更した場合、あなたは「永住権申請時点では永久的に勤める意思があったが、その後予定が変わった」だけで、申請時には会社を辞める意思はなかったことを主張しなければなりません。
 
あなたの場合、「I-140」が認可済みで、「I-485」を申請してから180日が経過していれば、スポンサーの変更が可能です。そうでない場合は、新しい会社で永住権の申請を初めからやり直してもらうか、永住権取得後に現在勤めている会社に再雇用の約束をしてもらうか、あるいは永住権を取ってから辞められた方が賢明でしょう。
 
(2014年8月16日号掲載)

グリーンカードの申請中に転職したい、スポンサーの変更はできますか?

吉原 今日子 弁護士

Q:現在、私は会社を通してグリーンカードを申請中です。しかし、同時に新しい就職先を探しており、今の会社を辞めようと思っています。その場合、途中でグリーンカードのスポンサーを変えなければならないと思いますが、可能でしょうか。

A:グリーンカードのスポンサーを変えることはどの段階でも可能ですが、申請のどの段階にいるかによって、申請を初めからやり直さなければならない場合があります。しかし、今働いている会社を辞めたとしても、グリーンカードが取れた段階でその会社に再度採用されるのであれば、どの段階にいても申請を初めからやり直す必要はありません。また、グリーンカードを今の会社Aで申請し、会社Aに戻る前提でいったん別の会社Bで働く場合、スポンサー変更の必要はありません。現在の雇用主とグリーンカードのスポンサーが一致する必要はないからです。

雇用を通した場合のグリーンカード申請ステップ

雇用を通したグリーンカード申請は、大きく3つのステップに分かれます。まず第1ステップは、「Labor Certification」(労働局の審査で「PERM」と呼ばれる)です。これは、アメリカ国内に希望する職務を務められるアメリカ人がいないことを証明する審査です。第2ステップ(I-140)では、スポンサーである会社が、労働局で定められた給料を払うことができるかの審査。第3ステップ(I-485)は、申請者自身が条件を満たしているかの審査が行われます。
 
もし、現在第1ステップ、または第2ステップの申請段階にいてグリーンカード取得後も採用される約束がなく解雇される場合、第1ステップから申請をやり直すことになります。しかし、第2ステップの認可が取れていれば、第1ステップからやり直しても、1度目の永住権申請における優先順位(移民局が誰に優先してグリーンカードを与えるかという順位)を取り戻すことができます。
 
第1ステップからやり直すことなく優先順位を維持したままグリーンカードのスポンサーを変更するには、以下の3つの要素が絶対条件となります。
 
①第2ステップでの「I-140」が認可済みであること
②第3ステップの「I-485」を申請してから180日が経過していること
③変更先の職種が、申請中の永住権の職務内容と類似していること
 
以上の条件を満たした上で、新しいグリーンカードスポンサーからの移民局宛の手紙を移民局に提出する必要があります。その手紙では、新しい会社での職務内容が、第1、第2ステップで申請した時と類似しているということに加え、労働局からすでに設定された給料と新しいスポンサーでの給料が大幅に違わないことが主張されていないといけません。さらに、「I-485」を申請して180日経過していることも重要です。180日未満での申請で、現在のスポンサーが移民局に申請の取り下げを行ってしまうと、初めからやり直さなければなりません。
 

すぐに会社を辞めてしまうとカード剥奪の可能性も

グリーンカードを雇用ベースで申請する人は、グリーンカード取得後も、永久的にその会社で働く意志が必要です。ですから、グリーンカード取得後すぐに会社を辞めてしまうと、グリーンカードを剥奪される可能性があります。これはほとんどの場合、スポンサー会社がグリーンカード取得後すぐ辞めてしまった従業員に対して、移民局にグリーンカードの取り下げを願い出ることから発生します。以前の判例で、ある会社がグリーンカード取得後1年で会社を辞めた社員のグリーンカードの取り下げを移民局に申し出たところ、1年以上会社に勤めていたことを考慮し、取り下げ申し出が却下されました。このことから、勤め始めてから1年経っていれば大丈夫などとも言われていますが、それも絶対ではありません。
 
もちろん、解雇、病気、セクハラなど、仕事を続けられなくなる状況はあります。また、高額なオファーが別の会社からあった場合、常識的にそれを断ることはないと思います。会社を辞めるのにはさまざまな理由があり、一概にどうしたらグリーンカードを失うか断定はできません。ただ、会社変更をした場合、あなたは「グリーンカード申請時点では永久的に勤める意志があったが、その後、予定が変わった」ことを証明しなければなりません。
 
第2ステップの「I-140」が認可済みで、第3ステップの「I-485」を申請してから180日が経過していれば、グリーンカードスポンサーの変更はできます。さもなければ、新しい会社で申請を初めからやり直してもらうか、グリーンカード取得後に再雇用の約束を取り付けるか、あるいは今の会社でグリーンカードを取ってから辞められた方がいいと思います。
 
(2013年3月16日号掲載)

永住権申請中の転職 スポンサーの変更は可能?

吉原 今日子 弁護士

Q:現在働いている会社で、永住権を申請中です。同時に転職活動中で、新しい職場が見つかり次第、今の会社を辞めようと思っています。その場合、永住権のスポンサーを変えなければならないと思いますが、可能でしょうか?それとも永住権が取れた後に辞めた方がいいのでしょうか。

A:永住権(グリーンカード)のスポンサーを変えることは、申請手続きのどの段階でも可能ですが、申請プロセスのどの段階にあるかによっては、申請を初めからやり直さなければならない場合があります。
 
雇用を通しての永住権申請の場合、大きく分けて3つのステップがあります。
 
第1 ステップは、「Labor Certification」(労働局の審査- PERMと呼ばれるもの)です。これは、米国内に希望する職務を務められるアメリカ人労働者がいないことを証明する審査です。
 
第2ステップ(I-140)では、スポンサーである会社が、労働局で定められた給料を払うことができるかどうかという審査です。
 
最後の第3ステップ(I-485)では、申請者自身が申請条件を満たしているかの審査が行われます。
 
あなたの場合、現在勤務中の会社を辞めたとしても、永住権が取れた段階で、あなたを再雇用するということであれば、どの段階でも永住権の申請をやり直す必要はありません。その場合、永住権のスポンサーを変更する必要はありません。というのは、現在の雇用主と永住権のスポンサーが一致する必要がないからです。
 
もし現在、申請段階の第1、または第2ステップで、永住権取得後に今の会社に再雇用される約束がない場合、転職すると、第1ステップから申請やり直しになります。
 
申請をやり直すことなく、しかも現在のPriority Date(申請優先日)を維持したまま永住権のスポンサーを変更するには、以下の3つの要素が絶対条件となります。
 
①第2ステップの「I-140」が認可済みである
②第3ステップの「I-485」申請後、180日が経過している
③転職先の職種が、申請中の永住権の職務内容と類似している
 
以上の条件を満たした上で、永住権のスポンサーを変えたい時に必要となるものは、新しいスポンサーからの移民局宛の手紙です。その手紙では、上記③を主張し、職務内容が類似しているという点で、労働局からすでに設定された給料と新スポンサーでの給料が大幅に違わないことが、審査上の重要な要素となります。
 
また、上記②も重要です。180日未満での申請の場合、現在のスポンサーが移民局に申請取り下げを行うと、初めからやり直さなければなりません。
 

永住権取得後も勤務する意志表明が大事

永住権を雇用ベースで申請する人は、永住権取得後もスポンサー企業で働く意志を持っている必要があります。ですから、永住権取得後すぐに辞めると、永住権を剥奪される可能性もあります。これはほとんどの場合、スポンサー企業が、永住権取得後すぐに辞めた従業員に対し、移民局に永住権の取り下げを願い出た場合です。
 
「永住権取得後も最低1年間働く必要がある」という話を聞いたことがあるかもしれません。これは、永住権取得後1年で会社を辞めた社員の永住権取り下げを移民局に申し出たところ、取得後1年以上勤めたことを考慮し、取り下げの申し出を移民局が却下したという前例からきています。しかし、1年経っているからといって剥奪されないという保証はありません。
 
もちろん、解雇やセクハラ行為、また病気になったりなど、仕事を続けられなくなる状況はあります。また、現在より高額な給与のオファーが別会社からあった場合、それを断ることはないと思います。一概にどのような状況であれば剥奪のリスクがなくなるか断定することはできませんが、スポンサー会社の変更をした場合、「永住権申請時点では、ずっとスポンサー企業に勤める意思があったが、その後状況が変わった」ということを主張する必要があります。
 
あなたの場合、「I-140」が認可済みで、「I-485」を申請してから180 日が経過していれば、申請をやり直すことなくスポンサー変更ができます。
 
そうでない場合は、新会社で永住権申請を初めからやり直す、または、永住権取得後に元の職場で再雇用してもらう約束を取り付ける、あるいは、永住権を取ってから転職する方が良いでしょう。
 
(2011年12月16日号掲載)

グリーンカード申請途中での転職申請はやり直しになる?

吉原 今日子 弁護士

 

Q:現在、勤務している会社でグリーンカードを申請中ですが、会社の経営状態があまり良くないので、解雇される可能性があります。そうなる前に転職先を探して、今の会社を辞めようと思っています。その場合、グリーンカードのスポンサーを変えなければならないと思いますが、可能ですか?それとも、今の会社でグリーンカードを取得した後に、転職した方がいいのでしょうか?

A:グリーンカードのスポンサーを変えることは、申請プロセスのどの段階でも可能です。しかし、グリーンカード申請プロセスのどの段階にいるかによって、申請を最初からやり直さなければならない可能性があることを理解してください。
 
現在働いている会社の経営状態が悪く、解雇されるかもしれないということですが、グリーンカードが取得できた時点で、再雇用してもらえるのであれば、現在、申請のどの段階にいても、初めからやり直す必要はありません。同様に、スポンサーを変更する必要もありません。というのは、現雇用主とグリーンカードのスポンサーが一致する必要がないからです。
 
雇用を通してのグリーンカード申請には、大きく分けて3つのステップがあります。第1ステップは、「Labor Certification」です。アメリカ国内に希望する職務を務められるアメリカ人が存在しないことを証明する審査です。第2ステップ(I-140)は、スポンサー会社が、労働局で定められた給与を支払うことができるかという審査です。最後の第3ステップ(I-485)として、申請者自身が条件を満たしているかの審査が行われます。
 
もし現在、第1ステップ、または第2ステップの段階にいて、グリーンカード取得後に再雇用される保証がない状態で解雇された場合、最初から申請をやり直すことになります。
 
申請を最初からやり直すことなく、グリーンカードのスポンサーを変更するには、以下の3つの要素が絶対条件となります。
① 第2ステップで、I-140 が認可済み
② 第3ステップのI-485 を申請してから180日が経過している
③ 転職先が、現在申請中のグリーンカードの職務内容と類似した職種
 
以上の条件を満たした上で、グリーンカードのスポンサーを変える際に必要となる物は、新しいグリーンカードのスポンサー(転職先)からの移民局宛の手紙です。その手紙では、転職先での職務内容が、第1、第2ステップで申請した職務と類似していることを主張しなければなりません。さらに、労働局から設定された給料と転職先での給料が大幅に違わないことも、審査上での重要な要素となります。
 
なお、I-485申請後180日未満の場合、現在のスポンサーが移民局に申請取り下げを行ってしまうと、初めからやり直さなければなりません。
 

グリーンカード取得後も同一会社での勤務が前提

なお、グリーンカードを雇用ベースで申請する人は、グリーンカード取得後も恒久的にスポンサー会社で働く意志を持っている必要があります。ですから、グリーンカード取得後、すぐに会社を辞めてしまうと、グリーンカードを剥奪される可能性があります。グリーンカード取得後も、最低1年間は同じ会社で働く必要があると聞いたことがあるかもしれません。これは、グリーンカード取得後1年で会社を辞めた社員のグリーンカード取り下げを、スポンサー会社が移民局に申し出たところ、取得後1年以上勤めていたことを考慮し、移民局がその要請を却下した判例から来ています。
 
しかし、取得して1年以上経っているからといって、必ずしも剥奪されないというわけではありません。もちろん、解雇されたり、病気になったり、セクハラ行為をされたなど、仕事を続けられなくなる状況はあります。また、現在の仕事より高額なオファーが別会社からあった場合、常識的にそれを断ることはないと思います。
 
さまざまな理由がありますので、一概にどのような状況でリスクがなくなるかを断定することはできません。しかし、転職した場合、あなたがグリーンカード申請時点では恒久的に勤める意思があったが、その後、状況が変わったというように、申請時に会社を辞める意思がなかったと、主張しなければなりません。
 
第2ステップのI-140が認可済みで、第3ステップのI-485申請後180日が経過していれば、スポンサー変更ができます。そうでない場合は、転職先の会社でグリーンカードを初めから申請し直してもらうか、現在の会社にグリーンカード取得後、再雇用してもらう約束をしてもらうか、グリーンカード取得後に転職することをおすすめします。
 
(2009年11月16日号掲載)

駐在員ビザ(Eビザ)からグリーンカードを取得するには?

Eビザで就労しています。 永住権(グリーンカード)は短期間で取得可能?

瀧 恵之 弁護士

Q:私は2021年現在、ロサンゼルスにある日系企業でEビザにて仕事をしています。本社からの後任の駐在員との入れ替えが予定されていましたが、コロナパンデミックのため延期になっていました。それに伴い、会社の意向で私が長期にわたり今の役職を続けることになりました。そこで、会社が永住権(グリーンカード)の申請を行っても良いと言ってくれたので、申請を開始しようと思います。Eビザを持っていると永住権が早く取れると聞いたのですが、どのような手続きを踏めば良いのかを教えてください。

A:まず、多くの方々の間で誤解されていることですが、Eビザを持っていること自体で(Lビザの場合も同じですが)永住権の申請手続きが早くなるわけではありません。問題は、あなたが最初に日本の本社で雇用され、その後駐在員として米国の会社で雇用されるようになったか、あるいは最初から米国の会社で採用されることになったのかということです。両者の違いについて説明します。

日本で雇用後米国に来た場合、短期間で取得の可能性あり

あなたが前者の場合であれば、永住権(グリーンカード)の申請は短期間でできる可能性があります。これには、申請者が日本の親会社から派遣され、就労ビザにて最初に米国に入国した3年間のうち、少なくとも1年間は日本の親会社にて管理職者として勤務していること、また米国の子会社の株式の50%以上を日本の親会社が所有していること、さらに米国の子会社が設立されて1年以上経過していることなどの条件があります。

この申請条件がLビザの条件と非常に似ているため、LビザあるいはEビザを持っていると永住権が早く取れるとの誤解を生じる原因になっています。この申請方法が可能な場合は、後述の申請方法のように、労働局での審査を受ける必要がなく、比較的速く(2021年現在約1年半)永住権を取得することができます。この申請方法において申請が通るか否かは、米国の会社の規模(従業員の総数や年商額など)や、申請者の当該会社における重要度(申請者の監督する従業員の数や申請者の給与)などが主な審査対象となります。

 

現地採用などの場合は労働局の審査が必要

一方、あなたが最初から米国で雇用された場合、あるいは最初に日本の本社にて雇用されていても、例えば米国の会社の売上が低い、またはあなたの部下に位置付けられる人が少ない(通常、8~10名以上の部下を必要とします)場合は、前述の申請方法ではなく、労働局での審査過程を踏み、労働局からの認可(「Labor Certification」)を取得する必要があります。ここで注意しないといけないことは、米国会社の株主・役員などになっている場合は、前者の申請方法を行うことはできても、この後者の申請方法を行うことはできないということです。

後者の申請方法の場合、一般的には特殊技能を有する職業において2年以上の経験があるか、学士号を有していることが条件になっています(この条件は、職種によって若干異なります)。例えば、料理人や美容師の場合は、専門学校や短大を卒業しているだけで条件を満たします。専門学校や短大での2年間を職歴の2年間と同等に見なすという考え方です。現在、手続きをスタートしてから労働局での認可を得るまでには約14カ月~2年を要しています。永住権を取得するまでは、さらにこの後約9カ月~2年を要しています。ただしこのデータは、あくまで現在結果が出ているもの、すなわちパンデミックの間に手続きが行われたケースを基にしています。従って、今後パンデミックの終息とともに、手続き期間が短くなっていく可能性も十分にあります。

この後者の申請方法においては、会社が十分に募集活動を行い、米国人労働者に対して雇用の機会を十分に与えたかどうかが重要な審査基準となります。労働局が当該申請対象となる役職に対してアメリカ人への募集では十分な雇用が得られないと判断した場合は、「Labor Certification」が下ります。ここで初めて、移民局へ永住権の申請書を提出できます。移民局では、会社の審査(「I-140」)を終えた後、個人の審査が行われますが、この最後の段階で、面接をアメリカで受けるか日本で受けるかを選択することになります。

二つの申請方法のいずれの場合も、申請を開始してから永住権取得まで、会社は当該従業員に給与を支払えるだけの十分な経済力があることを立証しなければなりません(これが「I-140」の審査です)。これに関してはまず、申請者が既に既定の給与額を受け取っているか、会社が当該規定給与額以上の利益を出しているか、あるいはこれらの条件を備えていなくとも、会社にその給与額に見合うだけの流動資産があるか、ということが審査の対象とされます。

(2021年6月16日号掲載)

米国に転勤中。駐在から帰任する前に永住権を短期間で取得したい

瀧 恵之 弁護士

Q:私はある日系の会社で働いているのですが、日本からアメリカに転勤して以来5年が経ちます。子供は再来年、大学に進学する予定なのですが、日本への帰任命令が出ると、家族でグリーンカード申請をするチャンスを逃してしまうと聞いています。私のような立場だとグリーンカードの取得が短期間でできると聞きました。どのような条件を満たしていれば、短期間でグリーンカードを取得することができるのでしょうか?

A:まず1つ、最も早く永住権が取れる申請方法があります。以下の条件を満たすことができれば、第1優先のカテゴリーでグリーンカードを申請できます。
 
1つ目は、日本(海外)にある会社と米国にある会社が親子関係にあること。米国にある会社の50%以上の株式を日本(海外)にある会社が直接的に所有している場合、また、米国の会社の50%以上の株式を所有する株主が日本(海外)の会社の50%以上の株式を所有している場合も親子関係にあるとみなされます。
 
2つ目は、駐在員として米国の会社で部長、あるいは重役クラスなどの管理職に就いていること。移民局は一般的にこれに関して、申請者の下に部下がいるというだけでは十分でなく、申請者の下にさらに部下を持つ役職の者がいることを要求します。言い換えると、申請者を頂点として2段のピラミッド型の管理体系となっていることが必要となります。
 
3つ目に、駐在員としてLビザ、あるいはEビザにて米国に入国する前の過去3年間のうち少なくとも1年間以上、部長、あるいは重役クラスなどの管理職として日本(海外)にある親会社(子会社、系列会社でも良い)において勤務していたこと。
 
最後に、米国での役職が短期ではなく、永久的なものであることです。これには、米国の会社が日本(海外)の親会社から永住者を送らなければならないほどの規模であると見なされなければなりません。それには、相当額の売り上げと、相当数の従業員の存在が要求されます。これは、法律の条文に具体的に明記されているわけではありませんが、過去の例から見て、あなたの米国にある会社が(あくまで目安ですが)年商150万ドル以上あり、会社の組織図において、あなたの下に従業員が少なくとも8名以上は存在している必要があります。

第2優先のカテゴリーで申請するチャンスもある

以上の条件を満たしていれば、申請して約1年~1年半でグリーンカードを取得することが可能です。また、仮にあなたが前記の条件を満たすことができない場合も、第2優先のカテゴリーにて申請できるチャンスがあります。この方法だと、前記した条件がすべて免除されますので、あなたの会社の年商や従業員数が上記の条件を満たしていない場合、また、あなたが駐在員の待遇であっても日本の本社で1年以上働いていない(あるいはまったく働いていない)というような場合であっても申請可能です。
 
この申請方法の具体的な条件は、あなたが学士号を取得していて、5年以上の職歴(本社以外の会社でも可)があること。これだけで条件を満たすことになります。あるいは、5年以上の職歴がなくても修士号以上の学位を保持していればOKです。この第2優先であっても、第1優先よりもグリーンカード取得まで約半年長くかかるに過ぎず、第3優先などほかの申請方法よりもはるかに短期間で取得できる点がポイントです。

配偶者、子供も同時に取得する場合の条件

最後に、永住権は配偶者、および21歳未満の子供も同時に取得できます。あなたの場合、問題となるのは子供の年齢です。一般的には、子供が21歳になるまでにグリーンカードを取得できないと、親子同時に取得はできないとされています。ただし、「Child Protection Act」と呼ばれる例外規定があり、それに則って以下の方法で申請を進めれば、年齢についての縛りが少し緩くなります。
 
移民局への申請に関しては、すべての手続きを米国内にて行う場合、「Immigration Petition for Alien Worker(I-140)」の申請書、および、「I-485」の申請書を移民局に提出します。この「I-485」申請時に子供が21歳の誕生日を迎えていなければ、仮にグリーンカード取得時に21歳を過ぎていたとしても、子供も同時にグリーンカードを取得することが可能です。
 
あるいは、「I-140」の申請書のみを移民局に提出した後、面接を日本で受けるという方法もあります。この場合、上記の方法に比べて永住権取得が早い場合もありますが、日本のアメリカ大使館で面接を受け、認可された時点で子供が21歳未満である必要があるため、注意が必要です。
 
(2013年4月1日号掲載)

Eビザの駐在員から永住権申請を行うには?

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、駐在員としてEビザを持って米国に赴任し、はや10年になります。子供も再来年には大学に進学することになるので、後々のことも考え、グリーンカード(永住権)の申請を考えています。駐在員だと、短期間でグリーンカードが取得できると聞いたのですが、本当ですか?また、どのような手続きをすれば良いか、教えてください。

A:お子さんの年齢を考慮すると、迅速かつ的確な方法でグリーンカードの申請を行う必要があります。原則として、子供が21歳になるまでに親がグリーンカードを取得しなければ、子供も同時に取得することはできないとされています。ですが、例外規定もありますので、ここではそれも含めてご説明いたします。
 
まず、取得のための最も速い方法ですが、以下の条件を満たすことができれば、「第1優先」カテゴリーで、グリーンカードを申請できます。
 
❶日本(海外)にある会社と米国にある会社が「親子関係」にあること。これは、米国にある会社の50%以上の株式を、日本にある会社が直接的に所有している場合です。また、米国の会社の50%以上の株式を所有する株主が、日本の会社の50%以上の株式を所有している場合も、親子関係にあるとみなされます。
 
❷駐在員として、米国の会社で、部長、あるいは重役クラス等の管理職に就いていること。移民局では、一般的にこれに関して、申請者の下に部下がいるというだけでは十分でなく、申請者の下に「部下を持つ役職の者がいること」が要求されます。言い換えると、申請者を頂点として2段以上のピラミッド型の管理体系があることが必要ということです。
 
❸駐在員としてLビザ、あるいはEビザで、米国入国前の過去3年間のうち、少なくとも1年以上、部長、あるいは重役クラス等の管理職として日本(海外)にある親会社(子会社、系列会社でも良い)において勤務していたこと。
 
❹米国での役職が短期のものではなく、永久的なものであること。これには、米国の子会社が、日本の親会社から永住者を送らなければならないほどの規模であるとみなされなければなりません。それには相当額の売り上げと、相当数の従業員の存在が要求されます。これは、法律の条文に具体的に明記されているわけではありませんが、過去の例から見て、米国にある子会社が、年商150万ドル以上あり(あくまで目安です)、会社の組織図の中において、あなたの下に従業員が少なくとも8名以上いる必要があります。
 
これら❶~❹の条件を満たしていれば、約1年~1年半でグリーンカードを取得することが可能です。

第2優先で申請しても約半年の違いで取得可

また、仮に前記の条件を満たさない場合でも、「第2優先」カテゴリーで申請するチャンスがあります。このカテゴリーでは、前記の条件がすべて免除されますので、あなたの会社や年商、従業員数が❶~❹の条件を満たしていないような場合、もしくは、あなたが駐在員の待遇であっても、日本の親会社に1年以上勤務していない(あるいはまったく勤務したことがない)場合でも申請できます。
 
第2優先カテゴリーは、あなたが学士号を取得していて、5年以上の職歴(親会社以外の会社でも可)があれば、条件を満たすことになります。また、5年以上の職歴がなくても、修士号以上の学位を保持していれば条件を満たします。
 
第2優先であっても、第1優先より取得までに約半年余計にかかるだけで、第3優先など、他の申請方法よりも遥かに短期間でグリーンカードを取得できます。
 
グリーンカードは、申請者の配偶者や21歳未満の子供も同時に取得できます。申請に関しては、すべての手続きを米国内で行う場合、「Immigration Petition for Alien Worker(I-140)」の申請書、および「I-485」の申請書を移民局に提出します。I-485申請時に、子供が21歳の誕生日を迎えていなければ、仮にグリーンカード取得時点で21歳を超えていたとしても、同時取得が可能です。
 
あるいは、I-140の申請書のみを移民局に提出後、インタビューを日本で受ける方法もあります。この場合、米国内で行う場合と比べ、グリーンカードの取得自体が早い場合があります。しかし、この場合、日本にあるアメリカ大使館でインタビューを受け、認可された時点で、子供が21歳未満でなければ、申請者と同時に取得することはできません。

グリーンカードの申請 E・Lビザからは、早く取得できる?

吉原 今日子 弁護士

Q:私は、3年前に日本の本社より駐在員として、アメリカの支社に赴任しました。現在、L-1Aビザを持って働いており、アメリカ支社の業務統括を任せられています。当分日本に帰国する予定がないので、グリーンカード(永住権)の申請を考えています。EまたはLビザを持っていると、永住権申請のプロセスが速いと聞きました。本当でしょうか?

A:雇用を通しての永住権申請のプロセスは、通常、第1~第4優先に分けられます。雇用を通して永住権を申請する場合、一般的には、まず労働局での審査が必要となります。この申請では、会社が十分に人材の募集活動を行い、アメリカ人労働者に対して雇用の機会を十分に与えたかどうかが、重要な審査基準となります。そのため、新聞やインターネット等で、人材募集を行う必要があります。現在、この人材募集の期間には、最低2カ月(労働局での人材募集に関する審査のペースは、最近速くなっていますが…)、そして、労働局の審査全般に数カ月かかっています。あなたの場合は、現地採用ではなく、日本の会社から駐在員として送られてきていますので、雇用を通しての永住権申請では、最も速い第1優先カテゴリーに当てはまります。これには多国籍企業の重役等が該当します。そのほかには、極めて高度な技術、能力を保持する者、著名な教授などが含まれます。次の4点を証明することによって、永住権の申請が可能です。
 
①日本(海外)にある会社とアメリカにある会社が、親子関係にあること
これは、アメリカにある会社の50%以上の株式を、日本(海外)にある会社が直接的に所有している場合です。また、アメリカにある会社の50%以上の株主が、日本(海外)の会社の50%以上の株式を所有している場合も、親子関係にあるとみなされます。
 
②駐在員として、アメリカの会社で部長、あるいは重役クラス等の管理職に就いていること
移民局では、一般的に「重役クラス」とは、永住権申請者の下に部下がいるというポジションでは十分ではなく、申請者の部下の下に、さらに部下がいるポジションと定義しています。言い換えると、申請者を頂点として、2段のピラミッド型の管理体系があることが必要です。
 
③駐在員として、LあるいはEビザでアメリカに入国する前の過去3年間のうち、少なくとも1年以上、部長あるいは重役クラス等の管理職として、日本(海外)にある親会社(子会社、系列会社)において勤務していたこと
 
④アメリカでの役職が、短期のものではなく、恒久的であること
これには、アメリカの会社が、日本(海外)の親会社から永住者を送らなければならないほどの規模でなければなりません。それを証明するには、アメリカの子会社が、相当額を売り上げ、相当数の従業員がいることが必要です。以上の条件をすべて満たしていれば、第1優先カテゴリーにおいての永住権申請が可能です。この場合、労働局の審査を受ける必要はなく、直接、移民局へ永住権申請書を提出することができます。

 

米子会社の業績が悪いと発給を受けるのは困難

申請には、アメリカと日本(海外)にある会社の双方から、決算報告書、会社設立に関する書類など、会社が実際に存在し、活動を行っていることを示す書類が必要となります。万が一、会社の経営状態が悪く、従業員がいない会社などは、前記の条件を満たしていても、移民局から永住権の発給を受けるのは困難です。アメリカ国内にて、移民局へ永住権の申請をする場合、「Immigration Petition for Alien Worker」(I-140)と「Application to Register Permanent Residence or Adjust Status」(I-485)という書類を提出します。この申請方法では、I-485 を提出した約3カ月程度で労働許可が下ります。そして、その時点から、あなたが現在保持しているEビザは、必要なくなります。この申請では、グリーンカードが発給されるまでに、現在約6カ月~1年程度かかっています。このほかに、I-140 の申請書のみをアメリカ国内で移民局に提出した後、インタビューを日本で受けることもできます。現在、I-140 の認可に約4~6カ月、その後、日本でのインタビューまでに、さらに4~6カ月要しています。この場合、あなたはインタビューの時まで、今持っているEビザを保持する必要があります。

駐在員(Eビザ)のグリーンカード申請

瀧 恵之 弁護士

Q:私は現在、Eビザで駐在員として働いていますが、子供の大学進学が近いので、将来のことを考え、グリーンカードの申請をしようと考えています。駐在員だとグリーンカードの取得が短期間でできると聞いたのですが、どのようにすれば良いでしょうか?

A:子供の年齢を考慮して、迅速に的確な方法で、グリーンカードの申請を行う必要があります。
 
子供が21歳になるまでに、あなたがグリーンカードを取得しなければ、原則として、あなたと同時に取得することはできないとされています。しかし、例外規定もありますので、ここではそれも含めて述べさせていただきます。
 
最も早い方法として、以下の条件を満たせば、「第1優先」カテゴリーにてグリーンカードを申請することができます。
 
①日本(米国外)にある会社と米国にある会社が、親子関係にあること
②駐在員として米国の会社で、部長あるいは重役クラス等の管理職に就いていること
③駐在員として、LビザあるいはEビザにて、米国に入国する前の過去3年間のうち、少なくとも1年間以上、部長あるいは重役クラス等の管理職として、日本(米国外)にある親会社(子会社、系列会社でも良い)において勤務していたこと
④米国での役職が短期のものではなく、永久的なものである
 
これは、法律の条文に具体的に明記されているわけではありませんが、過去の例から見て、米国の会社が、年商150 万ドル以上(あくまで目安です)あり、会社の組織図の中において、あなたの下に従業員が少なくとも8名以上いる必要があるでしょう。

 

取得まで半年間の差第2優先での申請も考慮して

この方法を使えば、早ければ約1年から1年半でグリーンカードを取得することが可能です。また、仮に前記の条件を満たせない場合でも、「第2優先」で申請できるチャンスがあります。
 
この第2優先カテゴリーでは、前記の条件がすべて免除されます。あなたの会社の年商や従業員数が条件を満たさない場合や、日本の本社で1年以上働いていない(あるいは、まったく働いていない)場合でも申請可能です。あなたが学士号を取得していて、5年以上の職歴(本社以外の会社でも可)を持っていれば、条件を満たせます(5年以上の職歴がなくても、修士号以上の学位を保持していれば可)。この第2優先でも、第1優先より取得まで約半年間余計にかかるに過ぎず、「第3優先」など、他の申請方法よりも遥かに短期間でグリーンカードが取得できます。また、グリーンカードは配偶者、および21歳未満の子供も同時に取得できます。
 
移民局への申請に関しては、すべての手続きを米国内で行う場合、「Immigration Petition for Alien Worker(I-140)」の申請書、および「I-485」の申請書を移民局に提出します。I-485申請時に子供が21歳の誕生日を迎えていなければ、仮にグリーンカード取得時に21 歳を超えていたとしても、同時にグリーンカードを取得できます。 
 
また、I-140 の申請書のみを移民局に提出した後、インタビューを日本で受ける方法もあります。この場合には、前記の方法に比べてグリーンカードの取得自体が早い場合もありますが、在日アメリカ大使館でインタビューを受け、認可された時点で、子供が21 歳未満である必要があります。
 
(2009年9月1日号掲載)

スポンサーなしでグリーンカード(永住権)を申請するには?

特殊技能者がスポンサーなしで永住権を申請する方法

吉原 今日子 弁護士

Q:私は日本で薬学博士号を取得し、製薬会社で10年間働いた後、アメリカの大学で研究員として勤務しています。日米両国の学会で研究結果を発表し、また研究に関する著書も多数出版しています。アメリカに残って研究を続けたいのですが、大学に私の永住権、ビザのスポンサーをしてもらうことは難しいと思います。この場合、研究者としてスポンサーなしで永住権を申請することは可能でしょうか?

A:十分な著名度が証明され、それが移民局に認められれば、永住権を短期間で取得することができます。あなたの場合、雇用ベースで永住権を申請する際の第1優先枠に該当しており、通常このカテゴリーを「EB-1」と呼んでいます。これは芸能人、スポーツ選手、研究者、著名人、高度な特殊技能者に対して与えられます。

 

アメリカにとって有益な人材である証明が必要

判断基準としては、その分野において上位2%に属している高度な特殊技能者であるというのが条件です。しかし、それを実際に審査するのはその分野の専門家ではない移民局です。ノーベル賞受賞者ならば誰もが分かるので、このカテゴリーの審査基準を簡単にパスすることができますが、専門的な分野になると、申請者が上位2%に入っているかどうかを立証するのが困難な場合があるというのが現実です。つまり、申請者自身がアメリカにとって重要な財産であることを証明する必要があります。
 
高度な特殊技能者として永住権を申請するには、以下の条件のうちの少なくとも3つを満たす必要があります。
 
①国際的に価値のある賞を受賞したことがある
②該当分野において功績を持つ者により構成される団体に属している
③申請者に関する内容が記された出版物がある
④申請者が該当分野において、他者を審査したことがある
⑤申請者が該当分野に多大な貢献を行った
⑥申請者が該当分野の学術的記事を執筆したことがある
⑦申請者の作品が公の場で展示されたことがある
⑧名声のある団体・組織などにおいて重要な役割を担ったことがある
⑨申請者が該当分野における他の人々と比べ、高い報酬を得ている
⑩申請者が芸術・芸能関係の分野に属する場合、その分野において高い人気や評判を得ている
 
通常、雇用を通して永住権申請をする場合、スポンサー(雇用主)を必要とします。その場合、第1ステップとして、Program Electronic Review Management(PERM)と呼ばれる手続きを経て「Labor Certification(労働証明書)」の申請をしなければなりません。しかし、卓越した能力を持っている人の場合、労働証明書の審査が免除され、雇用主なしでの永住権申請(「EB-1」、または「National Interest Waiver」が承認された場合の「EB-2」)が可能です。労働証明書の申請過程をとばすことで、永住権申請を1年ほど短縮することができます。

 

立証リスクを考慮し「EB-2」での申請も視野に

あなたの場合、「EB-2」のカテゴリーにおいての申請も考えてみることも可能です。原則として、労働証明書が必要ですが、「National Interest Waiver(NIW)」と呼ばれる嘆願申請方法を用いれば、雇用主を通さず、また労働証明書の申請過程を経ずに永住権の申請をすることが可能です。
 
嘆願には、まず申請者が「EB-2」で申請するための資格を保持していなければいけません。修士号以上の学位を取得しているか、それ相当の経験がある場合です。 
 
次に、NIW を適用するためには、以下の3つの条件を満たしている必要があります。
 
①申請者の能力が米国の国益になる
②申請者のもたらす利益が、アメリカ国家全体にもたらされる
③労働証明書の申請をする期間が、アメリカへの国益を損なう可能性がある
 
上記の条件にあるように、「EB-1」と「EB-2」の申請者は、アメリカへの貢献が国益になり、申請者がアメリカで収入を得ることが可能であることを証明しなければなりません。「EB-2」での申請は、「EB-1」ほどの著名度を必要としませんので、「EB-1」での申請が難しい場合は、「EB-2」での申請をお勧めします。
 
ただし、「EB-1」、「EB-2」のいずれも、実際にあなたがこのカテゴリーの条件を満たしていたとしても、移民局の厳しい審査でそれを立証できるか否かは別問題で、それが困難なために長い時間を要してしまう可能性もあります。この立証のリスクの可能性を十分に吟味した上で、賢明な申請方法を選ばれることをお勧めします。専門の弁護士とよく相談し、どの方法で申請するか検討してください。
 
(2014年12月16日号掲載)

会社のスポンサーに頼らず永住権の申請をする方法

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、ある日系の自動車メーカーの技術開発に従事しています。子どものことも考え、永住権(グリーンカード)を申請したいのですが、会社はスポンサーになってくれません。私はPh.D.(博士号)と特許を保持しており、研究に関する発表や出版物も多く出しています。特殊技能があれば、永住権が取りやすいということを友人から聞いたことがあるのですが、私の場合、この方法によって会社に頼らず永住権の申請ができるのでしょうか?

A:Ph.D. を取得している人は、永住権申請における優先順位の中の第1カテゴリーに属しています。第2、第3カテゴリーのように「Labor Certification(労働認可証)」を取得する必要もないため、確かに永住権を短期間で取得できます。 
 
ただし、Ph.D. の保持だけでは永住権は認可されづらく、専門分野において特別に秀でた能力を有することの証明が必要です。高度な特殊技能者として永住権を申請するには、以下の条件のうちの少なくとも3つを満たしている必要があります。
 
①国際的に価値がある賞を受賞したことがある
②当該分野の功績者で構成される団体に属している
③申請者に関して言及した内容の出版物がある
④申請者が当該分野において、他者を審査したことがある
⑤申請者が当該分野で多大な貢献をした
⑥申請者が当該分野の学術的記事を執筆したことがある
⑦申請者の作品が公の場で展示されたことがある
⑧名声のある団体や組織などにおいて重要な役割を担ったことがある
⑨申請者が当該分野における他者と比べ、高い報酬を得ている
⑩申請者が芸術や芸能関係の分野に属する場合、その分野において高い人気や評判を得ている
 
これらの条件を満たすには、Ph.D. を取得したというだけでは十分ではありません。しかし、Ph.D. 取得後、その研究活動に参加し続けているような場合には、これらの条件をその過程において必然的に満たしている場合もあります。
 
また、特許をお持ちのようですが、その特許の価値がどれくらいなのか、特許の登録がご自身の名前によってされているのか、あるいは会社の名前によってされているのかなどによっても移民局の審査が異なってきます。
 
会社の名前でされているのであれば、その登録の際にどれだけの貢献をしたのかも判断材料とされます。例えば1人あるいはチームで開発したのか、またチームで開発したのであればそのチームの中心的存在であったのか、あるいは単にメンバーの一員に過ぎなかったのか、などです。

 

雇用者が存在しなくても永住権の申請は可能

前述の条件を3つ以上満たしていれば、必ずしもPh.D. を取得している必要はありません。例えば、有名な芸能人やスポーツ選手もこのカテゴリーにおいて永住権を取得することが可能です。具体的な証明方法としては、その分野の雑誌に掲載されていればそのコピー、その分野の著名人またはその分野の業績を評価できる立場にある団体からの推薦状を提出するのが好ましいです。また、その分野において他の人を評価したり審査する立場にあること、あるいはそのような経験を証明することができる資料を提出すれば、非常に有効であると言えます。
 
この申請方法の最大のメリットは、具体的な雇用者が存在している必要はなく(もちろんあればプラスですが)、該当分野において申請者がいかに仕事を行っていくかの説明のみで足りる点です。ですから、活動や研究が米国に滞在するのにふさわしく、十分な意義と価値があることを説明すれば、雇用者がいない場合の申請の条件として足りるでしょう。

 

国家利益への貢献を証明し短期間で労働許可を取得

また、申請者の仕事が米国の国家利益に貢献するものであることを証明すれば、雇用者は必要ありません。ただしこの場合は、申請方法のカテゴリー自体が異なり、先の①~⑦の条件のうち、少なくとも2つ以上を満たしている必要があります。この申請方法では、雇用者を見つける必要がないため、労働認可証の審査過程を経ることなく「I-140( Immigrant Petition for Alien Worker)」による申請のみで済みます。
 
この「I-140」に加えて「I-485(Register Permanent Residence or Adjust Status)」および「I-765(Employment Authorization)」の申請を同時に行えば、申請後約2〜3カ月で労働許可を取得できますので、この時点から自由に仕事を行えます。また、永住権も、1 年弱で取得できるでしょう。
 
(2014年5月1日号掲載)

スポンサーなしで博士号だけでグリーンカード申請できますか?

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、日本で博士号を取得した後、とある民間の会社の研究所に勤めています。今回、私の研究がアメリカの学会でも認められたため、アメリカの研究所から招待されました。この機会に今の仕事を辞めてアメリカの地で挑戦してみたいと考えているのですが、この研究所は政府関連のため、ビザのスポンサーにはなってくれません。博士号(PhD)があれば、永住権(グリーンカード)を取りやすいと聞いたことがあるのですが、私の場合、スポンサーなしでグリーンカードの申請ができるのでしょうか?

A:博士号を取得すれば、それが仮にアメリカの大学からのものでなく日本の大学からのものであっても、高度な特殊技能者として永住権を短期間で取得できる可能性があります。高度な特殊技能者は、申請の第1優先のカテゴリーに該当し、第2優先、第3優先のように、「Labor Certification」を取得する必要がありません。しかし、重要な点は博士号を保持していることのみでそれが可能なわけではないということです。高度な特殊技能者としてグリーンカードを申請するには、以下の条件のうちの少なくとも3つを満たしている必要があります。
 
①国際的に価値のある賞を受賞したことがある
②その分野において功績を持つ者により構成される団体に属している
③申請者に関する内容が記された出版物がある
④申請者がその分野において他の者を審査したことがある
⑤申請者が該当分野において多大な貢献を行った
⑥申請者が該当分野の学術的記事を執筆したことがある
⑦申請者の作品が展示されたことがある
⑧名声のある団体・組織などにおいて重要な役割を担った
⑨申請者が該当分野におけるほかの人と比べて、高い報酬を得ている
⑩申請者が芸術・芸能関係の分野に属する場合、その分野において高い人気・評判を得ている
 
これらの条件を満たすには、一見、博士号を取得したというだけでは、十分ではないとも考えられます。しかし、あなたのように博士号取得後、その研究活動に参加し続けていれば(特に、学会で研究が認められたりしていれば)、これらの条件をその研究活動の過程において必然的に満たしてしまっている場合もあります。
 
逆に、上記の条件を3つ以上高度なレベルにおいて満たしていれば、必ずしも博士号を取得している必要がないという場合もあります。例えば、有名な芸能人やスポーツ選手も、このカテゴリーにおいてグリーンカードを取得することが可能です。

 

条件を満たしていることを証明する方法

前述の条件を満たしていることの具体的な証明方法としては、その分野の雑誌に掲載されていれば、掲載誌のコピーに加えて、その分野の著名人、あるいはその分野の業績を評価できる立場にある団体からの推薦状を提出するのが好ましいです。また、その分野において他の人を評価したり審査する立場にあること、あるいは、あったことがあれば、それに関する資料を提出すれば、非常に有効です。
 
また、この申請方法の最大のメリットは、具体的な雇用者が存在している必要はなく(もちろんあればプラスですが)、該当分野において申請者がいかに仕事を行っていくかの説明のみで足ります。ですから、あなたの場合は活動が米国に滞在するのに十分な意義、価値があることを説明することで足りるでしょう。
 
さらに、申請者の仕事が米国の国益に貢献するものであることを証明することで、雇用主の存在の必要性が免除される方法もあります。これは、申請方法のカテゴリー自体が異なり、先の10個の選択枠(条件)の最初の7つ(①~⑦)のうち、少なくとも2つ以上を満たしている必要があります。

 

I-485、I-765の同時申請ならさらに時間短縮

このように、この申請方法であれば、雇用者を見つける必要がなく、また、労働局でのLabor Certificationの申請過程を経ることなく、移民局でのI-140の審査のみでグリーンカードの取得ができてしまうのです。
 
ちなみに、もしアメリカにおいて何らかのビザ(例えばB-1やB-2)を保持している場合、このI-140に加えて、I-485、および就労許可の申請(I-765)を同時に行えば、申請後、約3カ月で労働許可を取得することができます。その時点で自由に仕事を行うことができるようになりますし、手続きがスムーズに進めば、その後、約半年程度でグリーンカードを取得できます。
 
(2013年1月1日号掲載)

特定の分野でトップの人間であればグリーンカードを短期間で取得できる?

吉原 今日子 弁護士

Q:私は、アメリカで医学博士号を取得後、州立大学の大学病院での研究員としての勤務を経て、現在、製薬会社で働いています。日本でもアメリカでも医師免許を取得しており、また、両国の学会でも研究結果を発表しています。さらに、研究に関する多数の出版物も出しています。「著名度が証明できれば、グリーンカードを短期間で取得できる」と友人から聞いたことがあります。私の場合でも、そのように短期間でグリーンカードの申請ができるのでしょうか?

A:あなたには2つの選択肢があります。もし、ご自身の著名度が証明され、それが移民局に認められれば、確かにグリーンカード(永住権)を短期間で取得できます。「EB-1」と呼ばれる第1優先のカテゴリーに該当します。これは、芸能人、スポーツ選手、研究者など、著名人や高度な特殊技能者に対して与えられる永住権申請のカテゴリーです。
 
取得可否の判断基準は、その分野においてトップ2%に属している高度な特殊技能者であるかどうかです。しかし、それを審査するのは、その分野の専門家ではない移民局。例えばノーベル賞受賞者なら、誰もがその分野でのトップだとわかるので、審査は簡単にパスできます。ですが、そうでない場合、専門分野において申請者がトップ2%に入っているかどうかを移民局が立証するのは困難なのが現実です。これは言い換えると、申請者自身が米国にとって重要な財産であることを証明する必要がある、ということです。

 

高度な特殊技能者として永住権を申請するための条件

高度な特殊技能者として永住権を申請するには、以下の10条件の、少なくとも3つを満たす必要があります。
 
1)国際的に価値のある賞を受賞したことがある
2)当該分野において功績を持つ者により構成される団体に属している
3)申請者に関する内容が記された出版物がある
4)申請者が当該分野において、他者を審査したことがある
5)申請者が当該分野に多大な貢献を行った
6)申請者が当該分野の学術的記事を執筆したことがある
7)申請者の作品が展示されたことがある
8)名声のある団体・組織等において重要な役割を担ったことがある
9)申請者が当該分野におけるほかの人々と比べ、高い報酬を得ている
10)申請者が芸術・芸能関係の分野に属する場合、その分野において高い人気・評判を得ている
 
あなたの場合、これらを満たしている可能性は十分にあると思います。EB-1での申請方法の最大のメリットは、移民局に申請する前の段階である「Labor Certification」の過程を経ることなく、雇用に基づく移民ビザ申請(I-140)のみで、この過程を代用できる点です。
 
このI-140に加え、「就労許可の申請(I-765)」を同時に行えば、申請後約3カ月で労働許可証を取得できます。また、EB-1では、具体的な雇用者が存在する必要がないところもメリットです。

 

EB-1は時間がかかる場合も EB-2の申請も視野に

しかし、実際にあなたがEB-1での申請条件を満たしていたとしても、それを立証できるかどうかは別問題。立証が困難なために長い時間を要してしまう可能性もあります。
 
そこで、「EB-2」のカテゴリーでの申請も考えてみるのが賢明かもしれません。大学で学んだことを活かした職業に5年以上勤めているか、修士号を取得している場合、EB-2で申請できます。申請では、Labor Certificationの申請過程を踏まなければなりませんが、「EB-3」での申請のように「Priority Date」(一定期間、申請を待たされるシステム)によって待たされることがありません。
 
EB-2はEB-1と比べると、約半年程度、余計に時間がかかります。しかし、仮にEB-1で申請を行ったとしても、移民局から追加の質問がきて、これに答えた後、再度審査ということになれば、結局のところ期間的にはほぼ同じになってしまいます。これでは、EB-1申請で立証の面でのリスクを負う意味がなくなります。
 
ですから、もし、あなたが高度な特殊技能者であるにもかかわらず雇用者がいない場合(自分でビジネスを行っているような場合)、確かにEB-1での申請が唯一の選択肢かもしれません。しかし、現在の雇用主である製薬会社がスポンサーとなってくれるのであれば、EB-2での申請の方が安全策であると言えるでしょう。この立証のリスクの可能性を十分に吟味した上で、賢明な申請方法を選ばれることをおすすめします。 
 
(2012年11月16日号掲載)

PhDを持っているとグリーンカードは取得しやすい?

瀧 恵之 弁護士

Q:私は医療関係の研究に従事しており、このたび他州の研究所で勤務することになりました。しかし、その研究所は政府関連のため、ビザのスポンサーにはなってもらえません。私はPhDを持っており、研究に関する出版物も多く出版されています。 PhD取得者は、グリーンカードを取得しやすいと友人から聞いたことがあります。私の場合、スポンサーなしでグリーンカードの申請ができるのでしょうか?

A:A:PhDを取得者は、確かに永住権(グリーンカード)を通常より短期間で取得することができます。あなたの場合は、永住権申請における第1優先のカテゴリーに該当します。このカテゴリーでは、第2、第3優先のように、「Labor Certification(労働許可)」を取得する必要がありません。
 
しかしながら、PhDを保持しているだけで、それが可能なわけではありません。「高度な特殊技能者」としての条件を満たしている必要があります(上述参照)。
 
条件を満たすには、確かにPhDを取得したというだけでは十分ではありません。しかし、あなたのようにPhD取得後、研究活動に従事し続けているような場合には、その過程においてこれらの条件を、必然的に満たしている場合もあります。逆に、申請条件を高度なレベルにおいて満たしていれば、必ずしもPhDを取得している必要はありません。例えば、有名芸能人やスポーツ選手も、このカテゴリーにおいてグリーンカードの申請・取得が可能です。

雇用者が存在しなくても永住権(グリーンカード)の申請が可能

条件の具体的な証明方法としては、当該分野の専門誌に掲載されたことがあればそのコピー、当該分野における著名人、または業績を評価できる立場にある団体からの推薦状を提出するのが好ましいです。当該分野において他者を評価したり審査する立場にあったり、以前その立場にいたことがあれば、それに関する資料を提出すれば、申請には非常に有効だと言えます。
 
また、この申請方法の最大のメリットは、具体的な雇用者が存在しなくても良く(もちろんいればプラスです)、当該分野において申請者がいかに仕事を行っていくかの説明のみで足ります。ですからあなたの研究活動が、あなたの米国での滞在を十分なものにすることを説明すれば、雇用者が存在しない場合の申請の条件には十分でしょう。
 
また、申請者の仕事が、米国の国益に貢献していると証明することで、雇用主の必要性が免除される申請方法もあります。これは、申請のカテゴリー自体が異なります。そして、先の10条件のうち最初の7つ(①~⑦)において、少なくとも2つ以上を満たす必要があります。この申請方法では、雇用主を見つける必要がなく、またLabor Certificationの審査過程を経る必要もなく、I-140による申請のみで済みます。
 
あなたの場合、このI-140の申請に加え、I-485、およびI-765(就労許可)の申請を同時に行えば、申請後約2~3カ月で労働許可を取得できるでしょう。そして、その時点から自由に仕事を行うことができます。また、永住権も、およそ1年弱で取得できるでしょう。
 
(2011年1月1日号掲載)

 

ビザ免除プログラムとESTAとは?

ESTA(電子渡航認証システム:Electronic System for Travel Authorization)とは、観光や出張など90日以内の短期滞在で、特定のビザを持たずにアメリカへ渡航する場合に必要となる事前承認システムのことです。このようなビザ免除プログラムによりアメリカ渡航には、必ず事前のESTAによる認証が必要でインターネットサイトから申請できます。また申請の際、ESTA申請料として14ドルをクレジットカードで支払う必要があり、1回のESTA申請の有効期限は2年間となります。以前にアメリカへ渡航したことがある場合は、前の申請が有効かどうかを申請前に確認ください。

ESTA申請の流れ

1. 申請前にまずパスポートを取得してください。
2. ESTA申請のWEBサイト(https://esta.cbp.dhs.gov/esta/)へアクセスします。
3. 「申請」ボタンを押して、申請内容(氏名・生年月日・パスポート番号等)を入力します。
4. クレジットカード番号を入力し、ESTA申請料を支払います。
5. 認証されると申請許可番号が表示されます。その画面を印刷したものを保持して渡米します。

ESTA申請とアメリカへ頻繁に入国する場合の注意事項

吉原 今日子 弁護士

Q:日本でプラスチック製の電子部品、医療用検査用品、食品用包装資材等の製造をしている会社で働いています。展示会、商談を行うため、度々米国を訪れており、1回の滞在期間は1~2週間程です。今年は、5回程米国を訪れています。前回の入国の際、入国審査官から「米国で仕事をしたり、住んだりする予定ではないか?」と質問されました。今後も度々米国に来なければならないので、次回入国の際の注意事項などを教えてください。

A:ビザ免除プログラム(Visa Waiver Program :VWP)は、特定の国籍の人が米国に渡航する際、有効なパスポート、往復または次の目的地までの航空券・乗船券を所持し、渡米目的が短期の商用あるいは観光であれば、ビザなしで米国に90日以下の滞在が可能となるプログラムです。渡米に際して、ビザ免除渡航者は、電子渡航認証システム(ESTA)で承認を受け、米国入国地でそれが確認される必要があります。
 
VWP参加国は、運営費および旅行促進法により定められた14ドルの「ESTA料金」を支払わなければなりません。ESTA申請は旅行前ならいつでも可能です。通常1度承認されれば、米国へ複数回の渡航が可能です。ESTAは2年間の期間または申請者のパスポートの有効期限(どちらか短い方)、あるいはその他の再申請しなければならない状況が発生するまで有効です。
 
しかし、ESTAでの申請が可能でも、自動的に米国入国が許可される保証はありません。入国審査官が、あなたは観光客ではなく、米国で仕事を始めたり、住んだりするつもりだと感じた場合、入国が拒否される可能性があります。そして、居住や就労の予定はないとその場で言い張っても、審査官は信じないかもしれません。そして、あなたを次の飛行機で日本に送り返すこともあり得ます。
 
リスクファクター例(一部)
■米国での滞在回数・期間
■米国を最後に出国してから、どのくらい日にちが経ったか ※米国を出国して2日後に再入国するという人は、6カ月以内に再入国する人よりもリスクは高まります。
■親類に米国市民や永住権保持者がいるか ※いる人は、いない人よりリスクが高まります。
■グリーンカードを申請して、取得を待っている状態か ※その場合は、リスクが高まります。
 
求められたら提出できる証明書類を用意しておく
リスクが高いケースだからといって、自動的に入国が拒否されるわけではありません。本当に短期の出張で米国に入国する、日本との強いつながりを持っていることを証明できれば、入国拒否のリスクを避けられる可能性は高まります。以下に示す物をすべて用意する必要はありませんが、リスクが高い人ほど揃えた方が無難でしょう。
 
◆短期出張が目的の場合
①参加する展示会のパンフレットや展示予定内容に関する契約など
②米国で会う予定の人からの手紙で、あなたが何をするのかを説明した物
③誰が出張費を支払うのか、およびあなたの収入を説明した物。もし相手の会社が支払うのであれば、その会社からの手紙は大切な証明となります
 
◆日本とのつながり
①日本の雇用主からの手紙、または最近の給料支払い明細(英訳付き)
②日本のアパートのリース(英訳付き)
③日本の運転免許証、電話料金請求書、公共料金請求書やクレジットカードの明細など、日本の住所を示す物
④日本に居住を証明する親類からの手紙で、親類の名前をすべて列挙した物
 
入国の際には、これらの証明書類をまとめておき、携帯することをおすすめします。しかし、入国審査官へ自ら差し出さないで、まず、パスポートと帰りの航空券を差し出します。
列が長い場合、審査官は90日間の滞在を許可する場合が多いです。審査官にウソは決して言ってはいけませんが、聞かれていないことまで、自分から進んで答える義務はありません。ただし、「本当に観光目的で来たのか」「米国にいた期間が長過ぎる」などと聞かれ始めたら、その質疑応答の流れに沿って、持参した証明書類を審査官に提出します。
頻繁に米国を訪れる人は、通常入国審査官から「次に入国する時は、ビザを取りなさい」と、言われることがほとんどです。その場合は、B-1ビザの申請、または日本の会社が米国に支店を出す計画が進んでいるようでしたら、L-1、E-1/2など、就労ビザの申請も考えると良いかも知れません。
 
(2010年11月16日掲載)

2009年よりビザなし渡航に事前申請(ESTA)義務化

吉原 今日子 弁護士

Q:私は学生で、アメリカに滞在中です。来年早々、両親が日本からアメリカに訪ねて来ます。今までと違い、来年からは事前に渡航許可を取らないと、日本人でもアメリカに入国できないと聞きました。渡航許可とは何ですか? どうやって取るのですか? また、取るのにどれくらいの時間がかかるのでしょうか? 教えてください。

A:ビザ免除プログラムに参加している国(日本を含む)の国民は、ビザを取得をしなくても観光や商用でアメリカに90日以下の滞在をすることができます。渡航する場合、往復または次の目的地までの航空券か乗船券、有効なパスポートを所持しなくてはなりません。また、観光や所用で渡米する旅行者がこのプログラムを利用する場合は、90日を超えて滞在期間を延長することや、滞在資格(ステータス)を変更することはできません。
 
今までは、事前の手続きをしなくてもアメリカに入国できました。しかし、2009年1月12日より、すべてのビザ免除プログラム参加国の国民は、アメリカに渡航する前に渡航許可を取得することが法律で義務付けられています。このシステムの導入はビザとは関係ありませんので、ビザを既に持っている人は、渡航認証の必要はありません。
 
この認証は、国土安全保障省(DHS)が管理する電子渡航認証システム(ESTA)ウェブサイト(https:esta.cbp.dhs.gov)から無料で取得することができます。以前は、英語のみでしたが、今は日本語の申請者の手引きがサイト上にあります。DHSは、今のところESTA申請書の作成料金を渡航者に課していませんが、将来的には有料になる可能性があります。
 
ESTAでの質問内容は、国籍、名前、生年月日、住所、パスポートのインフォメーションなどの個人情報のほかに、飛行機の便名やアメリカ滞在中の住所など、渡米情報を英語で提出する必要があります。また、申請書には、伝染病、逮捕歴、犯罪歴、ビザの取り消しや強制送還の有無などの質問にも回答する必要があります。
 
ESTAは、渡航者がビザ免除プログラムで渡米する条件を満たしているか、可能な範囲でほぼ即座に判断します。申請の回答には、承認(Authorization Approved)、保留(Authorization Pending)、拒否(Travel Not Authorized)の3種類があります。承認された場合は渡米が可能です。

ESTA認証は米国入国を保証するものではない

 

認証を1度受けると、2年間、あるいはパスポートが失効するまでのいずれか短い方まで有効で、その期間中は、何度でもこの認証を用いてアメリカに入国できます。ただし、パスポートや名前の変更などがあった場合には、再申請が必要であるとされています。
 
ESTAによる認証は、あくまでも飛行機などの交通機関に乗り込むことを認可するだけで、アメリカへの入国を許可するものではありません。ですから、認証を得ていても、入国審査の際、アメリカ税関・国境警備局(CBP)の審査官によって、入国が拒否される場合もあります。事前にESTA渡航認証を取得することにより、アメリカ到着時の入国審査で入国が拒否される可能性は低くなりますが、まったくなくなるわけではありません。ESTAの記録は、移民局が12年間保管するとしています。
 
ESTA申請が承認されなかった場合は、ビザ申請手続きについて国務省のウェブサイト(www.travel.state.gov)で情報を得るよう案内されます。最終回答は72時間以内に受け取れることになっています。また、渡航認証が拒否された場合、大使館や領事館でビザ(B-1やB-2等)を申請すれば、渡米条件を満たすことが可能です。移民局は、渡航者がこのプログラムの執行により、以前にはアメリカで入国を拒否された後、自国に戻ってビザを申請し、再度アメリカに戻って来なければならなかった手間を省くことが、目的の1つであるとしています。
 
ESTAの申請のタイミングですが、アメリカに渡航する前であれば、いつでも申請することができます。渡航許可申請は、できる限り早く、旅行計画が立てられ次第申請するよう推奨されています。DHSは、特別な事情により急遽渡米しなければならない場合があることも理解していますので、渡航直前や、緊急渡航の際の申請にも対応しています。
 
ESTA渡航認証手続きは、渡航者の情報さえ持っていれば、本人以外が代行することも可能です。渡米の際にESTAのコピーを持参する必要はありませんが、渡航認証を印刷しておくことをおすすめします。ESTA渡航認証に記載されている申請番号は、ESTAの更新、または現状確認の際に必要となります。
 
(2008年12月16日号掲載)

ビザウェイバーでの入国にはESTAによる事前登録が必要

瀧 恵之 弁護士

Q:私は日本で会社を経営しています。アメリカにも支社があり、そこの経営はアメリカ支社長に任せているのですが、視察、ミーティング等のため、年に3回ほどビザなし(ビザウェイバー)で訪れます。今度からビザなしでアメリカに入国する際に、事前登録(ESTA)が必要になったという話を聞いたのですが、どのように手続きを行えば良いのでしょうか?

A:2008年6月3日に、移民局は「Visa Waiver」(ビザなし)にて米国を訪れる人は、事前登録が必要になると発表しました。ただし、自主的に事前登録ができるようになるのは、2008年8月1日からで、強制となるのは2009年1月12日からです。
 
ビザウェイバーとは、米国に観光、あるいは、商用に来る場合、90日までの滞在期間を条件としてビザを取得せずに米国に入国することができるシステムです。ビザウェイバーは、観光だけに限らず、以下の内容の商業活動を行うことができます。
 
(1)取引先と商談を行う
(2)米国外で販売するための商品を購入する
(3)契約を結ぶ
(4)コンサルテーションを行う
(5)訴訟の手続きを行う
(6)カンファレンス、コンベンションに参加する
(7)マーケットやプロジェクトのリサーチを行う
(8)投資や会社の設立の準備を行う、等
 
ビザウェイバーで米国に入国し、商業活動を行う際に重要なのは、米国内にて給料を得ないということです。

渡航72時間前までに認可を得ること

ビザウェイバーにて、2009年1月12日以降に米国に入国する際には、事前登録が必要になるわけですが、これはインターネット上で、「ESTA Web-based system」というプログラムに入り、申請者の個人情報を入力することにより申請が可能です。ESTAでの申請は出発前のいつでも行えますが、出発までに認可を得なければなりません。しかし、一旦認可が下りた後は、行き先や渡航スケジュールの変更(ESTA申請の際に渡航スケジュールが決まっている必要もありません)をインターネット上で容易に行うことができるため、渡航の予定の段階で、できる限り早く登録する(出発72時間前までには認可を得る)ことを移民局はすすめています。ただし、ESTAのプログラム自体は緊急の場合の渡航にも対処できるようにデザインされています。
 
申請結果は、ほとんどの場合、極めて短時間で「認可(Authorization Approved)」「却下(Travel Not Authorized)」「審査の必要あり(Authorization Pending)」のいずれかを受け取ることになります。認可は2年間、あるいはパスポートが切れるまでのいずれか短い方まで有効で、複数回この認可を用いて米国に入国することができます。ただし、パスポートや名前の変更等がある場合には再申請が必要であるとされています。また、このESTAの認可は、あくまで飛行機等の交通機関に乗り込むことを許可するだけで、米国への入国を許可するものではないとされています。ESTA施行後は、この認可がないと飛行機等に乗ることができなくなります。ESTAの記録は、移民局が12年間保管するとしています。
 
このESTAの認可を得ることができない場合は、米国入国時に、事前に何らか(B-1/2等)のビザを取得する必要があります。移民局は、渡航者がこのプログラムの施行により、以前には米国にて入国を拒否された後、自国に戻ってビザを申請し、再度アメリカに来なければならなかった手間を省くのも目的の1つであるとしています。
 
未成年の場合であっても、年齢に関わらず米国に渡航する場合はこのESTA登録が必要となります。ESTAのウェブサイトは、https://esta.cbp.dhs.gov。2008年8月1日の開始の際は英語のみですが、10月15日までには、他言語でも利用できるようになるとされています。
 
(2008年7月1日号掲載)

滞在期間3カ月未満のアメリカ滞在にビザウェイバープログラム

KEVIN LEVINE 弁護士

Q:3カ月未満の滞在だったら、ビザなしでもアメリカに入国することができますか?何か基本的な条件があるのでしたら、教えてください。

A:ビザウェイバー(ビザ免除)プログラムは、アメリカ滞在期間が90日間以上にならなければ、短期商用ビザ(B-1ビザ)や短期観光用ビザ(B-2ビザ)を取得しなくても、入国できるというものです。このプログラムの滞在期間は基本的には90日間以内ですが、移民局で認められた緊急事態の場合、さらに30日間延長することができます。日本は、アメリカからビザウェイバープログラムを認められている、数少ない国の1つです。
 
このプログラムを利用するには、以下の基本条件が求められます。
1)日本国籍のパスポートを持っている
2)帰りの航空券を所有しており、行き先は日本を含む米国外である。ただし、最終目的地がカナダ、メキシコの航空券はその国の居住者でない限り、認められない
3)入国する際に、移民局の係員により米国に移住する意志がないと判断されること
4)過去に米国移民法において違法行為をしていない
 
ビザウェイバーで入国する場合、90日間を超過しない限り、米国の他、メキシコ、カナダおよび隣接する国々を訪れることが認められています。ビザウェイバーで訪問できる隣接の国・地域は以下の通り。
アンティグア・バーブーダ、バハマ、バミューダ、イギリス領バージン諸島、ケイマン島、ジャマイカ、フランス領セント・バーセルミー、フランス・オランダ領セント・マーティンなど。
 
なお、連続してビザウェイバーを利用することはできませんので、最初の90日の期間内に必ず帰国しなければなりません。
学生ビザ(F、Mビザ)や労働ビザ(H、L、Eビザなど)といった非移民ビザと同様、ビザウェイバーで入国するには、移民する意志がないということを証明できなければなりません。もし米国到着時点で米国移民局の審査官が、あなたに移民する意志があるとみなした場合、日本の家族や日本で収入を得ていることなどを聞かれるでしょう。また、過去数年の間に、あなたがアメリカにどのくらいの期間に渡って滞在していたかということも、審査官の判断基準になります。

ビザウェイバーを利用せず、観光ビザを取得した方が良いのはどのような場合?

観光ビザを取得して入国することをすすめるケースはいくつもあります。以下にその例を挙げましょう。
 
1)アメリカに90日間以上の期間に渡って滞在したいと思っており、アメリカ国内にバケーションホームや親類などの家があり、日本に実家、家族や仕事といった日本との強いつながりがあると証明できる場合
2)アメリカ国内のビジネスに投資をする目的で渡米することを考えているが、移民局に、アメリカで労働許可が下りる前に働きに来ると思われたくない場合。なお、“投資家”と明記された観光ビザだと入国しやすいでしょう
3)アメリカへの旅行が長期にわたり頻繁で、一時的な訪問ではなく、永住するために来ていると移民局に勘違いされかねない場合
4)過去に移民法に違反したことがある場合。それが小さな違法行為であっても、これに該当します。例えば、前回米国を訪れた時、滞在期間を1日でも超えてしまった場合、ビザウェイバープログラムは生涯にわたって利用できなくなってしまいます。出国の際に大きなトラブルにならなかったからといって、移民局がその後、その違法行為を掘り起こさないとは限りません。
 
ビザウェイバーや観光ビザに関する詳しい情報は、以下のウェブサイトを参照ください。
在東京アメリカ大使館によるビザウェイバープログラムの情報
http://tokyo.usembassy.gov/e/visa/tvisa-waiver.html
 
(2006年11月1日号掲載)

入国の際ビザがいらないビザウェイバープログラム

ケビン・レビン弁護士 弁護士

Q:アメリカに入国の際にビザを取得する必要のない、ビザウェイバープログラムとはどのようなものですか?

A:ビザウェイバープログラムとは、日本を含む外国からの90日以内の商用もしくは観光目的の入国を許可するものです。
  
ビザウェイバープログラムは、90日以内の滞在予定の入国者に対して商用ビザ(B-1)や観光ビザ(B-2)取得の手間を省くことを目的に設けられているものです。移民局は、日本を含めた27カ国に対しこのプログラムを提示、最高で30日の延長を緊急事態発生の場合に限り認めています。
 
このプログラムで入国した者は、メキシコやカナダ、および隣接する島々(バハマ、バミューダ、英国領バージン諸島、ケイマン、ジャマイカをはじめとする島々)への訪問が認められています。ただし、その訪問期間も含めて90日以内に収めなければいけません。

ビザウェイバーを使ってアメリカで不動産を所有すること、仕事をすることは可能?

アメリカ国内にセカンドホームや別荘を持っている外国人は少なくありません。例えば、その人の勤めている会社が日本国内にある場合などは同プログラムを利用できます。
 
ただし、90日以上アメリカに滞在したい場合はビザを取得してください。ビザウェイバーでは、緊急事態の場合を除き90日以内の滞在期間を延長することはできません。また、別のビザステータスに変更することも認められません。米国に別荘がある、または米国在住の家族がいるなどの理由で米国を訪問する際、不動産、家族、雇用関係などを証明できれば、観光ビザを取得した方が適当だと思われます。米国に頻繁に出入りをするようであれば、それが3カ月以内の滞在であっても観光ビザの取得をお勧めします。
 
また、同プログラムは就労を認めていません。アメリカ国内での就労を目的とする場合は、適切な就労ビザを取得しなければなりません。米国に企業を興すための投資目的を持つものの、移民局に就労許可をもらう前から働く意図があると疑われたくない場合は、“Investor(投資家)”という注釈付きのB-1ビザを取得するといいでしょう。

ビザウェイバープログラムで入国できないのはどういう場合ですか?

米国の空港に到着した時に、米国入国資格があることを証明でき、訪問理由も真実を述べなければなりません。係官が入国を拒否する主な理由は以下の通りです。
 
1)健康上の理由
2)犯罪歴(米国内および外国)
3)経済的理由(就労しないで米国に滞在することが不可能と判断された場合)
4)米国移民法における違反歴(詐欺、不法滞在)
5)一時的滞在ではなく永久的な滞在を目的とした入国だと判断された場合

アメリカの空港で入国を拒否された場合、その後どうなりますか?

一般的には2つのことが起こりえます。良い方の処置としては、入国申請がその場で取り消され、次の便で送り返されることです。悪い方は、移民法違反に問われ、公式に強制送還の処置が取られます。この場合は記録に残るので後々問題となります。

ビザウェイバーでアメリカに入国、滞在中に観光ビザや学生ビザを申請することは可能?

できません。ビザウェイバーで入国している日本人からの、郵送による非移民ビザの受付は認められていませんので、いったん日本に帰ってビザを申請し、再入国することになります。
 
2004年7月1日以降、ほとんどのビザ申請者は東京の米国大使館および大阪・神戸総領事館で米国領事との面接が必要になりました。ただし、次の申請は本人の来館による面接の必要はありません。郵送または旅行代理店を通して申請してください。
* 13歳以下または80歳以上の申請者
* 次のいずれかの非移民ビザ申請者: A-1, A-2, C-2, C-3, G-1, G-2, G-3, G-4, NATO-1, NATO-2, NATO-3, NATO-4, NATO-5, または NATO-6

過去に不法行為のあったビザウエイバーに容赦

ケビン・レビン弁護士 弁護士

Q:友人がビザウエイバーでアメリカに来ようとしたところ、入国を拒否されてしまいました。なぜでしょうか?

A:過去2年間、私の法律事務所には、ビザウエイバープログラムでアメリカに入国しようとして拒否された旅行者からの問い合わせが数多くありました。入国拒否の理由のほとんどが、過去にちょっとした不法行為をしてしまった、つまり何年か前に1日から10日間、滞在期間を過ぎてアメリカに留まってしまったというものでした。
これらの旅行者は、その後、何の問題もなくアメリカへの旅行を続けていましたが、彼らにとって不運なことに、数年前から米国税関・国境保護局(CBP: U.S. Customs and Border Protection)が、ビザウエイバープログラムで滞在期間を過ぎてしまったことのある旅行者について、空港で入国を拒否し帰国させて、観光ビザを取るよう促してきました。

過去にビザウエイバーでオーバーステイしていたら、もうアメリカには入れない?

8月12日、米国税関・国境保護局のボナー局長は、同局の係員に対して、新しい自由裁量を与えると発表しました。それは、ビザウエイバープログラムにもとづき、前回の滞在で、自分の不注意などからオーバーステイしてしまった旅行者で危険性のない者に対しては、1回は容赦する(Parole)というものです。
 
ボナー局長は、次のように語っています。「ビザウエイバープログラムの国からの旅行者が以前たった数日間オーバーステイしてしまったために、アメリカの空港で入国を拒否されてしまったというケースがたくさんありますが、その多くは米国に対して何の脅威ももたらさないと主張する旅行者でした。これまでは、入国拒否された旅行者に対し、帰りの飛行機が出るまでのひと晩を手錠をはめて留置所まで護送してきましたが、これらの処置は、単に不注意でオーバーステイしてしまった旅行者にとってはまったくの見当違いのことです。本日、この発表により、空港や港を担当する当局の責任者に、テロや犯罪の恐れのある者や出稼ぎに来た可能性のある者以外は、入国許可を認めるという指示を出しました。
 
この発表により、米国税関・国境保護局の責任者は、ビザウエイバープログラムで不法滞在をしてしまった、危険性のない旅行者を、1回のみ容赦できることになりました。もちろんそれはケース・バイ・ケースですが、これらの旅行者に対し、ビザウエイバーとしてオーバーステイしていること、今後はビザを取得してから来ることと、注意を促すことにしています。

アメリカの短期出張向け商用ビザ・Bビザとは

アメリカに商談で入国するにはどんなビザがありますか?

瀧 恵之 弁護士

Q:私の勤めている会社は、大手自動車メーカーの下請けで、アメリカに自動車部品を輸出しています。一昨年よりパンデミックの影響もあり、アメリカへの出張はほとんどなかったのですが、2021年の春くらいから技術提供や商談などの目的で、 頻繁にアメリカに行くことになりました。2022年、アメリカ入国の際に止められ、別室に連れて行かれた後、入国はできたものの、次回からはビザを取得するようにとの注意を受けました。私の会社は、アメリカに子会社があるわけではないので、駐在員の人たちのような一般的な就労ビザを申請することができません。どのようなビザが考えられますか。

A:ビザ・ウェーバー(「ESTA」登録)で入国する場合は、基本的には観光目的のために使用されるほか、米国で給与を得ないことを条件として短期のビジネスに用いることもできます。しかし、米国で雇用されておらず給与を受け取っていない場合でも、米国に頻繁に入国するのに、ビザ・ウェーバーは適していません。そこで、あなたの場合は、アメリカの短期出張向け商用ビザ(B-1ビザ)の申請が考えられます。日本のアメリカ大使館・領事館は、パンデミックによりB-1ビザの受付を長く中止していましたが、現在は再開されています。

 

アメリカの短期出張向け商用ビザ(B-1ビザ)は、米国内での取引などで利用されるビザ

アメリカの短期出張向け商用ビザ(B-1ビザ)は直接、日本の米国大使館または領事館で、「DS-160」という書式により申請ができ、L-1ビザのように、日本の米国大使館・領事館申請前に米国移民局からの認可を得る必要はありません。B-1ビザで、米国内において雇用関係に基づく就労に従事することは禁じられていますが、商談、契約の締結、また商品の買い付け、市場調査、コンファレンスへの参加、訴訟手続きなどを行うことができます。

B-1ビザ取得の条件としては、
①申請者が米国内で一定の限られた期間のみ滞在すること
②滞在期間終了後、米国を離れる意志があること
③米国滞在期間中、母国での居住地を維持し、それを放棄する意志のないこと
④米国への旅費、滞在費および母国への帰国のための費用が十分に準備されていること
⑤米国内で、該当事業に合理的に関連した活動のみを行うこと
が挙げられます。これらの内容はあなたの雇用主である会社から手紙で説明されるのが一般的です。アメリカでの今後の予定を書面にして提出するのも好ましいです。

さらに、アメリカの商談相手の会社から、
①会社が取引を行っていること
②その取引のためにあなたとの商談が必要であること
を明記した手紙をもらうのも得策です。他に、日本の会社の会計決算報告書、会社案内などを提出することにより、日本の会社がビジネスを継続して行っていること、アメリカの会社と取引をする十分な資金力があることを証明するのも、プラスになると考えられます。

 

アメリカの短期出張向け商用ビザ(B-1ビザ)は米国内でのビザ更新申請や、他のビザへの切り替えも可能

アメリカの短期出張向け商用ビザ(B-1ビザ)は、一般的に10年間(例外あり)のビザが発行され、1回の入国に対して、6カ月までの滞在資格が与えられるのが通常です。ビザ・ウェーバーと異なり、B-1ビザにて入国した場合は、アメリカ国内での更新申請も可能ですが、B-1ビザはそもそも米国での長期滞在には適しておらず、少なくとも平均して1年の半分以上は、米国外に滞在する必要があります。従って、延長申請を行った場合でも、できる限り早期にアメリカを離れ、次回のアメリカ入国までの期間をできる限り空けることが、次回のアメリカ入国の際のリスクを下げることになります。

またB-1ビザは、アメリカ国内においてステータスの変更も可能なため、例えば米国でのビジネスが拡大し、米国に支店を持ち収入を得る必要が出てきたような場合には、米国内にてB-1ビザからLビザ、あるいはE-1ビザ、E-2ビザなど他のステータスに変更申請を行うことが可能です。これにより、米国内で就労を行い、給与を得られるようになります。ただしこの場合は、いったんアメリカを出国すると日本のアメリカ大使館・領事館にてビザ申請を行わなければならなくなります。

B-1ビザの申請には、具体的かつ詳細な米国での滞在計画が必要です。滞在期間終了後、米国を離れる意志があることの説明は、例えば日本に家族がいるというだけでは説得力を欠き、日本に経済的に強い関連があることを説明した方が好ましいです。一般的には、日本に会社を持っている、あるいはあなたのように日本の会社に勤めていて、その雇用が継続されていることを証明するとよいと言えます。逆に、例えば学生ビザなどでアメリカに長期滞在した後、日本帰国直後にB-1ビザを申請したような場合は、却下される可能性があります。あなたの場合は、面接で、先のアメリカ入国の際に入国審査官よりビザを取得するよう注意を受けたことを説明するのも得策と言えます。

 

(2022年1月16日号掲載)

アメリカに商用目的で頻繁に出入りする方法

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、主にアメリカから輸入したアパレル商品を扱う店を日本で3店舗経営しています。取引先との買い付けや商談などのため、ほぼ毎月アメリカに出張しています。出張の際の入国には観光目的のビザを使用していますが、頻繁に出入りしているため、次回は半年以上間を置くか、別のビザを取るように忠告を受けました。米国内に会社を設立すれば、駐在員用のビザが取れるという話は聞きましたが、今のところそこまでの経費を使う必要性もなく、また取引先が多くの州にまたがっているので一カ所に会社を設立するのも合理的ではありません。何か良い方法はないでしょうか。

A:基本的に、観光目的の渡米の際に使用する「ESTA(Electronic System for Travel Authorization)」に登録をして、ビザ免除(Visa Waiver)で入国するならば、米国内で給与を得ないことを条件として短期の商用目的(出張等)で出入国することができます。しかし、米国内で雇用されていない場合であっても、出張等で米国に頻繁に渡航するのであれば、この「ESTA」登録は適していません。

 

従業員の数が問われる「L」ビザと「E」ビザ

商用目的で米国の出入国を繰り返す場合、アメリカに子会社を設立し、その子会社が買い付けを行い、その買い付けた商品を日本の会社に売るという手法が一般的です。そして、その取引関連の流れに基づいて、「L(Intracompany Transferee)」ビザや「E(Treaty Trader/ Treaty Investor)」ビザを申請します。ただし、これらのビザを申請する場合には、アメリカの子会社が従業員を複数人雇うことを要求されるのが通例です。
 
例えば「L」ビザの場合、子会社が設立されてから1年以内だと、仮に従業員がいなくてもビザが認可されることが多くあります。しかし、そのビザの有効期限は一般的に1年ですので、延長申請を行う際には複数の従業員を雇用していなければいけません。
 
ビジネス投資者などに発行される「E」ビザの場合には、最初の申請段階で従業員がいることが要求されます。また、あなたが言うように、このような会社の形態をアメリカで作るには経費もかかります。

 

得策は短期出張用の「B-1」ビザの取得

「L」ビザや「E」ビザの申請は将来的な計画の中に入れておき、しばらくは「B-1(Temporary Business Visitor)」ビザ、いわゆる短期出張用の商用ビザの申請を試みるのが得策であると思います。
 
「B-1」ビザを使用して、米国内で雇用関係に基づく就労に従事することは禁じられていますが、短期の出張等で商談や契約を結ぶこと、また商品の買い付けや市場調査、コンファレンスの参加、訴訟手続き、短期研修などは行うことができます。
 
「B-1」ビザの申請には、在日米国大使館か領事館で「DS-160(Non-immigration Visa Application)」を提出して申請します。また、「L」ビザのように在日米国大使館や領事館への申請前に米移民局から認可を得る必要がありません。
 
「B-1」ビザを取得するには、次の全5項目を満たす必要があります。
 
①申請者は米国内で一定の限られた期間のみ滞在する
②滞在期間終了後、米国を離れる意志がある
③米国滞在期間中、母国での居住地を維持し、それを放棄する意志がない
④米国への旅費や滞在費、および母国への帰国のための費用が十分に準備されている
⑤米国内で該当事業に合理的に関連した活動のみを行う
 
これらの内容は会社からの手紙で説明されるのが一般的です。ただし、申請者の会社が小規模の場合は、大企業に比べて上記の内容に、より詳細な説明が求められます。
 
一般的に「B-1」ビザは10年間有効です。また、1回の滞在期間が最大90日のビザ免除入国に比べ、「B-1」ビザはそれよりも長い、通常6カ月までの滞在資格が与えられます。さらに、延長やステータスの変更ができないビザ免除に対し、「B-1」ビザはそれらが米国内で可能であることが利点と言えます。例えば、米国内でのビジネスが拡大して支店を持ち、さらに収入を得る必要が出てきたような場合や滞在日数が合計で1年の半分以上になるような場合に、米国内にて「B-1」ビザから「L」ビザ、あるいは「E」ビザなどの他のステータスに変更申請を行えます。
 
「B-1」ビザの申請には、具体的かつ詳細な米国での滞在計画が必要です。また、前述したように、滞在期間終了後に米国を離れる意志があることが問われますので、説得力のある説明が要求されます。例えば、日本に家族がいるというだけでは説得力を欠き、日本に経済的な強い関係があること(あなたの場合、日本に会社があること)を説明した方が好ましいでしょう。また、アメリカの取引先企業からInvitation Letterを書いてもらうのも申請の際の有効な材料になります。
 
(2014年7月1日号掲載)

ビザ・ウェイバーでの入国が制限、他に入国の手段は?

瀧 恵之 弁護士

Q:私は日本でオートバイのアクセサリー部品販売の会社を経営しています。今まで、2カ月に1度ほどアメリカに出張して、日本で販売する部品の買い付けの契約を行っていたのですが、近年、日本での需要が多くなってきました。そこで、アメリカに支社を作って長期滞在しようと考え、その準備のためにビザ・ウェイバー(ビザなし)にてアメリカと日本を往復していました。しかし、前回出張で渡米しようとした際、アメリカに頻繁に来すぎているとの理由で入国の際に止められ、次回から何らかのビザを取得するか、半年以上間隔を空けてから渡米するように言われてしまいました。Lビザを取得するつもりですが、次回のアメリカでの出張、商談までには到底手続きが間に合いそうにありません。半年間も間を置いてしまうと、せっかくのビジネスの機会を失ってしまう可能性が大です。このような場合、他に入国の手段はないでしょうか?

A:ビザ・ウェイバーは、観光目的のほか、アメリカにて給与を得ないことを条件として短期の商用(出張等)に用いることもできます。しかし、アメリカで雇用されなくても、アメリカへ頻繁に入国する場合は、適していません。
 
L-1(企業内転勤者)ビザを申請されるということですが、そのためには、アメリカで会社を設立しているだけでなく、会社が営業を行うのに充分な準備をしている必要があります。それは例えば、アメリカの会社の賃貸借契約書や、銀行口座の書類、若干名でも従業員の雇用を開始していることの証明などです。 
 
今回の場合は、L-1ビザを取得できるまでの間、B-1(短期商用)ビザを取得し、アメリカへの出入国を行うことをおすすめします。L-1ビザ取得には、移民局の認可を得た後、日本のアメリカ大使館・領事館にてビザを取得する必要がある(従って取得にある程度の時間を要します)のに対し、B-1ビザは、移民局の許可が必要なく、直接、日本のアメリカ大使館・領事館で申請することができるからです。
 
B-1ビザで、アメリカ国内において雇用関係に基づく就労に従事することは禁じられていますが、短期出張による商談、契約を結ぶこと、また、商品の買い付け、市場調査、カンファレンスへの参加、訴訟手続きなどは行うことは認められています。ちなみに B-1ビザを取得するには、以下の条件を満たす必要があります。
 
① 申請者はアメリカ国内で一定の限られた期間のみ滞在する
② 滞在期間終了後、アメリカを離れる意志がある
③ アメリカ滞在期間中、母国での居住地を維持し、それを放棄する意志がない
④ アメリカへの旅費、滞在費、及び、母国への帰国のための費用が充分に準備されている
⑤ アメリカ国内で該当事業に合理的に関連した活動のみを行う
 
これらの条件を満たした上で、まず、日本に会社があり、現在までアメリカとの取引を行い、相当額の営業活動を行っていたことの証明が必要です。日本の会社の定款、賃貸借契約書(自社ビルならば登記)、銀行の残高証明書、アメリカとの取引を示す請求書、シッピングドキュメント(船積書類)などがそれにあたります。また、アメリカの取引先からインビテーションレターなどをもらうのも得策であると言えます。これらに加えて、アメリカでの簡単な事業計画を含めた手紙を添える必要もあります。
 
B-1ビザは、一般的には 5年間、あるいは10年間(例外あり)のビザが発行されますが、1回の入国に対して、6カ月(場合によっては、3カ月)までの滞在資格が与えられるのが通常です。ですから、B-1ビザはアメリカでの長期滞在には適しておらず、少なくとも1年の半分以上は、アメリカ国外に滞在する必要があります。
 
また、ビザ・ウェイバーが滞在期間の延長やステータスの変更ができないのに対して、B-1ビザの場合はそれがアメリカ国内において可能です。
 
例えばL-1ビザを申請するのに充分な準備が完了した場合、アメリカ国内にて、B-1ビザからL-1ビザのステータスに変更申請を行うことが可能です。すなわち、B-1ビザのステータスが切れるまでに L-1ビザの申請を行えば、B-1ビザの有効期限が切れた後も日本に帰ることなく、アメリカに滞在しながら仕事を続けることができるというわけです。
 
さらに、L-1ビザを取得できたとしても、新設の会社(登記してから1年以内)は、1年間しかビザの有効期間が与えられない場合がほとんどです。ですから、その後、日米間にて貿易を行っていることも証明することで E-1ビザ(貿易・投資家ビザ/5年間有効)への切り替えを考えるのも得策だと言えます。

出張等でアメリカを頻繁に訪問する場合、ビザウェイバー以外の方法は?

瀧 恵之 弁護士

Q:日本でアパレルの卸販売を行っています。そのため、月に1度のペースで、買い付け、および商談のために、観光の名目でアメリカを訪問しています。しかし、先月の出張の際の入国審査では、長時間待たされ、事細かく質問を受けました。幸い入国できたものの、今後このような経験をしたくありません。何か良い方法はありませんか?

A:ビザを持たない状態(ビザウェイバー・プログラムを利用)でのアメリカ入国は、基本的に観光目的のほか、アメリカ国内にて給与を得ないことを条件として、短期の商用・出張にも利用することができます。
 
しかし、アメリカ国内で雇用されておらず、給与を得ていない場合であっても、出張等でアメリカを頻繁に訪問する場合、ビザウェイバーでの入国は適していません。また、1度、入国審査の際に止められてしまうと、次回の入国からは、何らかのビザを取得してくるか、半年以上期間を空けて訪問するよう警告され、コンピューターに記録されます。次回、これを無視して入国しようとした場合、アメリカのどこの空港から入国しようとしても、前回の入国時のデータが出てきますので、任意送還される可能性が高くなります。従って、「B-1ビザ」(短期出張向けの商用ビザ)の取得をおすすめします。
 
B-1ビザでは、アメリカ国内において雇用関係に基づく就労に従事することは禁じられていますが、商談、あるいは契約の締結、商品の買い付け、市場調査、コンファレンスへの参加、訴訟手続き等は行うことができます。

 

最高6カ月までの滞在も可でも1年の半分以上は国外に

B-1ビザの有効期間は、一般的には5年間、あるいは10年間(例外あり)です。また、ビザウェイバーでは1回の入国につき、最長90日までしか滞在資格が与えられないのに対し、B-1ビザでは、入国審査官の判断で最長6カ月までの滞在資格が与えられることも多いです。
 
しかし、B-1ビザは、アメリカでの長期滞在には適しておらず、合計で少なくとも1年の半分以上、アメリカ国外に滞在する必要があります。あまりアメリカ国内での滞在が長いと、入国の際に、前記と同じ様に警告を受けたり、任意送還される危険性があります。アメリカでの滞在日数が、合計1年の半分以上になる場合には、Lビザ、あるいはEビザ申請を検討した方が、安全であると言えます。
 
また、ビザウェイバーは、アメリカ滞在中に期間の延長やステータスの変更ができないのに対して、B-1ビザの場合は、それらがアメリカ国内に滞在中に可能です。例えば、アメリカでのビジネスが拡大し、アメリカに支社を持ち、相当額の売り上げが発生し、収入を得る必要が出てきたような場合は、アメリカ国内でB-1ビザからLビザ、あるいはEビザ等、ほかのステータスに変更申請を行うことが可能です。
 
B-1ビザの申請には、具体的かつ詳細なアメリカでの滞在計画が必要です。また②の滞在期間終了後、アメリカを離れる意志があること(アメリカに永住の意志がないこと)の説明に関しては、日本に家族がいると言うだけでは説得力を欠きます。例えば、日本と経済的に強い関連があること(例:日本に会社がある)を説明した方が、好ましいでしょう。
 
(2010年11月1日号掲載)

会社設立のために日米を頻繁に往復するためのビザは?

瀧 恵之 弁護士

Q:私は日本で自動車部品販売の会社を経営しています。今まで2カ月に1度程度アメリカに出張して、日本で販売する自動車部品の買い付けのための契約を行っていました。最近、日本での需要が多くなってきたため、アメリカに支社を作り、長期滞在しようと考え、その準備のためにビザウェイバーで渡航を繰り返していました。会社の場所等を決めるのに時間を要し、つい先回、入国の際に止められ、事情を話したところ、次回からビザを取得するか、半年以上、間を置くように言われました。Lビザを取得するつもりでいますが、次回出張の入国予定日までには到底間に合いません。かといって、半年間も間を置くとビジネスに支障を来たします。どうすれば良いでしょうか?

A:まず、L-1を申請するには、アメリカにて会社が設立されているだけでなく、会社が営業を行うのに十分な準備がなされている必要があります。例えば、アメリカの会社の賃貸借契約書や、銀行口座の書類、会社の写真等を提出する必要があります。
 
ビザウェイバーでの入国は、基本的には観光目的のほか、米国にて給与を得ないことを条件として短期の商用に用いることもできますが、米国で雇用されていない場合であっても、特に頻繁に入国する場合には適していません。従って、L-1ビザを取得するまでの間、B-1(短期商用)ビザを取得して、アメリカへの出入国を行うことをおすすめします。
 
L-1ビザ取得には、移民局の認可を得た後、日本のアメリカ大使館・領事館にてビザを取得する必要がある(従って取得にある程度の時間を要します)のに対し、B-1ビザは移民局の認可なしで、直接、日本のアメリカ大使館・領事館にて申請することができます。
 
B-1ビザで、米国内において雇用関係に基づく就労に従事することは禁じられていますが、短期出張による商談、契約を結ぶこと、また、商品の買い付け、市場調査、コンファレンスへの参加、訴訟手続き等を行うことができます。

 

ビザウェイバーと異なり米国内でのステータス変更可

まずは、日本に会社があり、現在までアメリカとの取引を行い、相当額の営業活動を行っていたことの証明が必要です。これには日本の会社の定款、賃貸借契約書(自社ビルならば登記)、銀行の残高証明書、アメリカとの取引を示すインボイス、シッピングドキュメント等がそれに当たります。また、アメリカの取引先からインビテーションレターなどをもらうのも得策であると言えます。これに加えて、アメリカでの簡単な事業計画を含めた手紙を添える必要があります。
 
B-1ビザは、一般的には5年間(例外あり)のビザが発行されますが、1回の入国に対して6カ月(場合によっては3カ月)までの滞在資格が与えられるのが通常です。B-1ビザは米国での長期滞在には適しておらず、少なくとも1年の半分以上は、米国外に滞在する必要があります。
 
また、ビザウェイバーが延長やステータスの変更ができないのに対して、B-1ビザの場合は、米国内においてそれらが可能です。例えば、L-1ビザを申請するのに十分な準備が完了した場合、米国内にてB-1からL-1のステータスに変更申請を行うことも可能です。
 
すなわち、B-1のステータスが切れるまでにL-1申請を行えば、B-1のステータスが切れた後も、日本に帰ることなく、アメリカに滞在しながら仕事を続けることができるわけです。
 
さらに、L-1ビザを取得したとしても、新設の会社(登記してから1年以内)の場合は、1年間しかL-1の有効期間が与えられない場合がほとんどですので、その後、日米間にて貿易を行っていることを証明することによって、E-1ビザ(5年間有効)への切り替えを考えるのも得策であると言えます。
 
(2008年6月16日号掲載)

アメリカのグリーンカード(永住権)抽選 ~2024年(DV-2026)最新情報

アメリカ・グリーンカード抽選の当選状況

2008年~2017年のグリーンカード当選者数・当選倍率の推移と日本人当選者数

(資料提供:瀧法律事務所/ライトハウス・ロサンゼルス版2017年9月16日号掲載)

2024年のグリーンカード抽選(DV-2026)の詳細や申し込み方法を教えてください。

瀧 恵之 弁護士

Q:2024年のグリーンカードの抽選が始まっていると聞きましたが、締め切りはいつでしょうか? 私は、まだ応募に間に合いますか? 間に合うのであれば、応募方法を教えてください。

A:2024年の抽選受付は、2024年10月2日(アメリカ東海岸時間の正午12時)から開始されており、24年11月5日(同正午12時) まで行われます。

この抽選では、アメリカへの移民が過去5年間において5万人に満たない国(もちろん日本は抽選の対象国となっています)を対象に、26会計年度(25年10月〜26年9月)の間に合計5万5000の移民ビザが発行されることになります。

移民局のウェブサイト(https://dvprogram.state.gov/)にアクセスし、応募できます。代行業者などを使わない限り、申請料はかかりません。移民局を装ったウェブサイト、あるいはEメールが横行していますので、URLをよく確認することが重要です。URLの最後が「.gov」ではなく、「.com」などになっていると、政府機関ではなく民間のウェブサイトであることが分かります。

アメリカのグリーンカード(永住権)抽選の応募資格と提出書類は念入りに確認を

応募資格は以下の通りです。
①出生国、応募資格を有する国籍
アメリカのグリーンカード抽選の応募対象となっている国の国籍を有している、あるいはその国にて出生していること。ただし、該当しない場合でも配偶者が対象国の国籍を有しているか、あるいはその国にて出生している場合は、その配偶者が申請者と共にアメリカに移民することを条件として配偶者の国籍を使って応募することができます。

②学歴・職歴
高校卒業、あるいはそれと同等の学歴があること。または、過去5年間において、2年以上のトレーニングを必要とする職種において2年以上の職歴があること。どの職種であれば資格があるかは、労働省のウェブサイト「O*NET Online」(https://www.onetonline.org/)にて調べることができます。このウェブサイトでSVP(Specific Vocational Preparation)Rangeという数値が7以上の職種ならば、資格があることになります。

2024年のアメリカのグリーンカード抽選も1人1通の応募に限られ、2通以上の応募を行った場合には、その応募資格を失うことになります。申請の際には、名前、性別、出生地、応募資格適用国、パスポート番号、住所、メールアドレス、学歴などの一般的な情報に加え、写真の添付、また家族の情報も入力することになります。

ここで重要なのは、これらの情報を正確に記入していないと、せっかく当選したにもかかわらず、最後の面接の際、最初の入力漏れなどの理由により却下される可能性があるということです。特に、自分で入力するのではなく、代行業者などを使う場合には、正確に入力されているかどうか、情報に漏れが無いかを確認することが重要になります。

2024年のアメリカのグリーンカード(永住権)抽選に当選しても、優先順位次第で取得できないケースも

当選発表は、2025年5月3日以降、上記と同じ、https://dvprogram.state.gov/にアクセスし、「Entrance Status Check」をクリックして確認番号を入力すると知ることができます。 当選した場合は、その当選番号により優先順位を知ることができます。この優先順位に沿って手続きが進められていくため、当選しても、必ずしもグリーンカードが取得できることが決まったわけではありません。グリーンカードの面接を含めた最終手続きが行われるのは、移民局の26会計年度(2025年10月~ 2026年9月)内で、従って26年9月いっぱいでグリーンカードを取得できない場合は、仮に当選したとしても、グリーンカードは取得できないことになってしまいます。

当選後の手続き場所は日本とアメリカの2種類

当選者がその後の手続きを進める場合は、日本のアメリカ大使館を通して行う方法(Consular Processing)とアメリカの移民局を通して行う方法(Adjustment of Status)の2種類があります。後者はアメリカ国内に何らかのビザステータスにて滞在している必要があります。従ってESTA(ビザ免除プログラム)による入国では不可です。また、面接の際には、相当の資産を持っていない限り、アメリカ国内で仕事先が決まっていた方が有利であると言えます。この場合は、面接にオファーレターを持参するのが得策です。

抽選に応募する際は、期間終了の前日や当日になると、例年サイトへのアクセスが殺到し、入力が困難になる可能性がありますので、すでに時間はあまりないものの、その中でも早めに応募手続きを終えるのが賢明と言えるかもしれません。

この内容は、2024年10月11日時点の情報です。その後、変化する可能性がありますので、最新の情報をもとに判断・行動していただくようお願いします。(2024年11月号掲載)

2023年のグリーンカード抽選(DV-2025)の詳細や申し込み方法を教えてください。

瀧 恵之 弁護士

Q:2023年10月現在、アメリカのグリーンカード(永住権)の抽選が行われていると聞きましたが、私は、まだ応募に間に合いますか? 間に合うのであれば、応募方法や最近の傾向などを教えてください。

A:2025年会計年度(2024年10月~2025年9月)の抽選受付は、2023年10月4日(アメリカ東海岸時刻の正午12時)から開始されており、2023年11月7日(正午12時)まで行われますので、あなたの場合、このコラムを見ているのが、上記の締め切り前ならばまだ間に合うことになります。

この抽選の応募は、上記の会計年の間に5万5000の移民ビザが、アメリカへの移民が過去5年間において5万人に満たない国を対象として発行されることになります。もちろん日本は抽選の対象国となっています。移民局のウェブサイト(https://dvprogram.state.gov/)にアクセスし、応募することができます。代行業者などを使わない限り、申請料はかかりません。移民局を装ったウェブサイト、あるいは、Eメールが横行していますので、URLをよく確認することが重要です。

アメリカのグリーンカード(永住権)抽選の応募資格を満たしているか、応募用書類に不備がないかの確認を

応募資格は以下の通りです。
①出生国、応募資格を有する国籍
アメリカのグリーンカード抽選の応募対象となっている国の国籍を有している、あるいはその国にて出生していること。ただし、該当しない場合でも配偶者が対象国の国籍を有しているか、あるいはその国にて出生している場合は、その配偶者が申請者と共にアメリカに移民することを条件として配偶者の国籍を使って応募することができます。

②学歴・職歴
高校卒業、あるいはそれと同等の学歴があること。または、過去5年間において、2年以上のトレーニングを必要とする職種において2年以上の職歴があること。どの職種であれば資格があるかは、労働省のウェブサイト「O*NET Online」(https://www.onetonline.org/)にて調べることができます。このウェブサイトでSVP(Specific Vocational Preparation)Rangeが7以上(平均的な技能習得に2〜4年かかる)ならば、資格があることになります。

2023年のアメリカのグリーンカード抽選も1人1通の応募に限られ、2通以上の応募を行った場合には、その資格を失うことになります。申請の際には、名前、性別、出生地、応募資格適用国、パスポート番号、住所、メールアドレス、学歴などの一般的な情報に加え、写真の添付、また家族の情報も入力することになります。

ここで重要なのは、これらの情報を正確に記入していないと、せっかく当選したにもかかわらず、最後の面接の際、最初の入力漏れなどの理由により却下される可能性があるということです。特に、自分で入力するのではなく、代行業者などを使う場合には、正確に入力されているかどうか、情報に漏れが無いかを確認することが重要になります。

2023年のアメリカのグリーンカード(永住権)抽選に当選しても、実際の取得は優先順位次第

当選発表は、2024年5月4日以降、上記と同じ、https://dvprogram.state.gov/にアクセスし、確認番号を入力することにより知ることができます。当選した場合は、その当選番号により優先順位を知ることができます。この優先順位に沿って手続きが進められていくため、当選した場合であっても、必ずしもグリーンカードが取得できると決まったことにはなりません。グリーンカードの面接を含めた最終手続きが行われるのは、移民局の2025年会計年度(2024年10月~2025年9月)内で、従って、2025年9月いっぱいでグリーンカードを取得できない場合は、仮に当選したとしても、グリーンカードは取得できないことになってしまいます。

例えば2021年に応募して2022年に当選した場合(2023年会計年度:2022年10月~2023年9月までの枠)は、2023年6月の時点で、優先順位が1万8750番までの手続きが行われ、2023年7〜9月の間に2万1000番までの方々の手続きが行われるとされていましたが、2023年9月7日で、総発行数の5万5000件に達したため、この日で手続きが打ち切られました。

その前の2020年(2022年会計年度:2021年10月~2022年9月までの枠)は、2022年6月の時点で、全ての優先番号を持っている方々の手続きが行われることになり、この場合は、2022年9月いっぱいまでに手続きを完了した方々がグリーンカードを取得できたことになります。2023年会計年度は、コロナパンデミックの終息の影響もあり、当選者の中で、アメリカのグリーンカードの申請を行う人が急増したと言えます。

ちなみに、2022年度(2024年会計年度:2023年10月~ 2024年9月までの枠) にグリーンカードの抽選に応募して2023年に当選した場合は、先月の2023年10月からアメリカのグリーンカードが取得できる最終手続きが始まっていて、2023年11月時点では、2300番までの人がその対象とされています。

この内容は、2023年10月10日時点の情報です。その後、変化する可能性がありますので、最新の情報をもとに判断・行動していただくようお願いします。(2023年11月号掲載)

 

2022年のグリーンカード抽選(DV-2024)の詳細や申し込み方法を教えてください。

瀧 恵之 弁護士

Q:2022年もアメリカのグリーンカード(永住権)の抽選は行われますか? もし行われるのならば、応募方法などを教えてください。

A:2022年も、アメリカ移民局会計年度の2024年度(2023年10月~2024年9月までの枠)のアメリカのグリーンカード抽選受付が行われることが発表されました。受付期間は2022年10月5日のアメリカ東海岸時刻の正午12時から、11月8日の同正午12時の間です。この抽選で、アメリカ移民局会計年度の2024年度の間に合計5万5000の移民ビザが、アメリカへの移民が過去5年間において5万人に満たない国を対象に発行され、日本は抽選の対象国になっています。

DV Program公式ウェブサイトから、必要事項を記入してアメリカのグリーンカード抽選に申し込む

DV Programの公式ウェブサイト(https://dvprogram.state.gov/)にアクセスし、アメリカのグリーンカード抽選に応募することができます。代行業者などを使わない限り、申請料はかかりません。移民局を装ったウェブサイトやEメールが横行していますので、URLをよく確認することが重要です。

応募資格は以下の通りです。
①出生国、応募資格を有する国籍
アメリカのグリーンカード抽選の応募対象となっている国の国籍を有している、あるいはその国で出生していること。ただし、条件に該当しない場合でも配偶者が対象国の国籍を有しているか、その国で出生している場合は、その配偶者が申請者と共にアメリカに移住することを条件として、配偶者の国籍を使って応募することができます。

②学歴・職歴
高校卒業、あるいはそれと同等の学歴があること。または、過去5年間において、2年以上のトレーニングを必要とする職種において2年以上の職歴があること。どの職種であれば資格があるかは、https://www.onetonline.org/にて調べることができます。このウェブサイトでSVP(Specific Vocational Preparation)Rangeが7以上ならば、資格があることになります。

2022年のアメリカのグリーンカード抽選も一人1通の応募に限られ、2通以上の応募を行った場合にはその資格を失うことになります。申請の際には、名前、性別、出生地、応募資格適用国、パスポート番号、住所、メールアドレス、学歴などの一般的な情報に加え、写真の添付、また家族の情報も入力します。

ここで重要なのは、これらの情報を正確に記入していないと、せっかく当選したにもかかわらず、最後の面接の際、この記入時の入力漏れなどの理由により却下される可能性があるということです。特に、自分で入力するのではなく、代行業者などを使う場合には、正確に入力されているかどうか、情報に漏れが無いかを確認するのが重要になります。

グリーンカードの当選発表は、2023年5月6日以降、前述のhttps://dvprogram.state.gov/にアクセスし、確認番号を入力することにより知ることができます。

この内容は、2022年10月4日時点の情報です。その後、変化する可能性がありますので、最新の情報をもとに判断・行動していただくようお願いします。(2022年10月16日号掲載)

2021年のグリーンカード抽選(DV-2023)は実施されますか?

瀧 恵之 弁護士

Q:グリーンカードの抽選がなくなるかもしれないという話を聞いたのですが、2021年は抽選は行われますか?もし、実施されるならば、応募したいと思っています。

A:通常より遅れましたが、グリーンカードの抽選が行われることが発表されました。移民局会計年度の2023年度(2022年10月~2023年9月までの枠)の抽選受付が、2021年10月6日〜11月9日(東海岸時刻の正午12時)に行われます。この抽選では、5万5000の移民ビザが、米国への移民が過去5年間において5万人に満たない国を対象もとして発行されることになります(もちろん日本は抽選の対象国です)。
アメリカのグリーンカード抽選への応募は、https://dvprogram.state.gov/にアクセスして行います。代行業者などを使わない限り、申請料はかかりません。以前から、移民局を装ったウェブサイト、あるいはEメールが横行していますので、注意が必要です。

グリーンカードの応募資格を満たしているか、申請不備がないかよく確認を

応募資格は以下の通りとなります。
①出生国、応募資格を有する国であること
応募対象となっている国の国籍を有している、あるいはその国にて出生していること。ただし該当しない場合でも、配偶者が対象国の国籍を有している、あるいはその国にて出生している場合は、その配偶者が申請者と共にアメリカに移住することを条件として、配偶者の国籍を使って応募することができます。

②学歴・職歴を満たしていること
高校卒業、あるいはそれと同等の資格があること、または、過去5年間において、2年以上のトレーニングを必要とする職種で2年以上の経験があること。どの職種が該当するかは、https://www.onetonline.org/にて調べることができます。

2021年のグリーンカード抽選も、応募は1人1通に限られ、2通以上の応募を行った場合には、応募資格を失います。申請の際には、名前、性別、出生地、応募資格適用国、パスポート番号、住所、メールアドレス、学歴などの一般的な情報に加え、写真の添付、また家族の情報も入力することになります。ここで重要なのは、これらの情報を正確に記入していないと、せっかく当選したにもかかわらず、最後の面接の際、最初の入力漏れなどの理由により却下される可能性があるということです。

特に、自分で入力するのではなく、代行業者などを使う場合には、正確に入力されているかどうか、情報に漏れがないかを確認するのが重要です。当選発表は、2022年5月8日以降、前述のhttps://dvprogram.state.gov/にアクセスし、確認番号を入力することにより知ることができます。

抽選に当選後、実際にグリーンカードを取得できるか優先順位にかかっている

アメリカのグリーンカードに当選した場合は、その当選番号により優先順位を知ることができます。この優先順位に沿って手続きが進められていくため、当選したからと言っても、必ずしもグリーンカードが取得できることが決まったことにはなりません。あくまで大まかな目安ですが、優先順位が5000までの場合は、順番が回ってくる可能性がかなり高く、2023年の会計年度の前半、2022年のうちに面接を受けられる可能性が高いです。

10000を超えると会計年度の終わる2023年の9月末までに順番が回ってくるか否かが微妙になってきます。過去2年はコロナウイルスパンデミックのため、有利な優先順位で当選したにもかかわらず、面接を受けることができなかった応募者がかなりの数に上りました。今回の抽選プロセスも、コロナパンデミックの今後の動向に左右される可能性がないとは言えません。

当選者がその後の手続きを進める場合は、「Consular Process」と呼ばれる、日本のアメリカ大使館を通して行う方法と、「Adjustment of Status」と呼ばれる、アメリカの移民局を通して行う方法の2つに分かれます。後者の場合は、アメリカ国内に何らかのビザステータスにて滞在している必要があります。したがって、ESTAによる入国では認められません。どちらがいいかは、申請者の仕事を含めた都合があり、また今回のコロナパンデミックによる手続きの大幅な遅延など、予想できないような事態が起こり得る可能性もあるでしょう。

そのため、一概にどちらが良いということは言えませんが、一般的には日本のアメリカ大使館を通して行う方法の方が、通常ならば比較的処理が速いこと、また連絡が取りやすいことから、好ましい選択であると言えます。また、面接の際には、よほどの資産を持っているなどでない限り、アメリカ国内で就労先が決まっていた方が有利であると言えます。抽選に応募する際は、期間終了の直前になると、例年サイトへのアクセスが殺到し、入力が困難になる可能性がありますので、早めに応募手続きを終えるのが賢明と言えます。

※筆者からのコメント 今回の内容は、2021年10月7日時点の情報です。その後、変化する可能性がありますので、最新の情報をもとに判断・行動していただくようお願いします。(2021年10月16日号掲載)

2018年のグリーンカード抽選(DV-2020)救済措置の最新情報を教えて!

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、2018年のグリーンカードの抽選に応募し、2019年に当選通知を受け取りました。当選番号上の優先順位も前の方なので、グリーンカードが取れるものだと期待していたのですが、2020年6月のトランプ前大統領の発表により、日本のアメリカ大使館での手続きが大幅に遅れ、最終的に2020年9月25日の面接通知を、その1週間前の9月18日に受け取りました。私はアメリカにいたため、すぐに日本に行ったとしても2週間の自宅待機期間があるため面接に行くことはできず、泣く泣く面接に行くのを断念しました。しかしながら最近、私のような場合でもまだチャンスがあると聞きました。どのような内容ですか?

A:2020年11月16日号のコラムで、あなたのようなケースでも、まだグリーンカードを取得できる可能性が大いにあることを記載しましたが、これが連邦裁判所の判断により現実化されることとなりました。

2020年は多くの移民ビザが発行されない異常事態だった

あなたが申請・当選した、抽選によるグリーンカード取得の手続きの枠は「DV-2020」と呼ばれ、2018年に応募を行い、2019年に当選者が発表された後、2019年10月から2020年9月の間に移民ビザが発行されるとされていました。しかし、2020年6月22日のトランプ前大統領の発表により、2020年末までの入国規制がかかったため、多くの当選者がグリーンカード取得の機会を失いました。これは、2020年の会計年度の終わりである9月末までに移民ビザを取得しなければ、その資格を失ってしまうからです。中には面接の通知は受け取ったものの、面接がキャンセルされ、そのまま現在に至るまで、移民ビザの発行を受けられていない人もいます。

トランプ前大統領の規制により各国の大使館は抽選によるグリーンカード申請手続きを長い間中断していました。その後、グリーンカード当選者のグループによる集団訴訟が行われ、その結果、2020年9月4日に連邦裁判所は、「各大使館は抽選による移民ビザの発行手続きを進めるべきである」との判断を下しました。集団訴訟とは、Class Actionと呼ばれ、ある案件で同じ利害関係を共有する複数の人々が、原告としてのグループを形成して起こす訴訟のことで、その判決の効果はその複数の人々全てに及びます。あなたの9月25日の面接の通知が9月18日というぎりぎりに届いたのは、この集団訴訟の影響を受けたためです。

ここでの連邦裁判所の判断では、9月末日までという期日指定があったため、問題を生じさせました。例えばあなたのように、アメリカにいたために、日本に行ったとしても2週間の自宅待機を余儀なくさせられ、大使館の面接に行けない、面接の際に必要な健康診断を受けられない、面接に必要な書類の準備が間に合わないなどです。9月末日までの期日指定のため、日本のアメリカ大使館も、2020年9月後半の時点でアメリカに滞在してた人たちの救済を行うことができませんでした。これにより、5万5000の枠のうち約4万の移民ビザが発行されないままという結果になりました。

集団訴訟を受けて移民ビザの追加発行が決定

昨年、この問題に関して新たな集団訴訟が起こり、これに対して連邦裁判所は以下の内容を示唆しました。①移民ビザの発行を会計年度の終わりである9月を越えても行うべきである(これは、歴史的に鑑みて初めての判断です)。②トランプ大統領の発表における「212(f)」はあくまでアメリカへの入国を禁止するものであって、移民ビザの発行自体を禁止するものではない、との解釈を行いました。

この後、長い時間が経過しましたが、2021年8月17日、連邦裁判所は国務省が移民ビザを発行しなかったことは法的に妥当でないとの判断の下、バイデン政府に対し、9095枠の移民ビザを発行する指示(命令)を出しました。これにより、当該会計年度(2020年)の抽選に当選していながら移民ビザの受け取ることを逃した人たちにも、大きなチャンスが巡ってくることになりました。

あなたの場合、日本のアメリカ大使館からの面接通知を待つことになります。そこで、面接の通知が来たのに対応が遅れ貴重な機会を逃すということのないよう、日本への渡航の予定、健康診断、必要書類をそろえる手順を前もって準備しておくことが重要です。また、移民ビザが取得できることが決まったわけではないので、グリーンカードが取れること(期待を含む)を前提に今後の予定を組むのではなく、他の方法でグリーンカードを申請することも想定しておくのが得策です。

※筆者からのコメント 今回の掲載内容は2021年8月23日現在のもので、今後大きく変化する可能性が十分にあります。本件に該当される方は担当の移民弁護士等によく相談されることをお勧めします。(2021年9月16日号掲載)

グリーンカード抽選(DV-2020)に当選しましたが面接を受けられませんでした

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、2018年にグリーンカードの抽選に応募し、2019年に当選発表を受け取りました。当選番号上の優先順位も前の方なので、グリーンカードが取れるものだと意気揚々としていたのですが、2020年6月のトランプ大統領の発表のため、日本のアメリカ大使館での手続きが遅れに遅れ、最終的に9月25日に面接との通知を、その1週間前の9月18日に受け取りました。私はアメリカにいたため、すぐに日本に行ったとしても2週間の自宅待機期間があり、面接に行くことができず、泣く泣く断念しました。とてもやるせない気持ちでいっぱいなのですが、私は諦めるしかないのでしょうか?

A:あなたにはまだ、グリーンカードを取得できる可能性は大いにあると言えます。2020年10月19日現在で、まだ確定ではありませんが、このコラムの掲載される頃には確定している可能性もあります。以下、これに関して説明します。

集団訴訟により、移民ビザの手続きを進める方向に!?

あなたが申請している抽選によるグリーンカード取得の手続きの枠は、「DV-2020」と呼ばれ、2018年に応募を行い、2019年に当選者が発表された後、2019年10月〜2020年9月の間に移民ビザが発行されるとされていました。ただ、2020年6月22日のトランプ大統領の発表により、今年いっぱいの規制がかかったため、多くの当選者がグリーンカード取得の機会を失いました。これは、2020年会計年度の終わりである9月末までに移民ビザを取得しなければ、その資格を失ってしまうからです。中には面接の通知は受け取ったものの、その面接がキャンセルされ、そのまま現在に至るまで移民ビザの発行を受けられていない人もいます。

トランプ大統領の規制により各国の大使館は抽選によるグリーンカード申請手続きを長い間中断していました。しかしその後、グリーンカード当選者のグループによる集団訴訟が行われ、その結果、2020年9月4日に連邦裁判所は、抽選による移民ビザの発行手続きを各大使館は進めるべきであるとの判断を下しました。集団訴訟は英語ではClass Actionと呼ばれ、ある案件で同じ利害関係を共有する複数の人々が、原告としてのグループを形成して起こす訴訟のことを言い、その判決の効果はその複数の人々全てに及びます。

あなたの9月25日の面接の通知が9月18日とぎりぎりに届いたのは、この集団訴訟の影響を受けたためです。しかしながら、ここでの連邦裁判所の判断では、9月末日までという期日指定があり、問題を生じさせました。例えば、あなたのようにアメリカにいるために、日本に行ったとしても2週間の自宅待機を余儀なくさせられ、大使館の面接に行けない、面接の際に必要な健康診断を受けられない、面接に必要な書類の準備が間に合わない、などです。これらの理由により、5万5000の枠のうちの約4万の移民ビザが発行されないままという結果に至りました。

そこで、この問題に関して新たな集団訴訟が起こり、これに対して連邦裁判所は、以下の内容を示唆しました。
①移民ビザの発行を会計年度の終わりの9月を過ぎても行うべきである。これは、抽選による移民ビザは、その該当する会計年度(本件では2019年10月〜2020年9月末日)内に発行しないといけない、というそもそもの規定を覆すもので、過去に例のない初めての判断になります。
②トランプ大統領の発表における 「212(f)」はあくまでアメリカへの入国を禁止するものであって、移民ビザの発行自体を禁止するものではない、という解釈を行いました。これは、移民ビザの発行を受けた後、アメリカに入国するのは、大統領令の効果が解ける来年になるものの、移民ビザの発行はすべきであるということになります。これにより、9000以上の移民ビザが今後発行される可能性が出てきました。

さまざまな事態を想定して申請準備を進めておく

あなたの場合、ここで重要なのは、複数のケースを想定して行動することです。まず、グリーンカードを取得できることが確定したわけではないので、グリーンカードが取れることを前提に今後の予定(期待を含む)を組まないこと。仮に面接を受けることができたとしても、条件がそろわず取得できない可能性もあります。

言うまでもなく、グリーンカードを取得できる方法は、抽選を通してのみではありません。例えば、もし現在何らかのビザを保持していて、アメリカで就労しているのならば、現在の会社を通してグリーンカードの申請を行うことも可能で、この申請を抽選の申請手続きと並行して行うこともできます。一方で、面接の通知が来ても対応が遅れることにより、せっかくの貴重な機会を逃さないよう、日本への渡航の予定を立てたり健康診断を受けたり、書類をそろえたりなどの準備をしておくことも重要です。

※筆者からのコメント 今回の情報は2020年10月26日現在のもので、今後大きく変化する可能性が十分にあります。条件に該当される方は、担当弁護士などによく相談されることをお勧めします。あらかじめご了承ください。(2020年11月16日号掲載)

2020年のグリーンカード抽選(DV-2022)は実施されますか?

瀧 恵之 弁護士

Q:2020年からトランプ大統領が、グリーンカードの抽選をやめてしまったという話を聞いたのですが、どのような状況にありますか? もし、チャンスがあるのならば、応募したいと思っています。

A:トランプ大統領の2020年6月22日の大統領令の影響により、国務省からのグリーンカードの抽選の施行の発表は遅れましたが、2020年も10月7日〜11月10日(東海岸時刻の深夜12時)の間、受け付けられることになりました。この抽選では、2021年10月〜22年9月の間に5万5000の移民ビザが、米国への移民が過去5年間において5万人に満たない国を対象として発行されることになります。もちろん、日本は抽選の対象国となっており、日本国籍を持つ人、または日本で出生した人は応募が可能です。

アメリカのグリーンカード抽選応募の基本的な手順

アメリカのグリーンカード抽選はウェブサイト(https://dvprogram.state.gov/)にアクセスし、応募することができます。代行業者等を使わない限り、申請料はかかりません。最近、移民局を装ったウェブサイト、あるいはEメールが横行していますので、注意が必要です。応募資格は以下の通りです。

①出生国、応募資格を有する国
応募対象となっている国の国籍を有している、あるいはその国にて出生していること。ただし、該当しない場合でも、配偶者が対象国の国籍を有しているか、あるいはその国にて出生している場合は、その配偶者が申請者と共にアメリカに移住することを条件として、配偶者の国籍を使って応募することができます。

②学歴・職歴
高校卒業、あるいはそれと同等の資格があること。または、過去5年間において2年以上のトレーニングを必要とする職種において2年以上の経験があること。どの職種に資格があるかは、O*Net Online(https://www.onetonline.org/)にて調べることができます。

今年も例年と同様、一人1通の応募に限られ、2通以上の応募を行った場合には、その資格を失います。申請の際には、名前、性別、出生地、応募資格適用国、パスポート番号、住所、メールアドレス、学歴等の一般的な情報に加え、写真の添付、また家族の情報も入力が必要となります。ここで重要なのは、これらの情報を正確に記入していないと、せっかく当選したとしても、最後の面接の際、最初の入力漏れなどの理由により却下される可能性があるということです。特に、自分で入力するのではなく、代行業者等を使う場合には、正確に入力されているかどうか、情報に漏れがないかを確認するのが重要です。

グリーンカードの当選発表は、2021年5月8日以降、応募の時と同じ、https://dvprogram.state.gov/にアクセスし、確認番号を入力することにより確認することができます。

抽選に当選した後の流れと、グリーンカードの申請手続きの進め方

当選した場合は、その当選番号により優先順位を知ることができます。この優先順位に沿って手続きが進められていくため、当選したからといって必ずしもグリーンカードが取得できることが決まったことにはなりません。あくまで大まかな目安ですが、優先順位が「5000」までの場合は、かなりの可能性で順番が回ってくることになり、2022年の会計年度が終わる前の2022年の前半に面接になる可能性が高く、「10000」を超えると会計年度の終わる2022年の9月末までに順番が回ってくるか否かが微妙になります。もちろん、後者の場合でも過去の例を見ると順番が回ってきている年度の方がどちらかと言えば多いので、諦める必要はありません。

当選者がその後の手続きを進める場合は、日本のアメリカ大使館を通して行う方法(「Consular Process」と呼ばれる)とアメリカの移民局を通して行う方法(「Adjustment of Status」と呼ばれる)の2つに分かれます。後者の場合は、アメリカ国内に何らかのビザステータスにて滞在している必要があります(従ってESTAによる入国では不可)。もちろん、申請者の仕事を含めた都合があり、また今回のコロナパンデミックによる手続きの大幅な遅延など、予想できないような事態が起こり得る可能性もあるため、一概にどちらが良いかということは言えませんが、一般的には日本のアメリカ大使館を通して行う方法の方が、比較的処理が速いこと、また連絡が取りやすいことから好ましい選択であると言えます。また、面接の際には、よほどの資産を持っているといったケースでない限り、アメリカ国内において仕事先が決まっていた方が有利になります。

期間終了の直前になると、サイトへのアクセスが殺到し、入力が困難になる可能性があります。抽選に応募する場合は、早めに応募手続きを終えるのが賢明と言えるかもしれません。(2020年11月1日号掲載)

2016年のグリーンカード抽選(DV-2018)、申し込み方法と注意事項

吉原 今日子 弁護士

Q:2016年もアメリカ・グリーンカードの抽選があると聞きました。申し込み方法や注意事項を教えてください。

A:「移民多様化ビザ抽選プログラム」により、アメリカへの移住者が過去5年間で5万人に満たない国を対象に(日本は抽選対象国)、5万のグリーンカードが発行されます。今年の応募期間は2016年10月4日~11月7日で、この期間内に申請をする必要があります。応募受付は全てWebサイト(www.dvlottery.state.gov)上で行われ、郵送による応募は受け付けていません。弁護士、代理業者を使わない限り申請料はかかりません。今年も1人1通の応募に限られ、2通以上応募した場合には当選資格を失います。応募時は応募者およびその配偶者と21歳以下の子どもの写真(最近撮ったもの)を、それぞれWebサイトを通して提出します。必要事項に漏れがあると当選資格を失うので、注意しましょう。
21歳以下の子どもの定義ですが、養子や継子のほか、同居していない子どもも含みます。また、配偶者の情報は、法的に離婚していない限り別居していても明記する必要があります。ちなみに、「Child Status Protection Act」により、抽選応募時に子どもが21歳以下であれば、当選時に21歳以上でも親と一緒に永住権を取得できます。

抽選プログラムへの応募資格

◆出生国
応募対象となっている国の国籍を有しているか、その国で出生していること。ただし、該当しない場合でも配偶者が対象国の国籍を有しているか、その国で出生している場合、配偶者の国籍で応募可能です。また、対象国外で出生した場合も、両親のどちらかが対象国で出生しているか、両親が対象国外に一時的に滞在していた期間にあなたが生まれたという場合は、両親の国籍を主張できます。
 
◆学歴、職歴
高校卒業か、それと同等の資格が必要です。あるいは、過去5年間に2年以上の経験、または訓練を必要とする職種において、2年以上の経験が必要です。この職種のリストはWebサイト上で確認することができます。

抽選プログラムへの応募にあたって用意するもの

◆写真
半年以内に撮影された、正面を向き、顔が写真の50~69%を占める写真が必要。サングラスなどの顔を隠す装飾品を付けてはなりません。また、宗教的な理由以外、帽子をかぶっての写真も受け付けられません。背景は、白、またはニュートラルカラー。デジタルデータか、紙焼き写真をスキャンしたものを提出します。デジタルデータはJPEGフォーマットで保存。サイズは最大で240KBまで。解像度は縦600×横600ピクセルで、色深度は24ビット。スキャンする場合、スキャナーの解像度が300dpiは必要です。Webサイトで写真が有効かどうか調べられるので、応募前に必ず確認してください。
 
◆応募に必要な情報
①Full Name(氏名)
②Gender(性別)
③Date of Birth(生年月日)
④City/Town of Birth(出生地)
⑤Country of Birth(出生国)
⑥Country of Eligibility(対象国)
※国籍が出生国と違う場合。例えば、日本国籍(対象国)であるが、中国(対象外の国)で生まれた場合や、配偶者の国籍で応募する場合、その事情について明記。
⑦Photograph(写真)
⑧Address(住所)
⑨Country where you live today(現住所)
⑩Phone Number(電話番号)
⑪E-mail
※当選結果は届かないが、Webサイト上での当落確認が可能に。
⑫What is the highest level of education(最終学歴)
⑬Marital Status(未婚、既婚、離婚、死別、法的別居)
⑭Number of children that are unmarried and under 21(21歳以下の未婚の子どもの人数)
⑮Spouse Information(配偶者の情報)
⑯Children Information(子どもの情報)
 
当選者はコンピューターで無作為に選ばれ、2017年の5月からWebサイトで当落ステータスを確認できます(確認番号、個人情報を入れて確認)。この「Entrant Status Check」が、当落を知る唯一の方法です。「移民多様化ビザ抽選プログラム」の応募者に対し、Eメールや電話でさまざまな当選通知が送られてくることがあります。しかし、このようなEメールや電話は、大使館や国務省あるいはその他米国政府機関とはいっさい関係ありません。また、これまでこのプログラムに応募するための費用が要求されたことはありません。ですから、こういった連絡や情報などに惑わされないよう、十分に気を付けてください。
 
(2016年10月16日号掲載)

2015年のグリーンカード抽選(DV-2017)について詳しく教えてください

吉原 今日子 弁護士

Q:2015年もアメリカ・グリーンカード(永住権)の抽選があると聞きました。申し込み方法を教えてください。

A:アメリカへの移住者が過去5年間において5万人に満たない国を対象として(日本は抽選対象国)、5万件のグリーンカード(永住権)が発行されます。今年の応募期間は2015年10月1日~11月3日です。抽選への応募は全て申し込み専用のウェブサイト(www.dvlottery.state.gov)上で行われる必要があり、郵送による受付はありません。弁護士、代理業者を使わない限り、申請料はかかりません。今年も1人1通の応募に限られ、2通以上応募した場合には資格を失います。グリーンカードの応募者およびその配偶者と21歳以下の子どもの写真(最近撮ったもの)も提出します。必要事項に漏れがあった場合は、グリーンカードの当選資格を失いますので、ご注意ください。
  
グリーンカード(永住権)申請後、当選者はコンピューターで無作為に選ばれ、2016年の5月3日から「Entrant Status Check」というウェブサイト上で確認番号、個人情報を入力することで、自分のケースのステータスが確認できます。この移民多様化ビザ抽選プログラム(抽選によるグリーンカード)の応募者に対し、Eメールや電話でさまざまな当選通知が送られてくることがありますが、これらは、大使館や国務省、その他米国政府機関とは関係がなく、悪意を持った業者である可能性が高いです。あくまでも「Entrant Status Check」が結果を知る唯一の方法です。これまでDVプログラムの応募費用が要求されたことなどはないので、この手の情報に惑わされないよう十分に気を付けてください。
 
(2015年10月16日号掲載)

アメリカの永住権抽選プログラム(DV-2016)の応募要項

吉原 今日子 弁護士

Q:現在、アメリカに学生として滞在しています。今年も永住権の抽選があると聞き、応募しようと思っています。詳細を教えてください

A:アメリカへの移住者が過去5年間において5万人に満たない国を対象に、5万5000の永住権が発給されます(日本は抽選対象国)。
 
応募期間は2014年10月1日から11月3日までの30日間で、必ずこの期間内に申請をする必要があります。申請は全てインターネット(※申し込みサイト:www.dvlottery.state.gov)で行い、郵送による受け付けはありません。申請料は、弁護士、代理業者を使わない限りかかりません。
 
今年も、1人1通の応募に限られ、2通以上応募した場合には資格を失います。提出物は、応募者、およびその配偶者と21歳以下の子供の写真(最近撮ったもの)です。必要事項に漏れがあった場合は、当選資格を失いますので、注意が必要です。
 
21 歳以下の子どもは、養子や継子、同居していない場合も含みます。また、配偶者の情報は法的に離婚していない限り、明記する必要がありますので、別居している場合でも明記します。また、Child Status Protection Actにより、抽選の登録時に子どもが21歳以下であれば、当選時に21歳を超えていても両親と一緒に永住権を取得できます。
 
申請後、当選はコンピューターで無作為に選ばれます。2015年の5月5日以降にウェブサイトで、確認番号、個人情報を入れると自分のケースの状況を確認できます。これが、当落を知る唯一の方法です。
 
「移民多様化ビザ抽選プログラム(DV-2016)」の応募者に対し、Eメールや電話でさまざまな当選通知が送られてくることがありますが、このような連絡は、大使館や国務省あるいはそのほか米国政府機関とは関係がありませんし、これまでDVプログラムに応募するための費用が要求されたことはありません。ですから、Eメールや電話などでの間違った情報に惑わされないよう十分に気を付けてください。
 
(2014年10月16日号掲載)









アメリカの消費税と使用税

日本では全国一律の消費税ですが、連邦国家制のアメリカでは、消費税(Sales Tax)あるいは使用税(Use Tax)は各州、各市によって変わってきます。一体、どのような時に、どうやって支払わなければならないのでしょうか?

カリフォルニア州で不動産以外の有形資産を購入する際は、必ず消費税か使用税を支払います。両者の税率は同じですが、州内でも場所によって税率が異なります。州だけでなく郡や市単位でも課税することがあるからです。
州の税率は7.5%、それに、ロサンゼルス郡は1.5%を加え9%、サンディエゴ郡は0.5%を加え8%の税率となります。ロサンゼルス郡カルバーシティーなどは市でも課税するので、さらに0.5%を加え、9.5%の税率となります。

 

有形資産の販売者

個人、法人、パートナーシップ、小売り、卸売り、どんな形態や事業内容でも有形資産の販売が目的の場合、販売許可証を取得する必要があります。許可証を取得すると、州内での有形資産の販売許可に加え、卸売り目的で商品を購入する際に税金が免除されます。
有形資産の販売者は、州や郡、市の代わりに税を徴収しているので、顧客から徴収した税を決められた期限までにBoard of Equalization(消費税などを管轄する団体)へ納めなければなりません。許可証の取得時に申告した推定所得を基に毎月、毎四半期、毎年1回と納税頻度が定められます。売上がない場合はゼロ申告しなければなりません。申告期日を過ぎると利子と罰金を科される恐れがあります。
また、有形資産売買に関する書類は、最低4年保管しなければなりません。

 

消費税とは

消費税は、小売業者が有形資産を販売したときに課され、小売業者は顧客から消費税を徴収します。小売業者が商品の定価を割り引いて売る場合は割引後の金額に消費税がかかり、製造元や卸売業者によって割り引かれた商品を小売業者が売る場合は割引前の金額に消費税がかかります。つまり、誰が割り引くかによって消費税額は変わってくるのです。
また、カリフォルニア州では以下の場合は消費税が免除となります。
①再販売目的の販売(卸売業などで再販売許可証の取得が必要)、②持ち帰り用の冷たい食べ物、③改装や設置のための労働費用、④政府への販売、⑤州外、または海外への販売

 

使用税とは

消費者がカリフォルニア州内での使用を目的に州外で購入した有形資産、またはカリフォルニア州内で小売店を通さず購入した中古商品などには使用税を支払わなければなりません。
例えば、消費者がカリフォルニア州で使用するコンピューターをニューヨークの会社のオンラインショップで購入した場合、この会社はカリフォルニア州に使用税を納める必要があります。税法上はニューヨークの会社がカリフォルニア州で事業を営んだことになり、会社は消費者から使用税を徴収しなければなりません。この時、カリフォルニア州の消費者はニューヨークの消費税を払う必要がなく、支払い時には商品代とカリフォルニア州の使用税を支払います。
一方、消費者がカリフォルニア州で使用するコンピューターをニューヨークの小売店店頭で買う場合、ニューヨークの消費税を払います。消費税は取引が行われた場所で発生すると考えられているからです。カリフォルニア州の使用税を払う必要はありません。
また、車を個人売買した際、そのときの時価を自己申告してDMVで支払う税金も使用税です。
 
(2016年7月1日号掲載)

石上洋◎米国公認会計士
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校を卒業後、大手監査法人、現地会計事務所パートナーを経て石上・石上越智会計事務所を設立。税務をメインに事業を展開。
アメリカでの会社設立・確定申告・タックスリターンは「石上、石上&越智公認会計士事務所」へ
米国公認会計士・石上洋さんのインタビュー

※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。