
アメリカで老後を過ごす計画なら、残された家族に負担をかけないように、今から終活を始めましょう。お葬式、お墓、相続、さらに介護まで、それぞれの最新事情をお届けします。
(ライトハウス・ロサンゼルス版2021年9月16日号掲載)
1. お葬式の準備
葬儀場の様子 ©️Kubota Mortuary
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「生前契約」のメリット
「最近は、葬儀は亡くなってから遺族が準備するのではなく、葬儀の詳細を本人があらかじめ決めておく生前契約のケースが非常に増えています」と話すのは、ロサンゼルスの久保田葬儀社のファミリーカウンセラー、大月健輔さんです。葬儀の仕事に携わって12年になる大月さんによると、生前契約の利点には次のようなことが挙げられます。
「まず、ご本人が望む形の葬儀を実現できること。次に全ての段取りや使用する備品の種類などを書面にして残すことで、まさかの事態になってもご遺族はその書面通りに事を進めれば良いことです。それによってご遺族に余計な時間や心労をかけずに済みます。また、契約時の葬儀料で支払いを済ませることになるため、実際の葬儀を行う時期に生じているインフレ率を考えれば費用を抑えることにもつながります。さらに日系の方には当地に身寄りがない方も少なくありません。単身者の場合、生前に書類を残していなければ、仏教で言うところの「無縁仏」になってしまい、遺体の行き先がなくなります。そこで葬儀の生前契約を済ませておけば、亡くなった際に契約内容通りの段取りを踏むことで、そのような事態が回避できます」。
さて、生前契約をしておけば、前述のように遺族は書面に従うだけで済みますが、何も残さずに亡くなった場合は、遺族が葬儀社に連絡し、詳細を詰めるミーティングの場を持ちます。葬儀は家族葬にするのか、それとも新聞に通知を出す一般葬にするのか、葬儀会場は葬儀社を使用するか、もしくは故人が所属していた教会やお寺で行うか、遺体を土葬するのか、それとも火葬にして遺灰にするか、さらに水葬にするかといった事柄を全て決めていきます。
以前は、アメリカの埋葬の種類は土葬が主流でしたが、最近、カリフォルニア州では不動産の価格に連動してお墓の価格が上昇しているため、火葬にして遺灰にするケースが増えています。また、水葬の場合は、遺族がボートをチャーターして沖合で遺灰を撒くこともできるほか、葬儀社にボートの手配を依頼することもできます。ただし、遺灰を撒くことができるのはビーチから0.5マイル以上離れた沖合と定めされています。大月さんによると、「当社に水葬の依頼をいただく場合は、ボートをチャーターし、ミニスター(牧師などの聖職者)を呼んでご遺族の皆さんで沖に出ます。そして、遺灰を入れた竹製のバスケットにお花で蓋をして、バスケットにつないだロープを使って海中に下ろします」と、竹製のバスケットを使用し、自然環境に配慮した方法で水葬が行われているということです。
気になる葬儀費用
1万5000ドルもする棺桶もあり、購入する備品によって葬儀の費用には幅が出る。
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最近の葬儀会場のトレンドについても聞きました。「カリフォルニア州では、遺体を配置した形で葬儀を行う場合は、葬儀社もしくは教会やお寺の施設内でなければならないと限定されています。ただし、遺灰にした場合は制限が緩和され、自宅やホテル、コミュニティーセンターでの葬儀も可能です。最近は公園での葬儀も増えています」。
費用は、遺体を引き取って火葬して遺灰を遺族に渡すという最もシンプルなサービス(ダイレクトクリメーション)で4000ドル前後。これに葬儀も行うと全部で6000ドル前後。さらに遺灰ではなく遺体で葬儀を行う場合は8000ドルから1万ドル。ただし、使用する棺桶の費用に幅があるため(高価なものだと1万5000ドル)、使用する備品によっても異なります。
大月さんは、葬儀に関しては事前準備、特に生前契約を強く勧めています。「最近、60歳の方が生前契約の手続きを終了されました。健康であれば、葬儀は30年以上先の可能性もありますが、早ければ早いほど安心です。また、生前契約は保険会社と契約者との間で結ばれるものですので、万が一、実際の葬儀の時に葬儀社自体がなくなっていたとしても、他の葬儀社で葬儀が行われます」。家族の負担を軽減するためにも、アメリカに永住する計画なら、今から「生前契約」を検討し始めてもいいかもしれません。
2. お墓の購入
お墓の種類
お墓を購入する際に検討すべき項目はいくつかあります。まずはロケーションです。本人が住み慣れた土地に近い場所がいいのか、それとも人里離れた静かな場所がいいかなどと共に、遺族が訪問する際に便利な場所を選びたいと思うかもしれません。ロケーションを決定したら、その後に、その中でも木陰に近い場所がいいか、見晴らしが良い場所がいいか、または通路に近い場所がいいのかなど細かい希望を詰めていきましょう。
次に検討が必要な項目は費用です。金額は全て霊園によって異なりますが、全米の2021年の一画の埋葬地代の平均値は3581ドルとなっています。これは全米1300市の2万6714カ所の霊園を対象に調査した結果(出典:www.perfectgoodbyes.com)によるもので、カリフォルニア州内の597カ所の霊園の平均値は5545ドルと全米平均より55%高額です。これは、埋葬地の価格が不動産の価格に連動しているためです。また、遺体・遺骨を埋葬するためにお墓を開閉する費用、メンテナンス費用は別途かかります。
霊園によっては異なるルールが適用されます。墓石のタイプが決まっているところもあれば、自由に選べるところもあります。遺族が供える花に造花を禁止しているところもあれば、ペット同伴が不可というところもあります。よって、霊園を選ぶ前にそのようなルールも把握しておくことが必要です。
お墓選びのチェックポイント
多くの人が想像するアメリカのお墓の景色は、公園のような敷地に墓石が点々と埋め込まれたものかもしれません。それ以外にもアパートメントのような霊廟式、または墓石と霊廟が共存する霊園などがあります。敷地内にキリスト教式の彫像が立っていたり、ピクニックゾーンが設けられていたり、さらには街並みを見下ろせる高台に立地したりする霊園もあります。これらのアメリカの霊園が日本と違うのは、代々の家族が同じお墓に埋葬されるタイプではなく、基本的には故人が独立して埋葬される個別の墓(もしくは夫婦によるコンパニオンタイプ)になるという点です。
また、所有する土地に埋葬されたいと希望する人もいますが、自由に所有地に埋葬できる州もあれば、禁止されている州、葬儀の専門家の立会いのもとに許可されている州など、州単位でその法律が異なります。庭を含めた自分の土地に埋葬しようとする場合は、在住の州でそれが許可されているかどうかについて、法律違反にならないように、事前の確認が必要です。
埋葬方法は、伝統的には西洋の宗教の影響で土葬が主流でしたが、霊園という限られたスペースでの埋葬には限界があることから、遺体を火葬してから埋葬するケースが以前に比べて増えています。また、土葬や火葬以外にも、葬儀のパートで紹介したように、最近は水葬を選択するケースもあります。特に日本人の場合は、「故人が太平洋を渡って故郷の日本に帰ることができるから」と考える遺族がいることも水葬選択の理由の一つ、と久保田葬儀社のカウンセラーの大月さんは話しています。
3. 遺産相続の手続き
リビングトラストの必要性
弁護士法人 佐野&アソシエーツ
弁護士・佐野郁子さん
1-800-590-0586
Web: Webサイト
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アメリカ国内の資産を自分から相続人に渡す場合について、「年齢に関係なく、所有資産の総額が州法に定めた一定額を超える場合は、リビングトラストを作成することを強く推奨します」と話すのは、過去に数多くの相続案件を手掛けてきた佐野郁子弁護士。
カリフォルニア州では、資産総額が16万6250ドル以上ある場合、遺言書の有無にかかわらず、「プロベート」と呼ばれる手続きが取られます。これは、裁判所監視下での遺産分割手続きで、カリフォルニア州法の規定に則り遺産分割が決定されます。プロベートの場合、相続人に遺産が渡るまでに数カ月から数年がかかります。終了するまでに裁判所や弁護士費用のほか、不動産があれば固定資産税がかかるため、時間がかかるほど遺産が目減りします。手続き上、財産内容が公開されるので、被相続人のプライバシーが公になってしまう点も懸念されます。
プロベートを避けるための手段が、リビングトラストの作成です。これは、自分の死後の財産をどうするか、誰にどれだけ相続させるかを決める「エステートプラン」の一部であり、「遺言書」もエステートプランに含まれます。
遺言書:
自分が亡くなった時に財産を誰にどれだけ相続されるかを明記したもので、被相続人が亡くなって初めて効力を持つ法的書類です。カリフォルニア州では、遺言書があっても相続人の間で争い事がなくても、資産が16万6250ドル以上ある場合は必ずプロベートが行われます。
リビングトラスト:
遺言書と同様、遺産分割を明記しておく書類です。何度でも書き換えが可能で、その都度、相続人や相続方法を指定し直すことができます。遺言書との大きな違いは、財産を個人名義からトラスト名義に変えておくことで、ご自身がお亡くなりになった時にはプロベートなど裁判所の関与なくスムーズに遺産分割を行える点です。自分が指定した「サクセッサートラスティー」と呼ばれる引き継ぎの管財人が、トラストの指示に則って財産分与を遂行し、6カ月前後で相続が完了します。
佐野弁護士は、リビングトラストを含めた総括的なエステートプランの費用について次のように話しています「当事務所の場合、一般的なケースで4000〜5000ドルほどで、作成期間は1〜3カ月です。ただし、事務所によって費用は大きく異なります」。
自宅などの不動産を所有しているだけで資産総額は、16万6250ドル以上になると考えられます。それでもリビングトラストを作成していない場合は、今すぐに行動に出たほうがいいでしょう。
「何よりもリビングトラストを作成することで、残された相続人やその他の遺族に苦労や心労、時間や費用をかけずに済むのです」と佐野弁護士は、リビングトラスト作成の重要性を強調しています。
アメリカの遺産税
石上 石上&越智 公認会計士事務所
会計士・石上 洋さん
424-247-2014
Web: Webサイト
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アメリカで相続を考える場合、被相続人(亡くなった人)のステータスがカギとなります。ちなみにアメリカでは厳密には相続税ではなく遺産税(Estate Tax)と呼ばれています。
日本と大きく異なるのは、遺産税の基礎控除額が非常に高額である点。アメリカ市民や居住者が財産を残す場合、その控除額は約1170万ドルで、その金額に達しない場合、相続には税金がかかりません。ただし、これも被相続人のステータスにより次のように分かれます。
①アメリカ市民・居住者
約1170万ドルの基礎控除が適用。なお、相続人がアメリカ市民権を持つ配偶者の場合、控除額は無制限で遺産税なし。
③ビザなし
控除額は6万ドルと一気に下がり、ほとんどのケースで税金の支払いが発生。税率は18〜40%となる。
①アメリカ市民・居住者
日本国籍を持つ非アメリカ居住者でアメリカに資産を持つ場合、日米相続税条約により、全世界の遺産相続額をIRSに開示することを条件に、①の控除額「約1170万ドル×アメリカ国内にある相続遺産÷全世界の遺産総額」での控除が認められている。
このように、アメリカはそもそも基礎控除額が高いため、アメリカ市民や居住者であれば基本的に遺産税を考えなくてもいいと言えます。石上洋会計士は、「ステータスによってはほとんどの方が遺産税の対象になりませんので、家の名義にお子さんの名前を追加するなどの対策は無駄と言えます」とアドバイスしています。一方で、財産が1170万ドル以上ある場合には、生前から計画的に親から子どもに継続的な贈与を行うことが節税対策になります。
アメリカでは年間1万5000万ドルまで無税で贈与できるので、父と母、それぞれが子どもの人数分、1年に1万5000ドルずつ資産を贈与できます。例えば、子どもが3人いる場合、父から3人の子どもへ4万5000ドル、母からも4万5000ドルを贈与すれば、年間9万ドル、無税で贈与できることになります。これを10年間続ければ無税で贈与した金額は90万ドル。贈与するのは、鑑定士を雇う必要のない、時価総額が明確な預金や上場株が有効です。
さらに、石上会計士が強調するのは、子どもへの生前贈与を含む長期的な計画に基づく節税対策と共に、財産内容とその相続方法の定期的な見直しの重要性です。「話し合いで決めたことを書類に残して、実際に行動に起こしてください。相続という事態は予測不能な状況で発生します。起こってからの準備では遅過ぎます。相続対策は今からすぐに始めてください」。
遺族体験談
夫の遺産の手続き終えて1年
自身の終活では執行人指名の必要
ロサンゼルス在住 M・Aさん 80代
私は夫を2020年に亡くしました。子どもはいません。彼は生前に、自分の遺産について生命保険、銀行口座、株式などの種類別に相続人を明記していただけで、リビングトラストは作成していませんでした。それで、夫の死後すぐに死亡診断書を医師から取り寄せて、それを保険会社、銀行、証券会社に提出しました。通常でしたら死亡診断書はすぐに入手できるはずなのですが、コロナのパンデミックの影響でかなり時間がかかってしまいました。死亡診断書がなくても口座を凍結されないようにするためには、口座名義を夫婦で共同にしておくと良いようです。
夫は遺骨をお墓ではなく、彼が先祖代々所有している山に散骨するようにと、これも文章にして残してくれていました。お葬式もまたコロナのせいで延期になったままなので、近く改めて教会で執り行う予定です。その後、山に散骨しに行きます。
私自身のリビングトラストは20年前に作成しました。私が残す物に関してはどこに何を寄付するかを明記してあるのでいいのですが、実は1つやり残したことがあります。それは私の死後に手続きを実行してくれる執行者を指名することです。この仕事の大変さは、私自身が執行者に指名され、実際にその友人の遺産の処分を3年間かけて行った体験者であることから良く分かっています。
単身だった友人は、私に銀行の金庫の鍵を「私にもしものことがあったらこれで金庫を開けて」と預けていました。そして、彼女が突然亡くなった後にその金庫を開けたら、その中に遺産相続の執行者として私の名前が書かれた委任状が保管されていたのです。それで、私は彼女の遺産がどこにあるか、彼女の家の中を捜索することで特定し、未払いの代金を払うなどして大変な思いをしました。彼女の不動産が3カ国にまたがっていたこともあり、移動の費用もかかりました。友人の死後の手続きに奔走している私を見た周囲の人には「もう放棄したらいいのではないか」とも言われましたが、私が指名された以上、無責任に投げ出すわけにはいかないという一心で最後までやり遂げたのです。
それから、私は実は長らく日米の二重国籍だったのですが、3年ほど前に日本国籍を離脱しました。これは、友人の遺産の処分をする過程で、国によって法律が違うことを目の当たりにしたからです。物事を複雑にしたくないので、私はアメリカ国籍のみを残すことにしたというわけです。残すところは、執行者の指名のみです。
米国相続Q&A
Kimura London & White LLP
弁護士・ウィリアム・ロンドンさん
949-293-4939
Web: Webサイト
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質問1:
米国に自宅、日本に家、メキシコにコンドミニアムを所有しています。これらを米国在住の息子に相続したいのですが、米国でリビングトラストを作成するだけで十分でしょうか?(ロサンゼルス・60代)
回答1:
それぞれの国で法的な手続きを取る必要があるでしょう。カリフォルニアでは州内に不動産を所有されている場合にはトラストの作成が推奨されます。カリフォルニアで作成したトラストが意図した通りに日本とメキシコで有効となるかどうかについては、法と税制の違いや時間の経過に伴う法改正、税制改革の可能性もあり明確にお答えすることは困難ですが、死後に残された書類が法的に無効だった場合、費用と時間を要し、困難が生じることが考えられます。そのため、日本とメキシコでの不動産を長期間に保有する予定であれば、各国のエステートプラン専門の弁護士に相談し、その国独自の法や税制に対応した適切な法的文書を作成することをお勧めします。
質問2:
夫が数年前に亡くなり、子どもはいません。私の死後に誰が家を含めた遺産整理をしてもらえばいいでしょうか。遺産は日本の甥に相続したいと考えています。しかし、彼はアメリカのことを何も知らないので私の死後の整理はできないと思います。また、リビングトラストを作成すべきでしょうか?(アーバイン・80代)
回答2:
カリフォルニア州に不動産を所有している場合にはリビングトラストの作成をお勧めします。トラストでは、あなたの遺産を整理し、日本にいる受取人に財産を渡す管財人(トラスティー)を選択します。アメリカに資産を保有する場合には、現地に在住する人物を選ぶ必要があるため、”private professional fiduciary”(または〝プライベートトラスティー〟)と呼ばれる専門業者を利用することをお勧めします。専門業者は日常的にこういった業務を行っているため、親族に依頼するよりも良い選択となるかもしれません。
質問3:
60歳だった夫が心臓麻痺で突然亡くなりました。銀行は私との共同名義で、持ち家のローンは半分残っています。私は何から手を付けたらいいのでしょうか? (トーランス・50代)
回答3:
ステートプラン専門の弁護士にご主人の遺産整理について相談し、ご自身もトラスト、遺言書、財産管理に関する委任状、医療行為に関する委任状を準備されることをお勧めします。共同名義の銀行口座に関しては、一般的には銀行にご主人の死亡証明を提出することでご主人の名義を外し単独名義に変更できます。家のローンについては配偶者死亡の際に銀行が条件を変更したり、再申請を求めたりしてはならないと法律で決められています。しかし、遺産管理にはそれ以外にもご主人名義の借金などのクレームなどにも留意することが必要です。税金に関しても専門家のアドバイスも受けるようにしてください。ご主人の全ての遺産を再調査した際に他の問題が生じる可能性があることも留意しておきましょう。
上記は法律的なアドバイスまたは意見ではありません。Kimura London & White LLPでは、委任契約の成立後に個別の案件に関する全ての事実を精査した後に限り法律的なアドバイスまたは意見を提供します。上記の回答は一般的な情報提供を目的としています。
4. 介護の手配
終活の一環として、介護が必要になった時のために、訪問介護と介護施設で、どのようなサービスを受けられるのか、費用はいくらくらいになるのかはぜひ知っておきたいところです。そこで、専門業者にお話を伺いました。
訪問介護
ホリーサービス
ディレクター・小杉 寛さん
858-217-5150
Web: Webサイト
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Q. 訪問介護を検討し始める時期の目安について教えてください。
実際に訪問介護を依頼する方は2つの目的に分かれます。さまざまな症状が進む前に、予防のために依頼される方と、すでに日常生活に不都合が生じている方です。後者は、今すぐに食事や排泄などで介護を必要とされる方です。配偶者も高齢のために体力的な問題で介護ができず、お子さんがいる方も普段は仕事などの事情で、時間を決めて利用するというケースも多いです。
Q. 訪問介護ではどのようなサービスが受けられるのですか?
一般的なサービスは、食事の準備、家の中や外での移動の介添え、排泄と入浴のお世話、口腔や身体の衛生管理や服薬管理です。そして、日本人の高齢者で少なくないのが認知症を発症されている方です。英語を忘れてしまい、日本語が話せる人が周りに少ないと、会話ができなくなり、症状が悪化していきます。それを防ぐためにも、認知症への理解と母国語でコミュニケーションが取れる介護サービスの利用をお勧めします。
Q. 最後に気になる費用面について教えてください。
人件費や税金の高いカリフォルニア州ではどの会社でもサービス料金は高額です。24時間でのケアとなれば、月の金額が2万ドル近 くになることもあるでしょう。それだけの金額を払うことは現実的ではないため、家族がケアできない時間だけ訪問介護を利用したり、高齢になるとできなくなる食事準備や清掃などスポットでサービスを利用することで月額料金を500~1000ドル程度に抑えることも可能です。
介護施設
Ohana Care Home
オーナー・ 磯 聖子さん
619-250-2125
Webサイト
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Q. 介護施設を見学する際のチェックポイントについて教えてください。
介護施設の中には建物が豪華で立派な所もあります。そういう見た目に惹かれて、「ここがいいかもしれない」と思うかもしれません。しかし、介護が必要な方にとって重要なのは、建物がどれだけ豪華で立派なのかではありません。しっかりとチェックすべき点は、何人の入居者に対して何人の介護者がいるのかという比率、またどのようなアクティビティーが提供されているのかといったことです。それらの点を入居者の立場に立って、安全性も含めてしっかりと考えていただきたいと思います。
Q. 親や配偶者のために介護施設を探す人のためにアドバイスをお願いします。
うちの施設を例に出すと、3食が付いて、食事の世話、お薬の管理、健康状態のチェック、必要な場合はドクターとの連携、各種アクティビティー、入浴の介助、トイレの介助などを含みます。費用はシェアルームの場合、介護レベルによっても異なりますが、1カ月4700ドルからです。ダイパー代などの必要経費は別途になります。
一軒家を使用しているOhana Care Home。近く2軒目を開設。
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Q. 入居したらどのようなサービスが受けられるのですか?
介護を受ける本人は積極的に施設に入りたいわけではありません。施設を見学後に「母と相談してご連絡します」と言う方が多いのですが、入居者本人の安全性を第一に、意思決定はご家族がすべきだと考えます。特に認知症の方の場合、入居後も心配が終わるわけではなく、環境に適応できるまでは、ご家族が24時間電話に出られるようにしていただく必要があります。このように、施設側とご家族との協力が必要だということを認識していただきたいと思います。
※このページは「ライトハウス・ロサンゼルス版2021年9月16日」掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。