日本人だもの、日本人らしさを捨てる必要はありません。でも、アメリカ流のマナーとコミュニケーションを知っていれば、上司や同僚、取引相手、親戚、その他さまざまなコミュニティーとより深い交流ができるのも事実。アメリカ生活にブレイクスルーをもたらす、コミュニケーションのちょっとしたコツと、シーン別のマナーの知恵を伝授します。(2017年7月16日号ライトハウス・ロサンゼルス版掲載)
併せて「アメリカで暮らす楽しさが倍になる!アメリカでのコミュニケーション術」もご覧ください!
アメリカでの人付き合いのマナー
Q.レディーファーストに慣れない日本男児。パーティーで最低限気を付けるポイントを教えて。
A.何かを同時にしようとした時は女性に譲ることを心掛けて。
ポットラックの食べ物をよそう時やトイレに入る時など、何かを同時にしようとする女性客がいた場合には女性を先にするよう心掛ければ、そこまで気負わなくても大丈夫。なお、カップルで出席する場合、男性は女性に対して、ちょっと気を遣う上司くらいの意識で接すると程よいレディーファースト加減になります。女性は「ありがとう」とお礼の言葉を忘れずに。
Q.学校の先生にクリスマスプレゼントをあげる慣習があるって本当?
A.本当です。でも、もちろん、無理しなくてOK。
特に小学校までは子どもの学校の先生にクリスマスカードとギフトをあげる習慣は確かにあります。5ドル程度のものを子どもを通して先生に渡すのが一般的。せっかくなら日本のお菓子や雑貨などが喜んでもらえるのでは。もちろん、あげないからといって失礼ということはありません。
Q.会社関係のパーティー。「好きなところに座って」と言われると困ってしまうのですが…。
A.日本のように上座・下座はありません。空いているなら中心に近い席に。
日本人は遠慮がちで、よほど仲良しでない限り、端の方の席を選びがちです。シャイな人が無理をする必要はありませんが、席が空いているのにもかかわらず隅っこにいると、あまり楽しむ気がないのか、会話の輪に加わる気がないように見られてしまう可能性もあり、残念なこと。「好きなところに座って」と言われたらその言葉通りに受け取ってよく、かつ、できればみんなと話ができるところに座るのがベター。旧知の仲のように喋っているグループがいると気後れするかもしれませんが、実は彼らも顔を会わせたのはその日が初めてということもよくあります。
Q.アメリカ人上司に自宅ディナーに招かれました。手土産は何がいい?
A.希望を聞いてみて。何もいらないと言われたらアルコールか、お花を。
「何か持っていきましょうか?」とストレートに聞いてみて、「デザートを」など具体的に言われたらそれを持って行きましょう。何もいらないと言われた時は、その日に飲まなくてもプレゼントとして置いていけるワインやビール、もしくはお花を持って行くのがおすすめです。
Q.初めて会う人に聞くと失礼になることはありますか?
A.プライベートな話には寛容。気にし過ぎないで大丈夫。
プライベートなことは突っ込んで聞かない方がいいと考えている人もいるかもしれませんが、アメリカでは「子どもの学校は?」「夫の仕事(会社)は?」という日本ではともすれば避けた方がいいと考えられる質問も特にタブーではありません。既婚か独身か、恋人がいるか否かも聞いて失礼と思われることはありません。
Q.子どもの親同士の付き合い、どうしていいか、分からない。
A.友だちを作るチャンスと考えて。でも、シャイな人は無理しないで。
そこまで親しくない人たちと付き合うことがそもそも苦手な人は無理しなくて大丈夫。ただ、友だちを作るチャンスでもあるので、もし仲良くなりたいと感じる人がいるなら、プレイデート※に誘うなどして、積極的に交流の機会を作ってみては?
【取材協力】
ザ・ブリッジコミュニケーションズ山田クリスタさん
サンディエゴで英語教師として、英会話、英文添削、プレゼン添削、通訳など、さまざまなサポート・サービスを提供。Web:http://thebridgecomm.com
アメリカでの男女交際のマナー
Q.正式に付き合っているのかどうか。そうでないのか分からない時は、どうすれば?
A.目安は毎週末会っているかどうか。駆け引きは避けるのが無難。
アメリカではデーディングと言って、正式に交際を始める前にデート期間を設けるのが一般的で、正式な交際に移行する際に「付き合って」というような明確な言葉がないことは珍しくありません。デート期間中に友人や家族に紹介されることもよくあり、両親に会ったからといって付き合っているということにはならないのが日本と違うところです。また、デート期間中は自分以外の人ともたくさんデートしているのは普通で、それを咎めることはナンセンス。付き合っていると考えていいかの目安は、毎週末会っているかどうか。そうでない場合で、ぜひ、自分を選んでほしい場合、一筋さを見せるよりも、自分も他の人とも会うくらいの余裕を持つ方がいいでしょう。ただし、連絡がきても返事を一晩寝かすというような駆け引きは通じにくいので、好意を持っているシグナルは送りつつ、余裕を見せるのがコツ。
Q.友達との会合に恋人を誘わなかったことでケンカに。。。
A.行かないと勝手に決めずに状況を説明してあげて。
カップルで行動することの多いアメリカでは、どちらかの友人の集いにパートナーを連れて行くのは自然なこと。逆に、声をかけないといぶかしがられたり、悲しがられたりしてしまうということは知っておくとコミュニケーションが円滑になるはず。日本人の友だちと集まる時は、自然と日本語環境になることが多いので、来たとしてもつまらないだろうと気を遣うこともあると思いますが、それでも「こういう集まりがあって日本人ばかりだから日本語にもなるし、自分も日本語で喋りたくなると思うけど来る?」という風に、状況をきちんと伝えるようにしましょう。
Q.仕事でデートをキャンセル。でも、全然理解してくれずにつらい。
A.建前としては恋人を優先にして。
日本人同士だと、「仕事ならしょうがない」で収まりそうなところが、そうはならないのがアメリカ。仕事も交際も同じくらい大事で、もっと言えば、誕生日の日は仕事を休んで祝うなど建前上は仕事より恋人を大事にすることが求められる傾向にあります。とはいえ、そこまでできないという人もいるでしょう。そういう場合は、少なくとも約束のキャンセルを避けることが懸命。会うのは休日に限るなど、キャンセルする可能性のある約束は最初からしないように心掛けるといいでしょう。
Q.断っても断ってもデートに誘われる。。。断り方が曖昧過ぎるのでしょうか?
A.はっきり言いにくい場合は「友だちも連れて行っていい?」がベスト。
何度か断ったのにそれでも誘われる。。でも、気軽に誘ってくれているだけなのにむげにするのも気がひける・・これに関しては日米関係なくある悩みかもしれません。おすすめのコミュニケーション方法は「友だちも連れて行っていい?」と返すこと。暗に恋愛感情はないことを伝えられ、かつ相手の顔も立てることもできます。
Q.何でも意見を聞いてくれるのですが、それがストレスになっています…。
A.無理をせず、”I am not sure….”で大丈夫。
「日本人は自己主張しなさい」とよく言われることを気にしてがんばり過ぎて疲れてしまう人は結構いるようです。ストレスになるほど自分を変える必要はないですし、無理をするといつか爆発してしまいます。「何が食べたい?」などと聞かれて、何とも言えない時は”I am not sure…”という言葉が便利。そうすれば、向こうが候補を挙げてくれたりして、もう少し楽に会話ができるはず。
【取材協力】
East Meet East ケン・トラビス・ヤマザキさん
ゴールドマン勤務後、北米のアジア専門マッチングサイトEast Meet East.comを共同作業。エリートゲイ独自の視点からの斬新な恋活のアドバイスが巻で話題。
アメリカでの結婚式のマナー
Q.自分に届いた招待状、恋人も連れていっていいもの?
A.遠慮せず、相談を。
シングルで、自分だけに招待状が来た場合、恋人を連れて行っていいか、相談することは問題ありません。ただ、当日、いきなり連れて行かないよう、事前に確認を取っておくのがマナーでしょう。
Q.ダンスが延々と続いて帰り際が分かりません…
A.ケーキが出てきたらタイミングを見て退席してOK。
日本の結婚披露宴にはまずなく、アメリカのパーティーによくあるものといえば、ダンス。ウエディングパーティーでは、最後、新郎新婦や親族だけでなく参加者皆が思い思いに踊り始め、ダンスパーティーのようになるのが通例です。せっかくですから、ぜひとも輪に加わって踊った方が楽しいです!ダンスが続いていても、一通り食べ終え、ケーキカットのケーキが出てきた後なら、新郎新婦に一声挨拶して、退席してかまいません。
Q.ウエディングパーティー、服装のマナーを教えて。
A.ドレスコードがあれば遵守を。なければ日本の感覚よりややカジュアルで。
招待状にドレスコードがある場合は、それに従いましょう。時に「カジュアルで」というドレスコードもあります。特に指定がない場合は、会場によって臨機応変に。例えば、教会式なら、男性は襟付きのシャツ、女性はややドレスアップして、失礼のないように。ビーチなど屋外の場合は、革靴やヒールの靴でなくて問題ありません。全体に日本の披露宴で着ていく服装よりややカジュアルを想定するといいでしょう。なお、花嫁より目立たないようにする心遣いは日米共通。日本の着物は、会場で注目を集める可能性があるので、新郎新婦に予め聞いておく方が安心。了解を得た場合も華やかな振り袖ではなく訪問着を選ぶようにして。
Q.カトリックの結婚式には宗教的な儀式があると聞きました。どう対応すればいい?
A.信者でなければ辞退を。他の参加者の動きを参考に。
カトリックの式ではパンを食べ、ワインを飲む儀式がありますが、信者でない人は必要ありません。手をクロスして胸に当てると遠慮する意思表示になります。他にも辞退する参列者はいるので、その人たちの動きを参考に。なお、儀式は後ろの席から始まることが多いので、周りの様子を見るために真ん中の席に座っておくのがおすすめ。
Q.結婚祝いの金額、相場はどのくらい?
A.基本、現金のご祝儀はなし。ギフトの額は50ドルを目安に。
日本のご祝儀のように現金を包む習慣はなく、お祝いには品物を送ります。最近は、新郎新婦がほしい物のリストをインターネット上で登録し、参加者はそこから贈りたい物を選んでオンラインで決済を済ませるウエディングレジストリーを採用するカップルがほとんど。リストにはいろいろな金額のものが並んでいます。どの程度の金額のものを贈るかは人それぞれ、新郎新婦との関係性によります。相場としては30~80ドルくらい。無難な額は50ドル。なお、ウエディングレジストリーがない場合、当日、会場に設置されたギフト置き場にギフトを置けばOK。また、まれにハネムーン資金や新居の資金を希望するカップルがいるので、その場合は、チェックを贈る方が喜ばれます。
【取材協力】
トラインブライダル 佐野貴子さん
1993年、ロサンゼルスでトラインブライダル設立。ヘアメイク、貸衣装サービスから始まり、異なる習慣に戸惑う利用者の要望に応えてブライダルコーディネートを手がけるように。
Plan・Do・See・Wedding 長野真季さん
年間約6000組のウエディングを手がける同社にて、ウエディングの責任者、コンサルタントを担当。2016年より、同社のアメリカでのウエディング事業の立ち上げに携わる。
アメリカでのお葬式のマナー
Q.香典はいらないと聞きましたが本当?
A.日系の葬儀では香典あり。しかし、必須ではありません。
アメリカの葬儀は一般に教会か葬儀場で行われ、香典のならわしはありません。ただ、アメリカで行われる葬儀でも、日本人もしくは日系人の葬儀の場合は日本の慣習に従うことが多いので、現場で慌てることがないよう、香典を包んで行った方がいいでしょう。香典袋は日本の「御霊前」「御仏前」と書かれたもの、または無地のものでOK。氏名と住所を忘れずに記載しましょう。金額は故人との関係性に応じて20~100ドル。
Q.喪服を着て行った方がいいですか?
A.ダーク系のスーツやワンピースで問題ありません。
遺族以外の参列者が喪服を着ることはアメリカでは珍しいです。まれに例外はありますが、基本的には全身真っ黒である必要はなく、ダーク系の地味な色合いのスーツやワンピースを着て行けばいいでしょう。アクセサリーについても華美にならなければ特に決まりはありません。
Q.花を贈る時の注意点はありますか?
A.宗教によりNGのこともあるので確認してから贈りましょう。
新聞の訃報欄などに花の贈り先などの記載がない場合、できるなら家族に、家族とコンタクトを取ることが難しければ葬儀を担当している葬儀社に事前に連絡を入れた方がいいでしょう。というのも、宗教によっては献花はしないなど考え方が異なることがあるからです。贈る時は、葬儀場か、教会か、墓地か、自宅か、どこに贈るべきかを確認し、花屋に配達場所と日時を明確に伝えましょう(通常はお知らせに明記されているはず)。届ける時間は式の開始時刻の1時間半~1時間前が目安です。確実に配達してもらうために、前日に一度確認の電話を入れておくと安心です。
Q.葬儀場でしてはいけないタブーはありますか?
A.全体的に日本の葬儀に比べ、かしこまっておらず、寛容です。
ケースバイケースではありますが、アメリカの葬儀は多くの場合、日本の葬儀の比べてかしこまってはおらず、故人の人生を称えてお祝いしようというムードがあります。時には葬儀に来たと思えないくらい、参加者が笑顔で歓談していることもありますので、その場の状況に合わせて振る舞うのがいいでしょう。
Q.お葬式の途中にトイレなどで中座してもいい?
A.わりと自由に行き来できる雰囲気。ただし、宗教的なお祈りの最中は遠慮を。
日本の葬式では想像しにくいことですが、アメリカの葬儀では比較的自由に席を立ってトイレに行く人は結構います。ただ、どの宗教でもお祈りの最中、例えばキリスト教なら牧師の言葉と共に皆が頭を下げて祈る時などは遠慮すべきでしょう。
Q.人づてに訃報を知った時はどう対応するのがいいでしょう?
A.お悔やみの電話は避け、落ち着いた頃に心遣いを。
人それぞれではありますが、家族と相当親しく、家族から直接葬儀の連絡をもらったのでない場合、お悔やみの電話はかえって家族を煩わせてしまう可能性もあります。葬儀に参列することや花を贈ることがお悔やみの気持ちの表明になりますし、葬儀の場でご家族にお悔やみの言葉を伝えることができます。葬儀場で直接お悔やみを伝える機会がなかった場合には、後からカードを贈るのも手です。
【取材協力】
福井葬儀社 ☎213-626-0441 Web:www.fukuimortuary.com
※このページは「2017年7月16日号ライトハウス・ロサンゼルス版」掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。