SumericaTV, LLC 代表取締役(その他専門職):皇(すめら)ロキータさん

ライトハウス電子版アプリ、始めました

SUMERICA TVは私にとって出発点。
ここからもっとビジネスチャンスが生まれてくる。

高校時代から海外留学に憧れ、英語を勉強。高校卒業後、両親の反対を押し切って、自力で渡米した皇ロキータさん。カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校在学中に、インターネットによる広報と、マーケティングの会社「Sumerica TV ,LLC」を起業し、代表取締役に就いた。積極的に企業訪問し、日々人脈を拡げる皇さんに聞いた。
 

【プロフィール】すめら・ろきーた◉仙台市出身。仙台育英高校卒業後、大学に進学するが中退し、2004年にロサンゼルスに渡米。UCLAに入学するが、英語を学び直すためにコミュニティー・カレッジへ。その後、USCに編入、さらにカリフォルニア州立大学ロサンゼルス校に移り、ビジネス・企業学を専攻。在学中からインターンを多数経験。10年11月、在学中にインターネットによる広報と、マーケティングの会「SumericaTV, LLC」を設立。今年6月に同大卒業。現在、同大MBAプログラムに在籍中。ウェブサイト: www.sumericatv.com

そもそもアメリカで働くには?

人生一度きり 両親に勘当されての渡米

渡米を初めて考えたのは高校の時で、カナダに留学する予定だったんです。でも、父が非常に厳格で、「娘は地元の仙台から離れてはいけない」と反対されて実現しませんでした。しかし、どうしてもアメリカに行きたくて、英語のスピーチコンテストに出たり、奨学金をもらえるよう勉強していました。
 
そのまま仙台の大学に進み、1年半過ごしましたが、やっぱり留学は諦め切れませんでした。海外に出て、色んな人たちに会い、刺激ももらい、経験を積みたいと思って。私の通った仙台育英高校には留学生がたくさんいて、実家でも留学生を受け入れたりしていたので、元々海外志向がすごく強かったんです。それに、ずっと仙台だけで過ごすのも、何もトライしないで親の言いなりに生きるのも嫌でした。人生一度きりだと思い、モデルをしたり、レストランで働いたりして貯めていたお金を持って、2004年にロサンゼルスに渡りました。
 
ですが、父に断りなく大学を辞め、渡米も決めてしまったので、「もう連絡は一切取らない。勝手にしなさい」と言われて。私も「今までどうもありがとうございました。もう巣立ちの時期だと思うので、好き勝手にやらせていただきます」と手紙を書きました。そうしたら、「もう仙台に帰って来るな」と勘当です。そんな状態で、最初はカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)に入ったのですが、自分の英語力では授業に付いていけませんでした。日本でスピーチの勉強もかなりやったのですが、大学でプレゼンするのとでは全然違いました。クラスは思うようにパスできないのに、いたずらに学費ばかりかかり、かなり焦りました。そこで、ちゃんと初めからやり直そうと、コミュニティーカレッジに入り直しました。
 
それから、南カリフォルニア大学(USC)に編入したのですが、勘当状態の親から援助が得られるはずもなく、やはり学費を捻出するのが大変で。それで、学費が少しでも安いカリフォルニア州立大学ロサンゼルス校(CSULA)へ移り、ビジネスと企業学を専攻しました。

日本のビジネスマナーを 学ぶためにインターン

南加日系社会での人脈はかなり広がった(SUEHIRO
着物の押元末子社長・左とLAPD副本部長のテリー・ハラさん・右)

CSULA在学時から起業を志していましたが、やはり最初は企業で経験を積まないと成長できない、と思いました。また、起業する上で、日系企業とも関わっていくはずだから、アメリカにいても、日本のビジネスルールや社会常識は知っておいた方がいいと思い、日本企業でのインターンを考えました。商社や食品会社などで経験を積み、その後は、日系の美容関係、製造会社で1年くらい働きました。
 
日系企業では、私のダメな所をちゃんと指摘し、教育してもらえました。一方、アメリカの企業でセールスの仕事をした時は、毎日、何社訪問し、どれだけの成果を挙げたか問われるだけで、どうすれば売り上げが上がるかなど、教えてもらえないことが多かったですね。アメリカの企業は、失敗を経験して、そこから自分で学ぶものなのだと、日米の企業風土の違いを感じました。
 
日中はインターン、夜は学校に通う毎日を過ごし、今年6月にCSULAを卒業しました。大変だったのですが、それも今となっては良い経験だったと思います。それがあったから、今、ちょっとしたことでは落ち込まなくなり、忍耐力も付きました。ただ、プライベートな時間がまったくなかったので、もっと友達とのネットワークを築いておけば良かったかなと、振り返って感じますね。実は、今はMBAを取るために、再度CSULAに通っています。相変わらず、昼も夜も忙しい毎日です。

起業することは ごく自然なこと

父は不動産会社、母はレストラン経営をしているので、起業は私にとってごく自然なことで、心理的な抵抗や不安はあまりありませんでした。業種を考えた時、高校時代からレストランでずっとアルバイトをしていて、母の姿も見ていましたので、レストラン経営を考えましたが、やはり多額の資本金が必要です。そこで、インターン経験もあったメディア業界で、SumericaTV, LLCという会社を設立し、「SUMERICA TV(www.sumericatv.com)」というサイトを立ち上げました。CSULA在学中の昨年 11月から営業を始めて、今は少しずつですが利益も上がってきている状態です。
 
SumericaTV, LLCは、日系企業やアメリカ企業のビジネスやサービスを、ソーシャルネットワークサイトなどを通じて一般消費者に告知する部門、アメリカのトレンドや情報を日本に紹介するマーケティング部門から成り立っています。
 
インターネット業務は、YouTube やTwitter、FacebookなどのウェブPRにより会社を紹介したり、イベントを通しての企業のPRサービスをしています。今は、できるだけたくさんビデオを撮って、ビデオソーシャルサイトやウェブサイト、ウェブPRとして、広告費やクリックバナーで収入を得る形になってきています。
 
SUMERICA TVの目下の課題は、企業PRビデオの編集能力ですね。スタッフは技術が足りない分、必死に動いてくれて、みんなで学びながら、成長できるという面では良いかなと思います。

思い込みの壁をぶち壊し 相手の懐に飛び込む

学生の頃は、営業訪問するのが怖かったんです。企業のトップの方とお話しする機会なんてそれまでなかったですし、自分に仕事に対する明確なビジョンがなかったこともありました。
 
ですが、何社も訪問し、「ダメだ」と何回も断られていくうちに、徐々に担当者の方とも打ち解け、「ウチはダメだけど、どこどこの会社の社長さんを紹介してあげる」といった具合に人脈を拡げていくことができるようになりました。「怖い」という自分の思い込みの壁をぶち壊して、相手の懐に飛び込まなければ、自分を理解してもらうことはできないし、相手を理解することもできないと感じました。自分から踏み込まないと世界は広がらないし、いつまでも同じ自分のままだなと、会社を立ち上げてみて、すごく思いました。企業のプロモーション以外に、企業トップの方たちのビデオメッセージを、SUMERICA TVのコンテンツとしていただくということも、現在やっています。お話を聞いていると、そういう方でも、やはり最初から成功はしていません。そして、何でも挑戦した方がいいと、よく言われていますので、私もどれだけできるかわからないのですが、突っ走ろうかな、と思います。
 
SUMERICA TVを通して、日米の企業を結び、もっと日米間の距離を縮めたいですね。アメリカにいる日本人だけでなく、日本にいる方たちにも、アメリカで日本人がこんなに頑張っているというのを、広報していきたいです。そして、広報、PR、マーケティングに限らず、色んな方面に展開できたらいいですね。そういった意味で、SUMERICA TVは私にとって出発点。ここからもっとビジネスチャンスが生まれてくると思います。
 
何を始めるにも、すごくエネルギーが必要だと思います。「何かやりたい!」と言うと、それを否定しようとする人と、頑張れって応援してくれる人がいます。押しつぶそうとする力や感情的なネガティブな意見に負けたら、新しいことは何もできません。だから、自分が一度やると決めたら、突っ走って、もし壁にぶち当たっても、それが当たり前だということを覚悟して。
 
私の起業経験からのアドバイスは、ありきたりなことですが、失敗を恐れず、もしゼロになっても立ち上がること。失敗の後には成功が来ると信じて、希望を失わずに頑張っていきましょう。
 
(2011年10月1日号掲載)

「アメリカで働く(多様な職業のインタビュー集)」のコンテンツ