問題が起きた時にどう対処するかで、
自分への評価が変わってくる
アメリカで夢を実現させた日本人の中から、今回はリアルターの清田晴美さんを紹介しよう。アメリカでは家を持つことが当然の話という現実と、自分のために尽力してくれたエージェントに感銘を受け、自らもリアルターに。思ったことは即実行で、年間30軒以上の不動産売買を取り扱う。
そもそもアメリカで働くには?
- アメリカで働くためには、原則として合法的に就労可能な「ビザ」が必要になります。
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「夢の持ち家」が
当たり前という現実
叔母がコロラドに住んでいて、彼女のレストランを手伝いに来たんですね。でも1年くらいで私が手伝っていた支店を閉めようということになって。じゃあ、自分で開けちゃおうと、レストランを始めたんです。その後に本屋やコンビニも買いました。
ある日、現在も私の師匠であるセンチュリー21の方が、うちの店に来て、「あなた、毎月千ドルくらい払える?」「じゃあ、家、買おうよ」って軽いノリで言われました。貧乏な家に育ったので、家を買うっていうのが夢だったんです。今まで夢だったことが、アメリカでは全然夢ではなく、当たり前だと言われました。クレジットはない、現金もない、履歴もないっていう状況でもエージェントさんがトライしてくれた、そして不動産知識を全然知らない私にいろいろ教えてくれた。それで自分自身、すごく不動産売買に興味がわきました。
子供にしっかりした日本語の教育を受けさせたくて、日本人の多いカリフォルニアに移るのをきっかけに、興味のある不動産関係の仕事に就こうと思いました。カリフォルニア州のリアルターのライセンスについて調べたら、通信教育でもクラスが取れ、クラス修了後に模擬試験に受かれば、州試験を受ける資格がもらえることがわかりました。早い人で3カ月くらいで修了できるのですが、私は英語が得意ではなかったので、専門用語を覚えるのに時間がかかり、1年くらいじっくりかけてやりました。
カリフォルニアに移ってすぐに、不動産エージェントの試験を受験しました。リアルターのライセンスは、エージェントとブローカーがあって、エージェント資格だけだとブローカーの下でないと働けません。エージェントで2年以上経験を積むとブローカーのライセンス受験ができ、ブローカーになれば独立できます。また、エージェントになっても4年に1回更新があるので、勉強が必要です。
1日300軒
ノックして回った
私の師匠がセンチュリー21だったので、最初からそこしか考えていなくて、あとは日本とのやりとりができるブローカーが良かった。だからオフィスに出向いて、働かせてくださいって、1件目で決めてしまいました。
新人エージェントは、オープンハウスのやり方や顧客との接し方、言葉遣い・服装や顧客の見つけ方などを、毎日勉強します。また、私は土地勘がまったくなかったので、毎日20、30件は物件を見に行っていました。お客様にとっては新人だろうがベテランだろうが、払う金額は同じ。新人だからわかりませんとは、言いたくないし、言っちゃいけないと思っていました。だからとにかく物件を見て、3カ月後には不動産エージェントがダメでも、タクシードライバーにはなれるというくらい、地理に精通していましたね。
最初のうちは、「Cold Call」、つまり直接お客様に売り込みの電話をかけたり、1軒ずつ家をノックして回って資料を渡したりというようなことを、地道に続けました。毎日歩いていると、郵便屋さんと会うんですよね。「1日何軒回っているの?」って聞いたら、300って言われ、負けられないと思って毎日300軒は回りました。Cold Callも300件くらいは毎日かけて、目が疲れて、リストで今かけた人にまたかけて怒られたりとか、結構ありました(苦笑)。こんなに手間暇かけていたから、最初の頃は、時給1ドルくらいかなとか思いました。
80%のビジネスを
20%が動かす世界
少しずつ売れてはいましたが、やはりそれでは子供も育てていけない。で、1番になりたかったから、アメリカで1番の人は何をしているか調べました。そうしたら北米ナンバー1のエージェントは1年間に700軒以上売っている。とりあえず真似してみようと、彼のクラスを教材で勉強しました。
軌道に乗ったのは1年後くらいでしょうか。2年目にはセンチュリー21でルビーという賞をもらって、3年目には120人のオフィスの中で1番になって、センチュリオンっていう1番上の賞を5年連続でいただきました。今年で10年目ですが、1年で30軒以上売買しています。やはり家が好きだから、「こんな家、買えたらいいな」とか思って、お客様と回っています。なので、物件を気に入ってもらえたり、「買って良かった」と言われるのは、本当にうれしいことですね。
実は年に1、2軒しか売れないのがリアルターの平均らしいです。80%のビジネスを20%のエージェントが動かしている。20%のシェアを80%のリアルターが分け合っているから、勝ち組、負け組が1年くらいで分かれますね。うちのオフィスも、新人が1年後に残っている確率は20%くらいですね。
株のように世界中の物件を買ったり、投資できたりする時代が来ると、私は思っています。それで6年位前に、CIPS(Certified International Property Specialist)を取って、世界中のエージェントとつながりを持つようになりました。とにかく、思いついたら何でもチャレンジですね。そこで問題が起きても、”Don’t say problem, another chance.”って思う。絶対クリアできるし、その時にどう対処するかで、自分への評価が変わってくると思います。
(2007年3月1日号掲載)