ファイナンシャルアドバイザー(サービス・サポート系):福士 俊輔さん

ライトハウス電子版アプリ、始めました

情報ひとつで、
子供たちの人生を変えてあげられる

アメリカで夢を実現させた日本人の中から、今回はファイナンシャルアドバイザーの福士俊輔さんを紹介。日本人にはなじみの薄い米大学のファイナンシャルエイドを最大限に活用するための方策を指南している。

【プロフィール】ふくし・しゅんすけ■ワシントン州ベレビュー生まれ。8歳の時に日本に帰国。一橋大学卒業後、アクセンチュア入社。同社退職後、渡米。ニューヨークのファイナンシャルプランニング事務所に勤務、Midtown Planning社を立ち上げる。ホームページ:www.midtownplanning.com

そもそもアメリカで働くには?

コンサル業界での経験が役に立つ

リーダーを務めたニューヨークでの
起業家ミーティングで

 父親がワシントン州ベレビューに駐在していて、私はそこで生まれました。8歳の時に父親の帰任と共に日本へ行き、大学を出てアクセンチュアという会計事務所系のコンサル会社に就職するまで、ずっと日本で過ごしました。
 
 2000年に同社に入社した時の新人研修がシカゴ郊外の研修施設で行われ、その帰路にニューヨーク市に立ち寄りました。マンハッタンの街並みを見て、「はぁ、スゴイなぁ。よし、数年後はここで働くことにしよう」と、いっぺんに好きになってしまいました。
 
 最初は、駐在員としてニューヨークに派遣されることを夢見て働いていたのですが、なかなかその機会はありませんでした。それじゃあと、ニューヨークの金融関係の事務所に片っ端から電話をかけました。
 
 すると、今でも顧問としてビジネスのつながりが続いているマーク・ゲシュウィンドというユダヤ系ファイナンシャルプランナーが、私をインタビューしてくれました。「頑張るから、雇ってくれませんか」と訴え、幸いにもインターンとして採用が決まり、会社を退職してニューヨークに渡りました。
 
 マークの顧客を相手に、初めてファイナンシャルプランニングの業務を経験しました。アクセンチュアで身に付けた、現状を分析し、あるべき姿を決めて、ギャップを見きわめ、解決策を提案する、というプロセスは、ファイナンシャルプランニングでも応用できると考えていました。
 
 ファイナンシャルプランニング業界は、保険会社に属し、保険を売るために色々提案してきたという人が多かったんです。ですから全体的な視点からプランニングをして、解決策を提案するというアプローチは、ありそうでなかった。
 
 マークのお客さんに全体的な資産のポートフォリオを示すチャートやグラフ、表をエクセルやパワーポイントで手作りしてあげたら、「こんなことをしてくれるファイナンシャルアドバイザーには会ったことがない」と、大変喜ばれました。コンサル業界では当たり前だったことが、ファイナンシャルプランニング業界では新鮮に受け取られ、「これは面白いなぁ」と思いました。

ファイナンシャルエイドで助かる人がたくさんいる

 働き始めて半年で、自分で営業したいと考えて独立することにしました。その時、アメリカ人の家庭に対して最もインパクトを与えているものの1つが、大学の学費だと気付きました。それに対して従来のファイナンシャルアドバイザーのアプローチとしては、「貯蓄をしましょう」というものです。子供の名義で貯蓄すれば、子供の税率しかかからないので節税になるというのが、基本的な提案のアプローチでした。
 
 ところが貯蓄をすれば、逆に学費負担が増えるという矛盾があることがわかりました。そういった現象の背後にあるのが、アメリカの大学特有のファイナンシャルエイドというシステムなんですね。ファイナンシャルエイドというシステムは、全米で適用されている仕組みや計算式があって、これを知ると、ある家庭の子供が、ある大学に行くとファイナンシャルエイドがいくらもらえるか、どうすればよりファイナンシャルエイドをもらえる可能性を高めることができるかが、わかるようになるんです。
 
 このファイナンシャルエイドの仕組みを勉強したら、助かる人がたくさんいるんじゃないかと、アメリカ人でカウンセリングやセミナーを行っている人たちから色々ノウハウを提供してもらいました。そして、彼らと協力して、最初はアメリカ人の家庭を対象にセミナーを行っていましたが、数カ月後に「日本人を相手にやっている人はいないんじゃないか」ということに、はたと気付いたんです。
 
 早速ニューヨークで日本人対象に始めたところ、「こんなことを教えてくれる人はいなかった!」「もっと早く知っておけば良かった」と、反響がいっぱいありました。もっと日本人がいるカリフォルニアでセミナーをすれば、さらに反響があると考え、06年からカリフォルニア州でも開催しました。やはり多くの日本人が集まり、ニューヨーク以上に情報に対する欲求の度合いが強いということを実感しました。
 
 しばらくはニューヨークとカリフォルニアを行き来していたのですが、ロサンゼルスのお客様が増えてきたこともあり、昨年11月にトーランスに本拠地を移しました。

子供たちに学ぶ希望を与えられる

 私が実際に提供しているサービスは、ファイナンシャルエイドの申請フォームの記入代行で、ファイナンシャルエイドが最大限もらえるようにコンサルティングします。申請フォームの記入には、もちろんライセンスは要りませんが、ミューチュアルファンドなどの金融商品の販売をするのには、シリーズ6、63といったライセンス、生命・健康保険の販売には、Life & Healthというライセンスが必要です。また、シリーズ65というライセンスを持っていないと、個人へのコンサルティング・サービスに対して課金することができません。
 
 私のアドバイスで、今まで費用の面で諦めていた私大進学の道が開けたりすれば、子供の可能性が一気に変わります。子供たちに学ぶ希望を与えられるのが1番のやりがいですね。ファイナンシャルエイドの情報ひとつで、子供たちの人生を変えてあげられるんです。ミューチュアルファンドなどと比較して、得られる金額も大きいですから、感謝される度合いも大きいですしね。
 
 業務が拡大するにつれ、顧客1人1人のケアが疎かにならないように、今、顧客データベースを開発していて、きめ細かいケア、フォローができるようにしています。意識していませんが、コンサル会社での経験が役に立っているのかもしれませんね。
 
 これからも、全米の日本人の皆さんに、ファイナンシャルエイドに関する情報を広めていって、家計の改善を全体的にサポートしていけたらと思います。

「アメリカで働く(多様な職業のインタビュー集)」のコンテンツ