アメリカで夢を実現させた日本人の中から、ピラティス・インストラクターのアボット由三子さんを紹介。ピラティスの第一人者、ラエル・イザコヴィッツ氏から直接指導を受け、サンディエゴでクラスを開講中。
そもそもアメリカで働くには?
- アメリカで働くためには、原則として合法的に就労可能な「ビザ」が必要になります。
アメリカ・ビザの種類と基礎知識 - 日本から渡米してアメリカで働く方法として、18ヶ月の長期インターンシップも選択肢の1つ。
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経験なしでいきなり
インストラクターを目指す
渡米したのは2001年です。それまでは、日本でファイナンシャルプランナーとして、10年ほど働いていたのですが、日本の経済が低迷していたこともあり、アメリカ留学を決意しました。
初めは語学学校に通い、その後、サンディエゴのグロスモント・カレッジに入学しました。ゆくゆくは4年制大学にトランスファーして、アメリカの金融について勉強したいと考えていたのですが、グロスモント・カレッジ在学時に主人と出会い、結婚することになったのです。
その後、ロサンゼルスに引っ越し、私は主婦業をする傍ら、学校に通ったり、パートタイムで仕事をしたりしていました。その頃に気付いたのが、アメリカの医療費の高さや、日本とはまったく違う医療保険のシステム。大きな病気をした時の自己負担額は相当なものですし、医療保険に加入していたとしても、治療費すべてがカバーされるとは限りません。先のことを考えると、アメリカに住むにあたり、1番大切なのは「健康」なのではないかと、強く思ったんですよね。
そんな時、ふと目に留まったのが、ライトハウスに掲載されていた「ピラティス・インストラクターになりませんか?」という内容の広告。それまでピラティスを習ったことはなかったのですが、ちょっと興味があったせいか、「これだ!」と、インスピレーションを感じてしまったんです。
早速、ニューポートビーチにあるBody Art and Science International(BASI)という学校に入学し、そこで一からピラティスを学びました。その学校の創設者は、ピラティス界では著名なラエル・イザコヴィッツ氏という人で、私はラッキーにもラエルから直接指導を受け、1年ほどでインストラクターの資格を取得しました。
資格試験には実技もあったのですが、300種類以上もあるエクササイズの中から、実際に出題されるのは3つだけ。しかし、どのエクササイズが出題されるかわかりませんので、すべてを完璧に覚えなければなりません。毎日、毎日、体に刷り込むように練習しました。
ピラティスの特徴は
インナーマッスルを鍛える
ピラティスは日本でも人気があり、ダイエットのためのエクササイズと思われている方も多いと思います。しかし、元々は第一次世界大戦時、負傷した兵士たちのリハビリのために、ドイツ人のジョセフ・ピラティス氏が考案したエクササイズです。
ピラティスの特徴は、インナーマッスルを鍛えることです。インナーマッスルというのは、身体の内側に付いている筋肉で、内臓や骨を支える働きをしています。最も重要な部分は、お腹の辺りに付いている筋肉で、私たちの身体を支える大切な役割を果たしています。その筋肉が弱くなると、身体の重心がずれ、その結果、腰痛や膝痛を引き起こすことがあります。
現在、サンディエゴ市内3カ所(ダウンタウン、イーストレイク、コンボイエリア)で、30人ほどの生徒さんにレッスンを行っています。20~60代の女性がほとんどですが、最近はご夫婦で参加する方も増えています。
皆さん、初めのうちは、「こんな筋肉痛は初めて」と驚かれますが、慣れてくると筋肉痛になることもなく、「身体が伸びて気持ちがいい」と楽しまれているようです。ピラティスは、年齢に関係なく、子供からお年寄りまで無理なく続けられるのも魅力ではないかと思います。
人それぞれ、身体つきや強さ、柔軟性が違いますので、クラスでは、その人の身体の状態に合わせた指導ができるよう、心がけています。ピラティスは人との競争ではありませんから、生徒さんが「みんなはできるのに、私にはできない」と自信をなくさないよう、身体の違いをわかりやすく説明することも大切ですね。
ムーブメントの
1つ1つに意味がある
私は、ピラティスを指導していますが、同時に今でも、定期的にオレンジ・カウンティーに足を運び、優秀な先生たちから指導を受けています。1週間ほどクラスを受講するだけでインストラクターの資格がもらえる所もあると聞いたことがありますが、ピラティスはポーズを真似するだけでは効果は上がりません。1つ1つのムーブメントには意味があり、使わなければならない筋肉の箇所も決まっています。間違った筋肉を使うと首が痛くなったり、腰を痛めたりすることもあるので、テレビやDVDを見て行っている人は、気を付けてほしいですね。
インストラクターとして、生徒さんが「ここの筋肉が付いてきた」とか「最近身体の調子がいい」と、効果を感じてくれるのはとてもうれしいですね。人と関わる仕事は楽しいですし、健康で、はつらつとした皆さんの顔を見るたびに、この仕事のやりがいを感じます。
私は、渡米したのが35歳の時でした。読者の方の中には、夢に向かって頑張っていらっしゃる方も多いと思いますが、アメリカでは年齢は関係ありませんし、「もう年だから」とか、「できるかな?」などと躊躇せず、やりたいことにトライして、チャンスを掴んでほしいなと思います。ピラティスのインストラクター養成コースには、70代で参加されている方もいるんですよ。私もそのバイタリティーを見習って、これからも頑張ります。
(2008年11月16日号掲載)