大学の学費に対する援助

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アメリカの大学の学費は年々上昇する傾向にあり、特にここカリフォルニア州では、州の財政難などの理由から過去10年で2倍以上に膨れ上がっています。この伸び率は明らかに経済のインフレ率よりも大きいので、家計に占める学費の割合も必然的に大きくなっています。私立大学のみならず公立大学でも年間数万ドルの費用がかかるので、一般家庭の収入では十分な学費を捻出できないことも多々あります。
そこで、「かわいい孫に高レベルの教育を受けさせたい」というおじいちゃん、おばあちゃんから援助を受けるケースも多く見受けられます。しかし、この援助には税金がかかる可能性や、学生の特権である学生財政援助金「FAFSA(Free Application for Federal Student Aid)」が減額される恐れもあるので、慎重に進めなければなりません。今回は想定できるいくつかのケースを解説します。

孫への贈与

祖父母から孫への学費援助は贈与とみなされ、年間1万4000ドルの控除が設けられています。夫婦で贈与した場合は各々1万4000ドルの枠を持っているので、1人の孫に対して合計2万8000ドルの援助が非課税になります。受贈者が複数人いる場合も同様に、それぞれに対して1万4000ドルの控除が設けられています。
従って、3人の孫に1万4000ドルずつ学費援助をした場合、全て非課税となります。それを超える場合は最大40%の贈与税が課されます。

FAFSAとの関連性

ある程度の資産を所有しており、かつ一定の収入がある家庭の場合、FAFSAをもらえない可能性があります。例えば、祖父母から孫へ数年間にわたって贈与し続けたことで、孫の資産が5万ドルになったとします。すると、FAFSAを申請した場合にその資産の20%(最大の減額値)にあたる1万ドルのFAFSAが減額されます。ですから、ただ単に援助するだけでなくFAFSAとも関連させて考える必要があります。

親への贈与

また、21歳を過ぎると孫は成人とみなされるので、贈与された資産は孫自身で使い道を決定できます。そうすると、必ずしも学費に使うとは限らないので注意を払わなければなりません。そのようなときに有効なのは直接孫へ贈与する代わりに、孫の両親へ間接的に学費を贈与することです。これにより、FAFSAに与える影響を抑えることが可能です。
孫に贈与する代わりにその母親である祖父母の子どもに贈与し、娘の資産が5万ドル増えたとします。FAFSAの計算では孫自身の資産は20%減額されるのに対し、親の資産に対しては最大5.64%しか減額されないので、2820ドルのみとなります。よって、孫に直接贈与するよりも、その両親に贈与した方が得策といえるでしょう。しかし、その両親でさえも受け取った贈与を必ずしも子どもの学費に回すとは限りません。そうした場合には「529プラン」という学費の貯金制度を利用することが有効です。

「529プラン」

孫のために祖父母が「529プラン」を作ると、その貯蓄がどのような用途で使用されるか祖父母が決めることができます。その「529プラン」からの利子収入などは、口座からお金を動かさない間のみならず、学費に使われるのであれば引き落とした際も非課税です。
さらに、もし緊急にお金が必要となった場合、引き落とすこともできます。しかし、利子収入などの部分には10%の罰金(若干の例外を除く)を支払わなければなりません。
 
(2014年10月1日号掲載)

石上洋◎米国公認会計士
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校を卒業後、大手監査法人、現地会計事務所パートナーを経て石上・石上越智会計事務所を設立。税務をメインに事業を展開。
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米国公認会計士・石上洋さんのインタビュー

 
※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。

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